IoT分野で広く応用可!RFIDの数値演算方法
子供向け玩具として定番のブロック、代表的なものはレゴブロックやボーネルンドブロックなど、様々な種類がありますね。これらのブロック玩具は、同じような形の個体を複数組み合わせて様々な形をつくり、子どもの創造性を育むことができる、優れた玩具です。
こういった個体を一つ一つ容易に検出してその組み合わせ方を演算処理することができれば、遊ぶときにも模型の大きさや重さがすぐにわかって、より正確な「モデリング」が可能になります。
また、個体の製造時においても、より正確な測定や比較ができることが期待されます。今回紹介する発明は、このような複数の個体を素早く演算するためのシステムについてです。
発明の背景
従来のゲームシステムは、例えば、複数の玩具要素(例えば組立用ブロック)、各玩具要素の内部にある読み取りタグ、および、これを読み取るためのリーダを備えます。各玩具要素には読み取りタグがあるため、各玩具要素を識別(区別)できます。そして、リーダによって、玩具要素(組立用ブロック)が所定のエリア内に存在することを検出できます。つまり、所定のエリア内に、どの玩具要素が存在するかを把握できます。
しかしながら、この種の従来のゲームシステムでは、複数の玩具要素の識別情報から得た情報を演算処理しません。よって、複数の玩具要素が存在することを把握できても、それ以上の有用な情報を得ることができません。
どんな発明?
発明の目的
そこで、本発明は上記事情を考慮して考え出されました。本発明は、個体(例えば組立用ブロック)に関連付けられた各々の数値を容易に演算処理できる複数個体の数値演算システムを提供することを目的とします。
以下に、本発明の概要を説明します。言い換えますと本発明は、非接触通信タグを用いて、複数の玩具要素(例えば、おもちゃの組立用ブロック)の数や配置などから、複数の玩具要素が集まった集合体の状況(例えばブロックが集合して出来上がった模型の形状など)を把握するための数値演算システム等を提供します。
まず、本発明の複数個体の数値演算システムは、複数の個体の各々(例えば各組立用ブロックそれぞれ)に含まれる非接触通信タグ、この非接触通信タグを読取り可能なリーダ、および、このリーダで読み取った結果を演算処理する制御機構を備えます。
リーダで読み取れる一定の範囲には集合体(模型など)が複数あり、一つ一つの集合体は、複数の個体(ブロック)が集合して形成されています。
制御機構では、上記のリーダで読み取った結果から、各個体に対応する数値(例えば各ブロックの大きさや重さ)と、この数値を演算するための演算記号(足し算の記号など)とに基づいて計算値を算出します。そして、制御機構では、
一の集合体に対して、リーダを用いて非接触通信タグを読み取り、
他の集合体に対して、リーダを用いて非接触通信タグを読み取り、
それぞれの集合体で計算値を算出し、算出した計算値を複数集合体の間で比較します。
次に、本発明の複数個体の数値演算方法は、リーダ、通信端末、またはサーバのいずれかの制御機構によって実行されます。
制御機構には、複数の個体の各々(例えば各組立用ブロックそれぞれ)に含まれる非接触通信タグをリーダで読み取った結果が入力されます。
リーダで読み取れる一定の範囲には集合体(模型など)が複数あり、一つ一つの集合体は、複数の個体(ブロック)が集合して形成されています。
数値演算方法では、リーダで読み取った結果から、各個体に対応する数値(例えば各ブロックの大きさや重さ)と、数値を演算するための演算記号(足し算の記号など)とに基づいて計算値を算出するステップを実行します。
そして、数値演算方法では、一つの集合体(模型など)に対して、リーダを用いて非接触通信タグを読み取るステップを実行します。また、他の集合体(模型など)に対して、リーダを用いて前記非接触通信タグを読み取るステップを実行します。さらに、それぞれの集合体で計算値を算出するステップも実行します。加えて、算出した計算値を複数集合体の間で比較するステップを実行します。
