Vol14//ついに実現? ドローン配達

最近発表された近未来アクション系の人気ゲームでは、ゲーム内の主人公が購入したアイテムや、作製した物資を、ドローンが届けてくれるというものが増えてきました(7Days To Die、RUST、Satisfactoryなど)。あくまでゲーム内の話ではありますが、現実的な可能性を認めた上での「たぶんできるだろうな」「プレイヤーにもわかりやすいだろうな」ということでドローン運搬を採用しているものと思われます。また、実験的にではありますが人が少ない場所でドローンによる物資の運搬が実際に行われています。

このような、まだ仮想的・実験的な技術と考えられていたものを実用化するための発明が、EC大手のAmazon社から特許出願され、特許権が取得されました(出願日:2016年7月18日、特許番号:US9921579B1、登録日:2018年3月20日)。

近年、EC市場(通信販売業)はその規模を拡大し続けています。経済産業省の調べでは、B to CのEC市場は9年連続で拡大し、その成長率も年々増加しています。いまやEC市場は19.4兆円規模にまで成長しているそうです。ネットショップは多様化する消費者に受け入れられ、新規参入も増え続けています。

しかし、ネットショップを利用する場合の問題の一つに、既存の物流網を利用するがゆえに、ユーザーが実際に商品を手にするまでに多くの時間がかかってしまうことが挙げられます。ユーザーは少しでも早く商品を入手したいわけですから、リードタイムの短縮はネットショップが抱える大きな課題となっていました。そのような背景から、既存の物流に比べて直線的に、最短距離で商品を届ける、ドローン配達の技術が発明されました。

しかしこの技術には、人間の配達員なら容易にできることなのにドローンでは難しい、ある問題がありました。

それは、商品の配達には、配達場所の近くにいる人間とのコミュニケーションが必要な場合が多いということです。例えば配達場所の近くや、配達経路の途中には、注文者ではない人もいるかもしれません。ドローンが到着すること、通過することを知らなかった人は、ドローンに対して「あっちにいけ」というジェスチャーで意思表示をすることでしょう。逆に、注文者であれば手招きをするなどのジェスチャーをすることが考えられます。

このような、人間とのコミュニケーションを図るために、本発明では人間のジェスチャーや言葉を判別し、飛行動作を制御・変更することが開示されました。このようなジェスチャーの判別は飛行経路の安全維持にも有用です。配達途中に出くわす人間とのやりとりによって、安全な経路をたどることが可能となるわけです。

店頭で商品を購入して自宅まで運ぶよりも、インターネットショップで購入した商品を自宅まで運んでもらう配達サービスを利用する人は多いと思います。配達サービスを利用すると、顧客がインターネット上のショップで注文した商品は、例えばトラックに積み込まれ、配達員によって顧客の玄関先まで届けられます。

しかし、このような従来の物流システムでは、顧客が商品を注文してから数日かかる場合もあります。できるだけ早く商品を入手したい顧客にとっては、いくらインターネットで注文できても、商品が届くまで数日もかかるのならあまり便利なショピングになりません。

本発明は、上記の問題を念頭に置いて着想されたものです。本発明は、ドローンなどの無人航空機(UAV)を使って顧客に商品を届けることができる技術に関します。

本特許発明の「無人航空機」は、地上にいる人間のジェスチャーを飛行しながら認識して、目的の場所まで商品(荷物)を届けるサービスを提供します。「無人航空機」は、フレーム(装置骨格となる枠体)部分、荷物を保持する部分、通信システム部分、飛行中の制御を担う頭脳部分を備えます。

簡単に説明しますと、本発明の無人航空機(UAV)は、例えばドローンのように空中を飛行し、人間のジェスチャーを認識しながら荷物を配達するように構成されています。無人航空機は、配達場所などの情報を含む配達プラン情報にアクセスしつつ配達場所へと飛行しながら、途中で遭遇した人間のジェスチャーを認識できます。

そして、無人航空機と人間とが通信し、人間が無人航空機を配達場所までサポートすることができます。

以上のように本発明は、地上にいる人間のジェスチャーを認識して、そのジェスチャーによって示された人間の意志に従って目的地へ到達できる無人航空機(UAV)を提供します。

また、本発明は、このような無人航空機(UAV)と同様に操作される装置、および、飛行中の制御のためにコンピュータが実行する方法も提供します。

このような発明を実施するための具体例について、以下に説明します。

図1に図示されているのは、無人航空機と人間との相互作用に関する技術を実施するための環境100、利用者102、および、荷物の配達のために利用される無人航空機(UAV)104などです。UAV104に荷物を自宅に配達してもらったことがある利用者102が、UAV104の到着を待っています。ところが、UAV104は、UAV104の飛行予定を知らない他人110と遭遇する場合があります。

このとき、他人110は、「近づくな」という意思表示のためにUAV104に向けて腕を振るか、または何らかの言葉112を発します。

飛行を続けてUAV104が利用者102や利用者の家108に近づくと、利用者102がUAV104にジェスチャー(例えば、腕を振る、ライトの点滅、指差し)を見せます。ジェスチャーは、例えば話すこと106でも可能です。

