芸能人・著名人が発明した特許

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芸能人・著名人が発明した特許

目次

INTRODUCTION

新型コロナウイルスの流行が終息をみせない中、在宅ワークなどの浸透により、これまでよりも自宅でテレビを観る機会が増えたという方も多いのではないでしょうか。

平時であれば、夜は職場から疲れて帰ってきて、そのままテレビも見ないという生活を送っていたサラリーマンも、最近はゴールデンタイムのドラマやバラエティを観るなど、自宅での時間をテレビ視聴という形で楽しむことが増えているようです。

テレビでよく見る芸能人をはじめとした著名人は、音楽や美術、文学といった著作物からなる知的財産を常に生み出しているわけですが、その活動において、技術的な成果物、つまり『発明』という知的財産を生み出すこともあります。そしてそれらの発明は、特許出願から特許庁での審査を経て、最終的に特許権として認められることもあるのです。

そこで、今回は芸能人・著名人の持っている特許について、その一部を解説していきます。

秋元康考案の疑似恋愛シミュレーション!?

ほろ苦さを味わえる恋愛ゲーム

ほろ苦さを味わえる恋愛ゲーム

ビデオゲームの人気ジャンルの一つとして、いわゆる「恋愛ゲーム」は古くから根強い人気を得てきました。恋愛ゲームは、恋愛を擬似的に体験することを意図したものですが、典型的な恋愛シミュレーションゲームと呼ばれるジャンルでは、プレイヤーはゲームの主人公(多くの場合、若い男性)を操って、様々なイベントをこなしていき、次々と登場する異性キャラクタの好感度(人気パラメータ)を上昇させていくことで、結果として恋愛を成就させることを目的としています。

ところで、従来の恋愛ゲームでは、異性キャラの誰からでも「告白される」などの恋愛成就ができれば、それでハッピーエンドとなるケースが多かったようです。しかし、実際の恋愛においては、誰でも良いから付き合えれば良い、というものではないですし、「本命」の異性との恋愛成就が最も望ましいのは当然のことですよね。また、実際の恋愛においては、本命じゃない異性から告白されるケースなどもあって、「告白を断る(つまり振る)」という局面も必要で、そのような本命を射止めるためのほろ苦い体験も、恋愛の重要な要素といえます。

そこで、プレイヤーはゲームを始める際に、「本命」を決めるものの、その他の異性キャラからの誘惑や、異性キャラ同士の妨害、好感度パラメータの異性キャラ間での相互作用といった要素を取り入れること、また、プレイヤーのキャラクタに「耐久度」を設定することによって、耐久度が低いときに本命でない異性キャラクタから告白された場合、断ることができずに、なし崩し的に相手の告白を受け入れてしまうという設定を取り入れることで、より実際の恋愛体験に近い、ほろ苦さを味わえるようにしたのです。実際の恋愛は、ハッピーエンドばかりじゃないよ、ということですね。

でも、ゲームに登場するような美しい異性から、次から次へと告白されるような、そんな体験はやはりゲームの中だけなのでしょうね…。

■従来の課題

ビデオゲームの人気ジャンルに疑似恋愛を楽しむことを目的とした「恋愛ゲーム」がある。

ちょっとキモいけど画期的?なドクター中松の特許発明

お面にもなり、チラシにもなり、うちわにもなるビラが特許に!

お面にもなり、チラシにもなり、うちわにもなるビラが特許に!

誰でも子供の頃には、ヒーローのお面などをつけて遊んだことがあると思います。お面といえば縁日の屋台などで売られているものを想像されるかもしれませんが、節分などで鬼のお面をつけて怖い鬼の役をやるお父さんも多いのではないでしょうか。
しかし、このようなお面には、当たり前ですが「うちわ」として使う機能や宣伝機能がなく、また、宣伝広告目的で配布される「ビラ」がお面として使える、という機能もこれまではありませんでした。

そこで、お面の目の部分に穴をあけて、指を通せるようにすることでお面を「うちわ」として使えるようにし、さらにお面の裏に宣伝文等を書き込むことでチラシとしても使える工夫をしたものが特許出願され、最終的に特許が認められました。
このお面は紙やプラスチックなどで作られ、うちわとしても使えますが、選挙や商品宣伝等のチラシなど、様々なPR活動に活用できるとのことです。非常にシンプルな発明ですが、発想の転換でいままでにない製品が生まれ、特許権が得られるということに驚きを感じます。

■発明のポイント

<お面ビラ>

本発明は、お面としての機能だけでなく、うちわにもなり、チラシにもなり、宣伝、広告業に新たな媒体として使用可能なものです。

ロバートの秋山氏が発明した「あの小道具」が特許に!

