Vol18//NFTで酒樽をDXするとどうなる?

今、産業界で最もホットなキーワードの一つがDX、デジタルトランスフォーメーションです。

DXという言葉については経済産業省などのウェブサイトでも確認することができますが、ごく簡単には『新たなデジタル技術を使ってこれまでにないビジネスモデルを展開すること』といえます。単に既存のビジネスをデジタル化するだけではなく、デジタル化することによって新しい価値等を創造するということになります。

ところで、DXというと新しい業種・業態のビジネスというイメージがあるかもしれませんが、実は、歴史あるビジネス(成熟したビジネス)こそ、DXによって新たに生まれ変わる可能性があるのです。

今回紹介する発明は、㈱レシカと㈱ジャパンインポートシステムの日本企業2社が共同出願した特許となります。発明の名称は「樽単位酒の保存状態データ管理及び所有証明システム」という、お酒の管理に関する発明です。

樽で仕込むお酒としては、ワインやウイスキーが有名ですよね。ウイスキーを生産する蒸留所の中には、ウイスキーを樽ごと販売する、「オーナーズカスク」「プライベートカスク」というサービスを展開するところもあり、このような販売方法は古くから世界中で行われています。

樽ごと、とはいっても購入者に酒樽が丸ごと届けられるというわけではなく、「樽の中身」を買うという意味で、購入者が望むタイミングで必要量だけ適宜ボトルに詰められて購入者の手元に送られる、という仕組みです。

ただ、このような「樽買い」のサービスにおいて、その販売や権利移転の契約は、多くの場合、紙媒体の契約書や蒸溜所の社内管理システムで行われています。

このような媒体で管理を行う場合にどうしても避けられない問題が、手作業によるミス、および、悪意ある仲介業者等によるデータの改ざんなどです。樽の購入者は直接蒸溜所の樽を確認できない以上、その管理については例えば偽物の酒樽にすり替えられてしまうといったリスクを認識しつつも、業者を信頼するしかありませんでした。

そこで、酒樽をNFT(代替不可能トークン)として管理し、樽ごとにIoTセンサーを取り付けて位置情報、温度情報などの管理情報を常にシステムに反映させ、またその管理システム自体をブロックチェーン上に展開することでデータの不正や改ざんができないような仕組みを構築しました。

このような仕組みに基づく製品管理・販売管理を行うことで、より信頼性の高い取引が可能となり、販売者及び購入者双方の利益が守られるというわけです。まさにDXによって成熟したビジネスに新しい展開を与える、そんなビジネス特許といえます。

樽の中で熟成される酒としては、ウイスキーが有名です。一般的に、ウイスキーは、酒造メーカーの蒸留所で原酒を樽詰めし、熟成されます。さらに、所定期間経過した後にブレンドされて瓶詰めされます。その後、市場に流通します。

近年、一部のメーカー(蒸留所)は、樽詰めされた酒をコレクターや愛飲家に直接的に樽単位で販売するようなビジネスを展開しています。また、コレクターや愛飲家と蒸留所とを仲介する仲介業者に、樽単位で販売するビジネスも展開しています。このようなビジネスは、世界的に広がっています。

例えばスコットランド等では、熟成中の樽を移動させずに、樽の所有権のみを移転させるような取引も行われています。具体的には、樽を熟成保管する蒸留所の権利移転が、紙媒体の契約書で行われています。

従来、蒸留所における樽の管理は、主に、帳簿形式による紙媒体、または社内管理システムによって管理されています。よって、仲介業者は、樽を保管する場所に実際に居なければ、帳簿を管理、編集、閲覧できません。

そのため、コレクターや愛飲家などの最終ユーザーは、管理情報の真実性を確かめることができません。しかも、帳簿への記入や編集が手作業であるため、人為ミスが起こりがちです。残念ながら、帳簿などで管理している以上、手作業によるミス、および、悪意ある仲介業者等によるデータの改ざんを確認することは、困難です。

