未来、始動。— 大阪万博で輝く日本の特許たち —


大阪・関西万博と輝く日本の特許

2025年4月、大阪・夢洲を舞台に「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマとした大阪・関西万博が華々しく開催されました。55年ぶりに日本で開かれる国際博覧会であり、1970年の大阪万博以来となるこのビッグイベントは、日本のみならず世界中の英知と創造性を結集し、次世代の暮らしや社会の在り方を体験できる場として注目を集めています。会期は2025年4月13日から10月13日までの半年間、150を超える国と地域、そして企業・団体が参加し、最新の技術と文化が交差する未来都市が一時的に現出します。

詳しくは、大阪・関西万博の公式ウェブサイト(https://www.expo2025.or.jp/)をご覧ください。

この万博の最大の魅力は、単なる展示ではなく、「体験」そのものにあります。来場者は、未来の医療やモビリティ、教育、エネルギー、都市設計といった幅広い領域で、現実に起こりつつある技術革新を五感で味わうことができます。そしてその体験の裏側では、日本企業の技術力が惜しみなく注がれており、その多くは「特許」という形で技術的な独自性と価値を世界に提示しています。

そこで今回の特許マガジンでは、大阪・関西万博の現場で実際に使われている、あるいは注目されている最新の日本発特許技術に焦点を当て、その仕組みと未来社会における可能性を解説していきます。

たとえば、ソニー・インタラクティブエンタテインメントが開発した触覚提示システムは、仮想空間と現実を繋ぐ次世代インターフェース技術です。バットのような身近な実物体に装着することで、振動を通じたリアルな触覚フィードバックを実現し、ガンダムパビリオンでは臨場感あふれるVR体験として採用されています。

富士フイルムが開発した構造色インクジェット技術は、顔料や染料を使わずに光の干渉によって鮮やかな色を再現する革新的技術です。これにより、持続可能で重厚感ある印刷表現が実現され、万博のパビリオンを彩る展示物やグラフィックにも採用されています。

Optmass社による赤外線吸収フィルム技術は、透明性を損なわずに赤外線のみを効率的に吸収することで、太陽光発電と建築美観の両立を可能にします。窓ガラスに貼るだけでエネルギー効率を高められるこの技術は、未来のスマートシティに欠かせない要素として脚光を浴びています。

これらの技術はいずれも、単に「新しい」だけでなく、「持続可能性」「没入感」「社会実装性」といった、現代社会が求める多様な価値観に応える力を持っています。そしてその背景には、綿密な研究開発と、それを支える知的財産戦略、すなわち特許の存在があります。

本誌では、読者の皆様にこうした特許技術の魅力をわかりやすく伝えると同時に、「特許とは何か」「なぜ重要なのか」という根本的な問いにも立ち返りながら、未来社会の構築に特許がどのように関与しているのかを紐解いていきます。

大阪・関西万博という「未来のショーケース」の舞台裏に隠された、知られざる技術の物語。さあ、この雑誌を通して、未来を支える特許の世界を一緒にのぞいてみませんか?


【ソニー】触覚を拓き、現実を超える。

私たちは、日々の生活の中で、様々な物体に触れ、その質感や温度、硬さなどを感じています。触覚は、私たちが世界を認識し、豊かな体験を得る上で、非常に重要な役割を果たしています。

近年、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)といった技術が発展する中で、触覚をデジタルに再現し、提示する技術が注目されています。2025年に開催される大阪・関西万博では、ソニーの触覚提示技術がガンダムパビリオンの床面に採用され、映像と連動した触覚体験を提供する試みがなされています。これは、触覚技術がエンターテイメント分野でますます注目されていることを示しています。

触覚技術を用いることで、私たちは、仮想空間内の物体に触れたり、遠隔地にいる人と握手したりといった体験を、現実世界と変わらない感覚で得ることができるようになるかもしれません。また、リハビリテーションや技能伝承など、様々な分野での応用も期待されています。

本稿では、ソニーインタラクティブエンタテインメント株式会社による特許公開公報「触覚表現用振動制御システム、触覚表現用振動発生装置、触覚表現用振動制御装置、および触覚表現用振動制御方法」に焦点を当て、その革新的な技術と、私たちの未来にもたらす可能性について解説します。


近年、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)、複合現実(MR)といった技術が発展し、五感を活用した豊かなコンテンツ体験が求められています。特に、触覚は、映像や音声と並び、没入感を高める重要な要素です。

2025年に開催される大阪・関西万博では、ソニーの触覚提示技術がガンダムパビリオンの床面に採用され、映像と連動した触覚体験を提供する試みがなされています。これは、触覚技術がエンターテイメント分野でますます注目されていることを示しています。

