VRポリス誕生!?セキュリティ関連特許

INTRODUCTION

昨今、VR(仮想現実)は、エンターテインメント分野を中心に普及が進んでおり、VRに関するニュース記事を目にすることも増えてきました。

VRは未来的で発展に期待が高まる一方で、VR上での脆弱性や犯罪に関する話題も少なくありません。

いつの時代でも便利さと引き換えにリスクを伴うものですが、仮想現実や仮想空間上での犯罪の概念についても今後議論される時代となるでしょう。
また、それに伴って仮想空間上でのセキュリティ技術も発展が続いています。

そこで今回は、皆さんの快適な仮想現実生活を守るべく生み出されたこれからの時代に必要となるであろう特許技術を紹介します。

1つの技術だけではなく、複数の技術を組み合わせて応用することによって未来のVRポリスが生まれるかもしれませんので、ぜひそんな想像を膨らませながら、一読ください。

CONTENTS

  • #1眼の動きで支払い!? VRでセキュリティ検証

  • #2バーチャルコールセンターで顧客満足度アップ

  • #3子供の友人関係を、SNSから自動チェック

  • #4CONCLUSION


仮想現実(VR)技術は、鮮明な没入感覚が得られることから、特に映像視聴やゲーム分野で広く用いられています。

そんな中、VRシーンにおいてセキュリティ検証を必要とするサービス(典型的には支払いサービス)が実行される場合、VR端末を装着しているユーザが没入体験を楽しんでいる間にセキュリティをいかに迅速に検証するかが、ユーザの没入感を向上させるために非常に重要な課題となっています。

今回紹介する特許発明は、ユーザがVR端末を装着している間に、視覚焦点コントロールなどの直感的な対話モードを使用して、セキュリティ検証を完了させるというものです。

例えば、VR端末に搭載された眼認識ハードウェアを介して、ユーザの複数の相補的眼生理的特徴(例えば、眼紋特徴+虹彩特徴)を取得し、その特徴とユーザによって保持された事前に定義された上記特徴とを照合してセキュリティ検証を完了することができるのです。

このようにユーザの生体認証によって迅速に支払いサービスなどのセキュリティ検証を通過できれば、ゲーム中にVR端末を外してパスワードを入力するといった煩わしさから開放され、より没入感の高いVR体験ができるというわけですね。

仮想現実(VR)技術は、コンピュータ・グラフィックス・システムおよび様々な制御インターフェースを包括的に利用して、ユーザに没入感覚を提供するように、コンピュータ上に対話型3次元環境を生成する技術です。

VRを通して得られるリアルな体験は、あたかも現実であるかのように感じられ、今後の発展が大いに期待されています。

ユーザに鮮明な没入感覚を提供できるVR技術ですが、一方で、克服すべき課題も残っています。それは、セキュリティ検証の精度をいかに向上させていくかです。

例えば、VRシーンの中で支払サービスが実行される場合には、厳重なセキュリティを敷く必要があります。

とはいえ、セキュリティ性を高めるためにVR端末を装着しているユーザの没入感を損ねてしまっては、せっかくのVR技術が台無しになってしまいます。

ユーザにVR環境での行動を楽しんでもらうと同時に、サービスのセキュリティを迅速かつ正確に検証することは、ユーザ体験を向上させるためには極めて重要なのです。

今回紹介する「仮想現実シーンベースのビジネス検証方法およびデバイス」とは、いったいどのような発明なのでしょうか。

ここでは、発明の目的や詳細について解説します。

発明の目的

本発明の目的は、VR環境におけるセキュリティ検証の精度を高めることです。

セキュリティ検証の精度が上がることで、意図せず決済が行なわれてしまったり、逆に、決済したいのにうまく支払作業が行なえないといったエラーを回避できるようになります。

本発明には、視覚焦点によるセキュリティ検証の精度を高める効果があります。

眼認識ハードウェアを介してユーザから獲得した複数の眼生理的特徴と、事前に登録してあるサンプルとを比較することで、サービスのセキュリティ検証を迅速に行ないます。

それによって、ユーザによって実行されるサービスのセキュリティ性を保証すると同時に、セキュリティ検証が、より簡単に行なえるようになります。

複数の眼生理的特徴を判断材料とすることによって、検証失敗を抑えられ、セキュリティ検証の精度を向上させられるのです。

発明の詳細

この発明は、仮想現実(VR)シーンベースのサービス検証デバイスに関するものです。

実際の適用例としては、以下のようなものが挙げられます。

  • VRショッピングにおける注文支払
  • VRライブ放送におけるチップ支払
  • VRビデオにおけるビデオ・オン・デマンド支払
  • ユーザのVR端末ロック解除サービス