さらに、本発明のプログラムは、上記の数値演算方法を実行させるためのプログラムです。
本発明の複数個体の数値演算システム、複数個体の数値演算方法、およびプログラムを利用すれば、個体に関連付けられた各々の数値を容易に演算処理して即座に結果を得ることができます。具体的には、複数のブロックを集合させて形成した模型が2つある場合、2つの模型の大きさや重さをすぐに知り、さらに比較することができます。
発明の詳細
本発明の具体的な一例について図面を参照しつつ説明します。なお、説明に関連しない部分は図示を省略する場合があります。
<第1例>
以下、本発明の複数個体の数値演算システム(以下、数値演算システム)について、詳しく説明します。
【0011】
本発明の数値演算システムの具体的一例(第1例)は、組立てブロック玩具を用いたシステムです。第1例の組立てブロック玩具は、図1に示すように、複数の個体として、複数の組立てブロック2を備えます。
【図1】
第1例の数値演算システムは、サーバ5を備え、サーバ5は、複数の組立てブロック2、複数の非接触通信タグ(以下、ICタグ21という)、リーダ3、通信端末4、および、制御機構6を有します。数値演算システムでは、例えば通信端末4は、通信ネットワークを介してリーダ3およびサーバ5に対して通信可能に接続されており、電気信号を双方向に授受可能に接続されています。
言い換えますと、数値演算システムでは、リーダ3とサーバ5との間の通信を通信端末4で行います。ただし、リーダ3とサーバ5とが通信ネットワークを介して直接的に通信可能に構成されている場合、また、通信端末4がない場合もあり得ます。
【通信ネットワーク】
通信ネットワークは、リーダ3またはサーバ5と、通信端末4とが互いに通信するための双方向のネットワークです。例えば、通信端末4とリーダ3との間の通信ネットワークはBluetooth(登録商標)であり、通信端末4とサーバ5との間の通信ネットワークはインターネットです。通信ネットワークは、企業内ネットワークのような通信範囲が制限されたネットワークである場合もあります。
【組立てブロックのハードウェア構成】
各組立てブロック2は、図1に示すように、凹部23を有するブロック本体、および、ブロック本体に設けられた複数の凸部22を備えます。複数の組立てブロック2は、凹部23に対して凸部22を嵌める(はめこむ)ことで互いに連結されます。
ただし、複数の組立てブロック2の連結は、凹部23と凸部22との嵌合の他、例えば、磁石による連結、ピンによる連結、接着による連結等で実現される場合もあります。
各組立てブロック2は、多数の組立てブロック2のうちいくつかを選んで、ユーザの意思に従って組み立てられます。組み立てられた状態の組立てブロック2は、例えば、ロボット、乗り物、怪獣、車、人、動物、建築物等を模した形状となります。組み立てられた状態の組立てブロック2を「集合体1」とします。「集合体1」は一定の範囲内に集まる複数の個体を意味します。
【ICタグ(非接触通信タグ)】
ICタグ21は、固有の識別情報を持つタグです。ICタグ21に記憶された識別情報はリーダ3によって読み取られます。ICタグ21は、RF(Radio Frequency)タグです。RFタグとは、ICチップおよびアンテナを備えた電子タグであり、交通系カードなどの分野でもすでに広く利用されています。ICタグ21の周波数帯域としては、UHF帯が好ましいですが、例えば、HF帯、NFC(Near Field Communication)を含む短波帯等も採用可能です。
ICタグ21は、各組立てブロック2に取り付けられています。このICタグ21は、シールによって各組立てブロック2に対して固定されて取り付けられます。その他、接着、組立てブロック2への埋め込み等によって取り付けることも可能です。ICタグ21は、組立てブロック2の外側面、内側面、または壁面内部のいずれに対しても取り付けられます。
【リーダ】
