任天堂特許徹底解剖!!

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月間特許トレンドウォッチ

任天堂は、世界中で愛されるゲームキャラクターや革新的なゲーム機を生み出し続けてきました。その裏には、長年にわたる知的財産(IP)保護への強いこだわりと戦略があります。同社のIPは、単なる権利の集合ではなく、ブランドイメージを支える生命線です。そのため、任天堂は知財侵害に対して迅速かつ厳格な対応を取ることで知られています。

例えば、2024年に話題となった「パルワールド」を巡る特許侵害訴訟では、任天堂が迅速に対応したことが注目を集めました。このケースでは、任天堂が新たな特許を取得して訴訟を有利に進めるという、用意周到な戦略が見られました。同社は過去にもいくつかの重要な訴訟を経験しており、それらの成功例が現在の戦略にも影響を与えています。

特に、「白猫プロジェクト」を巡る訴訟では、任天堂が特許侵害を主張し、約33億円の和解金を得る成果を収めました。また、公道カートを巡る「マリカー」訴訟では、任天堂のキャラクターが使用された不正競争行為を認定させ、損害賠償と差し止め命令を勝ち取りました。このように、同社は数々の訴訟で成功を収め、知財保護の重要性を強くアピールしてきました。

特筆すべきは、任天堂が単なる法務部門だけでなく、開発部門とも連携している点です。特許侵害に対する提訴前に特許内容を訂正するなど、事業部門と知財部門が理想的に機能していることが窺えます。この「両輪」体制は、任天堂のIP戦略の根幹を成しており、裁判での勝率の高さやブランドイメージの維持に直結しています。

また、「マジコン」に関する訴訟では、携帯型ゲーム機「ニンテンドーDS」における不正コピーの防止に成功しました。このケースでは、輸入販売行為の差し止めと約9560万円の損害賠償を命じる判決が確定し、不正利用の抑止に大きく貢献しました。これらの事例は、任天堂の知財戦略が単なる防御策にとどまらず、業界全体における知財保護の在り方を示していることを証明しています。

知財戦略の重要性は、同社が抱える多くの人気キャラクターやゲーム機「スイッチ」などの成功を見れば明らかです。これらのIPが侵害された場合、企業全体の収益に大きな影響を及ぼす可能性があります。任天堂が全力で知財を守る姿勢を貫く理由は、ここにあります。

今後もゲーム業界における競争が激化する中で、任天堂の知財保護はさらに重要性を増すでしょう。同社の取り組みは、単なる防御策にとどまらず、業界全体における知財の在り方を示す一つの指針として機能しています。企業のブランド価値を高めるための知財戦略の好例として、他社が参考にすべきモデルと言えるでしょう。

仮想空間での操作をもっと身近に。任天堂の新しいVRインターフェース

VR技術は日々進化を遂げていますが、その中でも「操作のしやすさ」と「没入感」の両立が一つの課題です。任天堂はこの課題に対し、独自のアプローチを用いて解決しようとしています。その一端を垣間見せるのが、今回ご紹介する「画像表示システムおよび表示制御装置に関する特許技術」です。この技術は、2019年に発売された「Nintendo Labo: VR Kit」に活用され、シンプルでありながら直感的なVR体験を提供しています。

任天堂は、VR空間内でユーザーインターフェース(UI)をスムーズに操作できる工夫を導入しています。たとえば、VRゴーグルを通じて仮想空間を眺める際に、UIがユーザーの視線に追従し、必要な情報や操作を即座に行えるように設計されています。今回は、この特許技術を通じて、任天堂がVR体験にどのような革新をもたらそうとしているのか、その背景と技術的な工夫について掘り下げてみたいと思います。

2024年2月Apple社が「Apple Vision Pro」を発売しました。VR(仮想現実)だけでなく、AR(拡張現実)にも対応し現実と仮想が組み合わされたすごい体験ができるようです。また、視線や目の動き、音声コントロール、手のジェスチャーに対応していて、他の機器を使うことなく操作できる、なんともすごい製品です。

さて、今解説しようとしているこの発明のアメリカへの出願は、2020 年 3 月 4 日に出願された米国特許出願第 16/808,761 号の継続出願であり、本出願は、2019 年 3 月 20 日に出願された日本特許出願第 2019-053213 号の優先権を主張しています。

つまり、2019 年 3 月 20 日に任天堂から出願された日本特許出願第 2019-053213 号が大本になっています。

この出願の年、2019年4月にはNintendo Switchで楽しめる「ニンテンドーラボ VRキット」という商品が発売されました。VRゴーグルのページを見てみましょう。

一方、この出願特許の代表的な図がこれです。

どうですか?ゴーグルの形状や使っている様子などそのままVRゴーグルですね。
このVRゴーグルをイメージすればこの出願を理解しやすいと思います。
VRゴーグルをのぞいてVR空間を見ていると想像してみてください。
VR空間の背景と前方にユーザーインターフェースが見えます。

ユーザーインターフェースには、VR空間でユーザーが例えばVR空間にあるものを拾いたいとき、道具を使いたいとき、そのものの説明を欲しいときなど何か操作をしたいときのアイコンや表示枠が配置してあります。