FIG.2は、VRシーンベースのサービス検証デバイスの論理を示す図です

【FIG.2】

以下の流れで、セキュリティ検証を行ないます。

  • 検出モジュール(201)によって、ユーザが行なおうとしているサービスを検出します。
  • 獲得モジュール(202)によって獲得したユーザの眼生理的特徴と、事前に記憶されている「眼生理的特徴サンプル」とを比較します。
  • 比較結果に基づき、検証モジュール(203)が、サービスのセキュリティ検証が成功したかどうかを判定します。

検出モジュールとは、VRシーンにおいて、ユーザの視覚焦点によってトリガされるターゲット・サービスを検出するように構成されたモジュールです。ユーザの視覚焦点を参考にして、対象のサービスを検出します。

獲得モジュールとは、ユーザから複数の眼生理的特徴を獲得するために、事前に構成された眼認識ハードウェアを使用するように構成されたモジュールです。「ユーザの眼生理的特徴」には、網膜の特徴や、虹彩の特徴などが挙げられます。

セキュリティ検証が失敗したと判定された場合には、「02」の工程を繰り返します。

デバイス(20)はVRシーンにおいて、視覚焦点を中心とする事前に設定したサイズのターゲット視覚エリアを識別し、2段階のレンダリングを行ないます。

1つ目のレンダリングでは、識別されたターゲット視覚エリアに対応する視覚イメージを視覚的に検出し、2つ目のレンダリングでは、ターゲット視覚エリアの外側の他の視覚エリアに対応する視覚イメージを視覚的に検出します。

この時、2つ目のレンダリング精度は1つ目のレンダリング精度よりも低くなっています。

さらに、ターゲット視覚エリアの外側の他の視覚エリアについては、視覚焦点までの距離が遠くなればなるほど、徐々にレンダリング精度を落とすことができます

このため、ユーザが意識を向けて注視しているエリアを、より正確に検出できるのです。

またデバイス(20)は、事前に構成された「視標追跡ハードウェア」を使用し、ユーザの視覚焦点の判定や、VRシーンにおいて「事前設定仮想コンポーネント」が配置されたエリア内に視覚焦点が滞留するかどうかの判断を行ないます。

「視標追跡ハードウェア」には、例えば、網膜特徴を獲得するための「RGBカメラ」や、虹彩特徴を獲得するための「赤外線カメラ」などがあります。

「事前設定仮想コンポーネント」は、ターゲット・サービスをトリガするために使用されます。

FIG.2では省略していますが、「毅然設定仮想コンポーネント」は、トリガモジュールを含むこともできます。

トリガモジュールとは、事前設定仮想コンポーネントが配置されたエリア内に事前設定した時間よりも長い間滞留する場合に、ターゲット・サービスをトリガするように構成されたモジュールです。

FIG.3は、サービス検証デバイスをもつVR端末のハードウェア構造図です。

【FIG.3】

VRシーンベースのサービス検証デバイス(20)をもつVR端末機器は、一般に、ハードウェアおよびソフトウェアを組み合わせた論理デバイスとみなすことが可能です。

ハードウェアには、例えばCPU、メモリ、不揮発性ストレージ、ネットワーク・インターフェース、内部パスなどが挙げられます

本発明では、単一の眼生理的特徴ではなく、複数の眼生理的特徴を判断材料にするため、セキュリティ検証を迅速かつ正確に行なえるようになります。

不用意にサービスが実行されてしまうリスクを抑えるのはもちろん、実行したいサービスが思うように利用できないという不便さが解消できるという点が、本発明のポイントだといえるでしょう。

本発明によってVR空間におけるセキュリティ検証の迅速化・堅実化を実現することで、より多様で大規模な経済活動がVR空間上で行なわれるようになるでしょう。

例えば、ビジネスにおけるより重大な意思決定や、NFTを活用した巨額の取引などが、VR空間上でさらに活発に行なわれやすくなると考えられます。

もしかすると、国家間の取引においても、VR技術の活用が進むかもしれません。

このように本発明は、1ユーザのセキュリティー検証にとどまらず、世界規模での経済活動活性化にもつながりうるイノベーションだといえます。

発明の名称

仮想現実シーンベースのビジネス検証方法およびデバイス

出願番号

特願2019-545980(P2019-545980)