リーダ3は、ICタグ21に記憶された情報を読み取ることができます。リーダ3で読み取られた情報(読取り情報)は通信端末4に出力されます。リーダ3は、例えば、読取り専用のリーダ3、または、ICタグ21に対して情報の読取りおよび書込み可能なリーダライタなどです。
リーダ3は、例えばハンディタイプですが、ゲートタイプ、据え置きタイプ等である場合もあり得ます。
リーダ3は、集合体1に含まれる複数のICタグ21について、各ICタグ21に記憶された固有の識別情報を瞬時に同時に読み取ることができます。ICタグ21から固有の識別情報を読み取り、読み取った情報を読取り情報として出力します。
リーダ3は、通信ネットワークを介して通信端末4との間で双方向に通信可能に接続されています。したがって、通信ネットワークを介して読取り情報を通信端末4に送信することができます。
【通信端末】
通信端末4は、リーダ3から送信された読取り情報を受信し、受信した読取り情報をサーバ5に送信します。通信端末4はディスプレイ431を有します(図1参照)。通信端末4は、例えばスマートフォンです。通信端末4は、パーソナルコンピュータ、タブレット端末、PDA等の情報端末等である場合もあります。通信端末4は、通信ネットワークを介してサーバ5との間で双方向に通信可能に接続されています。
通信端末4は、通信ネットワークを介してリーダ3との間で通信接続をして通信を行います。また、サーバ5との間で通信接続をして双方向に通信を行います。例えば、リーダ3から送信された読取り情報を受信したり、受信した読取り情報をサーバ5に送信したり、サーバ5から送信された情報を受信したりします。
通信端末4では、読取り情報に基づいて各種処理を実行します。例えば、入力された情報が、リーダ3から送信された読取り情報であると判断すると、読取り情報をサーバ5に送信します。また、入力された情報が、サーバ5から送信された情報(演算情報等)であると判断すると、その情報を表示します。
通信端末4は、入力された演算情報を用いて表示を制御します。通信端末4は、演算情報に基づいて、ディスプレイ431に表示される数値、グラフィック等を制御できます。また、スピーカを制御して、グラフィックに対応する音を出力させることができます。
【サーバ】
サーバ5は、通信端末4を介してリーダ3から送信された読取り情報を受け取って、各種処理を実行します。サーバ5は、コンピュータおよび通信インターフェイスを備えます。
コンピュータは、制御プログラムを実行可能なプロセッサ、主記憶装置、および補助記憶装置を備えます。主記憶装置は、いわゆるメインメモリであり、揮発性の記憶領域(例えば、RAM)です。補助記憶装置は、制御プログラムなどを記憶する装置であり、不揮発性の記憶領域(例えば、ROM)です。不揮発性の記憶領域は、ROMに限らず、例えば、ハードディスク、フラッシュメモリ等である場合もあります。
プロセッサは、1以上のプロセッサおよび1以上のメモリを有するマイクロコントローラを主構成とします。すなわち、マイクロコントローラのメモリに記録されたプログラムを、マイクロコントローラのプロセッサが実行することにより、各種の機能(例えば、後述の演算機能)が実現されます。プログラムはあらかじめメモリに記録されていたり、メモリカード等の非一時的記録媒体に記録されて提供されたりします。
通信インターフェイスは、通信ネットワークを介して通信端末4と通信を行います。通信インターフェイスは、無線LANインターフェイスですが、例えば、有線LANインターフェイス、無線WAN、有線WAN等である場合もあります。
サーバ5は、通信ネットワークを介して、通信端末4との間で通信接続を行って双方向に通信を行います。通信端末4から送信された読取り情報を受信し、受信した読取り情報から、各組立てブロック2に対応する数値および演算記号を取得し、数値および演算記号に基づいて演算を実行します。
サーバ5は、ICタグ21で読み取られた読取り情報に含まれる固有の識別情報を参照します。そして、所定の数値および演算記号などを取得します。
