アップルに続き、ソニーは自社でEVの新会社設立。 クルマが変われば販売の仕組みも変わる


新年早々、ビッグなニュースが報じられた。ソニーが自社でEV(Electric Vehicle)に参入すると4日、米ラスベガスで発表したのだ。2020年にソニーはすでにEV「VISION-S」を発表していたので、今回は驚きよりむしろ現実的な期待のほうが大きく印象的だった。

今回、CESにおいてソニー吉田社長が「ソニーはモビリティを再定義する『クリエイティブエンタテインメントカンパニー』になれる」とし、新会社「ソニーモビリティ株式会社」の設立とともに、自社でEVを展開していく方針を明らかにした。

このEV市場、保有台数(乗用車)は世界全体で、2010年に1.7万台だったが、そこから増加トレンドが徐々に加速し、20年には1020万台と1000万台を超える規模となっている。

さらに、25年に5172万台、30年に約1億4500万台になるとの予想もされている。国・地域別で見ると、2030年時点では、中国が最も多く約5600万台、次いで欧州(約4200万台)、米国(約1600万台)、インド(約900万台)と続く。

日本はいずれも「その他」に入っており、世界市場から見ると日本国内EV市場および関連企業の対応は出遅れているということになる。しかしながら電気自動車(EV)の特許競争力ランキングをみると日本の企業の優位性は見て取れるので今後の動向に期待したい。

1位トヨタ自動車
2位フォード
3位ホンダ
4位ゼネラルモーターズ
5位デンソー
6位日産自動車




14位パナソニック




17位日立製作所
18位三菱電機

電気自動車(EV)の特許競争力ランキング

ソニーこそ出てこないが、ソニーはEV用途に向いていると言われているリン酸鉄系リチウム2次電池では、特許件数を含む技術分野で圧倒的な総合力を持っているとされる。また、MEMSやカメラ、映像システム等ですでにTier2、3として自動車産業のサプライチェーンの一員となっている。

さらに、EVパワートレインやシャーシ・ボディ、サスペンションなどはマグナインターナショナルとのパートナー戦略によって、オートモーティブグレードの製品製造に大きな問題はないとも報じられている。

これもSDGsにおける「脱炭素化社会」への流れだ。2022年から多くの分野で全く新しい世界へと根底から変わる。表層的な変化ではない。クルマはエンジンからモータへ、それはガソリンから電気への大転換になる。

それだけ見てもソニーの新規参入、またアップルも「アップルカー」の開発を加速化させており、家電・テクノロジー関連業界へのフォローウインドとなっている。この二社、それぞれ製品開発のアプローチは、その優位性満載のいわば走る“スマホ”といった「家電・車」な感じがするのは私だけだろうか。

ちなみに、ソニー(関連会社含む)が保有するEV関連の特許を検索してみたところ、なんと193件もの技術が既に権利化されていた。

その一覧がこちら

驚くのは、表をの最後を見て頂くと分かる通り、約30年以上も前から関連特許を取得している点だ。きっとその頃から既に夢のある技術者たちが未来を予想し、技術を温めていたことが想像できる。特許の有効性はともかく、先見の目と実現力はさすがと言える。

さて、この「家電・車」だが、どのように販売するのかに関心が移る。こうした関連技術をリソースとした新規参入組は製品を造ることはできても、アフターサービスも含めた顧客対応、いわゆる販売網、販売の仕組み・ノウハウを持たない。

そこで、例えばユニクロ。ユニクロは大型店舗開発を今後の成長エンジンとし、一番新しいユニクロを表現する場と位置付けていることもあって、デザイン開発および販売での戦略的提携。特に郊外大型店におけるフラッグコンテンツとして。

また、ヨドバシカメラがEVの販売を検討していてもおかしくない。住宅まで販売している無印良品の顧客層とソニーは相性もいいだろう。
もちろんクルマのネット扱いではソニー独自での構築が可能だ。コンテンツとしての魅力、動画適性、メタバースでの扱いはお手のものだ。チャット対応は当たり前で、その場での決済もいまどき可能だ(利用するしないは別として)。デジタルはソニーの強いところ。

とは言え、ソニーEVはおそらくEVの市場シェアを競う戦略ではなく、ソニーらしさとテクノロジー技術をベースに『家電EV』として、デザインと技術=特許満載の家電の新星BALMUDAのような存在にも見えてくる。

それこそ、大量生産・大量消費の構造から決別した新たな脱炭素社会における新家電・EVメーカーのあり方として。ソニーのEV、そのマーケティング戦略に関する発表にも今後目が離せない。モノが変わればマーケティングが変わる!


ライター

渡部茂夫

SHIGEO WATANABE

マーケティングデザイナー、team-Aプロジェクト代表

通販大手千趣会、東京テレビランドを経て2006年独立、“販売と商品の相性” を目線に幅広くダイレクトマーケティングソリューション業務・コンサルティングに従事。 通販業界はもとより広く流通業界及びその周辺分野に広いネットワークを持つ。6次産業化プランナー、機能性表示食品届出指導員。通販検定テキスト、ネットメディアなどの執筆を行う。トレッキングと食べ歩き・ワインが趣味。岡山県生まれ。