特許庁×ユニ・チャームのコラボ動画公開! 知財が生むイノベーションの秘密に迫る


はじめに

特許庁は、知的財産の重要性を広く周知するため、公式YouTubeチャンネル「JPOちゅーぶ」において、企業とのコラボレーション動画を公開しています。2025年3月12日、その最新作として、ユニ・チャーム株式会社とのコラボ動画が配信されました。

本動画では、ユニ・チャームの代表的な製品である「超立体」や「超快適」マスクの開発秘話と、それに関連する知的財産戦略について深く掘り下げています。知財がどのように企業の競争力を高め、持続的な成長を支えているのかを、ユニ・チャームの実例を通じて学ぶことができます。

本コラムでは、ユニ・チャームの知的財産戦略と、その背景にある技術開発の秘密について詳しく解説します。

ユニ・チャームの知財戦略とは?

ユニ・チャームは1961年の創業以来、衛生用品や生活用品の分野で革新的な製品を提供し続けてきました。同社の成功の裏には、積極的な知的財産戦略があります。

1 特許の活用

ユニ・チャームは、競争力のある製品を生み出すために、独自技術を積極的に特許出願し、知財で製品を保護しています。例えば、同社の「超立体マスク」は、従来の平面的なマスクと異なり、立体構造によって呼吸のしやすさを実現しました。この構造を他社が容易に模倣できないようにするため、関連特許を多数取得しています。

さらに、特許だけでなく、意匠権(デザイン)や商標権も活用しています。例えば、「超快適」というネーミングは、ユニ・チャームの商標として登録されており、類似する名称を他社が使用できないように保護されています。

2 知財戦略の効果

特許庁とユニ・チャームのコラボ動画では、同社の知的財産部門の担当者が登場し、特許戦略の重要性について解説しています。ユニ・チャームでは、新製品開発の際に、研究開発部門と知的財産部門が密接に連携し、開発段階から知財戦略を考慮する体制を整えています。

こうした取り組みの結果、同社は他社との差別化を図ることができ、市場での優位性を確立しました。また、知財を活用することで、ライセンス収益の創出や、他社との技術提携にもつなげています。

「超立体」マスクの開発秘話

動画では、「超立体」マスクがどのようにして誕生したのか、その開発ストーリーが紹介されています。

1 開発の背景

従来のマスクは、平面形状が一般的でした。しかし、平面マスクでは、顔に密着しにくく、隙間が生じることでフィルター性能が十分に発揮されないという課題がありました。また、長時間着用すると耳が痛くなりやすいという問題もありました。

こうした課題を解決するため、ユニ・チャームの開発チームは、新しいマスクの形状を模索しました。試行錯誤の末、口元に空間を作る「超立体」構造を開発し、快適な装着感と高いフィット感を両立させることに成功しました。

2 特許による保護

「超立体」マスクの立体構造は、他社が簡単に模倣できないよう、複数の特許で保護されています。たとえば、以下のような技術が特許として登録されています。

  • 立体構造による呼吸のしやすさを確保する技術
  • 耳が痛くなりにくいゴムひもの設計
  • フィルター性能を維持しながら通気性を向上させる技術

これらの特許により、ユニ・チャームは競合他社との差別化を図ると同時に、長期的なブランド価値の向上にも成功しました。

知的財産の重要性

ユニ・チャームの事例からもわかるように、知的財産は企業の成長において極めて重要な役割を果たします。

1 企業の競争力を高める

知的財産を適切に管理することで、企業は自社の技術やブランドを守ることができます。特許を取得することで、他社の模倣を防ぎ、独自の技術を武器に市場での競争力を高めることが可能になります。

2 知財を活用したビジネスモデル

近年、多くの企業が知財を活用したビジネスモデルを構築しています。たとえば、ユニ・チャームのように、自社の技術を特許で保護するだけでなく、ライセンス契約を通じて他社に技術を提供するケースもあります。これにより、新たな収益源を確保し、企業全体の成長を促進することができます。

まとめ

今回の特許庁とユニ・チャームのコラボ動画では、ユニ・チャームの製品開発の裏側や知的財産戦略について詳しく紹介されています。

「超立体」や「超快適」マスクは、単なる日用品ではなく、知的財産を活用した戦略的な製品です。特許や商標をうまく活用することで、競争力を維持しながら、市場での優位性を確立しています。

この動画を通じて、知的財産の重要性がより多くの人々に伝わることが期待されます。知財に興味のある方や、製品開発に携わる方は、ぜひ特許庁の公式YouTubeチャンネル「JPOちゅーぶ」で動画をチェックしてみてください。

知財の力を活かし、企業の成長につなげるためのヒントが、ここに詰まっています。


Latest Posts 新着記事

AI×半導体の知財戦略を加速 アリババが築く世界規模の特許ポートフォリオ

かつてアリババといえば、EC・物流・決済システムを中心とした巨大インターネット企業というイメージが強かった。しかし近年のアリババは、AI・クラウド・半導体・ロボティクスまで領域を拡大し、技術企業としての輪郭を大きく変えつつある。その象徴が、世界最高峰AI学会での論文数と、半導体を含むハードウェア領域の特許出願である。アリババ・ダモアカデミー(Alibaba DAMO Academy)が毎年100本...