本稿では、触覚提示技術の一つとして、ソニーインタラクティブエンタテインメント株式会社による特許公報 「触覚表現用振動制御システム、触覚表現用振動発生装置、触覚表現用振動制御装置、および触覚表現用振動制御方法」に焦点を当て、その詳細な内容を解説します。この発明は、実物体に振動を付与することで触覚表現を可能にするもので、万博のパビリオンにおける体験をさらに進化させる可能性を秘めています。

1.背景と課題

背景技術

近年、触覚や力覚を利用した情報提示を行うハプティックデバイスが、様々な分野で開発されています。ハプティックデバイスは、ユーザに触覚的なフィードバックを与えることで、よりリアルで臨場感のある体験を提供することを目的としています。

ハプティックデバイスの具体例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • ゲームコントローラ:ゲームのシーンに合わせて振動を発生させることで、プレイヤーの手に振動を伝え、ゲーム内の状況をよりリアルに感じさせます。例えば、レースゲームで路面の凹凸を感じたり、格闘ゲームで攻撃を受けた際の衝撃を感じたりすることができます。
  • グローブ型のデバイス:仮想現実(VR)環境において、ユーザが仮想オブジェクトに触れた際の感触を再現します。これにより、ユーザは、あたかも実際に物を触っているかのような感覚を得ることができます。

これらのハプティックデバイスは、エンターテイメント分野だけでなく、医療、教育、訓練など、幅広い分野での応用が期待されています。

従来技術における課題

しかし、従来のハプティックデバイスには、以下のような課題が指摘されていました。

  • ゲームコントローラの課題:
    コントローラによる詳細な操作と触覚的な情報の両立が可能な点は利点ですが、仮想世界のアイテムとコントローラの形状に大きな差があると、体験の臨場感が損なわれるという課題があります。例えば、剣を模したコントローラで触覚フィードバックを得る場合、実際の剣の形状や重さとコントローラの形状や重さが異なると、没入感が低下する可能性があります。また、仮想世界のアイテムごとに専用のコントローラを製造すれば、よりリアルな体験を提供できますが、製造コストや保管コストが増大するという問題があります
  • グローブ型のデバイスの課題:
    グローブ型のデバイスは、より高度な触覚表現が可能ですが、デバイスの構造が複雑になるため、制御が難しいという課題があります。また、グローブ型のデバイスは、一般的に高価であり、導入コストが高いという問題もあります。

どんな発明?

2−1.発明の目的

本発明は、前述の課題を解決し、触覚を利用した臨場感のあるコンテンツ表現を、低いコストで容易に実現できる技術を提供することを目的としています。具体的には、実物体に取り付けた振動発生装置と振動制御装置を用いて、実物体の材質や形状、振動発生装置の取り付け位置などに応じて最適な触覚表現を実現する技術を提供します。

2−2.発明の詳細

本発明の詳細を、一部図面を参照しながら深堀りしていきます。

図1:使用環境の一例

この発明は、触覚を利用したコンテンツ表現を実現するためのシステム、装置、および方法に関するものです. 具体的には、実物体に振動を付与することで、ユーザに触覚的な情報を提供する技術です。

図1は、この発明の振動制御システムの使用環境の一例を示しています. ユーザ8は、バット4などの実物体を操作して、ディスプレイ16に表示された仮想空間内のオブジェクトとインタラクションを行います。このとき、バット4に取り付けられた振動発生装置10が、仮想空間内のイベント(例えば、ボールを打つ瞬間)に合わせて振動を発生させることで、ユーザ8はリアルな触覚フィードバックを得ることができます。

図2:振動制御システム1の構成例

図2は、この発明の振動制御システム1の構成例を示しています. 

  • 振動発生装置10: 実物体6に取り付けられ、振動を発生させる装置。偏心モータ、リニア共振アクチュエータ、ピエゾなどの既存のデバイスを使用できます。
  • 振動制御装置20: 振動発生装置10が発生させた振動を制御する装置。
  • 振動検出部22: 実物体6を伝搬した振動を検出します。
  • 制御部24: 検出された振動の強さやタイミングに基づき、振動発生装置10の振動パラメータを調整します。
  • 補助情報取得装置30: 実物体6に関する情報(形状、材質など)や、振動発生装置10と振動制御装置20の位置関係などの補助情報を取得する装置。カメラ、ディスプレイ、入力装置などを用いて情報を取得できます。

振動制御の原理

  • 制御部24は、振動検出部22で検出された振動の強さと、振動発生装置10から振動検出部22まで振動が伝搬するのに要した時間に基づき、実物体6の材質や、振動発生装置10と振動制御装置20の間の距離を推定します。
  • 振動の減衰率は、実物体6の材質と、振動発生装置10から振動制御装置20までの距離によって変化します。
  • 振動の伝搬速度は、実物体6の材質によって変化します。
  • これらの関係を利用して、制御部24は、実物体6の材質や距離などの情報を取得し、最適な触覚フィードバックを提供できるように、振動パラメータ(振動の強さなど)を調整します。