サーバ5は、固有の識別情報に割り当てられた「数値」、各数値に割り当てられた「演算記号」、および、各数値に割り当てられた「単位」が記憶されています。
具体的にイメージするために、「数値」として各組立てブロック2の重さ、「演算記号」として足し算の「+」、「単位」としてg(グラム)を想定すると理解しやすくなります。
本発明では、このような例だけでなく、「演算記号」は演算に用いる記号であり、例えば四則演算に用いる記号(正符号「+」、負符号「-」、乗算記号「×」および除算記号「÷」)です。
「単位」は、比較の基準となる種別を意味します。例えばゲームシステムを想定しますと、体力を示す数値に対して割り当てられる単位として「体力P」が挙げられます。攻撃力を示す数値に対して割り当てられる単位として「攻撃P」が挙げられます。守備力を示す数値に対して割り当てられる単位として「守備P」が挙げられます。記憶されているデータとして、例えば、一の識別情報に対して、「+300攻撃P」および「-100守備P」が割り当てられます。他の例として、一の識別情報に対して、「×3体力P」が割り当てられます。
サーバ5は、取得した情報に基づいて演算処理を行います。複数の固有の識別情報に割り当てられた「数値「、「演算記号」、および「単位」の情報が入力されて、「単位」ごとに「演算記号」を参照して「数値」を演算して、演算結果の計算値を示す情報(演算情報)が生成されます。
そして、演算情報を基にして、計算値を比較して優劣を決定します。例えばゲームを想定しますと、第一の集合体の演算情報および第二の集合体の演算情報が入力された場合、第一の集合体の「攻撃P」と第二の集合体の「守備P」との差から、第二の集合体の「体力P」を算出します。同様にして、第一の集合体の「体力P」を算出し、算出した「体力P」を比較して数値が大きい方を「勝ち」と決定します。決定された優劣の情報および演算情報は、通信ネットワークを介して通信端末4に送信されます。
【数値演算システムの動作】
次に、数値演算システムの動作について、図3を用いて説明します。図3は数値演算システムの動作の一例を示すシーケンス図です。
【図3】
ユーザは、通信端末4を起動し、通信端末4およびリーダ3を通信可能な状態にします。通信可能な状態とは、例えば通信端末4のアプリケーション(アプリ)を起動して、リーダ3および通信端末4がBluetooth(登録商標)によってペアリングされた状態です(S0)。
ユーザは、複数の組立てブロック2を用いて作られた一の集合体1(第一の集合体)に対し、リーダ3を用いて識別情報を読み取ります(S1)。リーダ3は、通信ネットワークを介して読取り情報を通信端末4に送信します(S2)。
通信端末4は、読取り情報を受信する(S3)と、その受信情報がリーダ3から送信された読取り情報であると判断し、この読取り情報をサーバ5に送信します(S4)。
サーバ5は読取り情報を受信し、読取り情報に含まれる識別情報から、「数値」、「演算記号」、および「単位」を取得して演算処理を行います(S5~S7)。
ユーザは、他の集合体1(第二の集合体)に対して、リーダ3を用いて識別情報を読み取ります(S8)。リーダ3は、通信ネットワークを介して、第二の集合体1についての読取り情報を通信端末4に送信します(S9)。
通信端末4は、読取り情報を受信し、この読取り情報をサーバ5に送信します(S10,S11)。
サーバ5は、第二の集合体についての読取り情報を受信し、読取り情報に含まれる識別情報から、「数値」、「演算記号」、および「単位」を取得して演算処理を行います(S12~S14)。そして、サーバ5は、第一の集合体についての演算結果と、第二の集合体についての演算結果とを比較し、優劣の判定処理を実行します(S15)。サーバ5は、優劣の判定処理を実行した後、演算情報および優劣の判定情報を通信端末4に送信します(S16)。
通信端末4は、演算情報および優劣の判定情報を受信し、その結果をディスプレイ431に表示します(S17,S18)。
