秋元康考案の疑似恋愛シミュレーション!?
ほろ苦さを味わえる恋愛ゲーム
ビデオゲームの人気ジャンルの一つとして、いわゆる「恋愛ゲーム」は古くから根強い人気を得てきました。恋愛ゲームは、恋愛を擬似的に体験することを意図したものですが、典型的な恋愛シミュレーションゲームと呼ばれるジャンルでは、プレイヤーはゲームの主人公(多くの場合、若い男性)を操って、様々なイベントをこなしていき、次々と登場する異性キャラクタの好感度(人気パラメータ)を上昇させていくことで、結果として恋愛を成就させることを目的としています。
ところで、従来の恋愛ゲームでは、異性キャラの誰からでも「告白される」などの恋愛成就ができれば、それでハッピーエンドとなるケースが多かったようです。しかし、実際の恋愛においては、誰でも良いから付き合えれば良い、というものではないですし、「本命」の異性との恋愛成就が最も望ましいのは当然のことですよね。また、実際の恋愛においては、本命じゃない異性から告白されるケースなどもあって、「告白を断る(つまり振る)」という局面も必要で、そのような本命を射止めるためのほろ苦い体験も、恋愛の重要な要素といえます。
そこで、プレイヤーはゲームを始める際に、「本命」を決めるものの、その他の異性キャラからの誘惑や、異性キャラ同士の妨害、好感度パラメータの異性キャラ間での相互作用といった要素を取り入れること、また、プレイヤーのキャラクタに「耐久度」を設定することによって、耐久度が低いときに本命でない異性キャラクタから告白された場合、断ることができずに、なし崩し的に相手の告白を受け入れてしまうという設定を取り入れることで、より実際の恋愛体験に近い、ほろ苦さを味わえるようにしたのです。実際の恋愛は、ハッピーエンドばかりじゃないよ、ということですね。
でも、ゲームに登場するような美しい異性から、次から次へと告白されるような、そんな体験はやはりゲームの中だけなのでしょうね…。
■従来の課題
ビデオゲームの人気ジャンルに疑似恋愛を楽しむことを目的とした「恋愛ゲーム」がある。
恋愛ゲームのうち「恋愛シミュレーションゲーム」と呼ばれる典型的なタイプでは、プレーヤはキャラクタを操り、登場する異性キャラクタに好感を抱かせ、異性キャラクタの好意に関するパラメータ値を増加させて、恋愛を成就することを目的とする。
しかしこれまでの恋愛ゲームでは、登場人物の誰でも良いので「告白される」などの形で恋愛成就ができればグッドエンディングとするケースが多かった。実際の恋愛では、やはり「本命」の異性との恋愛成就が最も望ましいところ、これまでのゲームではこの分類が曖昧なため、「本命」以外の異性との恋愛成就に至った時の「ほろ苦さ」を体感し難いという課題があった。
■本発明の効果
本発明によれば、「本命」キャラクタの好感度を上手く限界に至らせることができたときに、グッドエンディングとする演出を行うことができる。逆に「本命」以外の異性との恋愛成就に至ってしまった時、「うれしいけどちょっと残念」といった恋愛にまつわるある種のほろ苦さを体感できる恋愛ゲームを実現することができる。
■特許請求の範囲のポイントなど
本発明のポイントを下記に示す。
プレーヤキャラクタと、複数の登場キャラクタそれぞれとの間の恋愛に係るシミュレーションゲームをコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
・複数のイベントの中から、プレーヤの選択操作に従ってイベントを選択する選択手段、
・プレーヤが選択肢を選択操作することでイベントを実行するイベント実行手段、
・イベントの実行結果に基づいて、登場キャラクタのプレーヤキャラクタに対する好感度を変更する好感度変更手段、
・好感度が所定の限界条件を満たした登場キャラクタを検出する検出手段、
・検出された登場キャラクタが、プレーヤキャラクタに告白し、当該告白に対する応答選択肢をプレーヤが選択操作する告白イベントを実行する、告白イベント実行手段、
・告白イベントにおいて受け容れる旨の応答選択肢をプレーヤが選択操作した場合、エンディング演出を実行するゲームエンディング制御手段、
