「地方+モノ+観光」、さらには「住」~ことしは『地方』から目が離せない

ことしも元旦の早朝、普段の2倍ほどある分厚い新聞を読むことから一年が始まった。元旦の新聞は各紙編集部の思い入れが強いのか実に興味深く、ことしも希望と覚悟で2023年を新鮮に感じさせてくれた。そして、三が日も過ぎると各業界、各分野いろいろな儀式で新年の始動の音が聞こえてくるのが、その中でまずは4日の午前9時、恒例の日本取引所グループの大発会から日本経済が始まる。

そんな日本の新年のさまざまな恒例行事はまさに日本文化。その中のひとつ、初競りも正月らしい。ことしも5日、東京は豊洲の中央卸売市場でも初競りが行われ、注目のホンマグロ(クロマグロ)は大間産212キロが3604万円で落札され、この日の取引で最高値の「一番マグロ」となった。大間産が一番マグロで落札されるのは12年連続だそうです。

このマグロ、釣り上げたのは大間町の漁師竹内正弘さん(71)で第56新栄丸(19トン)の船長。釣りあげたのは昨年12月31日朝。大間埼灯台から7、8キロ沖の津軽海峡ではえ縄を入れ、巨体をものにしている。「肉質や体形、肌の色などから最高の魚に見えた」と報道されている。

また、大間のマグロと言えば、お正月のテレビ番組で私がつい見てしまうのが、テレビ東京の大間のマグロ漁師の物語。ことしも「洋上の激闘!巨大マグロ戦争2023」と題して、本州最北端の町大間町でマグロ漁師が一攫千金を狙う物語が放送され、毎年ながら感動のドキュメンタリーでした。

この「大間マグロ」、ご存知の地域ブランド(地域団体商標)として2007年6月1日商標登録(商標登録5283516号)されている。大間のマグロは「一本釣り」という独特の漁法も相まって、報道や小説、そして映画にもなったことで、全国的に知名度が高く地域ブランドの代表格のひとつ言える。

ところが、この「大間マグロ」で気になることが起きている。昨年2022年10月に商標の再出願(商願2022-122837)がされているのだ。その違いは“指定商品”にあって、簡単に言えば既に登録済のものでは、青森県下北半島大間沖で漁獲されたことが条件になっているが、再出願では、漁獲された場所は問わず大間港に水揚げされれば「大間まぐろ」と呼べるということで、大幅に条件が緩和されている。漁獲量の減少がその主な理由だと想像はつくが、高いブランド価値で通ってる「大間マグロ」だけに、これによってそのブランド力とマグロ品質が下がらないことを願うだけだ。

どんなブランドにおいても確立させるには手間と時間がかかる。しかも、ブランド化を確立したとしても、その維持には苦労もコストもかかる。その意味で、地域ブランドは地域活性化の即効薬ではないが、そのコンテンツの内容とマネジメント=稼ぐ力は戦略的に時に特効薬ならず漢方薬としてとても有効なもので、その効果は緩やかで、持続的に現れ、地域の体質自体を改善する。時に劇的に。

地域ブランド(地域団体商標)の登録件数は22年11月末現在、その出願数は1,324件(国内外)有効登録件数741件(国内外)となっている。それだけの価値のストック、つまり宝物が全国にはあるということだ。商標にこだわるわけではないが地域ブランド=コンテンツとして。それは、気候や風土・土壌などの自然的な特性、あるいは、伝統的な製法・地域伝統の文化などの人的な特性といった地域性が商品やサービスと結びつくことにより、無形資産の有効活用の展開が具体的に始まる象徴的な取り組みで経済的価値の側面でもとても興味深い。

その複合的で感動のストーリーが「大間マグロ」にはある。漁師の人間ドラマと圧倒的に旨いマグロ、訪れれば本州最北の漁港の風情と地元でいただく本物の「大間マグロ」。まさにテレビ東京のドラマそのものだ。例えばそのままメタバースにアップすればメタコマースとしても魅力的なコンテンツになる。そんな刺さる地域ブランドが日本には1,000を超える。きっと世界中からひとも来るだろう。

「地域+商品(モノ)」さらには「創生」というからには「地域+商品(モノ)+観光」そして「住」。東京23区から地方でのチャレンジを応援するため、地方へ移住、起業で最大300万円受けられる政府の地方創生の動きも本格化してきている。

観光、雇用、一次産業従事者の所得増、働き方改革などなど、さらには大量生産大量消費社会構造からの脱却、食糧自給率のアップ、SDGsへの取組み・・・何かにつけてことし注目のキーワードの一つは間違いなく『地方』だ。


ライター

渡部茂夫

SHIGEO WATANABE

マーケティングデザイナー、team-Aプロジェクト代表

通販大手千趣会、東京テレビランドを経て2006年独立、“販売と商品の相性” を目線に幅広くダイレクトマーケティングソリューション業務・コンサルティングに従事。 通販業界はもとより広く流通業界及びその周辺分野に広いネットワークを持つ。6次産業化プランナー、機能性表示食品届出指導員。通販検定テキスト、ネットメディアなどの執筆を行う。トレッキングと食べ歩き・ワインが趣味。岡山県生まれ。