左側には何があるのでしょう。首を左の方に回してみましょう。背景が右に流れます。ユーザーインターフェースも流れていきました。

おや、何か光るものが落ちていますよ。何なのか拾ってみましょう。あれ、ユーザーインターフェースはどこだ?。

元あった場所に首を向けます。ありました、ありました。「拾う」というコマンドを選択して、もう一度首を左に回して光るものを拾いました。これは何だ?。これを知るためにユーザーインターフェースに戻って表示の欄を見ます。

何か操作をやるたびにこの繰り返しは嫌ですよね。じゃあ、ユーザーインターフェースが視線と一緒についてきたらどうでしょう。拾いたいとき、知りたいときすぐそばにありますから便利です。でも、ユーザーインターフェースがいつも前方にありますから背景が見ずらいですね。

背景が見やすくて、すぐにユーザーインターフェースで操作できるようになると便利ですよね。

この発明はこの不便の解消を目指したものです。

発明の目的

この発明は、仮想空間に配置されたオブジェクト(例えばユーザーインターフェース)の操作性を向上させることができる画像表示システム、画像表示プログラム、表示制御装置、及び画像表示方法を提供することを目的としています。つまり、必要な時に、「簡単な動作ですぐ操作で切るようにしたい。」ということです。

上記目的を達成するために、次のような構成にしています。

  • ゴーグル装置と、少なくとも1つのプロセッサとを備える。
  • 仮想空間にオブジェクトを配置する
  • 仮想空間内の仮想カメラで撮影した画像をゴーグル装置の表示部に表示する
  • ゴーグル装置の向きを取得する
  • ゴーグル装置の向きに基づいて仮想空間内の仮想カメラを回転させる
  • 所定の回転方向で仮想カメラの視線が一方向から他方向へ変化したことを検知する
  • 変化の検知に基づいて、ブジェクトの少なくとも一部が仮想カメラの撮影範囲内に位置するように移動する
発明の詳細

図を使って発明の詳細を説明します。

まずはFIG.1 ゴーグルの構造から

  • 画像表示システム1
  • ゴーグル装置10
  • ユーザの両手または片手で保持され、ユーザの左右の目を覆うようにユーザの顔に装着される。
  • 上面11、右側面12、下面13、左側面14、及び底面15
  • 使用者の左眼に対応する位置に略円形の左開口部16L(レンズ付き)
  • 使用者の右眼に対応する位置に略円形の右開口部16R(レンズ付き)
  • ゴーグル装置10の内部空間を左右に仕切る仕切り面17
  • 表示部21を含む情報処理装置2

FIG.4 ユーザがゴーグル装置10を使用する状態を示す図です。

ユーザが顔または体全体を左右方向(水平方向、いわゆる「ヨー方向」)または上下方向(垂直方向、いわゆる「ピッチ方向」)に向けると、ゴーグル装置10(情報処理装置2)の向きが、基準向き(ユーザが正面を向いたときのゴーグル装置10の向き)から変化します。

情報処理装置2は、慣性センサにより検出された角速度値及び、加速度値に基づいて、情報処理装置2(ゴーグル装置10)の姿勢を算出します。

情報処理装置2(ゴーグル装置10)の実空間における姿勢に応じて、仮想空間には仮想オブジェクトが配置され、ユーザは仮想オブジェクトを含む仮想空間の立体画像を視認することができます。

FIG.5 仮想空間VSの一例を示す図です。

  • 仮想空間VSには、xyz直交座標系が設定されています。
  • x軸は、仮想空間VSにおける水平方向の軸。
  • y軸は、仮想空間VSにおける高さ方向の軸。
  • Z軸は、X軸とY軸に垂直な軸であり、仮想空間における奥行き方向の軸。
  • 左仮想カメラVCLと右仮想カメラVCRを総称して「仮想カメラVC」と称します。
  • 左仮想カメラVCLと右仮想カメラVCRは、平均的なユーザの左目と右目との間の距離と同程度の距離で仮想空間内に配置されています。
  • 左仮想カメラVCLと右仮想カメラVCRから仮想空間を眺めて得られる左目画像と右目画像が、それぞれユーザの左目と右目で見られることで、ユーザは仮想空間の立体画像を視認できます。
  • UIオブジェクト30
  • ユーザによって操作され、ユーザに提示する情報を表示する仮想オブジェクト
  • 例えば、UIオブジェクト30は、ユーザにメニュー機能を提供します。
  • 例えば、UIオブジェクト30は、所定のゲームアプリケーションの実行中に表示されるものであり、ユーザは、UIオブジェクト30を用いてゲームにおいて所定の操作を行うことができます。
  • ユーザが選択可能なアイコン31〜34。

FIG.6A FIG.7A

FIG.6Aは、ゴーグル装置10が基準姿勢を維持しているときに上方から見た仮想空間を示す図で、FIG.7Aは、その時のユーザが見る画像の一例です。

FIG.6B FIG.7B

FIG.6Bは、ゴーグル装置10が基準姿勢からヨー方向(左方向)に回転したときの上方から見た仮想空間を示す図で、FIG.7Bは、その時のユーザが見る画像の一例です。

FIG.6C FIG.7C

FIG.6Cは、FIG.6Bの状態からゴーグル装置10がさらにヨー方向(左方向)に回転したときの上方から見た仮想空間を示す図で、FIG.7Cは、その時のユーザが見る画像の一例です。37はポインタを表しています。

