現地時間の2023年4月24日、アメリカの最高裁判所がAIが生成した発明の特許出願をアメリカ合衆国特許商標庁が拒否したことに対する異議申し立ての審理を棄却した。最高裁判所は特許は人間の発明者にのみ発行でき、AIが自動生成した場合、AIは特許申請時の発明者として認められないとの判断を下したと4月25日GigaziNEが伝えている。
コンピューター科学者のスティーブン・セイラー氏は、DABUSと呼ばれる独自のAIシステムを利用し、「形状が変形する食品容器」と「非常用懐中電灯」のプロトタイプを生成した。その後セイラー氏は2019年にDABUSを発明者としてこれらの発明の特許出願申請を行った。
しかし2020年4月にアメリカ合衆国特許商標庁とバージニア州の連邦裁判所の両方が、「アメリカの特許法では、発明者は人間でなければならない」と判断し、セイラー氏の発明に対する特許出願を却下した。
この発表を不服に思ったセイラー氏は、アメリカとオーストラリアで「AIを発明者として認めるか否か」に関する訴訟を展開。しかし、特許などを専門とする合衆国連邦巡回区控訴裁判所は、特許商標庁と連邦裁判所の判断を支持する一審判決を下している。
これらの下級裁判所の判断を不服としてセイラー氏は最高裁判所に対して控訴を行っている。セイラー氏の支持者には、ハーバード大学法学部のローレンス・レッシグ氏をはじめとする学者が含まれ、連邦巡回区控訴裁判所の判決に対して「この判断は現在および将来の投資で数十億ドル(約1300億円)以上を危険にさらすだけでなく、アメリカの競争力を脅かし、特許法の明確な文章と矛盾する結果に至ります」と主張している。
またセイラー氏は、AIは医療からエネルギーに至るまでのさまざまなイノベーションに利用されており、AIによって生成された発明の特許を却下することはイノベーションと技術進歩を促進する特許制度の能力を低下させることにつながると主張している。
しかし最高裁判所は、2023年4月24日に下級裁判所の判決に対するセイラー氏の控訴を棄却した。最高裁判所は「特許は人間の発明者にのみ発行が可能で、セイラー氏のAIシステム『DABUS』は、今回の2つの発明の法的な発明者とは見なされません」と判断した。
セイラー氏は、イギリスや南アフリカ、オーストラリア、サウジアラビアなどの国々でも同様に特許申請を行ったが、認められた例は南アフリカの一例だけ。イギリスでは2023年3月から最高裁判所において、AIが生成した発明であっても特許を取得する権利があると判断するための審理が行われている。
なお、セイラー氏は「Creativity Machine」と名付けられたアルゴリズムが生成した絵画に著作権を認めるよう申請を行っており、2022年12月に「人間の著作権の要素がない」として著作権当局や裁判所によってセイラー氏の訴えは却下されている。
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