SDGsと特許技術のダイナミクス

INTRODUCTION

現代社会に立ちはだかる多くの課題。気候変動、貧困、不平等…。それらはもはや一国、一企業が解決できるものではなく、全世界が連携して取り組むべきグローバル課題となっています。

国連が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」は、まさにその解決策となり得る存在です。そして今、そのSDGsを達成するための技術が企業経営に新たなチャンスを生み出しています。

今回の特許マガジンでは、SDGsのゴールに関連する特許を解説します。それは世界を変え、ビジネスも変える力を持つ、一度きりの大きなチャンスかもしれません。

全ての経営者の皆様に、この先進的な動きをぜひご一読いただき、自社の戦略に生かしていただきたいと思います。グローバル課題の解決に向け、一緒に挑んでいきましょう。

CONTENTS

  • #1猛暑対策に適したエコロジカルな道路

  • #2飲みやすさを向上させたストロー式携帯型浄水ボトル

  • #3核融合炉の発電効率を向上させる冷却材の活用法とは

猛暑対策に適したエコロジカルな道路


ヒートアイランド現象による都市部の高温化は毎年の社会問題ですが、このようなヒートアイランド対策として、「透水性舗装路」が活用されてきました。

舗装した道路に水を透過できるようにすることで、例えば降雨時に水を透過させ、舗装の下に埋設した基盤材層に水を浸透させて貯留しておき、夏場の暑い日には毛細管作用によって基盤材層から水が地上の方へ移動して蒸発することで、舗装面の温度上昇を抑制させるというものです。しかしながら、従来の透水性舗装路は、基盤材層の保水能力が低く、長時間にわたって水を蒸発させ続けることが困難でした。

保水能力を向上させつつ、環境への負荷も少なく、また、交通量の多い道路や重い車両の通行がある場所でも舗装の劣化や破損を防止するためにはどのようにすればよいのでしょうか。今回紹介する発明は、このような問題点に鑑みた、保水性を有する舗装路についての発明です。

ヒートアイランド対策のひとつとして、透水性舗装が知られています。この種の透水性舗装は、透水性舗装の下方に透水性および保水性を有する基盤材層を配置して、透水性舗装に降った雨水を下方の基盤材層に浸透させて貯留します。そして、夏場の暑い日には貯留された水を(毛管作用により)地上の方へ移動させて透水性舗装面から蒸発させます。蒸発させるときの気化熱を利用して、透水性舗装面の温度上昇を抑制できます。

この種の透水性舗装構造では、基盤材層の保水能力が低いため、長時間にわたって水を蒸発させ続けることが困難です。したがって、吸収した水の一部が蒸発するにとどまり、短時間の日射で乾燥状態となり、透水性舗装表面の温度がすぐに上昇し始めます。

これに対して、保水性能を高めるため、保水性に優れた様々な高保水性骨材が提案されています。しかし、高保水性骨材は、一般的な骨材と比べて高額であり、しかも、舗装面の冷却持続効果が比較的短いという欠点を有します。

また、透水性舗装には、温度上昇の抑制作用だけでなく、ゲリラ豪雨にも耐えうる高透水性および高排水性が要求されています。透水性を高めるためには、透水性舗装に含まれる骨材の間隙を大きく(粒子同士の間隔を広げる)すればよいのですが、その反面、水の吸上げ性能(毛管作用)が低下してしまい、その結果、透水性舗装面の冷却効果が低下します。

以上の理由により、ヒートアイランド対策のための舗装面の冷却効果と、ゲリラ豪雨対策のための保水性能を両立できる透水性舗装が切望されています。

発明の目的

本発明は上記問題等を考慮して考えられました。本発明の目的は、高い保水性能を備えつつ、舗装面の冷却効果を持続できる、保水性舗装路の構造を提供することにあります。以下に、本発明の概要を説明します。

本発明の保水性舗装路の構造は、例えば、歩道として適用されます。
本発明の保水性舗装路の構造は、全体として連続的に間隙を有し、連続間隙を通じて地中に浸透した水が毛管上昇作用によって地表から蒸発できます。
本発明の保水性舗装路の構造は、雨水の貯留浸透施設として機能する透水基盤材層、および、透水基盤材層の上方に配置された透水舗装層を備えます。

