営業の現場は、これまでにも多くのITツールの登場によって効率化が進められてきた。しかし、未だに多くの企業が直面している課題がある。それは「ナレッジの活用」だ。過去の成功事例や失敗事例、顧客との商談記録、提案資料、議事録といった営業ナレッジは膨大に蓄積されていく一方で、それらを「必要なときに」「必要なかたちで」引き出して活用できている企業は、決して多くはない。
そんな中、営業ナレッジ活用の常識を根底から覆す新機能が正式リリースされた。ナレッジワーク株式会社(以下、ナレッジワーク)が開発した、特許出願済みの新機能「ジョブ検索」である。本稿では、この革新的な機能が営業活動にもたらすインパクトを、多角的に掘り下げていく。
営業ナレッジの「宝の持ち腐れ」問題
多くの企業では、営業支援ツール(SFA)やCRM、社内ナレッジ共有システムに情報を蓄積している。にもかかわらず、営業担当者が知りたい情報をスムーズに探し出せない状況が頻発している。たとえば、
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同じ業界への過去の提案内容を知りたい
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類似の課題を抱えていた顧客へのアプローチ方法を参考にしたい
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決裁者が誰だったのか、どのように合意形成を進めたかを確認したい
こうしたニーズに対し、「ファイル名検索」や「タグベースの分類」では限界がある。営業ナレッジは定型化されていない自然言語の集合であるため、従来の検索手法では文脈を理解できないからだ。
「ジョブ検索」が切り拓く新たな体験
ナレッジワークが提供する「ジョブ検索」は、この問題に正面から挑んだ画期的なアプローチだ。「ジョブ検索」は単なるキーワード検索ではなく、営業担当者が今やりたい「ジョブ」(=仕事・課題)を自然言語で入力すると、それに対応する社内ナレッジや過去の事例、商談記録、成功パターンなどを構造化して提示する。
たとえば「製造業の新規開拓で刺さった提案書が見たい」「IT業界で経営層に刺さったピッチはあるか?」といった問いを入力すれば、その意図をAIが文脈ごとに理解し、最適な情報を「回答」として返してくれる。まるで熟練の社内メンターに相談しているかのような体験が得られるのだ。
なぜ今「ジョブ検索」が求められているのか?
リモートワークの浸透や人材の流動化により、営業現場では「知っている人に聞けばいい」という属人的なナレッジ共有が難しくなってきている。また、新人営業の育成にも長い時間と経験が必要で、即戦力化が困難な時代になった。
こうした背景の中、「ナレッジは社内にあるのに活かせない」というジレンマが深まっていた。ナレッジワークの「ジョブ検索」は、こうした問題の本質に迫り、営業という高度な意思決定が求められる仕事において、必要な知見を瞬時に引き出すことを可能にする。
技術的背景と独自性──なぜ特許出願が可能だったのか
ナレッジワークがこの機能で特許出願を完了したのは、単に検索精度が高いからではない。「ジョブ」という概念に着目し、業務上の“やるべきこと”という抽象的なニーズを、自然言語から正確に抽出し、該当するナレッジの集合と結びつけるアルゴリズムに独自性があるからだ。
さらに、同社がこれまで蓄積してきた営業に特化した業務文脈モデルの構築と、ナレッジ構造化技術、UI/UXの最適化が合わさり、単なる「検索」ではない、極めて実用性の高い“問いかけと答えの体験”が実現されている。
営業活動の質と速度を両立する
「ジョブ検索」の導入により、営業担当者は過去の成功知見を即座に活用できるようになる。これにより、商談準備のスピードが飛躍的に向上し、同時に顧客への提案の質も底上げされる。属人性の排除によって、誰もが成果を出しやすいチームへと進化する可能性がある。
特に、ナレッジワークがターゲットとする「100名〜1000名規模の営業組織」では、このような“知見の民主化”が大きなレバレッジとなる。1人のトップセールスのノウハウを全員が活用できるようになれば、組織全体の成長スピードは指数関数的に加速するだろう。
今後の展望と営業の未来
ナレッジワークは今後、「ジョブ検索」を核に据えた営業ナレッジのエコシステム構築を進めていくという。商談の録音・文字起こし、議事録の自動要約、インサイトの自動抽出といった機能とも連携し、営業プロセス全体を“ナレッジ駆動型”に変革していく構想だ。
また、「ジョブ検索」は営業領域にとどまらず、カスタマーサポート、マーケティング、人材開発など、他部門への応用も視野に入れている。ナレッジを「探すもの」から「答えてくれるもの」へ──この変化は、業務の在り方そのものを変えるパラダイムシフトになるかもしれない。