単純だけど意外性のあるお笑い小道具

単純だけど意外性のあるお笑い小道具

ロバートといえば人気のお笑いトリオですが、そのメンバーである秋山氏が発明し、ロバートの代表的なネタで使われるTシャツの小道具について紹介します。この特許出願、一旦は特許庁の審査で拒絶査定となったものの、拒絶査定不服審判の審理で拒絶査定を覆し、特許権を取得したという苦難の特許です。
さて、お笑いに限らず、舞台等において、自分の顔を瞬時に別人の顔等に変えることで観衆を楽しませるという芸は、古くから行われてきました。こうした芸において、従来は他人の顔等をかたどった絵や写真等から作成したお面を用意しておき、これを予め手に持っておくとか、近くにおいておくなどして、必要なときに取り出すようにしていました。 しかし、お面のような小道具を手にすることなく、顔を変化させることができれば、観衆に更なる意外性を感じさせ、より一層の面白さを感じさせることができると考えられます。

そこで、Tシャツなどのプルオーバー型の上着の前身頃の裏地に人物の顔をかたどった像が上着の上下方向に対して倒立状態で設けられ、前身頃の表地には、裏地に描かれている像の有する目の位置を示す目印が付けられ、この目印は像の目の並び方向に延び、かつ、像の目の並びの位置と合致した位置に設けられ、目印の両端はそれぞれ像の輪郭と対応する位置にあるようにしました。

そして、このような仕掛けが施されたTシャツを着て観衆の前に現れ、Tシャツを脱ぐ動作をすることで、裏地に施された像がちょうど着用者の顔に相当する位置に現れ、瞬時に顔を別人の顔に切り替えることができるというわけです。さらに、この動作は単にTシャツを脱ぐ動作であるため、観衆はシャツを脱いで胴部が露出されるという結果は予測できるものの、顔が変わるという効果は予測することができないため、より一層の面白さを味わうことができるというわけです。

このようなお笑いの小道具であっても、「新しい技術」として着目し、新規性や進歩性等の特許要件を満たすことで、特許権を取得することができるということなのですね。

■従来の課題

お笑い芸人は、自分の顔を瞬時に別人の顔等に変えることで観衆を笑わせたり驚かせたりする芸を披露する場合があります。

INTERVIEW

ライター

中尾さとみ


経歴
高校時代アメリカへ留学、カリフォルニア州の公立高校卒業。
帰国後、短期大学に進学し、アーチェリー部所属。卒業後、都市銀行に就職。
結婚後、ブラジルのサンパウロに数年滞在。
帰国後、広告代理店にて飛び込み営業、パソコンスクールにて受付事務、レストランにて調理補助、ショッピングモール運営会社にて営業事務などを経験。
子育てが一段落後に発明学会に入会。現在、主婦。
入会から2年後に発明品が商品化。

——特許の概要 (商品説明、特許の活用方法など)をお聞かせください。

まだ出願中で公開されていませんが、商品名は【災害用簡易安眠ハウス】、災害時に避難所で使用する段ボール製簡易就寝用品。
就寝時にボックス部分が頭部を覆う形になり、下に敷く就寝シートと組み合わせて使用します。

ボックス部分に頭部から胸元が囲まれて、遮光、防塵、防寒などの効果により、安眠しやすくなります。また寝顔を他者に見られる心配は無く、プライバシーが守られます。

感染症が流行していますが、頭部を囲まれることで、飛沫感染を防ぎやすい形になっています。
ボックス内では、マスクを外すことも出来るので、快適に過ごすことができます。
付属の就寝シートを敷くことで、硬い床の上でも安心して眠れます。
組み立ては60秒で出来るような簡単なものなので、スタッフは配るだけで、避難者自らが組み立ててすぐに使えて大変便利です。

整然と並べられるので、ソーシャルディスタンスを容易に保てます。
保管時は約5センチと薄型なので、災害に備えて大量保管に適しています。
段ボールを使用しているのでリサイクルが可能、また手ごろな価格設定となっています。