公開番号

特表2020-515945(P2020-515945A)

特許番号

特許第6880214号(P6880214)

出願日

平成30年2月12日(2018.2.12)

公開日

平成30年8月30日(2018.8.30)

登録日

令和3年5月7日(2021.5.7)

審査請求日

令和1年10月21日(2019.10.21)

出願人

アリババ・グループ・ホールディング・リミテッド

発明者

ウー チュン

国際特許分類

G06F 21/32 (2013.01)
G06F 3/01 (2006.01)
G06Q 20/40 (2012.01)
A61B 5/1171 (2016.01)

経過情報

・中国特許庁(中国国家知識産権局)を受理官庁として国際出願された後、日本国内へ移行され、日本特許庁で審査された。その後、拒絶理由通知がされたものの、誤訳訂正書と意見書を提出し、特許査定となった



近年、「巣ごもり需要」という言葉があるように、主として自宅で使う家電やIT機器の需要は堅調です。

そんな中、例えば購入した機器の初期不良や故障などのため、販売店やメーカーのカスタマーサポートに電話等で連絡をした経験のある方、結構多いのではないでしょうか。

人気の機器や新発売の製品だと、なかなかカスタマーサポートにつながらなかったり、つながったとしてもオペレータが新製品に不慣れだったりして、電話だけではなかなか問題が解決できないということもしばしば起きているようです。

今回紹介する特許は、このようなカスタマーサポートセンターの応対業務を支援するための装置についてです。カスタマーサポートのオペレータに対して、いかにして素早く製品の詳細スペックを理解させ、顧客の質問に的確に応対させるかという課題について、VR/AR技術を用いたバーチャル空間での素早い製品知識の習得を図ります。

あたかも映画「マトリックス」で、ごく短時間で乗り物の操縦技術や格闘技の習得を行ったような、迅速なe-ラーニングを実現させるものといえそうです。

この技術を用いることで、オペレータの製品知識が適時に向上し、また、オペレータがコールセンターという物理的な場所に拘束される必要もなくなり、リモートワークが可能となることで、オペレータの雇用獲得にも役立つものとなっています。

具体的にどのような技術なのか、またこの技術による未来はどのように予測できるか、詳説していきます。

本発明は、製品を購入後の顧客からの当該製品等に対する質問や要求を受け付けるコールセンター業務、いわゆるカスタマーサポートを支援することを目的としたものです。

一般的に、顧客は、製品を購入後にその操作方法がわからなかったり、故障が疑われる場合に、適宜カスタマーサポートに電話をして解決方法を模索することがあります。特に最近の家電製品やオフィス機器は多機能化・高度化しているため、顧客がトラブルを自力で解決することが困難になっていることは想像に難くありません。

カスタマーサポートセンターは、顧客からの要求に応えるため、どの製品の、どの機種が、どのような問題を有しているか等を電話口で詳細に聞き、可能な限り顧客が満足する解決方法を提示するように試みています。

しかし、電話対応を行うオペレータは、顧客が有している製品の不具合を直接目にしているわけではないため、電話による顧客の言葉を通じて伝達してもらうことで顧客側の状況を推測するしかありません。

他方、オペレータ側からの解決方法も、オペレータの言葉を通じて顧客に理解してもらう必要があります。このような状況から、顧客とオペレータとの間の意思疎通が正確かつ迅速にできないことが多いのです。

このような状況下、サポート対象の製品の種類や機種が少なく、いつも同じような質問がされる場合には、オペレータの応対は比較的容易ではあるものの、それでも製品に関する広範囲な情報を各オペレータが確実に記憶し、いかなる質問に対しても応対できるように準備しておくことは簡単なことではありません。

とりわけ、ライフサイクルが短い製品の場合には、知識として蓄えた製品情報が最新機種にはもはや適合せず、顧客の製品トラブルをオペレータが正確に理解できなかったりします。

カスタマーサポートセンターは、上述のような問題に対応するため、可能な限り各製品の実機をセンター内に備えておき、オペレータが実際に手にとって確認できる体制にしていたりします。

