エシカル・スピリッツ、の世界初となる “木の酒” に挑戦~特許ライセンス契約済で生産販売に向けて蒸留所建設


「循環経済を実現する蒸留プラットフォーム」を目指し、廃棄素材を使用したスピリッツの生産や、再生型蒸留所を運営する蒸留ベンチャーのエシカル・スピリッツ株式会社(本社:東京都台東区 代表:山本祐也)は、世界初※1となる “木の酒” の生産販売に挑戦するプロジェクト「WoodSpirits(ウッドスピリッツ)」の商品を主に製造する新たな蒸留所(以下 新蒸留所)を茨城県つくば市にて建設することを、23年9月19日プレスリリースで公表した。

同社は「WoodSpirits」生産に向けて新蒸留所の建設を遂行すると同時に、“木の酒” の味わいや嗜好性を高めるべく、レシピの研究開発を行うフェーズに入る。「WoodSpirits」は、日本の蒸留ベンチャーである「エシカル・スピリッツ」 、Bar BenFiddichのオーナー 鹿山博康氏によって共同で立ち上げ、国立研究開発法人森林研究・整備機構・整備機構 森林総合研究所と共同研究契約、特許実施許諾契約(特許ライセンス契約)を締結し、世界初※1の “木の酒” を民間事業者として製品化及び販売するプロジェクトだとしている。※1:森林総合研究所が開発した木材中の繊維を糖化・発酵する技術を活用し、民間事業者が商品化する「木の酒」として世界初。

「WoodSpirits」の “木の酒” とは、【木を粉砕し、そのまま発酵・蒸留し作り出したまったく新しいお酒】。これまで、木の樽で熟成したお酒や、木のオイルを注入したお酒が “木の酒” と呼ばれることはあったが、国立研究開発法人森林研究・整備機構 森林総合研究所(以下、森林総合研究所)が開発した特殊なミキサーで木材を天然水とともに微粉砕、ピーナッツクリーム状(スラリー)にすることで、酵母が木材を分解、発酵できる状態にする「湿式ミリング処理」と呼ばれる技術を活用し、木材を粉砕し、木そのものを発酵・蒸留させることで、新たなお酒を製造するとしている。

森林研究では22年7月時点で、スギ、シラカバ、サクラ(ソメイヨシノ、ヤマザクラ)、ミズナラ、クロモジの6樹種を原料に「木の酒」の試験製造を行っている。スギは樽酒を思わせる香り、シラカバは白ワインのようなフルーティーな香り、ソメイヨシノやヤマザクラは桜餅を連想させる華やかな香り、ミズナラはウイスキーを感じさせる芳醇な香り、クロモジは柑橘系の爽やかな香りと樹種ごとに異なる風味が醸し出されることが明らかとなっている。日本には1,200種類もの樹種が存在すると言われているため、将来的には様々な樹種から様々な風味のお酒が造られることが期待される。

また、木の酒の魅力の一つとして、原料となった木が育った地域のストーリーを合わせられることが挙げられるが、原料となった木が育った気候や山、その山から湧き出す湧水を仕込み水として使用するといったストーリーを合わせることで、その地域特有の木の酒を山村地域ごとに製造することが可能でそのポテンシャルが注目されている。

木を原料とする飲用のアルコール製造に関する特許概要

【発明の名称】樹木材料のリグノセルロースを原料としたアルコール飲料及びその製造方法
【出願番号】特願2018-40586(P2018-40586)
【出願日】平成30年3月7日(2018.3.7)
【出願人】 【氏名又は名称】国立研究開発法人森林研究・整備機構
【発明者】 【氏名】大塚祐一郎、野尻昌信、橋田光、楠本倫久、大平辰朗


Latest Posts 新着記事

連邦政府が大学の特許収入を狙う トランプ政権の新方針が波紋

はじめに 米国の大学は、研究開発活動を通じて得られる特許収入を重要な財源としてきました。大学の特許収入は、新しい技術の商業化やスタートアップ企業の設立に活用され、イノベーションの促進に直結しています。しかし、トランプ政権下で、連邦政府が大学の特許収入の一部を請求する方針が検討されており、大学の研究活動やベンチャー企業の育成に対する影響が懸念されています。 特に米国は、大学発ベンチャーの育成や産学連...