蒸留所での管理帳簿に記載ミスがあっても、コレクター・愛飲家・仲介業者はこれを知ることができません。また、蒸留所でデータが正確に管理されていても、仲介業者のミスが発生したり、悪意ある仲介業者等によるデータ改ざんが起こったりします。

特に、ウイスキーの価値は、蒸留所名、銘柄、保存状態、熟成年数によってかなり影響を受けます。よって、情報が不正確であったり、データが改ざんされたりすると、エンドユーザーであるコレクターや愛飲家は、大きな経済損失を被ります。

現状の紙媒体による移転契約では、最も悪質な場合、仲介業者が偽の樽所有をユーザーに持ちかけて(偽契約書)販売する詐欺行為が起こります。紙媒体に頼る仕組みでは、このような悪質な偽造・詐欺行為を排除できないのです。さらに、紙媒体による管理では、リアルタイムで所有証明できず、仮に本物の紙の証明証を持っていたとしても、過去の保有を証明するだけに留まります。

このように、リアルタイムでの保有証明ができないため、詐欺行為を助長しかねません。

したがって、現状の酒樽の売買の仕組みでは、信頼関係のある相手との売買、または、信頼性が高い大手オークション会社を介しての売買に限定されています。このような事情により、信頼性・安全性が確保され、幅広い商品を取り扱う酒樽取引市場の開拓が要望されています。

上記のとおり、従来の管理方法及び売買方法において、最終ユーザーは、蒸留所や仲介業者が手作業で作成した情報を信用するしかありません。全て「信頼関係」に依拠して取引が行われています。

また、手作業による紙帳簿を用いた管理方法では、情報入力ミスや改ざんという問題だけでなく、情報の紛失や盗難などのリスクもあります。仮に、社内で構築した電子的システムで管理したとしても、情報の紛失や盗難(情報漏洩)のリスクは依然として残ります。

本発明は、上記の問題を念頭に置いて着想されたものです。本発明は、樽単位で取引されるウイスキー等の酒樽の保存状態データの管理、および、所有証明の管理システムに関します。言い換えますと、本発明は、熟成中の酒樽の所有権の移転、酒樽の管理状況に関する各種データの管理システムに関します。

本発明では、ブロックチェーン技術、GPS、IoTを活用することによって、酒の味や香りに影響を与える、酒樽の温度や湿度などの各種データを管理します。これにより、酒樽自身に付加価値を与えます。そして、グローバルな取引環境における真実性・信憑性を確実に保証します。

さらに本発明は、酒樽取引市場の健全な発展、および、マーケットプレイスの活性化を図ることを目的とします。

このような酒樽の管理システムの発明の具体例について、以下に説明しますが、その前に、「ブロックチェーン技術(ハッシュ関数含む)」、「IoT」、のちに登場する「NFT」について、簡単に説明します。

「ブロックチェーン技術」は、ひとことで言うと「分散型台帳技術」となります。一箇所ではなく分散されたコンピュータネットワークに、取引の最初から最後までのすべての順序を記録する仕組みです

従来は、取引データを一箇所のデータベースに保存しただけの中央集権型の情報管理が主流でした。一方、「ブロックチェーン技術」は、特定の管理者やサーバに依存しないという特徴だけでなく、ブロックチェーンのネットワークを破壊することが事実上不可能という特徴もあります。「ブロックチェーン技術」では、“ハッシュ関数”によってハッシュ値を生成し、“ハッシュ関数”でデータをチェーン状につなげています。ハッシュ関数で生成されたハッシュ値は、不可逆性(元に戻せない)という性質を有します。

「IoT」は、モノにセンサーを付けて、センサーが取得した情報を活用する技術です。

例えば、人が指示しなくても、モノが勝手に情報を感知・収集して、そのデータをリアルタイムで送るような技術です。冷蔵庫内の食品の賞味期限を自動的に把握して、適切に冷蔵庫の温度管理を実行するような技術が例示されます。