しかし、実機を保管しておくための広いスペースが必要になったり、対応する対象製品の全機種にわたって満遍なく揃うように常に準備しておくことは、かなりのコスト高となるばかりでなく、オペレータが保管スペースから実機を探し出す手間を考えると、顧客を長時間待たせることにもなってしまい、顧客満足度の低下にもつながってしまいます。

このような背景から、従来技術として、オペレータの端末モニターに、ネットワークを介して製品の3Dモデルデータを表示させるようにし、オペレータ側が自分のモニターに表示された3Dモデルを拡大・縮小して描画することで、製品の理解を早めるという技術がありましたが、これは単にモニターに製品画像を映し出しているに過ぎず、リアリティ感に乏しく、オペレータが瞬時に製品情報を理解するには不十分でした。

発明の目的

本発明は、カスタマーサポートセンターにおける電話応対が、製品の実機を手にして確認しなくても、正確かつ容易に行われるようにオペレータを支援する装置を提供することを目的としています。

また、コールセンター業務が、カスタマーサポートセンターという特定の就業場所に制約されることなく、例えばリモートワークにおいても高いセキュリティで実現できるためのカスタマーサポート支援装置を提供することを目的としています。

この目的を達成するために、本発明のカスタマーサポート支援装置は、カスタマーサポートの対象となる製品の三次元形状データを作成し、その三次元形状データを基にして、製品を構成する各部品の構造又は組立を示す動画を作成すること、そしてこの動画をユーザの装着型情報処理端末(例えば頭部装着ディスプレイ装置等)に表示する手段と、当該動画に対するユーザの指示を受信し、ユーザの指示に従って動画の表示を制御する手段を備えることを特徴としています。

また、ユーザの装着型端末に表示される上記動画は、仮想現実(VR)、拡張現実(AR)、複合現実(MR)を含むデジタル描画技術に基づいて作成されます。さらには、ユーザの生体情報を認識し、ユーザが登録済みの本人認証の確認ができた場合にのみ、装着型端末上での表示が許可されるように制御され、ユーザの指示は、音声、ジェスチャ動作、読唇、手話、表情変化を含みます。

このような本発明の実施態様によって、オペレータは製品の実機が無くても製品の形状及び構造を実物大で容易に短時間で認識することが可能となります。

オペレータは製品の3次元モデルを見ながら顧客と電話応対ができるようになるため、コールセンター業務を特定のロケーションに制約されずに実施しながら(ロケーションフリー化)、顧客との電話を介したコミュニケーションを円滑にすすめることができるという効果が奏されます。

さらなる効果として、ユーザが装着する装着型情報処理端末に製品情報及び関連情報が表示されることから、汎用のディスプレイ画面上への表示と異なり、オペレータの装着型情報処理端末をオペレータ以外の者によって覗き込まれることがありません。

さらに、各オペレータの生体情報(例えば、眼の虹彩など)をあらかじめ登録しておき、装着型情報処理端末を装着したオペレータの本人認証が得られないと、製品に関連する情報や顧客情報などにアクセスできないようにすれば、例えば、なりすましの者が無断でオペレーションセンタにリモートアクセスして秘密情報を参照したり、コールセンター業務を行うことを防止することが可能となります。

したがって、上述したようなロケーションフリーによるコールセンター業務であっても、カスタマーサポートに必要な情報が許可無くアクセスされることを防止し、高いセキュリティを担保することができるのです。

発明の詳細

では、図・画像を参照しながら、本発明の詳細を説明していきます。

【図1】カスタマーサポート支援装置が有する各モジュール構成

カスタマーサポート支援装置が実装する主な機能モジュールは、図1に示される(1)3Dモデル生成モジュール、(2)動画編集モジュール、(3)クライアント用アプリモジュール、(4)応対履歴管理モジュールからなります。

これら各モジュールはクラウドサーバとの間でデータのアップロード/ダウンロードを行うように構成されています。

【図2】オペレータがカスタマーサポート業務を行っている様子の一例

カスタマーサポート支援装置の3Dモデル生成モジュールで生成された3Dモデルは、オペレータの端末であるヘッドマウントディスプレイ装置や眼鏡型ディスプレイ装置に投影されます。

このような装着型端末は近年において急成長していて、ゲームなどのアミューズメント分野で使用されることが多いですが、この技術をカスタマーサポート業務に適用した例は今までに存在していません