これらのジェスチャーは、UAV104によって受信され、管理システムによって処理され、飛行中の動作を制御するために使用されます(例えば、飛行経路を変更する、利用者102と通信するなど)。

【図1】

図2は、無人航空機と人間との相互作用を実施できるUAV200(図1のUAV104の一例)を示します。UAV200は、例えば民間航空規格に基づいて設計され、管理システム202を備えます。

管理システム202は、UAV200を自律的または半自律的に制御および管理するためのコンピュータ、または、遠隔操作を可能にするためのコンピュータを備えます。

また、管理システム202は、例えば充電式バッテリ、ナビゲーション装置、およびアンテナ、全地球測位システム(GPS)などを備えています。

さらに、UAV200は、トップカバー210内に収容された通信システム224を備えます。通信システム224は、カメラなどの光センサ204と、音を取り入れる聴覚センサ206と、スピーカなどの出力装置208とを備えます。

管理システム202は、通信システム224によって情報を受信し、情報を提供するように構成されています。

例えば、光センサ204および聴覚センサ206によって情報(ジェスチャー)を受信し、出力装置208によって情報(音、点滅するライト、声)を提供します。したがって、UAV200は、利用者との双方向通信をサポートします。

図2に示すように、UAV200は、ペイロード214(配達ボックス)を保持するように構成された保持システム212を備えます。

保持システム212は、例えばペイロード214(配達ボックス)を保持するための2つの対向アーム216を備えることで、管理システム202による制御によって、ペイロード214(配達ボックス)を地表に落とすように構成されています。

例えば、配達ボックスは、その配達場所に落下する際に開いて降下を遅らせるパラシュート、または、UAV200からの落下の衝撃を軽減するために、荷物を覆うパッドを備えます。

さらに、UAV200の推進システム218は、図2に示すように複数の推進装置220(A)~220(F)を備えます。各推進装置は、プロペラ、モータ、バランスシステム、制御機構などです。推進システム218(プロペラ等)は、複数の箇所に分散して配置され、管理システム202からの指示を受けなくても、各プロペラを個別に調整することによって、UAV200をさまざまな方向へ飛行させることができます。

また、UAV200は、ペイロード214(配達ボックス)を支持できる十分な剛性の着陸構造体222を備えます。着陸構造体222は、さまざまな形状の地面に着陸するために、また、そこから離陸するために細長い脚を備えます。

【図2】

図3では、無人航空機と人間とを相互に連携させるための情報システムの構造300が例示されています。本記事では概略のみ説明いたします。

システム構造300は、電子市場の一部である管理装置302を備えています。この管理装置302は、電子市場での購入や配達サービスと関連付けられており、UAV304を利用して商品を顧客に配達することを制御します。管理装置302は、UAV304を使った配達プランの前、途中、終了後に、UAV304を制御するように構成されています。

また、利用者310によって操作されるユーザ装置308(1)~308(N)(以下、「ユーザ装置308」)は、ネットワーク306を介して、管理装置302およびUAV304と通信できる、いわば私たちのような利用者が使うパソコンやスマホです。そのような通信によって、利用者310は、UAV304と対話できます。ユーザ装置308は、ネットワーク306に接続され、電子市場を構成するウェブサーバを経由して、管理装置302と通信できます。

UAV304は、メモリ314およびプロセッサ316を含むコンピュータ312を備えます。コンピュータ312は、UAV304に関連する情報を記憶および/または保持するためのデータベースなどを有するデータストア326を備えます。

データベースには、UAV304が認識できるジェスチャーが格納されています。例えば、顔の前で腕を積極的に振ること、腕で頭を覆うこと、鳥の群れを追い払うように腕を動かすというジェスチャーはコンピュータ312によって処理され、UAV304は配達プランを中止する指示や、飛行経路の軌道を修正する指示を受けることになります。

一方、招くように腕を振るというジェスチャーがコンピュータ312によって処理されると、着陸、配達といった指示を受けることになります。

【図3】

図5は、UAV502(UAV200の一例)の配達プランの実行例500を示しています。UAV502の飛行経路510が、二点破線(-・・-・・)と矢印で示されています。記号①~⑤に沿った飛行経路510は、自宅520にいる利用者518に荷物を配達するときの経路です。

場所①において、無人航空機504は、おおまかな位置情報、詳細な位置情報などの配達プランを受信します。

おおおまかな位置情報とは、配信場所506に対応するGPS座標、GPS座標への道順、自宅520の住所などです。UAV502は、配達場所506に近づくまで(例えば円508に入るまで)、おおおまかな位置情報を受信し、円508のなかに入ると、詳細な位置情報に切り替えることができます。

場所②において、例えばUAV502が人間グループ512に出くわしたとします。UAV502は、飛行経路510に沿って安全に飛行するためにジェスチャーを監視するように構成されています。

よって、人間グループ512の近くを飛行するときに、UAV502の飛行予定を知らなかった人間グループ512のジェスチャーを受信できます。例えばUAV502を遠ざける方向へ導くジェスチャーを人間グループ512がおこない、これらのジェスチャーがUAV502に受信されると、そのジェスチャーに従ってUAV502が飛行経路510を修正することになります。このように、UAV502は、人間からのジェスチャーを受信し、受信したジェスチャーに応じて飛行するように構成されています。

