Apple、耐指紋撥油コートの新技術を特許出願──iPhone 17は“美しさ”と“実用性”の両立へ


2025年秋の発売が見込まれるiPhone 17シリーズに関し、Appleが「光沢仕上げ」を再び採用するのではないかとの憶測が業界で高まっている。きっかけは、2025年初頭に公開されたAppleの特許出願「撥油性および耐指紋性を向上させた透明コーティング材料」に関する内容である。

この特許は、指紋や皮脂の付着を大幅に抑えるコーティング技術を特徴とし、ガラスや金属表面への耐久性・透明性・撥水性・撥油性を確保する内容となっている。Appleの製品開発サイクルや過去の特許戦略を踏まえると、2025年秋のiPhone 17 ProおよびPro Maxで本技術が搭載される可能性はきわめて高い。光沢仕上げへの再回帰は、単なるデザイン上の選択にとどまらず、Appleが追求する「触感と視覚の融合美」の重要なマイルストーンとも言える。

■「指紋問題」とは何だったのか

iPhoneシリーズの歴史を振り返ると、光沢ガラスや鏡面金属の採用と、それに続く「指紋汚れ」への不満は切っても切れない関係にある。初代iPhoneやiPhone 4の時代には、ガラス面に触れるたび指紋が付き、ユーザーはマイクロファイバークロスを常備するのが当たり前だった。

その後、AppleはiPhone 5以降にアルミニウム素材の採用を進め、iPhone 12ではマット仕上げの背面ガラス(Ceramic Shield)を導入。指紋の目立たなさは格段に改善されたが、その一方で「質感の高級感が損なわれた」という声も一部では根強かった。とりわけ、Proモデルユーザーの間では「ガラスの艶」「高級時計のような金属の輝き」への憧れが消えていなかった。

ここで注目すべきは、Appleの一貫した「視覚と触覚のインターフェース」に対するこだわりである。iPhoneの背面は単なる構造体ではなく、ユーザー体験の一部として設計されている。だからこそ、Appleは何年にもわたり指紋問題の解決に取り組み続けてきた。

■Appleの特許出願:ナノ構造と撥油層の融合

今回注目された特許(US出願20240045239など)では、従来の撥油コーティングに比べて、以下の技術的改良が確認されている:

  • ナノレベルの表面構造による汚れの付着防止
    微細な突起構造が表面張力を変化させ、指紋や皮脂が付着しにくくなる。

  • 多層構造の撥油・撥水コーティング
    基礎層とトップ層の間に中間層を設けることで、透明性と反射制御の両立を実現。

  • プラズマCVDやALD法による高耐久性加工
    加工方法として、原子層堆積(ALD)やプラズマ化学蒸着(CVD)を応用し、量産性にも配慮。

こうした構造は、単なる防汚機能ではなく、光学的な美しさの維持に貢献する。つまり、ユーザーが端末を手に取ったとき、目に映る「輝き」と、触れたときの「サラサラとした質感」の両方を最適化することが目的である。

■光沢回帰とiPhone 17の新戦略

ここで疑問になるのが、「なぜAppleは今このタイミングで光沢に回帰するのか?」という点だ。

背景には、スマートフォン市場におけるデザイン競争の激化がある。サムスンのGalaxy S24 Ultraではチタン素材の高級感を前面に押し出し、シャオミやOPPOもカスタムガラスや新素材による差別化を図っている。AppleもiPhone 15 Proでついにチタン素材を導入したが、その表面はブラスト加工によるマット仕上げだった。

つまり、次の一手として「チタン×光沢仕上げ×耐指紋コート」という三位一体の構成を選んだとしても不思議ではない。

また、Appleの近年の製品戦略では「素材と仕上げの差異」を高価格帯モデルの訴求ポイントにしている。iPhone 17 Proシリーズのみがこのコーティング技術を採用し、ベースモデルとの差別化を図る可能性は高い。

■デザインが示す企業哲学:素材は「体験」である

Appleにとって、素材や仕上げは単なる外観の問題ではない。そこには「体験としての所有感」をどうデザインするかという、深い哲学がある。ジョナサン・アイブ時代から続くこの思想は、ティム・クック体制になっても継承されており、素材の選定や特許の取得において一貫性が見られる。

今回の撥油コーティング技術もまた、素材とインターフェースの接点を再構築しようとする試みである。触れたときにベタつかず、光が滑るように反射し、汚れが付かない。そうした“完璧な表面”こそが、Appleが描く次世代スマートフォンの理想形なのだろう。

■特許から読み解く未来のApple製品

なお、Appleはこの耐指紋技術をiPhoneだけでなく、iPad、MacBook、さらにはVision Proの表面処理にも応用する可能性がある。特にAR/VR機器では、レンズや前面ガラスの清潔さがユーザー体験に直結するため、耐汚染性技術はより重要性を増す。

実際、Appleは過去にもARゴーグルに用いる「反射防止コート」に関する特許(US11287729B2など)を取得しており、今後は複数製品にわたる「高機能表面コーティング技術」のプラットフォーム化が進むことが予想される。

■まとめ:美しさは「見た目」ではなく「持続性」

iPhone 17シリーズで予想される「光沢仕上げ×高耐指紋コート」は、デザイン上の美しさを瞬間的に演出するのではなく、「使い続けても美しい」という持続性を追求するものだ。

Appleは今後も、素材、光学、感触、耐久性を包括的に設計することで、スマートフォンを「手に取るたびに誇らしくなる」プロダクトへと進化させていくだろう。

そして、その裏側には、数々の地道な素材開発と、特許に裏打ちされた技術革新があることを忘れてはならない。


Latest Posts 新着記事

ペロブスカイト・シリコンタンデム太陽電池:さらなる光電変換効率の向上へ

次世代太陽電池技術の最有力候補として注目されるペロブスカイト・シリコンタンデム太陽電池は、従来の太陽電池の光電変換効率を大きく上回ることが明らかになってきました。この革新的デバイスの実用化に向け、すでに様々な製造技術が開発されています。今回紹介する米国特許US11251324B2もその一つです。 https://patents.google.com/patent/US11251324B2/ 本コラ...