FIG.9 

UIオブジェクト30の移動先の領域の例を示す図で、四角はユーザーが見る画面。その中にUIオブジェクト30があり、その上下(A-AREA)、左右(B-AREA)に領域を設定します。

仮想カメラVCの視線がB領域に入った後、視線を反転させたときのUIオブジェクト30の移動処理とA領域に入ったときの移動処理が異なります。

FIG.10 

仮想カメラVCを左方向に回転させた後、右方向に回転させた状態を示す図で、UI AREAの左の境Tyを超えてy1進み、y2反転したときを示す図です。

検出する移動量はUIオブジェクト30のエリア(UI AREA)の境Tyを超えてからの量となります。

FIG.11 

仮想空間の水平方向から見た仮想カメラVCの一例を示す図であり、仮想カメラVCを下方向に回転させた後、上方向に回転させた状態を示しています。

仮想カメラVCの視線がB領域に入った後、ピッチ方向の下方向にx1進み、その後x2上方向に反転したときの図で、ピッチ方向の移動量は水平位置0度からの量であることを示しています。

仮想カメラVCの視線がB領域に入った後、y1進み、y2反転したときの小さい方の移動量をRyとします。

仮想カメラVCの視線がB領域に入った後、下方向にx1進み、その後x2上方向に反転したときの小さい方の移動量をRxとします。

Rx+Ryを計算し、設定値以上なら、UIオブジェクト30が30’の位置から仮想カメラVCの前方に、VCを中心に移動するようにします。FIG.8はその状態の図です。

次は、仮想カメラVCの視線がA領域に入ったときのUIオブジェクト30の移動処理についてです。

正面を向けている視線を上方向に動かすとUIオブジェクト30は下方向に流れていきます。A領域に入るとUIオブジェクト30が下方向に流れなくなり上部の一部が見えている状態のまま表示されます。視線がA領域に入ったまま横に首を回すと視線の動きに合わせ、UIオブジェクト30がついて動きます。図で説明します。

FIG.13A

仮想カメラVCの視線が下方向に回転してA領域に入った場合に表示部21に表示される画像の一例を示す図です。

視線を下方向に向けたのでUIオブジェクト30は上方向に移動し、下側の一部が表示されています。図ではオブジェクト40が左方向に見えます。

FIG.13B

FIG.13Aの状態から仮想カメラVCが左方向に回転した場合に表示部21に表示される画像の一例を示す図で、オブジェクト40がそのまま右に移動しました。

つまり、視線がB領域にあるときは視線の方向を反転させることによって、UIオブジェクト30を仮想カメラVCの前方に移動させます。一方、視線がA領域に入るとUIオブジェクト30の一部を仮想カメラVCの前方に移動し、かつ視線とともに移動します。このように、視線がA領域にあるか、B 領域にあるかにより、オブジェクトの移動の仕方に違いを持たせています。

図15は情報処理装置2のプロセッサ20が実行するメイン処理の一例を示すフローチャートを示し、図16は、図15のフローチャートのステップS106におけるBエリア内の移動処理を示すフローチャートです。英語ではわかりにくいので、内容が同じであった日本で出願された特許の図を載せます。

FIG.9に示すようにUI ARERの上下の領域(A-AREA)と左右の領域(B-AREA)に分け、それぞれの領域に視点が入ったときのユーザーインターフェースの動きがそれぞれの領域で異なるようにいていることです。

左右の領域(B-AREA)では、首を左に回すと背景とユーザーインターフェースが右に流れていきます。左に回し続けるとユーザーインターフェースは見えなくなってしまいます。インターフェイスを表示させたいとき、首を今までの反対方向に反転します。ある一定量動くとユーザーインターフェースが前方に移動してきます。最小限の視線の動きでユーザーインターフェイスを移動させることができます。

上下の領域(A-AREA)では、首を上に上げていくと、背景とユーザーインターフェースが下方向に流れていきます。視点がA-AREAに入るとユーザーインターフェースの上部の一部がそのまま表示され続け、かつ視線の前方に移動します。上を向いたまま首を左右に動かすと、背景も左右に動きますし、ユーザーインターフェースも同じように上部が左右に動きます。

このような動きにすることで、ユーザーインターフェースが邪魔することなく背景をみることができますし、必要な時はすぐにユーザーインターフェースを表示させ操作することができます。

任天堂の「VRゴーグル」は残念ながら爆発的に売れたようではありません。2019年に何個かゲームソフトが発売されましたが2020年に入ると新ソフトの発売は止まってしまっています。

Apple社の「Apple Vision Pro」やMeta社の「Meta Quest」など、高機能のVRヘッドセットが作られ提供されていますが、高機能であるが故にお値段もそれなりで簡単に購入とまではいきません。

「ニンテンドーラボ VRキット」が発売された2019年ころも高機能をうたったVRヘッドセットは提案されていましたが、手を出せるお値段ではありませんでした。そんな中でNintendo Switchで楽しめるVRゴーグルは、画期的と同時に手が出せると思わせる価格で魅力的でありました。任天堂らしい自分たちの強みを生かした商品と思いました。