「NFT」は、ブロックチェーン技術を利用した、ノンファンジブルトークン(代替不可能トークン)の略称です。

「唯一の価値」を生み出せるトークンとして、ゲーム、会員権、不動産の所有権証明、著作権、芸術作品などさまざまな分野で実用化が進んでいます。「NFT」は、“代替不可能”であるため、全く同じものが存在しません。最近話題に挙がる暗号資産(仮想通貨)もブロックチェーン技術を利用していますが、代替可能なトークンである点で、NFTとは異なります。もし、ピカソが生きていてデジタル絵画を描いたとしたら、その絵画はNFTで取引されることになるでしょう。今後発展するメタバースでもNFTは利用されると予想されます。


では、本題に入ります。

図1は、ウイスキー樽の売買ビジネスに応用された本発明の全体の流れを表す模式図です。

図1では、酒樽へ原酒を充填するステップ、樽と紐づけられた証明書トークン(NFT=ノンファンジブルトークン)を発行するステップ、環境データを記録するステップ、保有情報を参照するステップ、証明書を移動するステップなどを説明しています。

まず、ウイスキーメーカーは、通常どおりの手順に従って原酒を製造し、原酒を樽に充填します(1)。その後、樽を貯蔵庫に運んで、原酒を熟成させます。その際、本発明に係るシステム(処理プログラム)は、樽ごとに固有の樽番号を発行します(2)。樽番号は、完全ランダムなシリアル番号です。そして、ブロックチェーン上に樽番号に紐付けられるNFTを発行します(3、4)。なお、樽番号は、例えばメーカー自身によって定められます。

さらに、本システムの利用者によって撮影された樽の画像が、証明写真としてシステムにアップされます(5)。証明写真であるため、例えば樽番号が表示された画像です。その画像のハッシュ値は、システムを通してブロックチェーン上に記録されます(6)。これにより樽番号が正確に記録されます。そして、証明書トークンに記録されている樽番号と実際の樽番号との不一致を防止し、また、樽番号の修正や改ざんを防止します。

樽には、システムと連動するGPSセンサー、IoTセンサーが取付られています。これにより、位置情報、樽の重量、温度、湿度などの情報が所定時間ごとに取得されて、データベースに記録されます(7、8)。GPSセンサー、IoTセンサーから得られたデータは、ハッシュ関数によってハッシュ値となり、ブロックチェーン上に記録されます(9)。これによって、蒸留所の名称・場所、樽の熟成期間といった状態データの不正や改ざんを防ぐことができるのです。

証明書として扱われる証明書トークンは、樽の売買が行われるごとに、本システムによって、メーカーから仲介業者(販売代理店)、仲介業者から消費者へと移動していきます(10、11)。消費者Eからさらに樽を購入したい消費者Fは、消費者Eが真の樽所有者であるか否かをブロックチェーン層から確認できるため、安心して樽を購入できます(12、13、14、15)。

さらに該当の樽に関して、蒸留所の位置情報、重量、温度、湿度の状態データをいつでも確認することができるため(16)、原酒の樽詰めから熟成期間中の管理状態などに関して、真実の情報を把握できます。

【図1】

図2は、トークン発行のシステム構成図です。詳しくは、証明書トークンが発行され、当該証明書トークンが移転していく際の様子を模式的に示しています。図2の例では、原酒を樽詰め保管する蒸留所が、30樽のトークンを発行する場合を説明しています。

蒸留所は、それぞれの樽番号、原酒充填日、銘柄、内容量、アルコール度数、メーカー名を含む基本情報を、本システムの管理会社へ伝えます(1)。蒸留所は、上記のような各情報をシステムに直接入力できます。

システムは、入力された各情報を基にしてブロックチェーン上で証明書トークンを発行します。発行された証明書トークンは、NFT(代替不可能トークン)です。それぞれのトークンがそれぞれ異なるデータを保持しているため、識別が可能です。本システムで発行されるNFTは、それぞれの樽番号と紐づけられているため、この証明書トークン自体によって樽の所有権を証明できます。

