実用可能?宇宙船の速度を極限まで加速させる技術

映画ジャンルでいつの世も熱狂的なファンを獲得するのはサイエンス・フィクション、SFです。SFの中でも特に『宇宙もの』『スペースファンタジー』と呼ばれる分野は、大人も子供も、不動の人気ジャンルといえるでしょう。スター・ウォーズを始め、ガンダム等のアニメでも、宇宙が舞台となっているものに欠かせないのが「宇宙船」です。

人類が宇宙開発を始め、月に降り立ったのが1969年ですが、現在では(一般的ではないものの)宇宙ステーションで長期間生活を行うまでになりました。また、宇宙開発も国家事業ではなく民間事業が主体となりつつあり、我々のような民間人が気軽に宇宙旅行できるようになるのも、さほど遠い未来ではないように思えます。

今回紹介する発明は、広大な宇宙空間を移動するにあたり、どうしても必要となる「スピード」をいかにして高めるか、その技術に関する特許となります。米国の特許なのですが、実は「UFO特許」として宇宙マニアの間では有名なものです。特許番号:US10144532B2、登録日:2018年12月4日、特許権者はなんと米国海軍長官です。

非常に難解な内容の特許ですが、ごく簡単にいえば、飛行物体の周囲に量子力学で存在が確認されている「局所的真空エネルギー状態」を作り出すことで、飛行物体がその真空に「吸い込まれる」ことで極限の速度を実現するのだそうです。そのような真空状態を作り出すのにどれだけのエネルギーが必要なのかは明らかにされていないのですが、少なくとも理論的には可能、というところにあるようです。

宇宙船を電磁気学的な理論で加速・航行させるというアイデアは(実現可能性はともかく)これまでにもいくつかありました。特許化こそされていませんが、米国のJohn Quincy St. Clair氏が発明した「三角宇宙船」なども挙げられます(公開番号:US2006/0145019A1、公開日:2006年7月6日)。

今回ご紹介する特許は、米国国内でも「UFO特許」として有名なものです。

理論上、量子力学では、相転移の急激な変化によって誘発される対称性破壊、つまり物質が他の粒子とその反粒子に分解される、加速されたエクスカーションと呼ばれる状態が存在します。

この存在時間が非常に短いとされ、局所的時空、局所的真空エネルギー状態といわれますが、この状態においては運動中のシステム(物体)の慣性質量、つまり重力質量を低減することが可能といわれています。

この慣性質量の低減を、物体のすぐ近くで、発生させ、局所的な真空エネルギー状態における量子場の変動を操作することで、航空機の慣性、すなわち、運動・加速に対するその抵抗を低減することが可能と考えられ、この結果、極端な速度で移動することができる、慣性質量低減装置を使用する航空機が実現できるとされました。

そして、この技術を実現させることは、航空宇宙推進および発電の分野を大きく前進させると予測されました。

高エネルギー電磁場発生器(HEEMFG)システムによって得られると考えられる、加速モードでの最小限に帯電した物体の高周波回転(軸方向スピン)および/または高周波数振動を適用することによって、量子真空場の変動重ね合わせ、つまり巨視的真空エネルギー状態の、高いエネルギー特性をもつ強い局所的相互作用が可能となります。このようにして、高度の局所的真空エネルギー分極を達成することができます。

HEEMFGシステムを装備した航空機の近傍における真空の局所的な分極は、高エネルギーのランダムな量子真空場の変動を凝集させる効果があります。

そして、真空分極を可能にすることによって、航空機システムからエネルギー質量を除去することが可能であり、慣性質量(つまり重力質量)の減少は、真空中の量子場変動の操作を介して達成可能とされています。言い換えれば、移動する航空機の近傍で真空を分極することによって、航空機の慣性、すなわち、運動/加速に対する、その抵抗を低減することが可能であり、その結果、極端な速度を達成することができるというわけです。

  • 慣性質量低減装置を用いた飛行物体であって、
  • 内側共振キャビティ壁と
  • 外側共振キャビティ壁が、共振キャビティを形成し、
  • 外側共振キャビティ壁とマイクロ波エミッタが、共振キャビティ全体にわたって高周波電磁波を生成し、外部共振キャビティ壁が加速モードで振動し、外部共振キャビティ壁の外側に局所偏極真空を生成する飛行物体。

図1及び図2に示すように、慣性質量低減装置を使用する航空機10は、外側共振キャビティ壁100と、電気的に絶縁された内側共振キャビティ壁200と、マイクロ波エミッタ300を備えます。

外側共振キャビティ壁100および内側共振キャビティ壁200は、共振キャビティ150を形成します。

マイクロ波エミッタ300は、外側共振キャビティ壁100全体にわたって高周波電磁波50を生成し、外側共振キャビティ壁100を加速モードで振動させ、共振キャビティ150の外側に局所分極真空60を作り出します。航空機はこの真空に「吸い込まれる」ようにして加速するというわけです。

本発明の航空機は、共振キャビティ内のマイクロ波誘起振動を利用します。このマイクロ波を実現するためには、共振キャビティ内に複数のアンテナ(無線高周波エミッタ源)を配置し、300メガヘルツ〜300ギガヘルツの電磁スペクトル(EMスペクトル)を発生させます。

このときマイクロ波エネルギーが外側共振キャビティ壁100と結合する有効性は、キャビティQ値と呼ばれます(注:内側共振キャビティ壁は電気的に絶縁されているので振動しません)。

このパラメータは、「蓄積されたエネルギー/失われたエネルギー」として表現することができ、アルミニウムまたは銅、もしくは極低温に冷却された超電導材料(イットリウム/バリウム/銅酸化物またはニオブ)が外側共振キャビティ壁の表面に使用されることで、Q値=104〜109以上の範囲とすることができます。この状態で、航空機の表面に局所的な真空を発生させるというのが、「極端な速度」の原理となります。

発明の名称

Craft using an inertial mass reduction device

公開番号

US2017/0313446A1

特許番号

US10144532B2

登録日

2018.12.04

発明者

Salvatore Cezar Pais

特許権者

The United States of America as represented by Secretary of the Navy(米国海軍長官)

<免責事由>
本解説は、主に発明の紹介を主たる目的とするもので、特許権の権利範囲(技術的範囲の解釈)に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解を示すものではありません。自社製品がこれらの技術的範囲に属するか否かについては、当社は一切の責任を負いません。技術的範囲の解釈に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解については、特許(知的財産)の専門家であるお近くの弁理士にご相談ください。