現在ではVR(仮想現実)だけでなく、AR(拡張現実)と組み合わせて、仮想と現実が融合された世界を見せてくれています。「Apple Vision Pro」は米国MITの「2024年のブレークスルー技術トップ10」の3位にランクされました。これから先もどんどん進化していくでしょう。

ふと考えてみれば、VRヘッドセットがあればパソコンもディスプレイもいらなくないですか。作業机もいらないとなれば、仕事をする場所もネットに接続できれば、海でも山でも川でも、スタバでもどこでも仕事ができますよ。VRヘッドセットの中がオフィスですもの。うーーむ、いいですね。

でも気を付けなければいけないのは、スタバで映画を見てニヤニヤしていたら変な人と思われちゃいますね。気をつけねば。あっ!周りの人もVRヘッドセットしているから関係ないかも。そんな未来はすぐそこのように思えます。

発明の名称

IMAGE DISPLAY SYSTEM, NON-TRANSITORY STORAGE MEDIUM HAVING STORED THEREIN IMAGE DISPLAY PROGRAM, DISPLAY CONTROL APPARATUS, AND IMAGE DISPLAY METHOD 画像表示システム、画像表示プログラムを記憶した非一時的な記憶媒体、表示制御装置および、画像表示方法

出願番号

18359118

公開番号

US-A1-2023/0364511

出願日

2023/07/26

公知日

2023/11/16

公開日

令和6年4月19日

登録日

令和6年7月26日

審査請求日

令和6年3月6日

出願人

NINTENDO CO., LTD.

発明者

ONOZAWA Yuki
SHIMIZU Daigo
KAWAI Kentaro

国際特許分類 A63F13/5258
G02B27/01
H04N13/344
G06T7/73
G06T19/00

経過情報

・本出願は、2020 年 3 月 4 日に出願された米国特許出願第 16/808,761 号の継続出願であり、本出願は、2019 年 3 月 20 日に出願された日本特許出願第 2019-053213 号の優先権を主張している。

空中も水上も、ワンタッチで。限りない移動の自由を体感しよう

ゲームの進化は、ただ美しいグラフィックや壮大なストーリーにとどまりません。プレイヤーが自由に、そして直感的に動き回れる環境を提供することこそ、真の没入体験を生む鍵です。任天堂が取得した最新の特許は、まさにその領域に革命をもたらすものです。この特許は、空中・水上・地上の様々な移動手段を、リアルな動きでシームレスに切り替える技術を含んでいます。

いわばプレイヤーが『次の移動手段を考える必要がない』世界を目指しているのです。ゲームの操作が限りなく自然に、そして没入感を増す方向に進化していることが感じられるこの特許の内容に迫り、次世代のゲーム体験の姿を覗いてみましょう。

今回紹介する特許(JP7528390B2)は、任天堂株式会社によって開発されたゲームプログラムやシステム、情報処理装置、及び情報処理方法に関するものです。主な目的は、プレイヤーキャラクタが複数の乗り物キャラクタをスムーズに切り替えて移動できるシステムの提供にあります。

従来のゲームシステムでは、プレイヤーキャラクタが乗り物(オブジェクト)に乗って移動することが可能なものが既に存在しています。例えば、キャラクタが特定のエリアや状況に応じて自動的に異なる移動手段に切り替えることが求められる場面があり、これによりプレイヤーは異なる移動手段を適切に切り替えながらゲームの進行を楽しむことができます。

しかし、従来のシステムにおいては、複数の搭乗オブジェクト(乗り物キャラクタ)を切り替える際に、手動での操作が多くなることや、切り替えがスムーズではないといった課題が残されていました。これにより、プレイヤーが異なる移動手段を活用する際の操作負担が増大し、ゲーム体験における没入感が損なわれる可能性がありました。

発明の目的

この特許は、上記課題を解決し、複数の移動手段を滑らかに切り替えられる機能を提供することで、プレイヤーの操作を簡便化し、よりシームレスなゲーム体験を実現することを目的としています 。

発明の詳細

この特許(JP7528390B2)は、プレイヤーキャラクタが仮想空間で複数の乗り物キャラクタをシームレスに切り替え、移動する技術に関するものです。プレイヤーは空中、地上、水上といったさまざまな移動手段を簡便に選択でき、移動中に落下や衝突によるダメージが考慮されることで、よりリアルで没入感のあるゲーム体験が可能となります。

詳細な発明内容と図面説明

1. 基本構成と操作装置(図1・図2)

図1−7には、本体装置に左・右のコントローラが着脱可能な形で装着されているゲーム機が示されています(言うまでもないことですが、任天堂スイッチです)。この装置構成により、プレイヤーは左・右のコントローラを使い、乗り物キャラクタへの搭乗や移動操作を行うことができます。これにより、操作の自由度が高まり、様々な移動手段を簡便に選択可能です。代表図として図1−2のみ載せますが、すでによく知られたものです。

2. 各種乗り物キャラクタへの搭乗と移動(図9~図18)

図9では、プレイヤーキャラクタが馬のキャラクタに搭乗して地上を移動する様子が示されています。馬キャラクタのような地上用乗り物は、通常の地上移動に用いられ、特に広範囲を効率よく探索する場面で活用されます。