振動制御の手順

図3:振動制御の手順を示すフローチャート

振動発生装置10は、振動発生の待機を開始します (S10)。

振動制御装置20は、振動発生装置10に振動発生の開始を要求します (S12)。

補助情報取得装置30は、補助情報を取得し、振動制御装置20に送信します (S14)。

振動発生装置10は、振動発生を開始します (S16)。

振動制御装置20は、振動を検出し、そのタイミングと強さを取得します (S18)。

振動の強さが最適でない場合 (S20のN)、振動制御装置20は、振動の伝搬時間や減衰率などから、実物体の材質や距離などの情報を推定し、振動パラメータの調整量を決定します (S22)。

振動制御装置20は、調整量を振動発生装置10に送信し、振動発生装置10は振動パラメータを調整して振動を発生させます (S24)。

ステップを繰り返し、最適な振動が得られるまで調整を行います (S20のY)。

補助情報取得装置

補助情報取得装置30は、振動制御を効率的に行うための補助情報を取得します。

一例として、カメラ12で実物体6の画像を撮影し、形状、大きさ、材質などの情報を取得します。

ディスプレイと入力装置

ユーザに入力を促し、実物体6に関する情報(名称、材質、形状など)を取得します。

応用例

この発明は、ゲームコントローラ、玩具、コンテンツ処理装置など、様々な装置やシステムに応用できます。例えば、VR/ARコンテンツにおいて、ユーザが仮想オブジェクトに触れた際のリアルな触感を再現するために使用できます。

発明が奏する効果

この発明により、実物体の形状、大きさ、材質などによらず、最適な触覚フィードバックを提供することが可能になり、より臨場感のあるコンテンツ体験を実現できます。また、特別な形状のコントローラなどを開発する必要がなく、汎用的な実物体を利用できるため、コストを抑制できる可能性があります。

3.ここがポイント!

この発明のポイントは、以下の2点に集約できます。

  1. 実物体への装着型触覚提示:汎用的な実物体に振動発生装置を取り付け、その振動を制御することで、様々な物体の触感を再現すること。これにより、専用の触覚デバイスが不要となり、コストを抑えつつ、多様なコンテンツへの応用が可能になる。
  2. 振動情報のセンシングと制御:振動の伝搬特性(強さ、タイミング)をセンシングすることで、実物体の材質や形状、振動装置の装着状態を推定し、最適な振動パラメータを自動的に調整すること。これにより、個々の実物体に合わせたリアルな触感提示を実現できる。

4.未来予想

この発明が広く実用化された場合、私たちの生活や産業に大きな変化をもたらす可能性があります。以下に、いくつかの未来予想を提示します。

  1. エンターテイメントの進化

仮想現実(VR)や拡張現実(AR)において、触覚がよりリアルに再現され、ゲームやシミュレーションの没入感が飛躍的に向上します。例えば、VRで剣を握ったときの重みや質感を、現実世界と遜色なく感じられるようになるかもしれません。例えば、触覚フィードバックを取り入れたインタラクティブアート作品が生まれ、鑑賞者は作品に触れたり、影響を与えたりすることで、より深い感動を得られるようになるでしょう。

  1. コミュニケーションの変革

遠隔地にいる人と握手したり、ハグしたりする感覚を共有することで、新たなコミュニケーション手段が生まれるかもしれません。また、テキストや音声だけでなく、触覚を通じて感情を伝える技術が開発され、より豊かなコミュニケーションが可能になるかもしれません。

  1. 産業への応用

触覚フィードバックを備えた遠隔操作ロボットが、建設現場や災害現場などで活躍し、作業者はあたかも現場にいるかのような感覚で精密な作業を行えるようになる可能性があります。また、熟練技能者の触覚的な技能を記録・再生することで、技能伝承を効率化したり、訓練を高度化したりすることが可能になるかもしれません。

  1. 福祉・医療分野への貢献

触覚フィードバックを活用したリハビリテーションシステムが開発され、患者は楽しみながら効果的な訓練を行えるようになります。医療支援としても、触覚を通じて患者の状態を把握したり、手術をサポートする技術が開発され、医療の質の向上に貢献するかもしれません。

これらの未来は、決してSFの世界の話ではありません。この発明が実用化され、さらに発展していくことで、私たちの生活はより豊かで、より人間らしいものへと変わっていくでしょう。