図4にスマートフォン等における表示の一例を示します。例えば、第一の集合体(ここでは「ニックネームA」)について、体力Pを表す表示および数値として「HP:9800」と表示します。また、攻撃Pを表す表示および数値として「攻撃:2500」と表示します。防御Pを表す表示および数値として「防御:3200」と表示します。同様に、第二の集合体(ここでは「ニックネームB」)についても表示します。
図4の表示の後、優劣の判定を表示する画面に遷移します。ニックネームAを「優」、ニックネームBを「劣」と判断した場合、例えば、ニックネームAを点滅させたり、ニックネームBの表示を消したりして優劣を表示します。「優」を示す表示として、例えば図4の表示に加えて「王冠」「丸」「星」等の表示を追加できます。
【図4】
【第1例の変形例】
上記の例は一例です。本発明の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能です。以下、本発明の変形例を説明します。
数値演算システムの上記の例では、固有の識別情報から得た演算情報および優劣の判定情報だけを、サーバ5が通信端末4へ送信しました。一方、変形例の数値演算システムは、さらにグラフィックデータを送信する点で異なります。
【図6(左)】および【図7(右)】
本変形例の各組立てブロック2は、図6に示すように、複数の接点24、通信部26、および、制御回路25を備えます。各組立てブロック2は、上述した例と同様に、非接触通信タグ21を備えます。
複数の接点24は、図5に示すように、隣接する他の組立てブロック2の接点24に対して接触可能な位置に配置されます。例えば、互いに隣り合う組立てブロック2同士を接続するときに上下に重なるように接続すると、複数の接点24が他のブロックの複数の接点24に対して一対一で接触します。
一方、互いの長手方向が直交するように接続すると(例えば、図5Aにおいて点線で示した仮想図をご参照)、複数の接点24のうちの一部の接点24が、他のブロックの接点24に接触しない状態となります。
【図5】
制御回路25(図6参照)は、複数の接点24に対して、電気信号を授受可能に構成されています。制御回路25は、複数の接点24について、ON(接触)またはOFF(非接触)の状態を認識することができます。また、制御回路25は、各ICタグ21に記憶された識別情報を参照することができます。
よって、制御回路25は、個別の識別情報を持つ特定の組立てブロック2が、隣接する他の識別情報を持つ組立てブロック2に対して、相対的にどの向きにあるか、どの姿勢にあるかを認識できます。以下、この情報を「位置姿勢情報」といいます。ここでいう「ON」とは、接点24同士が接続されて回路が閉じることを意味します。また「OFF」とは、接点24同士が離れていることを意味します。
通信部26(図6参照)は、位置姿勢情報をサーバ5(図7)に送信できます。具体的には、上述した具体例と同様に、通信端末4を介して位置姿勢情報をサーバ5に送信します。
サーバ5は、図7に示すように通信部51および制御機構6(制御部と表示されています)を備えます。本変形例の制御機構6は、各組立てブロック2の位置姿勢情報から、集合体1全体の形状を判断します。そして、集合体1全体の形状を判断した情報を用いて、グラフィックデータを生成します。グラフィックデータは、通信端末4の表示部43に表示するためのデータです。生成されたグラフィックデータは、通信部51に出力され、通信部51によって通信端末4に送信されます。
グラフィックデータを受信した通信端末4では、グラフィックデータに基づいて画像(動画を含む)を表示します。これによって、集合体1の形状に基づいた画像が通信端末4に表示されます。したがって、本変形例の数値演算システムでは、数値および優劣の表示だけでなく、集合体1の形状に基づいた画像も表示できます。
<第2例>