図10と図11 は、鳥のキャラクタへの搭乗シーンです。プレイヤーキャラクタが空中にいる場合、鳥キャラクタに即座に切り替えることができ、空中移動をスムーズに行えます。空中移動中に別の空中キャラクタへの搭乗が必要な場合でも、操作を容易にし、シームレスな移動体験を提供します。

図12では、プレイヤーキャラクタが魚キャラクタに搭乗して水上や水中を移動する様子が描かれています。これにより、地上や空中だけでなく、水中エリアも探索可能となり、仮想空間の広がりがさらに増します。

図13から図18には、崖面や地形特化のキャラクタが登場し、崖を登ったり、特定の地形に適応した移動を実現するシーンが示されています。こうしたキャラクタを用いることで、通常の移動では到達できない場所にもアクセスでき、ゲーム内の戦略性が高まります。

2. 移動時の安全機能とダメージ処理(図20~図26)

図20から図26のフローチャートでは、移動中のプレイヤーキャラクタが高所から落下した場合のダメージ処理が記されています。例えば、図20では、空中での移動中に一定の高さから落下すると、キャラクタにダメージが加えられる様子が説明されています。これにより、移動中も緊張感を持った操作が必要となり、ゲームプレイの挑戦性が向上します。また、フローチャートでは、プレイヤーキャラクタが落下する前に空中用キャラクタへ切り替えが可能であるため、操作次第でダメージを回避する方法も提供されます。

この特許発明の特徴として、各移動手段が場面や状況に応じてシームレスに切り替わる点が挙げられます。さらに、乗り物キャラクタの選択肢が増えることで、従来の移動手段に比べて多様な戦略や操作が可能となり、プレイヤーにより深い没入感と挑戦を与えることが可能となります。

この特許発明(JP7528390B2)のポイントは、以下の通りです。

1. 多様な移動手段の選択とシームレスな切り替え

プレイヤーキャラクタは、仮想空間内でさまざまな乗り物キャラクタ(例:空中移動用の鳥、水上移動用の魚、地上移動用の馬など)を状況に応じて選択・切り替えながら移動できます。これにより、ゲームの進行に合わせてスムーズな移動体験が可能になります。

2. リアルなダメージ処理と安全制御機能

高所からの落下や高速度での衝突時には、キャラクタにダメージを与える仕組みがあり、リアルな操作感を演出します。さらに、落下前に空中移動キャラクタに切り替えることで、ダメージを回避できるようになっており、プレイヤーのスキルを活かすことができます。

3. 戦略性と没入感の向上

各移動手段が特定の地形や状況に対応するため、移動手段の選択がプレイの戦略性を高め、プレイヤーの没入感を強化します。また、様々な乗り物を活用することで、通常では行けない場所へのアクセスや新たな探索が可能となり、ゲーム体験の深みが増します。

この技術は、操作負担を軽減しつつ自由度の高い移動を実現するため、プレイヤーにとって直感的でリアルなゲームプレイを提供するためのものであり、ゲームの没入感や挑戦性を高める重要な役割を果たしています。

なお、この特許が実用化されているゲームとして、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』が挙げられます。このゲームでは、プレイヤーキャラクターが馬やパラセールといったさまざまな移動手段を自在に切り替え、広大なフィールドを探索できるシステムが採用されています。本特許で述べられている「複数の搭乗キャラクタを自由に切り替えながら移動する技術」がこのゲーム内で活用されており、移動の自由度が非常に高く、スムーズな切り替えが可能です。

また、『ブレス オブ ザ ワイルド』ではパラセールを使って空中を移動できるだけでなく、高所から落下した際にはダメージを受けるという機能も組み込まれています。これは本特許で言及されている「高所からの落下や高速移動の際にダメージを与える機能」と一致しており、プレイヤーにとって緊張感のある移動体験が提供されています。このように、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』は、本特許技術が実用化されている代表例であり、プレイヤーにシームレスで没入感のある自由な探索を可能にしています。

この特許発明に基づく未来のゲームやエンターテインメント分野の発展予想としては、以下のような展開が考えられるでしょう。

1. さらに没入感の高いオープンワールドゲームの進化

この特許技術を発展させることで、未来のオープンワールドゲームでは、プレイヤーがよりリアルで広大な仮想空間を探索できるようになるでしょう。プレイヤーは空中や水中、地上を自由に行き来でき、地形や状況に応じた最適な乗り物キャラクタの選択が自動化されることで、ストレスなく探索を楽しめるようになるかもしれません。

2. VR・ARゲームへの応用

VR・ARの分野でも応用が期待されます。VRでの移動手段の切り替えがシームレスに行えるようになれば、プレイヤーは現実と仮想の間で違和感なく多様な移動を体験できます。AR技術を用いることで、現実の街中に仮想の乗り物キャラクタが現れ、現実空間を使った新しい移動体験が可能になるかもしれません。

3. トレーニング・シミュレーション分野での利用

仮想空間内での移動手段の自動切り替え技術は、ゲームに限らず、例えば車両シミュレーションや航空訓練、船舶操縦などのトレーニングにも応用できます。仮想環境内で多様な移動手段をシームレスに体験することで、現実の状況に近い操作訓練が可能になり、安全なシミュレーション環境が構築されます。