場所②で飛行経路510を修正した後、UAV502は、場所③まで飛行を続けます。途中で、UAV502の飛行経路510は、円508と交差します。

このときが、UAV502が実施するおおおまかな位置情報から詳細な位置情報への変更のきっかけとなります。詳細な位置情報に切り替わると、よりジェスチャーを意識しながら飛行します。場所③の近くでは、隣家514と隣人516とが円508内に入っています。

この例では、荷物の配達を受けない隣人516は、UAV502が近くを飛行するときに追い払うようなジェスチャーをおこなうことができます。ジェスチャーによって、飛行経路510の軌道は隣家514から離れる方向へ修正されます。飛行経路510が修正された後でも、配達場所506に到着していなければ、詳細な位置情報を取得しながら飛行できます。

UAV502は、飛行経路510に沿って場所④の配達場所506に近づきます。利用者518は、ジェスチャーによってUAV502へ指示して、UAV502と対話します。

すると、UAV502は、ジェスチャーをしている人がUAV502の接近を望んでいると認識します。UAV502は、例えば、配達のスケジューリングに関して利用者518に提供された識別情報にアクセスして情報を確認できます。

利用者518は、携帯電話などを使用してUAV502に指示できます。UAV502は、配達位置506を特定できたら、利用者518の個人情報を検証し、荷物の配達方法を決定してから利用者518へ荷物を配達します。

配達が完了すると、UAV502は、飛行経路510を通って無人航空機504(場所⑤)に戻ります。場所④から場所⑤まで飛行している間に、UAV502が人間に遭遇した場合、UAV502は、ジェスチャーを受信し、飛行経路510の途中で人間と対話して、飛行計画の軌道を修正することができます。

もちろん、UAV502がその飛行経路に沿って移動する間、まったく関係のない他人に近づかないように飛行します。

飛行経路510の記録、および、飛行経路の途中における利用者との対話記録は、UAV502のメモリに保持されます。これらの対話記録に基づいて、UAV502、および、UAV502と通信可能なコンピュータデバイスは、適切な機械学習技術を使用して、ジェスチャーに応答するためのUAV502の精度を向上させることができます。

【図5】

上記の通り、本発明は、飛行途中および飛行目的地において、ジェスチャーを認識して人間と無人航空機等との間で意思疎通をはかりながら、無人航空機等による荷物の配達サービスなどを提供することができます。

本発明のポイントを解説しますと、「無人航空機(UAV)」は、パッケージ(荷物)を保持するように構成された保持システムを備えます。

また、ジェスチャー入力を受信するように構成された通信システムを備えます。さらに、以下のステップを実行するように構成され上記の通信システムと通信できる管理装置を備えます。

管理装置は、利用者の記録データに記録されている所定の場所へUAVを導くように構成され、また、通信システムによって利用者のジェスチャーを受信するように構成されています。

さらに、管理装置は、上記のジェスチャーの受信に応答して、ジェスチャー情報にアクセスするように構成され、上記のジェスチャー入力と上記のジェスチャー情報とに基づいて、無人航空機の動作調整(所定の場所で荷物を落とすように保持システムに指示する)を決定するように構成されています。

本発明は、2013年の終わり頃に発表された「Amazon Prime Air(アマゾンプライムエア)」というサービスを実現するために利用されていると思われます。

米アマゾン・ドット・コムは、ドローン(無人機)を使った配達サービス「Prime Air(プライムエアー)」に必要な認可を米連邦航空局(FAA)から受けたと発表しています。このサービスの概要について発表されているように、注文してから30分以内に配達するために開発された発明と思われます。

上述しましたように、特許発明の種類は「無人航空機」、「装置」、「コンピュータが実行する方法」の3つですが、すべての特許発明が上記の「Amazon Prime Air(アマゾンプライムエア)」というサービスに利用されると思われます。

本特許発明は、まさに上記の「Amazon Prime Air(アマゾンプライムエア)」というサービスを実現するためのアイデアであると予想されます。

発明の名称

無人航空機

出願番号

US 15/213307 (アメリカ合衆国)

特許番号

US 9,921,579 (アメリカ合衆国)

出願日

2016.7.18

登録日

2018.3.20

出願人

Amazon Technologies, Inc., Seattle, WA [US] アマゾン社

発明者

SCHAFFALITZKY FREDERIK [US]

国際特許分類

G05D 1/00 (2006.01)
B64D 31/06 (2006.01)
B64C 39/02 (2006.01)
B64D 1/10 (2006.01)

経過情報

2014年9月29日に出願された特許9,459,620 の継続出願です。

<免責事由>
本解説は、主に発明の紹介を主たる目的とするもので、特許権の権利範囲(技術的範囲の解釈)に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解を示すものではありません。自社製品がこれらの技術的範囲に属するか否かについては、当社は一切の責任を負いません。技術的範囲の解釈に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解については、特許(知的財産)の専門家であるお近くの弁理士にご相談ください。