・前記告白イベントにおいて辞退の旨の応答選択肢をプレーヤが選択操作した場合に、当該告白イベントに係る登場キャラクタのイベントを、イベントの選択候補とすることを禁止する禁止制御手段を有する、プログラム
本発明の更なるポイントとして、
・プレーヤキャラクタの耐久パラメータ値が、更なるダメージを許容することができないほど低い場合に、希望のキャラクタ以外の登場キャラクタによって告白イベントが実行されると、バッドエンディング演出を実行するバッドエンディング演出実行手段、
・複数の登場キャラクタがプレーヤキャラクタに同時期に告白する同時期告白イベントを実行する、同時期告白イベント実行手段、
・前記プログラムを有するゲーム装置、が挙げられる。
■全体構成
本発明における恋愛シミュレーションゲームの概要を図1に示す。
【図1】恋愛シミュレーションゲームの概念図
プレーヤは、「本命」として選択した女子キャラクタ4(4h)との恋愛を成就する為に、いくつものイベント3及び3s(図中の白帯)をこなして女子キャラクタ4の好感度Pgを上げることが必要である。この「好感度Pg」は、登場する全ての女子キャラクタ4それぞれが固有に備えるパラメータ値であって、各女子キャラクタ4が抱くプレーヤキャラクタ2への愛情の度合、恋愛感情の盛り上がりを示す。図中では、好感度Pgの大小をハートマークのサイズで表している。
イベント中に行われるプレーヤキャラクタ2の行動選択入力は、単に当該イベントにおけるストーリ展開を左右するだけでなく、対話相手としている女子キャラクタ4の好感度Pgを増減させる一因となる。 好感度Pgが限界条件にまで達すると、その女子キャラクタ4がプレーヤキャラクタ2に愛の告白をする告白イベント7が発生する。好感度Pg限界条件として最大値である必要はなく、一定の値に達したことを条件としてもよい。
ゲームの目的からすると、「本命」の女子キャラクタ4(4h)とのイベントのみを選択すれば容易にクリアできるはずである。しかし、本実施形態の恋愛シミュレーションゲームでは、「本命」の女子キャラクタ4(4h)とのイベント3をプレイしていると、本命以外の女子キャラクタ4(4a,4b,…,4g)とのイベント5が強制的に発動されることになる。つまりは、本命の女子キャラクタとの恋愛の障害となる妨害イベント5をこなさなければならなくなる。
本発明において、各女子キャラクタ4にはそれぞれ恋愛を成就するまでの過程を描くシナリオが用意されており、シナリオを構成する複数のイベントの中には、女子キャラクタ4とプレーヤキャラクタ2とが何らかの約束(例えば、買い物、何かを貸す約束)をするイベント3と、その約束を遂行するイベント3sとがセットで挿入されている。そして、後者は妨害イベントの発生が予め許可されており、約束を取り付けるイベント3と、約束を遂行するイベント3sとの間で妨害イベント5が発生するように制御される。
■細部
本発明の好感度Pgの増減に影響するファクタの説明図を図2に示す
【図2】好感度Pgの増減に影響するファクタの説明図
好感度Pgの増減に影響する第1のファクタは、イベントプレイにおけるプレーヤキャラクタ2の行動選択結果であり、これは「本命」「妨害」何れの種別の女子キャラクタ4に共通して適用される。第1のファクタは、基本的には、対話相手である女子キャラクタ4の好意が増加するような好意的な内容の選択肢(図2の例では「選択○」) が入力されると、当該女子キャラクタ4の好感度Pgは増加し、反対に好意が低下するような相手を疎遠にする内容の選択肢(図の例では「選択□」)が入力されると、好感度Pgは低下する。それらの中間の選択肢(図の例では「選択△」)では、好感度Pgが変化しない、或いは僅かに増加する。
第2と第3のファクタは、人物同士の相関関係による影響であり、これも「本命」「妨害」何れの種別の女子キャラクタ4に共通して適用される。
第2のファクタは、プレーヤキャラクタ2と女子キャラクタ4との近しさや気の合う関係などで言い表される親近感の影響であり、第3のファクタは、仲の良い他の女子キャラクタの好感度Pgの影響である。これらをゲームに反映させるための仕組みとして、本実施形態ではキャラクタの相関図を用いる。