権利概要

発明の名称触覚表現用振動制御システム、触覚表現用振動発生装置、触覚表現用振動制御装置、および触覚表現用振動制御方法
出願番号PCT/JP2018/029270
出願日2018年8月3日
公開番号WO2020/026443
公開日2020年2月6日
出願人株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント
発明者中田 征志
国際特許分類(IPC) A63F 13/285 (2014.01)
A63F 13/213 (2014.01)
A63F 13/655 (2014.01)
G06F 3/01 (2006.01)
経過情報当該出願は日本での審査請求がされておらず、取下擬制となっている。

【富士フィルム】質感まで刷り込む。インクジェットの新たな次元。

インクジェット技術は、その多様性と柔軟性から、印刷業界に革命をもたらしました。しかし、常に求められるのは、より高い表現力と生産性です。特に、商業印刷や産業印刷の分野では、写真やイラストの質感、光沢、そして耐久性が、製品の価値を大きく左右します。

従来のインクジェットインクは、主に顔料や染料を用いて色を表現してきましたが、これには限界がありました。高速印刷時には、インクの定着不良や滲みが発生しやすく、重厚感のある表現や特殊な質感の再現は困難だったのです。

今回、富士フイルム株式会社が開発した新たなインクセットは、この課題に革新的なアプローチで挑みます。その鍵となるのは、「インジウム」という金属粒子です。このインクセットは、重合性化合物とインジウムを含む金属粒子を組み合わせることで、従来のインクジェットインクとは一線を画す、新たな表現力を実現します。

この技術は、2025年大阪・関西万博のパビリオンにおいて、富士フイルムが提供する構造色インクジェット技術と共通する部分があります。すなわち、顔料や染料を用いずに、光の反射を利用して色を表現するという点です。万博のパビリオンでは、この技術が外装に使用され、来場者に鮮やかな色彩と革新的な視覚体験が提供される見込みです。


デジタル印刷技術は、その高い自由度と生産性から、商業印刷、産業印刷、さらにはディスプレイや建築材料など、幅広い分野での応用が拡大しています。特に、インクジェット技術は、非接触方式による画像形成が可能であり、多様な被印刷体への適用が期待されています。

しかしながら、従来のインクジェット技術では、高速印刷時に画像の品位が低下するという課題がありました。これは、インクの吐出安定性や定着性の問題に起因するものであり、高品位な画像記録を実現するためには、新たなインク材料と画像形成プロセスの開発が不可欠です。

富士フイルムでは、特定の重合性化合物とインジウムを含む金属粒子を含有する新規インクセットに着目し、その特性と画像記録への応用可能性が検討されています。このインクセットは、顔料や染料を使用せずに、金属粒子の光反射を利用して色を表現することを特徴としており、高速印刷時においても視覚的に重厚感のある高品位な画像記録を可能にします。

この顔料・染料不使用という特徴は、2025年大阪・関西万博のパビリオンにおいて、富士フイルムが提供する構造色インクジェット技術と共通するものです。同技術は、光の反射を利用して鮮やかな色彩を表現し、持続可能性に貢献する技術として注目を集めています。今回紹介するインクセットも、同様の原理に基づいている可能性があり、環境負荷低減に貢献する次世代の画像記録技術として期待されます。

1.背景と課題

背景技術

近年、重合性化合物を含有する活性エネルギー線硬化型インクを用いて画像を記録する方法が検討されています。従来の技術として、例えば、セイコーエプソン社による特許公開公報2013-230637号(https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2013-230637/11/ja)には、紫外線の照射により重合する第1の重合性化合物を含む第1のインクを、インクジェット法により少なくとも表面が非吸液性の材料で構成された基材の表面に付与する工程と、第1の重合性化合物を重合・硬化させる工程と、紫外線の照射により重合する第2の重合性化合物および金属粉末を含有する第2のインクを、インクジェット法により第1の重合性化合物の硬化物上に付与する工程と、第2の重合性化合物を重合・硬化させる工程とを有する、記録物の製造方法が記載されています。

従来技術における課題

しかしながら、重合性化合物を含有する活性エネルギー線硬化型のインクを用いて、高速印刷した場合において、視覚的に重厚感のある画像を得ることが求められる場合があります。

どんな発明?