上記の透水基盤材層は、透水基盤材層の骨格をなす下位基盤層、および、
下位基盤層の上に隣接して配置されて下位基盤層の代替層として機能する上位代替基盤層を有します。

上記の上位代替基盤層は、降雨等によっても劣化せず長期間にわたって一定の間隙を維持できる鉱物粒または人工粒を含み、
上位代替基盤層を構成する鉱物粒が真砂土または赤土の何れか一種であり、
上位代替基盤層を構成する人工粒が焼却灰の造粒体です。

下位基盤層を構成する骨材は、角粒体、および、角粒体の表面を被覆するコーティング層で構成され、コーティング層は、酸性官能基を有する自然由来の湿潤物質(アロフェンまたは腐植)を含みます。

さらに、本発明の保水性舗装路では、透水基盤材層から透水舗装層へ向けた毛管上昇作用を高めるように、透水基盤材層から透水舗装層へ向けて徐々に透水性能が小さくなっています。

好ましくは、下位基盤層と上位代替基盤層との間の隣接境界が、貯留水の予想最高水位付近に位置します。
好ましくは、透水基盤材層上に隣接して透水路盤層が配置され、透水路盤層上に透水下地層が配置され、透水下地層上に透水舗装層が配置されています。

発明の詳細

本発明の保水性舗装路の構造の具体例について図面を参照しつつ説明します。図1は、保水性舗装路のモデル図です。

【図1】

保水性舗装路の構造

<1>概要

本発明の保水性舗装路10は、全体的に連続間隙を有し、毛管上昇作用によって水が上へ移動できる構造体です。本発明の保水性舗装路10は、路床20上に配置された透水基盤材層30、基盤材層30上に配置された透水路盤層40、透水路盤層40上に配置された透水下地層50、および、透水下地層50上に配置された透水舗装層60の積層構造を有します。

<2>透水基盤材層30

透水基盤材層30は、多孔質構造を有し、雨水の貯留浸透施設として機能します。透水基盤材層30は、透水性が異なる二種類の天然骨材を組み合せて構成され、基盤材層の骨格をなす下位基盤層31、および、下位基盤層31の一部を代替して機能する上位代替基盤層35を有します。

下位基盤層31に含まれる粒子の方が、上位代替基盤層35に含まれる粒子よりも粒径が大きく、また、下位基盤層31の方が上位代替基盤層35より透水性能も大きくなっています。

上位代替基盤層35は、下位基盤層31の上面と接しています。両層31,35の間で連続的に通水が可能であり、また、毛管現象による水の上昇も可能です。

<2.1>下位基盤層31

下位基盤層31は、角粒体32の表面をコーティング層33で被覆した骨材群を含みます。角粒体32は、リサイクル骨材などであり、例えば、粒の大きさがそろった再生砕石です。コーティング層33は、自然由来の湿潤物質を含みます。

<2.1.1>角粒体

角粒体は、耐圧性に優れた角張った形状の粒体であり、例えばさまざまな産業廃棄物を組み合わせて使用できます。産業廃棄物としては、再生砕石(コンクリートガラ、インターロッキングレンガ等)、レンガ類(タンデッシュレンガ、耐火レンガ、高炉スラグ、赤レンガ等)、ALC(軽量気泡コンクリート)、または瓦類などです。

リサイクル骨材としては、10mm~60mmの範囲の所定の大きさで篩分けしたもの(大きさをそろえたもの)を使用できます。

素材や使途などを考慮して、粒径サイズを適宜調整した角粒体11を使用します。

<2.1.2>自然由来の湿潤物質

コーティング層33に含まれる自然由来の湿潤物質とは、酸性官能基を有する自然由来の物質です。例えばアロフェン、腐植物質等が挙げられます。

自然由来の湿潤物質は、下位基盤層31内において浮遊物質を吸着できるだけでなく、毛管現象による水の吸上げ高さの向上にかなり貢献します。

上記のアロフェンは、粘土鉱物の一種です。火山灰由来の土壌が風化することによって生成した多孔質・非結晶性のシリカ・アルミナ系鉱物です。成分の組成はAl2O3・SiO2・nH2Oです。非常に微細な気孔が存在し、比表面積が大きいため、微小物質を物理的に吸着し、また吸湿も可能です。