このように、この特許技術はゲーム分野にとどまらず、幅広い分野で新たな体験を提供し、未来のデジタルエンターテインメントの進化に貢献していくと予想されます。

発明の名称

ゲームプログラム、ゲームシステム、情報処理装置、および情報処理方法

出願番号

特願2024-32983

公開番号

特開2024-55978

特許番号

特許7528390号

優先日

令和3年12月22日

公開日

令和6年4月19日

登録日

令和6年7月26日

審査請求日

令和6年3月6日

出願人

任天堂株式会社/株式会社ポケモン

発明者

岩尾和昌

国際特許分類 A63F 13/56
A63F 13/803

経過情報

特願2023-146784の分割出願。

すべてはここから始まった。ゲーム操作の原点、任天堂の多方向スイッチ

ゲーム機の進化の歴史には、数々の革新的な発明が存在しますが、その中でも「多方向スイッチ」いわゆる「Dパッド」は、現代の操作インターフェースに大きな影響を与えた一つの象徴と言えるでしょう。この技術は1980年代に任天堂が開発したもので、わずかなスペースで4方向の入力を可能にし、片手で直感的な操作を実現しました。当時の携帯型ゲーム機や家庭用ゲーム機のデザインを一変させたこのスイッチは、現在も多くのゲーム機で使われる標準的な操作インターフェースとして定着しています。ここでは、この画期的な発明がどのように誕生し、どのようにして今日のゲーム操作の基盤となっているのか、その技術的な背景と共に掘り下げていきましょう。

任天堂が1987年に取得した特許「多方向スイッチ」(US4687200)は、携帯型ゲーム機に適した四方向入力デバイスの新しい設計に関するもので、ゲーム業界におけるキー入力技術に革新をもたらしました。

この特許は、十字型の四方向スイッチを中心とした構成で、ユーザーが指先で押すことにより、正確な方向制御を実現する設計です。このスイッチは、機械的信頼性と空間効率を兼ね備え、携帯ゲーム機の利便性を向上させ、ゲーム機の歴史を変革させた画期的な構造を備えています。

携帯型ゲーム機および据え置き型ゲーム機において、キャラクターやカーソルの移動など、ユーザーが特定の方向に応じた操作をするための入力装置は、ゲーム機の操作性を左右する重要な要素でした。特に、1970年代から1980年代初頭にかけて、さまざまなタイプの入力装置が試みられており、以下のようなものが一般的に使用されていました。

1. 複数のボタンによる方向入力

初期のゲーム機では、複数のボタンを各方向に配置することで方向入力を行っていました。この方式では、各ボタンが特定の方向に対応しているため、ユーザーがボタンを押すことでキャラクターを上下左右に移動させることが可能でした。しかし、複数のボタンを使用するこの方法には、以下のような問題がありました:

• 各方向に対して個別のボタンを配置するため、スペースを多く占有してしまう。
• ボタンの配置が左右に離れていることが多く、片手での操作が難しい。
• 簡単に操作ができる反面、入力の精度が低く、複雑な操作には向かない。

2. ジョイスティック(アナログ入力)

また、アーケードゲームや一部の家庭用ゲーム機には、ジョイスティックによる入力が使用されていました。ジョイスティックは、軸の方向に応じてキャラクターを移動させるため、より多方向の入力が可能で、当時のアクションゲームにおいて多用されました。しかし、ジョイスティックには以下のような欠点がありました:

• ジョイスティック自体が大きく、携帯性が低いため、携帯型ゲーム機には不向き。
• 操作に力が必要で、指での繊細な操作がしづらく、長時間のプレイには不向き。
• 多方向の移動が可能である一方で、特定の方向における正確な入力が難しい。

発明の目的

従来の技術では、上記のような多方向入力デバイスにおける操作性や空間効率において課題が多く、特に携帯型ゲーム機での使用には多くの制約が伴いました。

任天堂の多方向スイッチ発明に至った背景として、従来技術が以下の課題を抱えていたことが挙げられます。

1.操作性の欠如

従来の複数ボタン方式やジョイスティック方式では、片手で直感的に方向入力を行うことが難しく、特にゲーム中に素早く正確な操作を行うには不向きでした。携帯型ゲーム機に求められる「片手での操作性」という点では、従来の方式が満たせていなかったのです。また、ジョイスティックなどの大きなデバイスは、持ち運びが重要な携帯型デバイスには物理的に適合しませんでした。

2.空間効率の低さ

複数のボタンを用いる方式や、分離されたスイッチ配置はスペースを多く占有し、ゲーム機の小型化を妨げる要因となっていました。特に携帯型ゲーム機では、画面やその他の機能のスペースが限られるため、複数のボタンやスイッチを効率的に配置することが困難でした。従って、デバイス内のスペースを有効活用できる方向入力デバイスの開発が求められていました。

3.入力精度の問題

従来のジョイスティックや複数ボタン方式では、斜め方向など、複数の方向を同時に入力することが困難で、正確な操作に不向きでした。また、操作時に複数の方向ボタンが誤って押されてしまうなどの誤作動が発生することがあり、ゲームプレイにおける操作の正確性が低下するという課題もありました。