2−1.発明の目的

本発明は上記背景を鑑みてなされたものであり、一実施形態によれば、高速印刷を行った場合であっても、視覚的に重厚感のある画像を記録することができるインクセット及び画像記録方法を提供することを目的としています。

2−2.発明の詳細

本発明の詳細を、深堀りしていきます。

この発明は、インクセット、画像記録方法、及び画像記録物に関するものであり、特に、高速印刷を行った場合でも視覚的に重厚感のある画像を記録できる技術を提供することを目的としています。

  1. インクセットの構成

このインクセットは、以下の2種類のインクを組み合わせたものです。

第1インク: 重合性化合物を含む活性エネルギー線硬化型インクジェットインク

第2インク: インジウムを含む金属粒子と重合性化合物を含む活性エネルギー線硬化型インクジェットインク

ここで、第1インクの表面張力は、30mN/m以上であることが特徴です。

1.1 第1インクの詳細

第1インクは、活性エネルギー線硬化型インクジェットインクであり、活性エネルギー線の照射によって硬化します。活性エネルギー線としては、紫外線が好ましいとされています。

重合性化合物の詳細

  • 少なくとも1種の重合性化合物を含んでいます。
  • 重合性基(ラジカル重合性基またはカチオン重合性基)を有する化合物であり、ラジカル重合性基がより好ましいです。
  • 重合性モノマー、重合性ポリマー、またはこれらの組み合わせのいずれであっても構いません。
  • 重量平均分子量(Mw)は、30000以下であることが好ましいとされています。
  • 単官能重合性化合物または多官能重合性化合物のいずれであっても構いません。
  • アミド構造を有する重合性化合物を含むことが好ましいとされています。

その他の成分

  • 特に限定されていませんが、必要に応じて、重合開始剤、溶剤、添加剤などを含んでいても良いと考えられます。

1.2 第2インクの詳細

第2インクも、活性エネルギー線硬化型インクジェットインクであり、活性エネルギー線の照射によって硬化します。紫外線硬化型インクであることが好ましいとされています。

インジウムを含む金属粒子

  • 視覚的に重厚感のある画像を記録するために重要な役割を果たします。
  • 粒径、形状、分散性などは特に限定されていませんが、良好な画像記録性を得るためには、適切なものが選択される必要があります。

重合性化合物

  • 第1インクと同様に、重合性基を有する化合物であり、活性エネルギー線の照射によって硬化します。
  • 第1インクと同一の化合物であっても良いし、異なる化合物であっても構いません。

その他の成分

  • 特に限定されていませんが、必要に応じて、重合開始剤、溶剤、添加剤などを含んでいても良いと考えられます。
  1. 画像記録方法

この発明の画像記録方法は、上述のインクセットを用いて、基材上に画像を記録する方法であり、以下の工程を含みます。

  1. 第1インク付与工程

基材上に、インクジェット記録方式を用いて第1インクを付与します。

  1. 第1インク膜形成工程

第1インクを付与した基材に、活性エネルギー線Aを照射して第1インク膜を形成します。

  1. 第2インク付与工程

第1インク膜上に、インクジェット記録方式を用いて第2インクを付与します。

  1. 画像記録工程

第2インクを付与した第1インク膜に、活性エネルギー線Bを照射して画像を記録します。この工程は、必要に応じて、活性エネルギー線Bよりも照射エネルギーの小さい活性エネルギー線B1を照射して第2インクを仮硬化させる工程を含んでいても良いです。

  1. 画像記録物

この発明の画像記録物は、上記の画像記録方法によって作成されたものであり、以下の特徴を有します。

  • 基材上に、第1インク層と第2インク層が順に形成されています。
  • 第2インク層において、インジウムを含む金属粒子は、第2インク層の表面から内部に向かって、第2インク層の厚さの70%までの領域にのみ存在しています。
  1. 効果

この発明によれば、特定のインクセットと画像記録方法を用いることで、高速印刷を行った場合であっても、視覚的に重厚感のある画像を記録することができます [cite: 29]。

補足(基礎技術情報)

インクジェット記録方式について

  • インク滴を微細なノズルから吐出して記録媒体上に画像を形成する方式であり、プリンターなどに広く利用されています。

参考情報: [インクジェットプリンター - Wikipedia]

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%97%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC

活性エネルギー線硬化について

  • 紫外線や電子線などの活性エネルギー線を照射することで、インク中の重合性化合物を硬化させる技術です。
  • 高速硬化が可能であり、耐擦性、耐水性などに優れた画像を得ることができます。

参考情報: [UV硬化 - Wikipedia]

https://www.google.com/search?q=https://ja.wikipedia.org/wiki/UV%25E7%25A1%25AC%25E5%258C%2596

この発明は、これらの技術を組み合わせることで、高速印刷と高品位な画像記録の両立を可能にしていると考えられます。

3.ここがポイント!