上記の腐植物質は、土壌中の動植物の遺体が微生物によって分解される過程でできた酸性官能基を有する自然由来の物質です。コロイド状有機高分子化合物となり、微小物質を物理的に吸着でき、リサイクル骨材として再生砕石を用いた場合には、腐植物質が再生砕石の「アルカリ性」を中和します。

好ましくは以下の介在物質を介して、角粒体32の表面に自然由来の湿潤物質を付着させます。その介在物質は、例えば、湿潤性を有する高吸水性樹脂や高分子吸収体であり、具体的には、ポリアクリル酸ナトリウム、デンプングラフト重合系、ポリビニルアルコール系、カルボキシメチルセルロース系(CMC)、酢酸ビニル樹脂、でんぷん糊、水等です。これらの物質は湿潤すると粘性を有するため、この粘性を利用して角粒体32の表面に、上記の自然由来の湿潤物質を付着させます。

<2.1.3>下位基盤層31の例示

下位基盤層31としては、例えば製品名「J-ミックス(東邦レオ株式会社製)」をそのまま用いることができます。J-ミックスの具体的な組成および製法は特開2014-177761号に開示されています。

J-ミックスは、一般的な単粒度砕石よりも、貯水能力を約1.4倍に高めることができます。

<2.2>上位代替基盤層35

上述した下位基盤層31は、リサイクル骨材に自然由来の湿潤物質を被覆した構造であるため比較的高価です。

そこで、下位基盤層31の使用量を抑制するために、下位基盤層31と同等の毛管上昇作用を有する代替骨材を使用します。代替骨材として、安価な上位代替基盤層35を使用します。

<2.2.1>上位代替基盤層35の組成

上位代替基盤層35は、降雨等によっても劣化せず、長期間にわたって一定の間隙を維持できる鉱物粒または人工粒を含みます。例えば真砂土または赤土等を使用できます。好ましくは真砂土を使用します。

真砂土は、花崗岩が風化したものであり、粗砂や砕砂成分を多く含む安価な土です。真砂土は市販されています。

赤土は、関東ローム層のような風化した火山灰層からできた土です。シルトや粘土成分を多く含んだ安価な土砂です。

人工粒としては、例えば安価な焼却灰の造粒体等を使用できます。

<2.2.2>真砂土または赤土が好ましい理由

舗装路は、踏圧等の加重を繰り返し受けます。上位代替基盤層35として一般土砂や黒土等を用いた場合には、施工当初には透水性作用及び毛管上昇作用を期待できますが、繰り返しの加重によって、経時的にその性能が低下していきます。

この原因は、一般土砂や黒土等が粘土粒子を多く含み、加重によって土粒子間の隙間が減少するためと推測されます。

この点に着目し、上位代替基盤層35の原料として、公知の各種骨材や土壌等を用い、加重を繰り返し与える試験を行って検討しました。その結果、真砂土または赤土は、下位基盤層31と近い透水性作用および毛管上昇作用(機能)を有すること、しかも、長期間にわたって良好な透水性作用および毛管上昇作用を持続できることを確認しました。

真砂土または赤土は、一般土砂や黒土等と比べて粘土粒子が少ないため、加重を繰り返し受けても土粒子間の隙間が減少しにくい性質を有します。

特に、岩石が風化してできた真砂土は、赤土と比べて土粒子間の隙間が減少しにくいことを確認できました。

このように、下位基盤層31として真砂土または赤土を用いることで、下位基盤層31との相性が最も良いだけでなく、下位基盤層31の透水性作用および毛管上昇機能を長期間にわたって維持できます。

さらに現実的な問題があります。昨今の建設現場において、透水性作用および毛管上昇機能に優れた「良質土」を入手することが困難という問題です。しかし、赤土は関東であれば比較的容易に入手でき、真砂土は関西であれば比較的容易に入手できます。