4.長時間使用における操作疲労

特にジョイスティックや複数ボタン方式では、操作に指や手を動かす力が必要であり、長時間使用時に疲労を感じやすいという問題がありました。ゲームプレイにおいては連続した操作が頻繁に求められるため、ユーザーが快適に長時間遊べる操作デバイスの必要性が高まりました。

そこで、これらの課題を解決することを目的として、本発明がされたということになります。

発明の詳細
1.キー部材と基板の構造

本発明では、十字型の「キー部材」が用いられ、これにより4つの方向(上下左右)の入力が1つの部材で行えるようになっています(図2)。このキー部材10には突起(プロトルージョン)11a〜11dがあり、それぞれの方向に押しやすく設計されています(図4)。図3に示されるように、キー部材の中央には支柱(サポートメンバー)13が設けられており、基板40との間に支点が形成されています。この支柱が支点となることで、特定の突起が押された際、押された方向に傾き、その下に配置された導電ゴムが基板の対応する電極に接触し、選択された方向の入力が発生します。

2.キー部材のデザインと操作性

キー部材の上部には十字型の突起11a〜11dがあり、各方向への押しやすさが考慮されています(図4)。操作面は凹形状になっており、指先が自然にフィットするため、視覚に頼らずに正確な方向入力が可能です。このデザインにより、ユーザーは各方向の入力を容易に行えるようになり、ゲームプレイ中の操作性が向上しました。

動作原理
本発明の多方向スイッチは、基板上に形成された複数の電極と、キー部材の押下方向に応じて接触する導電ゴムにより構成されています。使用時に特定の突起が押されると、支柱を支点としてキー部材が傾き、その方向に応じた導電ゴムが基板の対応する電極と接触し、信号が発生します。この設計により、ユーザーは片手で4方向すべてを迅速かつ正確に操作でき、特にアクション性の高いゲームでの操作性が飛躍的に向上しました。

ゲーム業界への影響
この多方向スイッチは、1980年代の任天堂の家庭用ゲーム機(ファミリーコンピュータ、ゲームボーイなど)においてDパッドとして広く採用され、業界標準となりました。このDパッドの成功により、他社のゲーム機コントローラーでも同様の技術が採用されるようになり、ゲーム操作の標準となるインターフェースが確立されました。特に、アクションゲームや格闘ゲームの方向入力がより正確かつ直感的に行えるようになり、ユーザー体験の向上に大きく寄与しました。

この特許技術は、任天堂の市場競争力を強化し、長期的なブランド価値の向上に貢献しました。加えて、ゲーム業界におけるDパッドの普及とともに、他の電子機器(リモコンや携帯電話など)にも応用され、インターフェースデザインの基盤を形成する技術として広く影響を及ぼしています。

この発明のポイントは、片手で操作可能な十字型の多方向スイッチ(Dパッド)を備え、4方向の入力を正確かつ迅速に行える点にあります。キー部材が中央の支柱を支点として傾き、押下方向に対応する導電ゴムが基板の電極に接触することで、方向入力が発生します。

この構造により、操作性が大幅に向上し、携帯型ゲーム機の省スペース化も実現しました。このスイッチはゲーム業界で広く採用され、操作インターフェースの標準となったのです。

この多方向スイッチ技術は、すでにゲーム業界で標準ともいえるインターフェースになっていますが、さらなる将来の展開を予測してみます。

1.触覚フィードバックを強化した次世代Dパッド

Dパッドに触覚フィードバック機能(ハプティック機能)が追加され、押した方向に対して抵抗感や振動が加わることで、より直感的で没入感のある操作が可能になるでしょう。例えば、アクションゲームでキャラクターが障害物に当たると押した方向に軽い抵抗が感じられるなど、操作感が進化します。

2.拡張現実(AR)や仮想現実(VR)デバイスとの連携

すでにMeta社の「Meta Quest 3」などでは実用化されていますが、AR・VRデバイスと組み合わせることで、仮想空間内での方向操作が直感的に行えるインターフェースとしてさらに活用されるでしょう。この技術は、エンターテインメントや教育分野など、幅広い応用が期待できます。

3.マイクロデバイスやウェアラブルとの統合

Dパッド技術が小型化され、スマートウォッチやリング型デバイスに組み込まれることで、身近なデバイスでも方向操作が可能になります。指先で簡単に操作できるDパッドがウェアラブルデバイスに搭載されれば、例えば音楽や地図アプリの操作を手元で素早く行うことができ、日常生活での利便性が向上します。ウェアラブル市場の成長に伴い、この分野での需要は今後高まると考えられます。

発明の名称

Multi-directional switch

出願番号

US06/764514

特許番号

US4687200A

源出願日

1985年8月9日

登録日

1987年8月18日

出願人

NINTENDO CO., LTD.