この発明は、特定の組成を有する2種類のインク(第1インク:重合性化合物を含む、表面張力30mN/m以上のインク、第2インク:インジウムを含む金属粒子と重合性化合物を含むインク)を用いたインクジェット画像記録方法に関し、この方法を用いることで、高速印刷時においても視覚的に重厚感のある画像を記録できることを特徴とします。

4.未来予想

様々な分野で革新的な変化が起こる可能性があります。いくつか未来予想を提示します。

  1. 高品質印刷の普及

商業印刷: カタログ、ポスター、パッケージなどで、写真やイラストがよりリアルに、かつ高級感のある質感で表現されるようになるでしょう。特に、美術品や宝飾品などの再現性が求められる分野で、その力を発揮すると考えられます。

産業印刷: 建材、家具、自動車内装など、デザインの自由度が高まり、これまでにない意匠性の高い製品が登場する可能性があります。また、インクジェット技術の適用範囲が広がることで、多品種少量生産やオーダーメイド生産がより容易になるでしょう。

  1. 表現の進化

エンターテイメント: 映像、ゲーム、デジタルアートなどで、より没入感のある表現が可能になるかもしれません。例えば、VR/ARコンテンツにおいて、現実と見紛うばかりの質感や光沢を再現することで、体験の質を向上させることが期待できます。

ファッション: テキスタイルデザインにおいて、金属的な光沢や立体感を表現することで、これまでにない斬新なファッションアイテムが生み出される可能性があります。

  1. サステナビリティへの貢献

環境負荷低減: 顔料や染料の使用量を削減することで、製造プロセスにおける環境負荷を低減できる可能性があります。また、必要な時に必要な量だけ印刷するオンデマンド印刷との組み合わせで、廃棄物の削減にも貢献できるかもしれません。

  1. 新しい市場の創出

セキュリティ: 紙幣、有価証券、ブランド品などの偽造防止技術として応用できる可能性があります。インジウムを用いた特殊な画像は、複製が難しく、高度なセキュリティ対策として期待できます。

アート: 従来の印刷技術では難しかった、金属的な質感や光沢を活かした新たなアート表現が生まれるかもしれません。

もちろん、これらの未来予想は、技術の進歩や社会の変化によって変わる可能性があります。しかし、この発明が持つ可能性は、私たちの生活や文化に大きな影響を与えるものであることは間違いないでしょう。

権利概要

発明の名称インクセット、画像記録方法、及び画像記録物
出願番号PCT/JP2023/013728
出願日2023年3月31日
公開番号WO2023195433A1
公開日2023年10月12日
出願人富士フイルム株式会社
発明者原 未奈子
国際特許分類(IPC) C09D11/101 (Inks specially adapted for printing processes involving curing by wave energy or particle radiation, e.g. with UV-curing following the printing)
B41J2/01 (Ink jet)
B41M5/00 (Duplicating or marking methods; Sheet materials for use therein)
C09D11/38 (Inkjet printing inks characterised by non-macromolecular additives other than solvents, pigments or dyes)
C09D11/40 (Ink-sets specially adapted for multi-colour inkjet printing)
経過情報

太陽の光を、もっと賢く。エネルギー効率を極める透明フィルム

太陽光は、私たちに恵みをもたらす一方で、その中に含まれる赤外線は、時に熱として私たちの生活空間の温度を上昇させる要因となります。特に、都市部の建物や自動車内では、この赤外線による温度上昇が、冷房負荷の増加や快適性の低下を招く大きな課題となっています。

しかし、もしこの赤外線を「ただの熱」として扱うのではなく、制御し、有効活用することができたらどうでしょうか?

今回ご紹介するOptmass社の特許技術は、まさにその発想から生まれた革新的な赤外線吸収層形成用樹脂組成物、そしてそれを用いた赤外線吸収フィルタに関するものです。この技術は、透明導電酸化物ナノ粒子を特定の樹脂組成物に分散させることで、優れた赤外線吸収特性と高い透明性を両立させ、私たちの暮らしに新たな可能性をもたらします。

2025年に開催される大阪・関西万博では、このOptmass社の技術が展示される予定であり、次世代の再生可能エネルギー技術として大きな注目を集めています。 建物の窓などに設置することで、赤外線を利用してエネルギーを生成する透明な太陽電池としての応用が期待されており、未来の都市におけるエネルギー問題の解決に貢献する可能性を秘めています。


近年、持続可能な社会の実現に向けて、再生可能エネルギーの普及が重要な課題となっています。太陽光発電は、その中でも代表的な技術の一つであり、さらなる高効率化、低コスト化、そして設置場所の多様化が求められています。

今回は、Optmass社が開発した、赤外線吸収層形成用樹脂組成物を用いた新しい太陽光発電装置用フィルムについて紹介します。このフィルムは、透明導電酸化物由来のナノ粒子を特定の樹脂組成物中に分散させることで、優れた赤外線吸収特性と高い透明性を両立することを特徴とします。