■実施例
本発明における主たる処理の流れを図3に説明する。
【図3】主たる処理の流れを説明するフローチャート
処理部は先ず、プレーヤに「本命」とする女子キャラクタ4を選択させるための本命選択画面を表示する(ステップS2)。 本命選択画面にて、プレーヤは恋愛成就の相手として希望する女子キャラクタ4の選択決定操作を入力する。こうした選択操作入力が検出される(ステップS4)と、処理部は当該選択された女子キャラクタの種別を「本命」、他の女子キャラクタの種別を「妨害」とするように、女子ステータスデータの種別フラグを設定する(ステップS6)。 処理部は、相関データを自動生成(ステップS8)し、生成した相関図に基づいて全ての女子キャラクタ4の変動率Rを算出及び決定する(ステップS10)。
ゲームを開始する(ステップS20)と、処理部は先ずホーム画面を表示する(ステップS22)。ホーム画面が表示された状態で、相関図の変更操作入力を検知する(ステップS24のYES)と、処理部は相関図変更処理を実行する(ステップS26)。
ホーム画面で対話相手の選択操作の入力される(ステップS46)と、処理部は対話相手に選択された女子キャラクタ4のキャラクタ初期設定データからシナリオデータを読み出し(ステップS48)、当該シナリオ進度データで示すポイントからイベントプレイを開始及び再開する(ステップS50)。対話相手の女子キャラクタ4と始めて会話するならば最初のイベントから、既に一度でも会話していれば前回のイベントの次に続くイベントからのプレイとなる。
シナリオの所々に設けられた分岐点では、プレーヤキャラクタ2の行動選択入力が必要になる。イベントプレイが進行し、分岐点となるシーンで行動選択入力が検知される(ステップS52のYES)と、処理部は対話相手の好感度変更処理を実行する(ステップS54)。
ステップS122は、対話相手の女子キャラクタ4の好感度Pgが変化したことが他の女子キャラクタ4に影響を及ぼす事象を、恋愛シミュレーションゲームにおいて仮想的に再現するための処理である。ステップS146は、好感度Pgが限界条件を満たす、つまり気持ちが十分に高ぶった女子キャラクタ4を判定し、告白イベントを実行し、告白の結果に応じたパラメータの変更やエンディングを実行させる処理である。
対話相手の女子キャラクタ4の好感度Pgがそもそも上限に達していない場合などの理由で、告白発生処理でエンディングの実行に至らなければ、処理部は実行中のイベントが終了する(ステップS260のNO)まで、ステップS50~S146を繰り返す。
■展望、結語
以上、本発明によれば、人物間の相関関係という要素をゲームに織り込み、登場キャラクタがどのようにしてプレーヤキャラクタに好意を抱いていくかに多様性をもたらすことができる。結果として、恋愛模様を複雑かつ面白くすることで、従来にはなかったリアルな恋愛シミュレーションゲームが提供される。
■概要
出願国:日本 発明の名称:プログラム及びゲーム装置
出願番号:特願2010-204907
公開番号:特開2012-55644
特許番号:特許第5710187号
出願日:2010年09月13日
公開日:2012年03月22日
登録日:2015年04月30日
出願人:株式会社バンダイナムコゲームス 株式会社秋元康事務所
経過情報:登録済(現在も権利維持)
A63F 13/822 (2014.01)
A63F 13/58 (2014.01)
A63F 13/45 (2014.01)
<免責事由>
本解説は、主に発明の紹介を主たる目的とするもので、特許権の権利範囲(技術的範囲の解釈)に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解を示すものではありません。自社製品がこれらの技術的範囲に属するか否かについては、当社は一切の責任を負いません。技術的範囲の解釈に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解については、特許(知的財産)の専門家であるお近くの弁理士にご相談ください。