翻訳プロセス自体を発明に──Play「XMAT®」の特許が意味する産業インパクト

近年、生成AIの普及によって翻訳の世界は劇的な変化を迎えている。とりわけ、専門文書や産業領域では、単なる機械翻訳ではなく「人間の判断」と「AIの高速処理」を組み合わせた“ハイブリッド翻訳”が注目を集めている。そうした潮流の中で、Play株式会社が開発したAI翻訳ソリューション 「XMAT®(トランスマット)」 が、日本国内で翻訳支援技術として特許を取得した。この特許は、AIを活用して翻訳作業を効率...

特許技術が支える次世代EdTech──未来教育が開発した「AIVICE」の真価

学習の個別最適化は、教育界で長年議論され続けてきたテーマである。生徒一人ひとりに違う教材を提示し、理解度に合わせて学習ルートを変化させ、弱点に寄り添いながら伸ばしていく理想の学習プロセス。しかし、従来の教育現場では、教師の業務負担や教材制作の限界から、それを十分に実現することは難しかった。 この課題に真正面から挑んだのが 未来教育株式会社 だ。同社は独自の AI学習最適化技術 で特許を取得し、その...

抗体医薬×特許の価値を示した免疫生物研究所の株価急伸

東京証券取引所グロース市場に上場する 免疫生物研究所(Immuno-Biological Laboratories:IBL) の株価が連日でストップ高となり、市場の大きな注目を集めている。背景にあるのは、同社が保有する 抗HIV抗体に関する特許 をはじめとしたバイオ医薬分野の独自技術が、国内外で新たな価値を持ち始めているためだ。 バイオ・創薬企業にとって、研究成果そのものだけでなく 知財ポートフォ...

農業自動化のラストピース──トクイテンの青果物収穫技術が特許認定

農業分野では近年、深刻な人手不足と高齢化により「収穫作業の自動化」が急務となっている。特に、いちご・トマト・ブルーベリー・柑橘など、表皮が繊細な青果物は人の手で丁寧に扱う必要があり、ロボットによる自動収穫は難易度が極めて高かった。そうした課題に挑む中で、株式会社トクイテンが開発した “青果物を傷付けにくい収穫装置” が特許を取得し、農業DX領域で大きな注目を集めている。 今回の特許は単なる「収穫機...

<社説>地域ブランドの危機と希望――GI制度を攻めの武器に

国が地理的表示(GI:Geographical Indication)保護制度をスタートしてから10年が経つ。ワインやチーズなど農産物を地域の名前とともに保護する仕組みは、欧米では産地価値を国境を越えて守る知財戦略としてすでに大きな成果を上げてきた。一方、日本でのGI制度は、導入から10年が経った今ようやくその重要性が幅広く認識される段階に差し掛かったと言える。 農林水産省によれば、2024年時点...

保育データの構造化とAI分析を特許化 ルクミー「すくすくレポート」技術の本質

保育業界におけるDXが本格的に進む中、ユニファ株式会社が展開する「ルクミー」は、写真・動画販売や登降園管理、午睡チェックシステムなどを通じて保育の可視化と効率化を支えてきた。その同社が開発した 保育AI™「すくすくレポート」 が特許を取得したことは、保育現場のデジタル化における大きな節目となった。 「すくすくレポート」は、子どもの日々の成長・発達をAIが分析し、保育士の観察記録を補助...

JIG-SAW、動物行動AIの“核技術”を米国で特許化 世界標準を狙う布石に

IoTプラットフォーム事業を展開する JIG-SAW株式会社 が、米国特許商標庁(USPTO)より「AI算出によるベクトルデータをベースとしたアルゴリズム・システム」に関する特許査定を受領した。対象となるのは 動物行動解析分野—つまり動物の動き・姿勢・行動をAIで読み取り、ベクトルデータとして構造化し、行動傾向や異常を自動判定するための技術だ。 近年、ペットヘルスケア、畜産、動物実験、野生動物の行...

View more


Summary サマリー

View more

Ranking
Report
ランキングレポート

海外発 知財活用収益ランキング

冒頭の抜粋文章がここに2〜3行程度でここにはいります鶏卵産業用機械を製造する共和機械株式会社は、1959年に日本初の自動洗卵機を開発した会社です。国内外の顧客に向き合い、技術革新を重ね、現在では21か国でその技術が活用されていますり立ちと成功の秘訣を伺いました...

View more



タグ

Popular
Posts
人気記事


Glossary 用語集

一覧を見る