証明書トークンの所有者は、どのようなタイミングでも権利を行使して証明書トークンと樽を引き換えることができます。管理会社は、ブロックチェーン上で樽ごとにそれぞれ異なった証明書トークンを発行します(2)。

図2では、30個の樽全てを仲介業者がメーカーから購入する例を説明しています。システムによって発行された30樽の証明書トークンは、管理会社から仲介業者へ送付されます(3)。これによって30個の樽全ての所有権が、メーカーから仲介業者に移転されます。

その後、仲介業者は個人ユーザー(または二次仲介業者等)に対して各樽を販売します。この売買契約の成立によって、販売した樽の証明書トークンは、販売した各個人(または二次仲介業者等)へと移転していきます(4)。なお、このような証明書トークンの移動および保有は、システムのアプリケーションサーバーとブロックチェーンの両方によって管理されます。

第三者は、この取引履歴と保有状況を、常に確認できる構造となっています(5)。

【図2】

図3は、樽の所有権を証明する証明書トークンの売買時の流れ、および、樽現物と引き換える際のシステム図です。換言すると、トークンを用いた酒樽単位での所有権の売買と、樽現物の引き取りを示しています。

原酒が充填された樽は、蒸留所に保管されます。所有権の移転が行われても、基本的に樽は移動せず(1)、ブロックチェーン上の証明書トークンの所有権だけが移転します(2)。樽に充填されている原酒は、蒸留所で熟成され続けます。トークンを樽と引き換える時のみ、保管されている樽を発送するか、または、樽内の原酒を瓶詰めして引き換えます(3)。

上記のようにして証明書トークンを用いて、樽単位で所有権を売買したときの取引履歴は、アプリケーションサーバーとブロックチェーンの両方で記録されます。よって、仮にアプリケーションサーバーが記録を改ざんしようとしても、当該記録のハッシュ値とブロックチェーン上のハッシュ値が異なることに基づき、改ざんを容易に検出できます。

さらに、取引履歴や保有状況は、第三者によってブロックチェーン上で常に確認できます。そのため、証明書トークンを取引する際に取引相手が本当に樽を保有しているかどうかという事実確認が可能です。証明書トークンが最終消費者(消費者C)に渡り、最終消費者(消費者C)が証明書トークンの権利を行使して引き換えようとした場合でも、樽の管理会社は、消費者Cが証明書トークンを保有しているかどうかの検証が可能です。特別な書類の記入、作成、提出などの行為が必要ないことから、簡易的かつ迅速に確認できます

図3の投資家A、投資家B、消費者Cなどのブロックチェーンのアカウントには、個人認証に関する情報をハッシュ値で記録します。このハッシュ値の活用により、個人情報をオープンにせずにプライバシーを守ることができます。証明が必要な場合は、プライバシーを守りながら、個人データを提出します。そして、ブロックチェーン上に記録されているハッシュ値と照合して個人所有の証明が可能です。

図3では、取引時において、取引相手が証明書トークンを保有しているか否かの真偽を確かめるために、プライバシーを保護したまま利用できる秘密鍵と公開鍵を活用します。

投資家Aは、秘密鍵と公開鍵を保有しています。投資家Bは、証明書トークンを保有しているアカウントのブロックチェーン上から、公開鍵を取得します。投資家Bは、投資家Aが本当に証明書トークンを保有しているかどうか確認するため、Aが秘密鍵で暗号化した指定したメッセージを公開鍵で復号化します。そして、Aが樽の証明書の保有者であることを証明します。このとき、暗号化した内容を正しく復号化して原文と照合できれば良いため、暗号化する内容はどのような何でもよいのです。