<2.2.3>下位基盤層31と上位代替基盤層35の境界位置

保水性舗装路10を構成する各層の層厚は、現場の状況等に応じて適宜調整されます。好ましくは地表から下位基盤層31の上面までの高さ、すなわち下位基盤層31と上位代替基盤層35の隣接境界は、貯留水の予想最高水位付近の高さとします。

一般的には、歩道の直下地盤の浸透水が一定の水位に達したときに、周辺の側溝等に浸透水を逃がすように構成されています。「貯留水の予想最高水位」とは、浸透水を周囲へ逃がすときの浸透水の水位を指します。

最高水位をはるかに超える高さまで下位基盤層31を形成することも可能ですが、下位基盤層31の資材コストが高くなります。

そこで、下位基盤層31の高さを必要最低の高さに抑え、下位基盤層31の高さの不足分を上位代替基盤層35で補います。これにより、透水基盤材層30全体としての雨水の貯留作用および水の毛管上昇作用を低コストで実現できます。

<2.3>透水シート36

上位代替基盤層35を構成する土粒子の粒径は、下位基盤層31の骨材の粒径よりも極端に小さい場合があります。この場合、下位基盤層31上に上位代替基盤層35を直接敷き詰めると上位代替基盤層35の土粒子が雨水と一緒に下方へ流れ落ちるおそれがあります。

これに対して、上位代替基盤層35の土粒子の透過を規制する不織布等の透水シート36を設置することで、上位代替基盤層35の土粒子の流下を規制できます。ただし、透水シート36は、必ずしも設置する必要はありません。

【図1】

<3>透水路盤層40

透水路盤層40は、クラッシャーラン等の粒状材料を用いた一般的な路盤です。クラッシャーランとは、岩石などを破砕機(クラッシャー)で砕いたものです。大きさをそろえずに作られた分、安価です。透水路盤層40には、砕石や砂利などの自然骨材の他、廃棄物の適用も可能です。

<4>透水下地層50

透水下地層50は、透水舗装層60の下地材です。本例の透水下地層50は、透水路盤層40上に敷設され透水性を有するアスファルトコンクリート製の耐圧下地層51、および、耐圧下地層51上に敷設された砂製のクッション層52を有します。

なお、透水下地層50は、耐圧下地層51またはクッション層52のいずれかのみを有する場合もあります。

透水下地層50がクッション層52を有する場合、必要に応じて、透水シートによって砂の流下を防ぎます。

<5>透水舗装層60

本例の透水舗装層60は、透水・保水性を有する硬質のブロック61で構成されています。

<6>保水性舗装路の透水係数の例示

透水基盤材層30から上方向への毛管上昇作用を高めるために、保水性舗装路10での透水性能は、透水基盤材層30で最も大きく、上へ行くほど透水下地層50、透水舗装層60の順で徐々に小さくなっています。

保水性舗装路の作用

続いて、保水性舗装路10の各作用について説明します。

保水性舗装路10を構成する各層60~30は、連続的な通水性を有します。

したがって、舗装面に降り注いだ雨水等は、透水舗装層60、透水下地層50、透水路盤層40、上位代替基盤層35を順に浸透して下方へ移動し、上位代替基盤層35の直下にある下位基盤層31に貯留されます。

雨水は、透水基盤材層30を構成する下位基盤層31だけでなく上位代替基盤層35にも貯留されます。

透水基盤材層30内に浸透した水を周囲に浸透させずに貯留させておく場合もあれば、水の一部を路床20や側壁地山を通じて外部へ逃がす場合もあります。

下位基盤層31は、骨材群(角粒体32の表面を自然由来の湿潤物質を含むコーティング層33で被覆したもの)で構成されています。SS物質(水中を浮遊する物質)を含む雨水が下位基盤層31の内部を流下するときに、自然由来の湿潤物質を含むコーティング層33と接触すると、雨水中を浮遊するSS物質が捕捉されます。