【図3】3Dモデルを基にして三次元のFAQ動画を作成・編集する画面例

図3は、図1で示した動画編集モジュールが、3Dモデルを部品化して、三次元のFAQ動画を作成・編集する様子を示した例です。

ここでは一例として、「掃除機のフィルターが入らなくなった」という顧客からの問い合わせに対応するため、掃除機の各部品を分解する動画から開始し、再び組み立てる一連の流れを説明する動画を作成しています。オペレータがこの動画ストーリーを見たとき、フィルターをどのように掃除機本体に組み込めばよいかを瞬時に理解することができます。

このようにして作成された3D動画データは、クラウドサーバを経由してクライアント用アプリモジュールで再生されることになります。

クライアント用アプリモジュールでは、オペレータの本人認証機能や、応対ログの収集機能も担います。これにより、特にロケーションフリー(リモートワーク)でのサポート業務においてセキュリティが向上します。オペレータはヘッドマウントディスプレイを使用することで両手の使用が制限されませんので、各種センサによってオペレータのジェスチャを識別することも可能です。

図4に示される視野イメージ図は、あくまで一例ではありますが、オペレータが装着したヘッドマウントディスプレイに映し出される画面例です。

【図4】装着型情報処理端末に映し出される画面例

視野の左側には、クラウドサーバからダウンロードされた応対スクリプトデータを表示しています。これは、顧客に対してどのように会話するかをマニュアル化したものです。

電話をしてきた顧客が受ける印象というのは最初の数十秒で決まると言われていますので、応対の開始時に、挨拶をして、更にセンター名称及び応対者の名前を名乗ることをマニュアル化して画面に表示しておくことで、丁寧な応対をすることができるのです。

視野の右側は応対内容を履歴として登録しておくための応対履歴エリアです。応対内容の履歴を自動で作成する場合には、オペレータと顧客間の会話の音声データを所定のアルゴリズムを用いてテキスト化することができます。

従来では、応対記録は手入力により履歴管理することが殆どでしたが、自動登録とすればオペレータの作業負担は大幅に軽減されることになります。

【図5】装着型情報処理端末に映し出される別の画面例

応対履歴データとして問い合わせログが蓄積されていくと、図5に示すような態様でFAQ動画リストの表示位置を変えたり、問い合わせログと共に表示するようにすることもできます。

本発明は、カスタマーサポートの対象となる製品の三次元形状データを用いて、オペレータが装着するヘッドマウントディスプレイ等の端末に製品情報を表示し、ユーザの指示に応じて当該三次元形状データを基にして作成された動画をオペレータに適時に提供する点がポイントです(請求項1)。

本発明のようなオペレータ支援によれば、製品の実機を参照することなく、3次元のモデルデータから当該製品の構造や動き方、あるいは操作方法などを確認することができるので、オペレータは実機が準備されたコールセンターという特定の場所にいることは必ずしも必要ではなくなります。

これにより、オペレータの就業場所の自由度が従来と比べて大きくなり、在宅オペレータなどの多様な働き方が可能になります。さらに、複合現実(MR)技術によってバーチャル空間内にコールセンターを構築することが可能であり、在宅オペレータをバーチャル空間で管理したり、支援したりすることができます。

また、顧客の要求の理解及び解決方法の提示に至るまでの時間が短縮されるので、応対1件あたりの生産性が向上し、オペレータ業務の応対コストを圧縮できるという効果を奏します。

ここまで説明してきた通り、本発明ではヘッドマウントディスプレイ等を用いたバーチャル空間で、オペレータのジェスチャや音声による直感的な指示で製品の構造・動作を把握することができます。

したがって、オペレータのPCスキルが必ずしも高くなくても、的確な応対が可能となるといえます。このことは、応対スキルや製品を熟知するオペレータでないとコールセンター業務が行えないという従来の固定観念を打破することになり、今後、人口減少に伴う労働人口の減少が確実な未来において、オペレータの雇用拡大を図ることに貢献できるでしょう。

さらには、オペレータ業務をリモートで行うことが可能となることから、昨今急速に拡大している在宅ワークの可能性を拡大する発明といえるでしょう。

発明の名称

複合現実技術を用いたカスタマーサポート支援装置及び装着型情報処理端末

出願番号

特願2019-106202

公開番号

特許第6823688号

特許番号

特許第6823688号

出願日

令和1年6月6日(2019.6.6)

公開日

令和2年12月17日(2020.12.17)

