2024年10月、韓国のLEDメーカーであるソウル半導体(Seoul Semiconductor)は、欧州統一特許裁判所(UPC)において、同社の「No Wire(WICOP)」技術に関する特許を侵害した製品に対し、8カ国での販売禁止およびリコール、製品破壊を命じる判決を獲得しました。
この判決は、UPC設立以来、非欧州企業が主要な特許侵害訴訟で勝訴した初の事例であり、特許権者にとって画期的な成果となりました。
WICOP技術の革新性とその重要性
ソウル半導体の「No Wire(WICOP)」技術は、従来のワイヤーボンディングを排除したLED構造であり、LEDの小型化と高効率化を実現します。
この技術は、スマートフォンのフラッシュ、マイクロLEDディスプレイ、自動車用ヘッドランプ、高出力照明など、さまざまな分野での高効率LEDにとって不可欠なものとなっています。
WICOP技術は、LEDチップを直接プリント基板に実装することを可能にし、パッケージレス構造を実現しています。
これにより、製品の厚みを大幅に削減し、熱伝導性の向上や製造コストの削減が可能となります。
また、光の抽出効率が向上し、エネルギー効率の高い製品開発が促進されます。
UPC判決の詳細とその影響
UPCは、ヨーロッパ第3位のオンライン小売業者であるExpert e-Commerceに対し、8カ国での侵害製品の販売停止、回収、破壊を命じました。
従来、特許侵害の判決は国ごとにしか適用されず、特許権者は複数のヨーロッパ諸国で特許を行使するために多くの時間と費用を費やさざるを得ませんでした。
しかし、UPCの判決により、欧州全体での包括的な販売禁止措置が可能となり、ソウル半導体の特許保護が強化されました。
この判決は、UPCが販売禁止、リコール、および侵害製品の破壊を命じた国の数で、これまでで最多となる記録も打ち立てました。
ソウル半導体は、単に製品名を変更して侵害製品の販売を続けるLED企業や、意図的にこれらの製品を購入する大企業とも対峙してきました。
今回のUPCの判決は、ヨーロッパ諸国全体で侵害製品に対する包括的な販売禁止措置をもたらし、ソウルのNo Wire特許の有効性を完全に確認することになります。
知的財産権保護の重要性と企業の責任
ソウル半導体の創業者兼CEOである李正勲氏は、「出生に不平等があるかもしれませんが、人生におけるチャンスは平等であるべきです」と述べ、特許を尊重する文化の重要性を強調しました。
特許権の尊重は、若者や中小企業に革新を追求させ、最終的により良い世界の発展に貢献するものであり、企業の社会的責任としても重要です。
また、ソウル半導体は、ESG(環境・社会・ガバナンス)経営を掲げる企業が、実際には特許を侵害する製品を販売している現状に対しても警鐘を鳴らしています。
知的財産権の尊重は、持続可能な社会の実現に不可欠であり、企業はその責任を果たすべきです。
今後の展望と課題
今回の判決は、特許権者にとって大きな前進であり、今後の知的財産権保護の強化につながると期待されます。
特に、UPCのような統一的な裁判所の存在は、特許権者が複数の国での権利行使を効率的に行うための重要な手段となります。
また、企業は特許権の尊重を通じて、持続可能な成長とイノベーションの推進を図るべきであり、知的財産権保護の重要性は今後ますます高まるでしょう。
しかし、特許権の行使には多大な時間とコストがかかることも事実です。
特に中小企業にとっては、特許侵害に対する法的措置を取ることが難しい場合もあります。
そのため、特許権の保護と同時に、特許権者が適切な支援を受けられる制度の整備も求められます。
結論
ソウル半導体の今回の勝訴は、特許権者にとっての大きな成果であり、知的財産権保護の新たな時代の到来を示しています。
企業は、特許権の尊重と適切な知的財産戦略を通じて、持続可能な成長とイノベーションを実現することが求められています。
また、特許権者が適切な支援を受けられる制度の整備も進めることで、知的財産権の保護がより強化されることが期待されます。