日本は現在でも雑魚寝が主流の避難所生活を余儀なくされており、他の先進国から大きく遅れています。実際に避難した方から避難所は雑魚寝による様々な問題があり、ストレスが多く、とても安眠出来る環境ではないと聞いています。 この商品を使うことで、これまで困っていたこと(寝るときに頭上のライトが眩しい、埃が舞う、寒い、周りが気になる、プライバシーが無いなど)の問題点を解決し、健康維持に必要な安眠がしやすくなると思います。ぜひ全国の避難所で活用して頂きたいです。

——アイデアのきっかけとなったエピソードをできるだけ具体的にお聞かせください。
きっかけは、今から20年以上も前の話。旅行先のホテルで幼い子供を先に寝かせた時のこと。
部屋を暗くして寝かせた後、そのまま暗い部屋で過ごすことがとても不便でした。眠っている子供の頭だけを囲って暗く出来たら、大人は普通に過ごせて便利なのに、と思いました。

その後かなりの年数が経ちましたが、そのような商品を見かけることはなかったので、発明学会のコンクールに応募し、発明学校で発表しました。その際、災害用に使えたら良いのではないかとのアドバイスを頂き、避難所用に特化して考えました。

当初はワイヤーを組み、そこに布地を縫い付けてドーム型で作っていましたが、災害用にと徐々に形を変化させながら試作を繰り返しました。備蓄を考えて薄型折り畳み、簡単組み立て、頑丈、量産できることなどを考えたら、材料は段ボールが一番適していることに気付きました。形も、当初のドーム型から、四角い箱型へと進化を遂げてとてもシンプルな形になりました。

——日頃の考え方やモノゴトに取り組む姿勢など、自分のどのような部分がアイデア発案につながったと思われますか?
普通に生活をしていて不便だと思うことを、どうしたら改善できるのかと考えることでアイデアが浮かびます。仕事、家事、趣味など様々な経験をすることで、よりアイデア発案の機会は広がると思っています。

——アイデアの実現(開発)に関して、一番大変だったことはどんなことですか?どうやって乗り越えていったかなどエピソードもお聞かせください。
災害時のテレビ中継に、各地の避難所で人々が雑魚寝をしている姿が映し出されるのを目の当たりにして、早く普及させて、雑魚寝はもうやめて貰いたいという思いに駆られました。

コンクールに応募したものの商品化には至らなかったので、早く商品化を実現したいと思い、発明学会に相談しました。その時に、同じような商品を販売している会社を探して、提案をしてみたらとのアドバイスを頂きました。そこで、災害用品を製造販売している会社を探して、その会社の方針を調べて、アイデアに共感してくれそうな会社に問い合わせをしてみることにしました。出来れば実際に訪問をしてご提案をしたかったのですが、コロナ禍でしたので、先ずはお電話をかけてご担当者の方に打診をしてみました。

会社により個人のアイデアを商品化契約しないところもあると思いますが、良いアイデアがあれば検討してくれるところもあるはずと希望を持っていました。

商品化を決めてくださった奈良県の株式会社タカオカのご担当の方は、以前被災地に出向きボランティアや商品の寄付をされており、すぐに私の熱い思いに共感してくださりました。
何度かお話をしていくうちに、サンプルを作成してくださることになりました。送って頂いたサンプルの大きさや段ボールの厚みなどをお話合いしながら、商品化に向けてご相談をさせていただきました。
本来こちらから出向くところですが、コロナが流行していたことと遠方ということ、先方のご厚意もあり、全て電話とメールでやり取りをさせていただきました。コロナ禍ゆえの、とても特殊なケースだったと思います。

株式会社タカオカのご担当者の方に、初めてご連絡をしてから商品化決定まで2週間と驚くほど、早い決断をしてくださり、感謝の気持ちでいっぱいです。
商品化の契約において、発明学会のサポートがなければ個人では何も分からず難しかったと思います。契約後も、随時サポートをして頂いており、とても心強く感じています。

——新しいモノゴトを生みだすためのアドバイスをするとしたら、一番大切なことはどのようなことだと伝えますか?
最初は、自分が不便だと思う出来ごとがきっかけで、アイデアを思いつきました。 そのアイデアが、人や世の中のためになることを考えることが一番大切なのだと思うようになりました。