図3の樽単位での売買契約時において、販売者の登録情報が真実か否かを検証する方法として、ハッシュ値を参照する方法を用いることができます。この方法は、買い手である投資家Bが投資家Aに対して個人あるいは法人の登録情報を要求したときに、投資家Aが偽りの情報を提出しているかどうかを検証できる技術です。

具体的には、投資家Aのシステムに登録している情報のハッシュ値と、投資家Aが投資家Bに提出した情報のハッシュ値とを比較します。完全に一致すれば偽りはなく、異なれば偽りや不備があることを容易に検証できます。

【図3】

図4は、GPS、IoTセンサーから取得したデータを記録する場合のシステム図です。

蒸留所(または倉庫)で保管されている個々の樽ごとに、GPS、IoTセンサーが設置されています。所定時間(例えば、月、週、日、時間)ごとに、GPS、IoTセンサーから発信されるデータを、システムで自動的にアプリケーションデータベースに記録します(1)。

これと同時に、ハッシュ値をブロックチェーン上に記録します(2)。

アプリケーションDBと、アプリケーションサーバーのハッシュ値と、ブロックチェーン上に記録されたハッシュ値とを照合することができます(3)。

ハッシュ値は、ハッシュ化する前の元データを修正、追加、または改ざんすると変化する特性があります。そのため、アプリケーションDBとアプリケーションサーバーに記録されたハッシュ値と、ブロックチェーン上のハッシュ値とを照合することによって、記録された情報の改ざん、消去などの不正行為を検出できます。よって、第三者は情報の真実性を検証できます(4)。

【図4】

図5は、従来技術と本発明導入後の比較を示します。すなわち、樽の販売に関する既存のモデルと、本発明で可能になるモデルとを比較しています。

従来モデルでは、樽の管理情報記録をメーカーが手作業で行っています。そのため、樽単位での酒の購入を希望する者は、信頼できるメーカー、信頼おける仲介業者から購入するしかありませんでした。

これに対して、本発明によれば、ブロックチェーンを利用したシステムの活用により、全てが真実の情報に基づくことから、お互いに面識のない者であっても、安心した取引を、しかも迅速に行うことが可能です。

【図5】

以上のように、本発明に係るシステムでは、ブロックチェーン技術、GPS、IoTセンサーを用いて、原酒が充填保存されているウイスキー等の樽の保存状態を把握できます。

これによって、偽造やミスの無い真正な情報をリアルタイムで把握できます。仲介業者及びエンドユーザーは、原酒が充填されている酒樽の価値を、すぐに、しかも正確に評価できます。

本発明のシステムを利用することで、酒の品質(味、香り、風味など)に影響を与える、温度や湿度といった酒樽の熟成状況データを取得できます。このような真の情報を酒樽と紐づけできるため、目的とする商品が適切な熟成状況にあるという付加価値の証明が可能です。

本発明のシステムを利用することで、情報・データの改ざんまたは記録ミスがなくなります。よって、メーカー及び仲介業者は、信頼関係を築いてこなかった仲介業者やエンドユーザーに対しても、信頼・信用を与えることができます。

また、GPS、IoTセンサーを活用するため、蒸留所における樽の管理が自動化され、人的作業負担を軽減できます。

さらに、本発明に係るシステムによって、仲介業者やエンドユーザーは、リアルタイムでの真正な所有者情報を証明書トークンとして得ることができます。よって、樽を所有・保管している企業が破産・倒産した場合であっても、ブロックチェーン上のデータを参照して所有権を証明できます。そのため、容易かつ持続的な取引が可能です。

さらに、本発明に係るシステムによって、インターネット環境を通じて全世界のメーカー、仲介業者、エンドユーザーを互いに結びつけることができます。蒸留所に樽を保管しておきながら、国籍に関係なく所有者の名義を確実に移転変更することができます。その結果、世界規模での酒樽取引市場の健全な発展、および、取引の活性化を図ることができます。