登録日

令和3年1月13日(2021.1.13)

審査請求日

令和2年9月30日(2020.9.30)

出願人

株式会社ベルシステム24ホールディングス

発明者

濟木 基成

国際特許分類

G06Q 30/00 (2012.01)
G06F 3/01 (2006.01)

経過情報

・早期審査請求を伴った特許出願を行い、拒絶理由通知がされることなく、いわゆる「一発特許査定」となった。



子供を持つ親であれば、子供が学校などで友人と仲良く付き合っているか、いじめにあっていないか、誰しも気になり、不安をもっているものですよね。以前は友達との交友関係といっても、現実にお互いの家を行き来したり、学校や登下校時に遊んだり、といったリアルな関係が主でしたので、大人がある程度把握することもできていました。

しかし、近年は子供がスマホなどの情報端末を所持して、SNSなどの場が「友達づきあい」の場になってきたため、保護者からは子供の交友関係が把握しにくい状況になっています。こうした中、子供の交友関係をどのように把握し、いじめや仲間はずれの兆候をいち早く検知するかが、社会的に深刻な問題となっています。

今回紹介する特許は、このような社会的課題に対して提案されたものです。原理的には、SNS等の情報交流サイトから取得した情報を用いることによって、特に友人数の増減からユーザ(子供)の交友状況の変化を検知するためのプログラムです。このプログラムを保護者もしくは子供が所持するスマホにインストールすることによって、子供の参加しているSNSの友人数の変位を演算し、いじめや仲間はずれの兆候を見つけていくのです。

このようなプログラムによって、保護者がいち早く子供の交友状況の変化に気づくことができ、いじめという深刻な社会問題への対処に貢献することが期待できます。

「いじめが原因で自殺」というニュースが後を絶ちません。多感な年頃の小学生や中学生、高校生が自らの命を絶つというニュースは胸が痛みます。とりわけご家族のお気持ちを考えると想像することさえ恐ろしくなってしまいます。

「自殺」となるとニュースになりますが、いじめを受けたことで心に傷を負い、不登校や引きこもりになるなどの事例を目にすることはほとんどありません。

2016年から2018年のいじめの認知件数の調査において、小学2年生のいじめの認知件数がほかの学年と比べて多かったそうです。想像より低い学年からいじめがあるのだと気づかされました。

いじめによる影響は心身の成長や将来へも及びます。学校や地域社会においていじめが大きな社会問題になっていることもうかがえます。

特に子供の保護者にとって「子供が友達と仲良く付き合っているか」「いじめにあったり仲間はずれにされたりしていないか」など、日頃から重大な関心事となっています。

昨今は人とのつながりが学校などの直接のかかわりばかりではなくなっています。子供がスマートフォン等の携帯電話を所持することで、友人同士の交流が電子メールやSNS( ソーシャル・ネットワーキング・サービス) 等の情報交流サイトで行われることが多くなりました。保護者からは子供の交友状況が把握しにくい状況となっています。

子供の交友状況の変化をどのように把握し、いじめや仲間はずれの兆候をいち早く検知するかが深刻な課題となっています。

発明の目的

子供の友達同士の交流が電子メールやSNS等の情報交流サイトで行われることが多くなり、保護者は子供の交友状況が把握しにくく、保護者がいじめや仲間はずれの兆候をいち早く察知することが求められています

子供たちが利用する情報交流サイトでは、メッセージの交換や書込みに対するコメントなどによる交流が行われているため、友人とのつながりを子供の人間関係を表す情報として利用し、いじめや仲間はずれの兆候をいち早く察知することを目的としています。

この発明によると、保護者または、子供が所持するスマートフォン等にアプリケーションプログラムをインストールし、情報交流サイトにおける子供のアカウントに自動ログインするための設定を行っておくだけで、保護者がいち早く子供の交友状況の変化に気づいて、いじめや仲間はずれの兆候に速やかに対応することが可能になり、深刻な社会問題となっているいじめ問題への対処に貢献することが期待できます。

発明の詳細

本発明は、SNS等の子供たちが利用する情報交流サイトにおける相互承認された友人数の増減やアカウントに書き込まれたテキストデータから、子供の交友状況の変化を探索します

図1で実施形態の一つを説明します。

【図1】

子供のスマートフォンにインストールした交友状況検知プログラムは、インターネットを経由して子供同士が交流している情報交換サイトのSNSサーバの情報を取り込み解析します。