包装×保存×AI=知財革命──「Tokkyo.AI」で実現する食品技術の特許化最前線

1. はじめに:食品業界が直面する知財化の課題 昨今、食品メーカーを取り巻く環境は、フードロス問題の深刻化や消費者の安全・安心志向の高まりなどにより、新たな包装設計や保存技術の開発が急務となっています。革新的な包装材料やプロセスが次々と生み出される中、知的財産(IP)面での迅速かつ戦略的な対応が差別化の鍵を握ります。 しかし、多くの企業では「開発ドメインと知財部門のコミュニケーション不足」「特許調...

AIカメラ+音声識別による非接触発情検知システム、特許出願へ

近年、畜産業界において「牛の発情検知」は受胎率向上や繁殖効率改善に向けた重要課題となっています。その解決に向けて、画像と音声の両面から発情する牛を自動検知する革新的システムが開発され、すでに特許出願段階に至っています。本記事では、その背景・技術・効果・今後の展望を徹底解説します。 1.発情検知の重要性と従来技術 牛の発情期を正確に捉えることは、人工授精の適期を逃さず受胎率を維持するうえで不可欠です...

水素特許で世界をリード──トヨタ・ホンダの戦略と普及のカギ

はじめに 脱炭素の流れの中で、水素エネルギーが注目を集めています。その中で、日本の自動車大手トヨタとホンダは、水素関連技術において特許面で世界をリードしています。しかし、実際の普及には「コスト」と「規格整備」の両面で技術革新や政策支援が不可欠です。本記事では、両社の特許戦略を軸に、水素エネルギー普及の課題と展望を整理します。 1.特許戦略で先行するトヨタ・ホンダ トヨタの圧倒的特許力 パテント・リ...

動物のコトバをAIが読む時代へ:MeowTalkから世界の研究最前線

ペットの「にゃあ」に秘められた意味を、人間の言葉に変換してくれる──そんな未来を、AIが現実にしようとしています。米Akvelon社が手掛ける猫専用翻訳アプリ「MeowTalk(にゃんトーク)」から、中国の百度(Baidu)が申請した動物翻訳特許まで、最新の技術動向を追いかけてみました。 1. MeowTalk(にゃんトーク):身近な猫語翻訳アプリ MeowTalkは、ユーザーが愛猫の鳴き声を録音...

AI生成コンテンツの商標保護が現実に 特許庁が登録方針を整理

1. 背景と経緯 近年、生成AI(例:ChatGPT・Midjourney等)による文字列やマーク、ロゴなどの創作が急速に普及しています。こうしたコンテンツを保護する観点から、2024年に特許庁に設置された「AI時代の知的財産権検討会」では、中間とりまとめを公表し、AIが生成した商標等の取り扱いについて議論が行われました。 この中間とりまとめでは、商標法の目的は「業務上の信用維持と需要者保護」であ...

ソフトバンクG、特許で覇権狙う 生成AI時代の知財マネジメント

ソフトバンクグループ(以下、SBG)が「生成AI関連の特許をここ数カ月で1万件以上出願した」と、孫正義会長が2023年10月の「SoftBank World 2023」で発表しました。これはグループ全体(通信、投資先を含む)によるもので、出願の本格的な公開は1.5年後となるため、現時点で内容の全貌は不明ながら、AI分野における圧倒的なポートフォリオ構築の意思がうかがわれます。 1. 集中出願の背景...

世界初!宿泊予約者の希望に応じて自動紹介するビジネスモデル特許「移動先宿泊施設レコメンド3」取得

2025年、日本発の革新的な宿泊予約関連技術が注目を集めている。旅行者の利便性を格段に向上させるビジネスモデル特許「移動先宿泊施設レコメンド3」が、このたび世界で初めて取得されたのだ。これは、旅行中や移動中に次の宿泊地をまだ決めていない旅行者に対し、自動で宿泊施設を提案・紹介するという仕組みで、観光業界、特に地方創生を推進する自治体や宿泊事業者から大きな期待が寄せられている。 この基本特許技術は、...

View more


Summary サマリー

View more

Ranking
Report
ランキングレポート

中小企業 知財活用収益ランキング

冒頭の抜粋文章がここに2〜3行程度でここにはいります鶏卵産業用機械を製造する共和機械株式会社は、1959年に日本初の自動洗卵機を開発した会社です。国内外の顧客に向き合い、技術革新を重ね、現在では21か国でその技術が活用されていますり立ちと成功の秘訣を伺いました...

View more



タグ

Popular
Posts
人気記事


Glossary 用語集

一覧を見る