その結果、建物の窓などの透明な基材に適用することで、景観を損なうことなく、太陽光エネルギーを効率的に利用することが可能になります。実際に、2025年大阪・関西万博においては、この技術が展示され、未来の都市における再生可能エネルギーの新たな形として注目を集めています。

https://www.euronews.com/2025/03/05/expo-2025-osaka-kansai-exploring-future-technologies-shaping-the-sea-sky-and-land

1.背景と課題

背景技術

PDFファイルに記載された発明の背景技術と従来技術における課題をまとめます。

背景技術

従来、赤外線遮熱性付与等を目的として、各種赤外線吸収層を形成するための樹脂組成物やそれを用いた塗料等が提案されています。

例えば、特許文献1には、ナノスズ含有金属酸化物粒子及びその分散体が提案されています。この技術は、高透明度、低輻射、省エネのガラス用複合材料に関連しています [cite: 2]。また、特許文献2には、溶剤を含有せず、クリーンルームの床材・壁材、半導体の包装材、メーター類の表示部材等に利用され、プラスチック製品の表面に帯電防止処理用の透明導電性被膜を形成する透明導電性塗料が提案されています。

特許文献1:特表2015-511575号公報

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2015-511575/11/ja

特許文献2:特開平8-27405号公報

https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-H08-027405/11/ja

従来技術における課題

しかしながら、特許文献1に開示のナノスズ含有金属酸化物粒子は、発明の構成や技術的意義が不明確である上、赤外線吸収性の点で改善の余地がありました。また、特許文献2に開示の透明導電性塗料では、バインダー樹脂に分散された所定粒径のアンチモンドープ酸化銀微粒子が強固に凝集してしまい、分散安定性が低下したり、あるいは、透明性等に劣ったりする場合がありました。

どんな発明?

2−1.発明の目的

本発明は上記背景を鑑みてなされたものであり、赤外線吸収性、透明性、分散性、更には耐久性や印刷特性に優れた赤外線吸収剤を含有してなる赤外線吸収層形成用樹脂組成物、それを用いた赤外線吸収フィルタ、及び、赤外線吸収層形成用樹脂組成物の製造方法を提供することを目的としています。

2−2.発明の詳細

本発明の詳細を、深堀りしていきます。

  1. 発明の概要

この発明は、赤外線吸収剤として透明導電酸化物由来のナノ粒子を使用し、特定の分散助剤などを組み合わせることで、赤外線吸収性、透明性、分散安定性、耐久性、印刷特性に優れた赤外線吸収層形成用樹脂組成物を提供することを目的としています。

  1. 発明の詳細な説明

この発明の赤外線吸収層形成用樹脂組成物は、以下の4つの成分を含んでいます。

(A) 赤外線吸収剤: 透明導電酸化物由来のナノ粒子

(B) 分散媒: 樹脂成分

(C) 溶媒: 樹脂成分を溶かすための溶媒

(D) 分散助剤: カルボキシル基含有化合物

これらの成分を特定の割合で混合することで、優れた特性を持つ樹脂組成物が得られます。

2.1 (A) 赤外線吸収剤について

酸化チタン、酸化亜鉛、酸化インジウム、錫ドープ酸化インジウム(ITO)など、特定の透明導電酸化物由来のナノ粒子が使用されます。特に、ITOナノ粒子は、耐湿性や導電性の観点から好ましいとされます。

ドーパント: ナノ粒子に錫やアンチモンなどのドーパントを添加することで、赤外線吸収特性を調整できます。ドーパントの量によって、吸収する赤外線の波長が変化します(図3(a))。

配合量: 樹脂組成物全体に対して、0.01〜1重量%の範囲で赤外線吸収剤を配合することが好ましいとされています。

組み合わせ: 異なる種類の赤外線吸収剤を組み合わせることで、より広い波長範囲の赤外線を吸収できます。例えば、ITOとCuS、AZOとITOなどの組み合わせが挙げられます。

平均粒径: ナノ粒子の平均粒径は、0.1〜100nmの範囲内であることが好ましいとされています。粒径を調整することで、透明性を維持しやすくなります(図3(b))。

吸収極大波長: 赤外線吸収剤の吸収極大波長は、800〜15,000nmの範囲内であることが好ましいとされています(図4(a)〜(d))。

可視光透過率: 赤外線吸収層の可視光透過率は、65%以上であることが好ましいとされています。これにより、透明性を確保できます。

極性基: 赤外線吸収剤の表面に、アミノ基、水酸基、エポキシ基、カルボキシル基などの極性基を導入することで、樹脂との分散性を向上させることができます(図1(c))。