脱石炭から技術輸出へ:中国が描くクリーンエネルギーの未来

21世紀に入り、世界各国が環境問題やエネルギー安全保障への対応を迫られるなか、中国はクリーンエネルギー分野で急速に存在感を高めてきた。とりわけ再生可能エネルギー技術、電気自動車(EV)、蓄電池、送配電網、そしてグリーン水素などの分野において、中国は「追随者」から「先行するイノベーター」へと変貌を遂げつつある。なぜ中国が短期間でこのような飛躍を実現できたのか。その背景には、国家戦略、産業政策、市場規...

世界のAI特許6割を握る中国 5G・クラウドを基盤に国際競争を主導

近年、中国はデジタル経済の拡大と技術革新を国家戦略の中核に据え、AIや5G、クラウド、データセンターといった基盤技術において世界を牽引する存在となっている。その象徴的な事実として注目されるのが、人工知能(AI)に関する特許出願件数である。国際特許機関の最新統計によれば、中国からのAI関連特許は世界全体の約6割を占め、米国や欧州、日本を大きく上回る圧倒的なシェアを記録している。 本稿では、中国がいか...

AgeTech知財基盤を強化――パテントアンブレラ(TM)が累計41件出願、AI特許も追加

高齢社会の進展に伴い、健康維持、生活支援、介護軽減を目的としたテクノロジー領域「AgeTech(エイジテック)」への注目がかつてないほど高まっている。その中で、知的財産を軸に事業競争力を高める取り組みが活発化しており、今回、独自の「パテントアンブレラ(TM)」戦略を進める企業が、AI関連特許を含む29件の新規出願を追加し、累計41件の特許出願を完了したと発表した。これにより、類型141件の機能をカ...

フォシーガGE、特許の壁を突破 沢井・T’sファーマの挑戦

2025年9月、日本の医薬品市場において大きな話題を呼んでいるのが、SGLT2阻害薬「フォシーガ(一般名:ダパグリフロジン)」の後発医薬品(GE、ジェネリック)の登場である。糖尿病治療薬の中でも売上規模が大きく、近年では慢性腎臓病や心不全の領域にも適応拡大が進んだフォシーガは、アストラゼネカの主力製品のひとつである。その特許の“牙城”を突破し、ジェネリック医薬品の承認を獲得したのが沢井製薬とT&#...

電池特許はCATLだけじゃない――AI冷却から宇宙利用まで、注目5大トピック

近年、知的財産の世界では、特定の企業やテーマに関心が集中しやすい傾向がある。中国・CATLの電池特許戦略や、AIをいかに効率的に冷却するかといったテーマは、テクノロジー産業の今を象徴するキーワードだ。しかし同時に、その裏側には見落とされがちな知財動向や、将来を左右しかねない新しい潮流が潜んでいる。本稿では、「電池特許CATL以外にも」「特集AIを冷やせ」を含め、いま注目すべき5本のトピックを整理し...

バックオフィス改革へ ミライAI、電話取次自動化で特許取得

AI技術の進化が加速するなか、企業のバックオフィスや顧客対応の現場では「省人化」「自動化」をキーワードとした取り組みが急速に広がっている。その中で、AIソリューションを展開するミライAI株式会社は、従来の電話取次業務を人手に頼ることなく「完全無人化」するための技術を開発し、特許を取得したと発表した。この技術は、音声認識・自然言語処理・対話制御を組み合わせ、従来課題とされてきた「誤認識」「取次精度の...

技術から収益化へ――河西長官が訴える“知財活用”の新ステージ

特許庁の河西長官は、来る9月10日に開幕する「知財・情報&コンファレンス」を前に記者団の取材に応じ、日本経済の競争力強化における知的財産の役割を改めて強調した。長官は「日本は技術とアイデアを数多く持ちながら、それを十分に事業化や収益化につなげきれていない。知財で稼ぐ政策を実現することが不可欠だ」と語り、特許庁としても産業界と連携し、知財活用の裾野を広げる方針を示した。 ■ 知財立国から「稼ぐ知財立...

View more


Summary サマリー

View more

Ranking
Report
ランキングレポート

海外発 知財活用収益ランキング

冒頭の抜粋文章がここに2〜3行程度でここにはいります鶏卵産業用機械を製造する共和機械株式会社は、1959年に日本初の自動洗卵機を開発した会社です。国内外の顧客に向き合い、技術革新を重ね、現在では21か国でその技術が活用されていますり立ちと成功の秘訣を伺いました...

View more



タグ

Popular
Posts
人気記事


Glossary 用語集

一覧を見る