そして、いじめや仲間はずれの兆候を検知したとき、保護者のスマートフォンに通知します。

図2は交友状況検知プログラムがどのような流れで、いじめや仲間はずれの兆候を検知するのかを示します。

【図2】

子供のスマートフォン(ユーザ(子供)端末10)にインストールされた交友状況検知プログラムは、SNSサーバ20にログインし、ユーザー情報格納部21にアクセスし、相互承認された友人数やアカウントに書き込まれたテキストデータを取り込みます。

取り込んだ友人数データは、友人情報記憶部15のデータと比較し、友人数演算部14で友人数の増減を判定します。

取り込んだテキストデータは、いじめルール記憶部17に基づいてテキストデータ解析部16で解析します。

判定した友人数の増減や解析した結果から、いじめや仲間はずれの兆候があると判断すると保護者のスマートフォンに通知します。

子供のスマートフォンにインストールした交友状況検知プログラムによって、子供たちが利用する情報交流サイトにログインし、相互承認された友人数の増減やアカウントに書き込まれたテキストデータを解析することで、いじめや仲間はずれの兆候を探知します。兆候を検知すると保護者のスマートフォンに通知します。

この発明により、把握しづらいのSNSの交友状況を監視することで子供を見守ることができます。

この特許を取得したのは、株式会社エルテスという会社です。エルテスのホームページには「デジタルリスクと戦いつづける」とあります。

デジタルリスクとは、利用者のSNSでの投稿に自社に不利益になるものはないか、従業員の何気ないSNSでの投稿にお客様情報が含まれていないか、未公開の情報が流されていないかなど、インターネットやSNS上の書き込みにより、自社が将来なにか悪いことをうける可能性のことを指すようです。

株式会社エルテスは、インターネットやSNSなどをチェックし誹謗中傷やSNSの炎上対策などのサービスを提供しています。

この発明も、エルテスのサービスの延長線でなされたものかと思いますが、本発明のサービスについては具体的に取り組みされていないようです。

しかし、若者を取り巻くコミュニティーの変化は、どんどんデジタル寄りになっていきます。最近ではメタバースというものが話題になっていますね。同時に若年層(小学生、中学生など)もその流れの中に取り込まれ、どのような交友関係があり、どのようなやり取りが交わされているのか保護者が把握するのはますます難しくなっていきます。

将来ある子供たちをいかに守るのか、大人達は真剣に考えなければいけません。

発明の名称

交友状況検知プログラム、交友状況検知装置及び交友状況の検知方法

出願番号

特願2014-110481(P2014-110481)

公開番号

特開2015-225540 (P2015-225540A)

特許番号

特許第6342220号(P6342220)

出願日

平成26年5月28日(2014.5.28)

公開日

平成27年12月14日(2015.12.14)

登録日

平成30年5月25日(2018.5.25)

審査請求日

平成29年3月23日(2017.3.23)

出願人

株式会社エルテス

発明者

菅原 貴弘

国際特許分類

G06Q 50/10 (2012.01)
G06Q 50/00 (2012.01)

経過情報

・出願審査請求後、拒絶理由が通知されることなく、特許査定となりました。


CONCLUSION

最近VR空間内のトラブルや犯罪行為が増加しているとの話題を目にすることが増えてきました。

そもそも、VR空間内での犯罪は成立するのか。現実社会で取り締まることができるのか。

掘り下げて考えると哲学的な話になってきそうですが、VRの急拡大に伴ってセキュリティ技術の重要度が増していくのは間違いありません。

今回取り上げた特許技術はいずれも直接的にVR内での犯罪行為を抑制するようなものではありません。

しかしながら、眼生理的特徴を利用した検証はVR内でのセキュリティ対策のベースとなる可能性を秘めていると感じています。

また、バーチャルコールセンターおよびSNS交友状況の通知技術はそれぞれVRシーンあるいはリアルにおける通報手段となり、トラブル対応を速やかに解決する手段として期待できます。

その他にも、様々なセキュリティ技術をドッキングしていくことで、VR空間内で起こる犯罪を包括的に取り締まるVRポリスのような存在を生み出せる可能性があると思います。

まさに、映画「マトリックス」で出てくるエージェントの様な存在ですね。VR空間で行動していると、VRポリスに出会う日が来るかもしれません!