製造方法: 透明導電酸化物の前駆体を特定の溶媒中で加熱分解することで、赤外線吸収剤であるナノ粒子を生成します。

2.2 (B) 樹脂成分について

種類: ポリスチレン、アクリル系樹脂、ポリビニルブチラールなど、様々な熱可塑性樹脂が使用できます。

表面自由エネルギー: 樹脂の表面自由エネルギーは、50mJ/m²以下であることが好ましいとされています。

2.3 (C) 溶媒について

種類: ケトン系溶媒など、樹脂を溶解できる溶媒が使用されます。

2.4 (D) 分散助剤について

種類: 芳香族カルボン酸、カルボン酸アルキル、カルボン酸アルキルエステルなどが使用できます。

  1. 赤外線吸収フィルタについて

この樹脂組成物を用いて、基材上に赤外線吸収層を形成することで、赤外線吸収フィルタを作製できます。このフィルタは、800〜15,000nmの範囲内の吸収極大波長と、65%以上の可視光透過率を持つことが特徴です。

  1. 赤外線吸収層形成用樹脂組成物の製造方法について

この樹脂組成物は、以下の工程で製造されます。

  1. 透明導電酸化物の前駆体と特定の溶媒を容器に入れる。
  2. 加熱して前駆体を分解し、ナノ粒子を生成する。
  3. ナノ粒子と樹脂成分、溶媒、分散助剤を混合する。

赤外線吸収フィルタの製造フローについて

発明の効果

この発明により、赤外線吸収性、透明性、分散安定性、耐久性、印刷特性に優れた赤外線吸収層形成用樹脂組成物、それを用いた赤外線吸収フィルタ、及びその製造方法が提供されます。

3.ここがポイント!

この発明は、透明導電酸化物ナノ粒子、樹脂、溶媒、及び特定の分散助剤を組み合わせた赤外線吸収層形成用樹脂組成物、それを用いた赤外線吸収フィルタ、及びその製造方法に関し、これらの材料を特定の割合で配合することで、赤外線吸収性、透明性、分散安定性、耐久性、及び印刷特性に優れた材料を提供することを特徴とします。

4.未来予想

この発明が実用化された場合、私たちの生活や産業に大きな変化をもたらす可能性があります。以下に、いくつかの未来予想を示します。

  1. 建築分野での応用

エネルギー効率の高い建物

窓ガラスや建材にこの技術を応用することで、夏は赤外線を遮断して室内温度の上昇を抑制し、冷房負荷を低減できます。冬は赤外線を透過させることで、太陽熱を有効に利用し、暖房負荷を低減できます。これにより、建物のエネルギー消費量を大幅に削減し、持続可能な社会の実現に貢献できます。

快適な居住空間

赤外線吸収フィルタは、可視光透過率が高いため、室内の明るさを損なうことなく、快適な居住空間を提供できます。また、紫外線もカットできるため、家具や内装の劣化を防ぎ、人々の健康を守ることにもつながります。

  1. 自動車分野での応用

車内温度の上昇抑制

自動車の窓ガラスにこの技術を応用することで、夏季の車内温度の上昇を抑制し、エアコンの負荷を低減できます。これにより、燃費の向上やCO2排出量の削減に貢献できます。

ドライバーの快適性向上

赤外線によるジリジリ感を軽減することで、ドライバーの疲労を軽減し、安全運転をサポートできます。

  1. 農業分野での応用

農業用フィルム

ハウス栽培などに用いる農業用フィルムにこの技術を応用することで、作物の生育に必要な光を選択的に透過させ、不要な赤外線を遮断できます。これにより、作物の品質向上や収穫量の増加が期待できます。

  1. エネルギー分野での応用

高効率太陽電池

太陽電池の受光面にこの技術を応用することで、太陽光エネルギーを効率的に吸収し、発電効率を向上させることができます。特に、特定の波長の赤外線を効率的に吸収する太陽電池の開発が期待されます。

  1. その他

ディスプレイ

ディスプレイの前面フィルタとして使用することで、外光の反射を抑え、視認性を向上させることができます。

照明

照明器具のフィルタとして使用することで、必要な光だけを透過させ、効率的な照明を実現できます。

このように、この発明は、様々な分野で応用できる可能性を秘めており、私たちの生活をより快適で持続可能なものにする上で、重要な役割を果たすことが期待されます。

権利概要

発明の名称赤外線吸収層形成用樹脂組成物、赤外線吸収フィルタ、及び、赤外線吸収層形成用樹脂組成物の製造方法
出願番号PCT/JP2024/029938
出願日2023年8月24日
公開番号WO2025/041845A1
公開日2025年2月27日
出願人株式会社OPTMASS
発明者坂本雅典、往安健一
国際特許分類(IPC) G02B5/22 (2006.01)
C08K3/08 (2006.01)
C08K5/101 (2006.01)
C08K9/04 (2006.01)
C08L101/00 (2006.01)
経過情報

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