サムスンとBOE、特許争い継続中


OLEDの特許を巡る韓国のサムスンと中国のBOE(京東方科技集団)の争いが熱を帯びてきた。この紛争の影響で、他のディスプレイ製造業者が利益を享受するのか、業界関係者の間で議論が広がっている。

サムスンディスプレイは最近の四半期決算発表で、自社の知的財産の侵害行為に対して多様な対策を実施することを明言。この動きは、米国や中国での特許訴訟だけでなく、BOEに対するさまざまな取引上の措置を伴うものと予測されている。

この問題は、米国のスマートフォン修理業者がサムスン正規のOLEDパネルの代わりに、BOE製の非正規パネルを利用したことから発端を迎えた。これを受けて、サムスンはBOEだけでなく、一部の流通企業に対しても特許侵害訴訟を提起。

BOEも対応を遅らせず、中国でサムスンに対して反訴。その中で、サムスンが自社の特許を侵害して利益を得ていると主張している。

米国テキサス州の裁判所でも、サムスンはBOEを相手に特許訴訟を提起。BOEがアイフォンの新しいモデルで使用しているOLED特許を侵害しているとの主張を行っている。特に、サムスンが「ダイヤモンドピクセル」という高解像度技術に関しても侵害があったとしている。

業界の専門家は、「特許訴訟は技術の進歩や特許回避のための設計変更を生む場合が多い。中国での裁判の結果はまだ読めない」との見解を示している。

一部の業界関係者は、サムスンがBOEとの取引を縮小することで、他のディスプレイ供給業者にシフトする可能性があると指摘。具体的には、韓国、日本、台湾のディスプレイ製造業者が新たな取引先として浮上するとの見方が強まっている。

また、サムスンとLGディスプレイの関係も注目されている。今年、サムスンはLGディスプレイから大型OLEDパネルの供給を受け始めており、今後も協業の拡大が予測されている。

しかし、ある業界関係者は、「LGディスプレイは生産量を調整しており、全ての需要をカバーするのは困難。サムスンが多様な供給元を求める中、日本のシャープや台湾のディスプレイメーカーも新たな選択肢として位置づけられるだろう」と述べている。

この特許争いは、大手企業間の競争だけでなく、その影響下にある業界全体に影響を及ぼすことが予測される。今後の展開に注目が集まっている。


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