さらに、本発明に係るシステムを利用すると、酒樽の取引は必ずブロックチェーンのシステム内で行われるため、証明書の移転を伴う二次流通以降の取引も全てブロックチェーンを利用したシステム内で行われます。ブロックチェーン上のトークンを用いて樽の保有証明を行うため、例えばメーカーから一次仲介業者、二次仲介業者などへの取引が行われるたびに、一定の金額を分配することも可能になります。

上記の通り、本発明は、樽単位で取引されるウイスキー等の酒樽の保存状態データの管理、および、所有証明の管理システムを提供します。

本発明では、ブロックチェーンを活用して樽の所有者情報を一部公開しているため、取引を行う相手が本当にその樽を所有しているか、その樽はどこの蒸留所で、いつ原酒が充填され、どんな環境で何年経過し、今の所有者にどのような経路でたどり着いたのか、といった情報を誰でも確認できるのです。

本発明のポイントを解説しますと、本発明は、ブロックチェーンを用いた樽単位酒の保存状態データ管理及び所有証明システムです。

本発明は、原酒を充填する樽を有し、また、樽に設置されるGPSセンサー及びIoTセンサーを有します。さらに、本発明は、システムを管理するサーバー及び処理プログラムを有します。

処理プログラムは、それぞれの樽に特有の樽番号に紐付けた蒸留所名、銘柄、原酒充填日を含む基本データをサーバーに記録します。

また、樽番号と紐付けたGPSセンサーが発信する位置情報、および、樽番号と紐付けたIoTセンサーが発信する原酒充填日からの時間経過、所定時間毎の温度や湿度を含んだ各樽の保存状態データを獲得してサーバーに記録します。

さらに、処理プログラムは、基本データ、位置情報、保存状態データを樽番号と紐付けてハッシュ化してパブリックなブロックチェーン上に記録するとともに、樽番号と紐付けた証明書トークンをブロックチェーン上に記録します。

本特許は、2社の共願で出願されたものです。

本発明を出願した1社目の「株式会社レシカ」は、ブロックチェーンを中心に最新テクノロジーをカバーし、NFT、分散型技術による産業のデジタルトランスフォーメーションに取り組んでいる会社です。

この会社のウェブサイトには、UniCask(ウイスキー樽のNFT販売)に関わる内容もあります。NFTを活用して、安全性を確保しつつ購入者のコミニティーを活発化させ、お酒の販売をデジタル技術によって革新した取り組みをしている会社です。

2社目の「株式会社ジャパンインポートシステム」は、酒類の輸入及び卸売業を事業内容としている会社です。

2社のノウハウを組み合わせ、ブロックチェーン等のデジタル技術によって酒類の樽販売の仕組みを革新的に進歩させたアイデアが、本特許発明に取り入れられています。

上述しましたように、本特許の発明は、ウイスキー樽のNFT販売システムを提供するために使用されると思われます。本特許の発明は、まさに、ウイスキー樽の取引を安全にかつ確実に実現するためのアイデアであると予想されます。

発明の名称

樽単位酒の保存状態データ管理及び所有証明システム

出願番号

特願2020-150959

特許番号

特許第6829927号

出願日

2020.09.09 (令和2年9月9日)

公開日

2021.02.18 (令和3年2月18日)特許公報

登録日

2021.01.27 (令和2年1月27日)

審査請求日

2020.09.14 (令和2年9月14日)早期審査請求

出願人

株式会社レシカ、株式会社ジャパンインポートシステム

発明者

戴有造、田中克彦

国際特許分類

G06Q 50/10
G06Q 10/08
G06Q 30/06

経過情報

出願の後すぐに早期審査請求を行い、拒絶理由通知を受けずに特許となりました。

<免責事由>
本解説は、主に発明の紹介を主たる目的とするもので、特許権の権利範囲(技術的範囲の解釈)に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解を示すものではありません。自社製品がこれらの技術的範囲に属するか否かについては、当社は一切の責任を負いません。技術的範囲の解釈に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解については、特許(知的財産)の専門家であるお近くの弁理士にご相談ください。