第1例の数値演算システムは、複数の個体として、組立てブロック2を用いたシステムでしたが、第2例は、複数の個体として、野菜や肉等の食品、または、キッチン商品等の複数の商品を用いたシステムです。第2例の数値演算システムによれば、買い物かごに入った複数の商品の金額の合計を行うことができます。
第2例の買い物かごは、例えばスーパーマーケット、八百屋、コンビニエンスストア、または百貨店等の店舗で用いられます。ユーザは、個体としての商品を買い物かごに入れます。第2例では、一の集合体1は、買い物かごに入った複数の商品で構成されています。
第2例の各商品には、ICタグ21を含む値札が取り付けられています。ICタグ21には、各商品に対応する固有の識別情報が記憶されています。
サーバに5は、各識別情報に対して、商品の価格を示す一の数値と、一の数値を計算するための演算記号(ここでは「+」)とが割り当てられ、記憶されています。第1例と同様、入力された識別情報を参照して、対応する一の数値、および、一の数値を計算するための演算記号(ここでは「+」)を取得します。そして、取得した数値および演算記号から演算によって計算値を出します。
すなわち、第2例の数値演算システムにおいても、リーダ3で読み取った結果から、各個体に対応する「数値」と、数値を演算するための「演算記号」とを取得し、「数値」および「演算記号」に基づいて計算値を算出します。よって、第2例の数値演算システムによって、買い物かごに入った複数の商品の合計の金額を算出できます。レジ打ちの人員削減を行うことができ、例えば、無人店舗も実現できます。
なお、演算した演算情報は、例えばスマートフォンのモニタに出力されたり、買い物かごに付属の液晶ディスプレイ等に出力されたりします。
また、例えば、商品としての野菜と野菜の近傍の看板とで集合体1を構成することも可能です。看板がICタグ21を含み、ICタグ21に対応する「数値」と「演算記号」とで割引を演算させることも可能です。割引用の札を置いておき、買い物かごに商品および札を入れて演算させることも可能です。ICタグ21には固有の識別情報が記憶されているため、在庫管理も容易に行うことができます。
【その他の変形例】
以下、本発明の変形例を列挙します。
上述した例では、ICタグ21が固有の識別情報を記憶し、この識別情報から、サーバ5に記憶された「数値」および「演算記号」を取得しましたが、本発明では、「数値」および「演算記号」の情報をICタグ21に記憶させておき、「数値」および「演算記号」の情報から、サーバ5で演算を行うことも可能です。
上述した例では、通信端末4を介して、リーダ3とサーバ5とが通信可能に接続されましたが、リーダ3とサーバ5とが通信ネットワークを介して接続される場合もあります。
上述した例では、「数値」およびこれに対応する「演算記号」がサーバに記憶されましたが、演算記号として「X+Y+Z=計算値」等の数式が記憶されたり、数式に対して各数値を代入して演算したりすることが可能です。
サーバは、「数値」「演算記号」「単位」に加えて「係数」を記憶する場合もあります。例えば、希少な組立てブロック2ほど係数を大きくすれば、演算後の計算値を大きくすることができます。
上述した例では、通信端末4が表示部43を備えましたが、通信端末4が表示部43を備えない場合もあります。この場合、通信端末4は、アクセスポイントまたは無線LANルータ等です。表示部43は通信端末4と別に設けられる場合があります。
上記変形例では、組立てブロック2の相対的な向きおよび姿勢の情報を取得しましたが、絶対的な組立てブロック2の向きの情報を取得する場合があります。この場合、例えば各組立てブロック2に加速度センサを設けます。
上述した例の数値演算システムは、ICタグ21の識別情報を読み取るために専用のリーダ3を備えましたが、スマートフォン等の通信端末4がリーダ3を備える場合もあります。例えばスマートフォンが、リーダ3、制御機構6、表示部43をすべて備えることも可能です。この場合、通信ネットワークは不要です。通信ネットワークは必須の手段ではありません。
ここがポイント!