発明者

Ichiro Shirai

国際特許分類 H01H13/702

経過情報

2004年8月18日に特許期間満了となっています。

仮想空間での操作をもっと身近に。任天堂の新しいVRインターフェース

ここ数年で、私たちの手元にあるデバイスは驚くほど進化しましたが、それでもまだ「もっと便利に」「もっと自由に」と感じることはないでしょうか?画面の大きさに制約を感じたり、複数のアプリや機能を同時に使いこなしたい場面で不便さを感じたりすることは、日常的なデバイスユーザーなら誰もが一度は経験しているはずです。

そんな「もっと自由なデバイス」を実現するための革新が、任天堂の新しいデュアルディスプレイ技術によって提案されています。脱着可能な2つの画面を持ち、接続の向きによって用途が自在に変化するこの発明は、デバイスに新たな使い方をもたらしそうです。

今回は、これまでにない柔軟性と操作性を備えたこの発明の仕組みと、その可能性について深掘りしていきます。

任天堂が2022年に特許出願したこの発明は、2つのデバイス(第1装置と第2装置)を組み合わせたデュアルディスプレイの電子機器に関するものです。各デバイスは脱着可能であり、異なる向きで接続でき、接続状態によって異なる表示や操作モードを提供します。さらに、無線通信を使用して高周波の不要放射を抑え、外部端子なしでの通信を実現しています。この構造により、柔軟な接続方式と高い操作性が確保されています。

この発明は、2つの脱着可能な装置(第1装置と第2装置)から成るデュアルディスプレイ電子機器に関するものです。これにより、装置の接続方法や使用状態に応じた多様な表示・操作モードを提供することを可能にしています。

1. 装置の基本構成

第1装置には第1ディスプレイと第1接続部が、第2装置には第2ディスプレイと第2接続部が備わっています。図1、図2、図4に示されるように、これらの装置は脱着が可能であり、用途に応じて取り外し、あるいは取り付けることができる設計です。これにより、持ち運びや保管時の利便性も考慮されています。

2. 接続方向による表示モードの切り替え

装置の接続には異なる2つの方向(第1接続状態と第2接続状態)があり、各状態で異なる表示や操作が可能です。図6、図7は第1接続状態を示しており、この状態では第2装置が第1ディスプレイを覆うように配置され、ディスプレイの保護や電力の節約に役立ちます。

一方、図10、図11に示される第2接続状態では、第2装置が反転して接続され、第1ディスプレイが露出し、両ディスプレイを同時に使用できる状態が実現されます。これにより、デュアルディスプレイを活かしたインタラクションが可能になります。

3. 無線通信の構造とアンテナ配置

両装置間の通信は無線方式を採用しており、高周波の不要な放射を抑えるための工夫が施されています。各装置には内部アンテナが搭載され、接続部付近に配置されることで、電磁界結合を通じた無線通信が可能です。図14、図15は、接続時のアンテナ132と234(=236)の位置関係を示しており、接続方向に応じてアンテナの配置が変更され、適切な電磁結合が確保されます。これにより、装置間で安定した通信を維持しつつ、不要な放射を抑えることができます。

4. 装置間の信号制御

これらのアンテナにより、装置が分離している状態でも無線通信が可能であり、周波数帯が状況に応じて制御されます。第1接続状態および第2接続状態の各々で信号伝送の強度が調整され、装置が分離している場合には低い周波数帯が使用されることで安定した通信が確保されます。この仕組みにより、無線通信を利用しながらも高い操作性が維持されます。

この発明のポイントを簡単にまとめると、以下の通りです。

1. デュアルディスプレイ構造

2つの装置を組み合わせたデュアルディスプレイ設計で、接続方向により異なる表示モードを提供します。

2. 脱着可能な接続方式

第1装置と第2装置が脱着可能であり、異なる方向での接続(第1接続状態と第2接続状態)により、保護状態やフル表示状態などの多様な使い方を実現します。

3. 無線通信によるデバイス間接続

外部端子を必要とせず、内部アンテナを利用した電磁界結合で通信を行い、高周波の不要な放射を抑えます。装置が接続されているときも分離しているときも通信が可能です。

4. 柔軟な操作インターフェース

第1装置にはスティックやボタンの入力部が、第2装置にはタッチパネルが備わっており、接続状態に応じて異なる操作感が得られます。

5. 高い携帯性と安全性

持ち運び時には、装置が覆われてディスプレイや操作ボタンの保護ができ、不意の操作や損傷を防ぎます。

1. 進化したデュアルディスプレイのゲーム機

この発明に基づいて、デュアルディスプレイを活用した革新的なゲーム体験が実現される可能性があります。例えば、2つの画面が接続状態によって役割を変え、メイン画面とサブ画面として、あるいはゲーム画面とインベントリ管理画面として使い分けることが可能になります。さらに、友人と接続し、片方がコントローラー、もう片方がディスプレイとなるような協力プレイのシナリオも考えられます。

2. ポータブルメディアセンター

映画や音楽などのエンターテインメント分野で、デュアルディスプレイのポータブルメディアセンターとして活用される未来が考えられます。たとえば、片方のディスプレイで映画や動画を視聴し、もう一方でコントロールや字幕を表示するなどの新しい視聴体験が可能です。また、接続状態を変えることで音響モードが調整され、臨場感あふれるエンターテインメント体験が提供されるかもしれません。

発明の名称

電子機器

出願番号

PCT/JP2022/042086

公開番号

WO2023203801A1

出願日

2022年11月11日

公開日

2023年10月26日

出願人

NINTENDO CO., LTD.

発明者

OGASAWARA YOSHIYASU
TSUCHIYA HITOSHI
NIWA MASATO; SATO TAKAHIRO
TANIGUCHI NONOHO

国際特許分類 G06F1/16
G06F1/18