——企画のスタートから特許取得に至るまで、どれくらいの期間がかかると想定されていましたか?また、実際にはどれくらいの期間が必要でしたか?
スタートをした時は、予想も出来ませんでした。
特許出願に関しては、当初はわからないことだらけでした。実際にコンクールに応募してから、 何度も試作品を作り直して特許出願書類を仕上げるまで、1年以上は掛かりました。 特許取得に関しては、まだ出願をしている状態です。

——特許取得に至るまで、どれくらいのコスト(開発・特許申請の金銭面、労力面)が必要でしたか?
特許出願書類を自分で書きたいと思い、発明学会の無料相談に何度も通い、書き方のアドバイスを頂きました。時には、郵送でも無料相談をお願いできたので大変助かりました。 その際に、発明学会発行の「アイデア権利化のガイドブック」を参考にさせて頂きました。

書き始めてから少しずつ修正をしていき、出願するまでに数か月かかりました。自分1人だけで全て書きあげることは難しかったと感じました。 出願に印紙代14,000円と電子化手数料が掛かりました。(基本料1,200円+700円×枚数) 翌年の商品化決定時に国内優先権の申請をしており、印紙代14,000円と電子化手数料が掛かりました。

今後、取得に向けて審査請求の手続きが必要です。その際に、市町村民税非課税者は減免制度があるそうなので、ぜひ活用したいと思います。

——その他、今回の特許をめぐるウラ話など、お聞かせください。
特許はまだ出願段階ですが、商品化が決まってから新聞に掲載されたり、テレビに出演したりとメディアに出る機会があり、〚発明家〛として取り上げられるようになりました。それにより、周りの方々から発明の活動を応援して頂けるようになり、嬉しく思っています。

商品化が決まった時はコロナ禍で、先方の会社の方とは、全て電話とメールでのやり取りでした。 その後、公開調印式が予定されておりましたが、コロナの影響で中止となってしまいました。 コロナ感染が収束しないので、商品化から何か月も経過した現在も、まだ直接ご担当の方と一度もお会いできていません。いつかお会いできる日を心待ちにしているところです。

発明品に関しては当初から商品化を目指してきましたが、実は商品化はゴールではなくて、そこからがスタートだと感じています。その商品を活用して貰うことが大切なので、商品化後は、自分で県内の市役所にご提案回りに行っています。実物をお見せすることで、ようやくそのものを理解して頂けることがあり、お話を聞くことで現状を知ることが出来ます。予想以上に雑魚寝という根強い考え方が強く、また導入には予算、備蓄倉庫等の問題があると分かりました。 どうしたら多くの都道府県に導入されて雑魚寝を減らすことが出来るのか、リサーチした現状を踏まえつつ、その都度ご提案内容を検討しています。 少しでも人の目に触れるように、防災館への展示を調べたり、公的施設の帰宅困難者向け備品閲覧パンフレットに加えて頂いたりしています。

商品化を決めてくださった会社に恩返しが出来たらと思い、営業活動を継続していきたいと考えています。

——今回の特許の未来への展開・発展、もしくは、新たな企画の方向性など、これからの活動について、公開できる範囲でお聞かせください。
災害用簡易安眠ハウスは、避難所の人々が少しでも安心して過ごせて、ストレスが減り、安眠できるようにと考えたものです。日本は、まだまだ雑魚寝が一般的で、避難所生活のレベルが他の先進国に比べてかなり遅れています。早く雑魚寝という劣悪な状態を脱して、避難所環境が改善されるようにと願って、この商品のご提案を続けています。

また、災害が起こってからの備品の搬入は極めて難しいそうなので、日頃から災害に備えて備蓄をしていくことの大切さを理解していただきたいと思っています。

役所にご提案を続けて、最終的には日本中の避難所で雑魚寝がなくなることが目標です。
また、帰宅困難者向けに、企業にも備蓄をご提案して、災害に備えて頂きたいと考えています。

今後は、生活用品のアイデアも新たに商品化が出来るように進めていきたいと思っています。 自分のアイデアで世の中が便利になり、人々に活用して喜んでいただけたら嬉しい限りです。

取材協力:
株式会社タカオカ https://takaoka-bosai.com/
一般社団法人 発明学会 https://www.hatsumei.or.jp/

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