6月に公開されたAppleの特許出願:Appleウォッチの誤動作防止技術

現代のウェアラブル電子機器、特にスマートウォッチやフィットネストラッカーのようなデバイスは、日常生活の一部となりつつあります。しかし、これらのデバイスの操作において、意図しない回転入力による誤動作が問題となることがあります。例えば、手首を動かした際にデバイスのクラウンが意図せず回転し、不要な操作が実行されることがあります。このような問題を解決するための技術について、6月にAppleからの特許出願公開がありましたので、簡単ですが紹介します。

出願番号:US2024/192804A1
公開日:2024年6月13日
出願人:Apple Inc.
発明者:Anna-Katrina Shedletsky, Christopher M. Werner, Colin M. Ely, Samuel Weiss
https://patents.google.com/patent/US20240192804A1/

誤動作検出技術の概要

本発明は、ウェアラブル電子機器の回転入力の誤った操作を検出し、拒絶するための複数の技術を提供します。これにより、ユーザーが意図しない入力が排除され、デバイスの操作がより正確かつ信頼性の高いものとなります。

1. 光学検出器による距離測定

まず、電子機器に光学検出器を搭載することで、装着者の腕や手との距離を測定する技術があります。この光学検出器は、デバイスと肌との距離が一定の閾値以下の場合、回転入力が誤った操作であると判断します。例えば、手首を曲げた際にクラウンが腕に触れる場合、この距離が短くなるため、回転が意図しないものであると認識されます。

2. 静電容量センサーによる指の検出

次に、クラウンに静電容量センサーを配置し、ユーザーの指の存在を検出する技術があります。指がクラウンに触れていない場合、回転入力は誤った操作と見なされます。この技術により、ユーザーが意図的にクラウンを回転させたかどうかを正確に判断できます。

3. シャフトのたわみ/位置検出

さらに、回転入力のシャフトのたわみや位置を検出する必要もあります。シャフトが上向きの力を受けている場合、これは通常、装着者の腕や手の接触によるものであるため、回転入力が誤った操作と判断されます。

実用例と応用

例えば、図1では、ユーザーが手をポケットに入れる動作や手首を回転させる動作で、クラウンが誤って回転する様子が示されています。このようなシナリオにおいて、上述の技術が効果的に機能し、意図しない回転入力を排除します。

また、図6Aおよび6Bでは、クラウンに配置された静電容量センサーの詳細が示されており、これらのセンサーがどのようにしてユーザーの指の接触を検出し、誤った回転を識別するかが説明されています。

例えば、Appleウォッチなどの電子機器30に含まれる回転入力32の誤回転を拒絶するための1つ以上の静電容量センサー90が設けられています。図6Bに示されるように、クラウン34には4つの静電容量センサー(90A、90B、90C、90D)が配置されていますが、センサーの数や配置場所は任意です。

センサーの役割と機能

• 距離と接触の検出: 静電容量センサー90は、クラウンと装着者の手首や手の甲との距離を感知し、実際の接触を検出します。
• 指の検出: ユーザーがクラウンの上部または側面に指を置いた際にその接触を検出し、ユーザーが意図した回転かどうかを判断します。クラウンの上部に触れている場合は意図した回転、下部に触れている場合は誤回転として認識します。

回転エンコーダの使用

• 高精度の回転検出: 回転エンコーダ(例:絶対位置回転エンコーダ)を使用し、クラウンの部分的な回転運動を高精度に検出します。例えば、360度の回転に50本のマーク付きラインがあり、それを4倍に補間することで約1.8度の解像度を実現します。

センサーの動的調整

• センサーの位置決定: 任意の時点で、クラウンの上部(上面92)と下部(底面94)のセンサーの位置を動的に決定します。
• 感度の調整: クラウンの下部のセンサーの感度を低くし、上部のセンサーの感度を高くすることで、誤回転を無視し、意図した回転を認識するように構成されます。

これにより、ウェアラブル電子機器の操作がより正確かつ信頼性の高いものとなり、ユーザーの意図しない入力を効果的に排除できます。

まとめ

これらの最新技術を用いることで、ウェアラブル電子機器の操作がより直感的で信頼性の高いものとなります。意図しない回転入力を防ぐことにより、デバイスの誤動作が減少し、バッテリーの無駄な消耗も防ぐことができます。ユーザーはこれまで以上にデバイスを安心して使用できるようになり、ウェアラブルデバイスのユーザーエクスペリエンスが大幅に向上することが期待されます。


ライター

+VISION編集部

普段からメディアを運営する上で、特許活用やマーケティング、商品開発に関する情報に触れる機会が多い編集スタッフが順に気になったテーマで執筆しています。

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