撮って学ぶ株式投資!大和証券グループが挑む“映すだけ”金融教育


「写真を撮るだけで株価がわかる」時代へ

「そのスマホで、写真を撮ってみてください」。そう言われてレンズを向けた先は、街角のカフェ、走行中のクルマ、コンビニの陳列棚。その一枚が、実は“企業価値”を映し出す――。

大和証券グループ本社は、2025年春、金融経済教育向けに革新的なスマートフォンアプリを発表した。このアプリは、スマホのカメラで撮影した商品や企業のロゴ、風景から、その企業の株価情報や財務データ、過去の動向などを表示するという、まさに“写真で学ぶ株式投資”の体験を可能にするものだ。

このアプリの開発背景には、「金融リテラシーの低さ」という日本の構造的課題がある。学校教育や日常生活で金融教育に触れる機会が限られてきた中、若年層が自発的に学べる仕掛けが求められていた。

写真で株を学ぶ、という新しいUX

このアプリの最大の特長は、「金融に馴染みのない若者層が直感的に学べる」設計にある。

例えば、ユーザーがスターバックスのカップを撮影すれば、アプリは画像認識AIを用いて「SBUX(スターバックスのNASDAQ上場コード)」と特定。そこから現在の株価、過去1年の推移、PERやROEといった財務指標に加え、「この商品が企業収益にどのように貢献しているか」といったミニ解説が表示される。

また、AR技術を使って、街の中で見かけた企業ロゴにスマホをかざすだけで、「これは上場企業〇〇社で、今期の売上は…」とポップアップする仕組みも開発中という。金融を「紙の中の数字」から「街にあるリアルな経済」へと変換する仕掛けは、まさに現代の金融教育にふさわしいアプローチだ。

学びと実践の“ハイブリッド化”

本アプリは単なる情報表示ツールにとどまらず、「学習とシミュレーション」の統合を志向している。アプリ内では、仮想通貨やポイントを使った“疑似投資体験”ができ、自分が「買いたい」と思った企業に実際に投資したと仮定して、どのように資産が増減するかを追跡できる。

この機能は、単なる座学では得られない「感覚的理解」を育てる効果がある。上がる株には理由があり、下がるときも社会の動きが背景にある――。そうした「経済の因果関係」を、体験を通じて学べるのは、金融教育における大きな進化と言える。

なぜ大和証券Gが教育に注力するのか

証券会社というと、「投資家向けサービス」に特化した企業と思われがちだ。しかし近年、大和証券グループは「金融経済教育」を次世代戦略の柱のひとつと位置づけている。

その背景には、以下の2つの大きな課題認識がある:

  1. 貯蓄から投資へ:岸田政権が掲げる「資産所得倍増プラン」にも通じるが、日本では依然として金融資産の大半が預貯金に偏っており、個人投資家層の裾野拡大が求められている。
  2. 若年層の接点不足:Z世代やミレニアル世代は、「証券口座を作る前に金融から離脱してしまう」ことが多く、まずは“学びの接点”を提供することが喫緊の課題とされていた。

このアプリは、まさにその2つの課題を解決するための“エデュテインメント”(教育×エンタメ)としての役割を果たす存在なのだ。

技術面から見た“知財の可能性”

このアプリの仕組みは、画像認識、自然言語処理、AR表示、ユーザーの行動ログに基づく学習レコメンドなど、多様な先端技術に支えられている。当然、これらの要素には知的財産権(特許や著作権)の保護も関わってくる。

特に注目すべきは、「画像と上場企業の照合ロジック」や「撮影画像から企業業績データへ連携するインターフェース構造」といった技術領域。これは、将来的に教育分野だけでなく、観光、リテール、不動産などにも転用可能な“マルチユース”技術だ。

たとえば、観光地で撮影した写真から地域の地場産業や関連企業の情報を提示する機能があれば、「地方創生×金融教育」といった新たな分野へと拡張できる。

金融教育の“民主化”へ

このアプリの意義は、教育機関や証券会社にとどまらず、より広い社会構造の中で捉えるべきだ。

従来の金融教育は、学校の一部授業、もしくは一部の“意識の高い家庭”に偏っていた。しかし、このような「日常に溶け込んだ金融教育」が普及すれば、学歴や経済環境にかかわらず、誰もが“経済を自分ごとにできる”時代が来る。

また、企業との連携や地方自治体との共同プロジェクトなど、「教育の外延」を拡張することで、より多くの人々にリーチできる可能性がある。

最後に:未来の投資家はカメラ越しに育つ

スマホをかざすだけで経済を学ぶ。そんな未来は、もはやSFではなく現実になりつつある。

このアプリは、金融という一見“冷たい”世界を、街角の風景や友人とのカフェタイムから学べる、“温かい”体験に変えようとしている。写真1枚から始まる金融教育は、もしかすると、次の時代の投資家を育てる原点になるかもしれない。

金融の未来は、カメラ越しに育つのだ。


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