以上説明しましたように、本発明の複数個体の数値演算システムは、いくつかの個体(ブロック等)の各々に含まれる非接触通信タグ21、非接触通信タグ21を読取り可能なリーダ3を備えます。また、サーバでは、リーダ3で読み取った結果から、各個体に関する「数値」と、数値を演算するための「演算記号」とを取得し、「数値」および「演算記号」に基づいて計算値を出します。
上記の構成によって、非接触通信タグ21を用いて、各個体に関する「数値」から集合体に関する計算値を演算できます。よって、人の手に頼らずに、瞬時に演算できます。
複数個体の数値演算システムでは、いくつかの個体が集まった集合体1が複数あり、複数の集合体1の各々で計算値を求めます。そして、複数集合体1同士で計算値を比較します。
上記の構成によって集合体1の間で計算値を比較できるため、ユーザは計算値を参照したあとに集合体1について何らかの判断(例えば、2つの買い物カゴの中の商品の合計金額の差を把握)を行うことができます。
複数個体の数値演算システムでは、例えば、集合体1同士で計算値を比較した結果から優劣を決定します。
上記の構成によって、集合体1ごとの計算値で競うことができ、ゲームに適用したときの面白味を付加することができます。
複数個体の数値演算システムでは、例えば複数の個体は、互いに連結可能に構成されています。
上記の構成によって、複数の個体で集合体1を形作ることができ、例えば組立ブロックのおもちゃに応用できます。よって、面白さを付加できます。
複数個体の数値演算システムでは、例えば、計算値をスマートフォンのディスプレイに表示するように構成されています。よって、ユーザは計算値を確認することができます。
未来予想
本特許は、大阪府に本社がある白紙とロックというベンチャー会社から出願されました。知的財産の開発および発展に関わる事業などを行っている会社です。ウェブサイトを見ますと、PLOCOブロックというブロック玩具が紹介されています。本特許は、この商品に関わる特許であると思われます。
PLOCOブロックは、「創造力」+スマホゲーム「計算力」で、これからの時代に必要とされる創造力や問題解決をする能力を育み、テクノロジーに強くなるためのプロダクト体験ができる商品として紹介されています。
本特許発明は、上記のようなブロック玩具だけでなく、上述したように様々な分野にも応用できるアイデアです。白紙とロック社は、知的財産の開発および発展に関わる事業などを行っている会社であり、創業メンバーに弁理士の方がいらっしゃいます。また、本特許の発明者は創業者の一人です。
上記のPLOCOブロックは、自社で取得した特許発明が具現化されたものと考えられます。例えば、自社の商品に本特許を活かすだけでなく、本特許を他社へ実施許諾することで本特許発明のアイデアを玩具以外の分野へさらに広めることも可能と思われます。
本特許発明は、倉庫などの収納用のコンテナだけでなく店舗用や住居用のコンテナハウスにも応用できるアイデアです。本発明は、上記アーススマート社が提供する組立式コンテナハウスで利用されていると考えられます。例えば、災害時の仮設住居用の組立式コンテナハウスによって快適な居住環境を提供できるならば、本特許発明のアイデアは災害の多い日本、また、災害が起こった外国などにおいて、重宝されると思われます。
特許の概要
発明の名称
複数個体の数値演算システム、数値演算方法、プログラム
出願番号
特願2019-23616
公開番号
特開2020-130234
特許番号
特許第6539000号
出願日
平成31年2月13日(2019/2/13)
公開日
令和 2年8月31日(2020/8/31)
登録日
令和 1年6月14日(2019/6/14)
審査請求日
平成31年2月13日(2019/2/13)
出願人
株式会社白紙とロック
発明者
渡部 一成
国際特許分類
G06K 17/00
G06K 19/07
A63F 13/20
A63H 33/08
経過情報
・本願は早期審査請求され、1回の拒絶理由通知を経て特許となりました。本出願から分割出願された子出願は拒絶査定となっています。子出願から分割出願された孫出願は未審査です。
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