捕捉されたSS物質は、自然由来の湿潤物質と同様に湿潤しているため、捕捉されたSS物質にさらに新たなSS物質が捕捉されます。

雨水の浸透速度は極めて遅いため、捕捉したSS物質が角粒体32から分離して流出することはなく、長期間にわたって捕捉状態を維持できます。

このように下位基盤層31の流下途中でSS物質が捕捉されるため、下位基盤層31の最底部におけるSS物質の沈降および堆積を抑制できます。

水の貯留能力

雨水は、透水基盤材層30を構成する下位基盤層31および上位代替基盤層35の両方に貯留されます。

特に下位基盤層31の間隙率は、粒サイズがそろった一般的な砕石と比べて高いため、下位基盤層31は、大量の水を貯留できます。

したがって、長時間にわたって保水性舗装路10内に水を貯留できます。よって、透水舗装層60の表面に水溜まりができにくく、優れた排水性が発揮され、ゲリラ豪雨対策に有効です。

大気の冷却

夏場の気温上昇に伴って透水舗装層60の表面温度が高まると、下位基盤層31中に貯留された水が毛管現象により透水舗装層60へ向けて上昇し、さらに透水舗装層60の上面から蒸発します。

水が大気中へ蒸発するときに気化熱を奪うため、透水舗装層60の周囲の温度を下げて効果的な冷却が可能です。

特に、浸透基盤層30を構成する下位基盤層31および上位代替基盤層35中に大量の水が貯留されているため、水の毛管上昇作用を長時間にわたって持続できます。

したがって、透水舗装層60の周囲の冷却効果を長時間にわたって持続でき、都市部のヒートアイランド対策にきわめて有効です。

冷却効果の実証実験

本発明の保水性舗装路を適用した歩道路と、舗装層をアスファルトで覆った通常の歩道路を比べるために、8月の9日間にわたって実証実験を行い、歩道路の表面温度を測定しました。

本発明では、透水舗装層60として60mm厚の保水ブロックまたは透水性アスファルト舗装を用い、透水下地層50として40mm厚のクッション層52を用い、透水路盤層40として100mm厚の再生砕石を用い、上位代替基盤層35に35mm厚の真砂土を用い、下位基盤層31に45mm厚のJ-ミックス(東邦レオ株式会社製)を用いました。

その結果、アスファルトで覆った通常の歩道路では、表面最高気温の平均は54℃でした。これに対して、本発明の保水性舗装路を適用した歩道路では、表面最高気温の平均が38℃でした。本発明の保水性舗装路が-16℃の冷却効果を有していました。

上記の実証実験によって、本発明における優れた冷却効果は、水の蒸発時間、すなわち冷却時間の持続性に起因することを確認できました。

他の具体例

上述した例では、透水基盤材層30(下位基盤層31、上位代替基盤層35)、透水路盤層40、透水下地層50(耐圧下地層51、クッション層52)、および透水舗装層60を積層させて保水性舗装路10を構成しました。一方、保水性舗装路10は、以下の複数層の組み合せによって構成される場合もあります。

(1)透水基盤材層30、および透水舗装層60
(2)透水基盤材層30、透水路盤層40、および透水舗装層60
(3)透水基盤材層30、透水下地層50、および透水舗装層60

いずれの例でも、保水性舗装路10は、少なくとも透水基盤材層30および透水舗装層60を備えます。組み合わせは、周辺環境や日照環境等を考慮して適宜選択されます。

以上説明しましたように、本発明は、歩道、公園・広場、車道等で利用できる保水性舗装路の構造に関します。本発明は、高い保水性能を維持しつつ、地表の冷却効果を経済的に持続できます。

本発明の保水性舗装路は、雨水の貯留機能、および、水の毛管上昇作用による冷却機能を併せ持ちます。本発明の保水性舗装路は、地中に配置された透水基盤材層、および、透水基盤材層の上に配置された透水舗装層(吸水・保水ブロックまたは透水アスファルト)を備えます。

透水基盤材層は、透水基盤材層の主体となる下位基盤層、および、下位基盤層の代替材として機能させる上位代替基盤層を有し、下位基盤層と上位代替基盤層の間で連続的な通水が可能であり、また、毛管現象による水の上昇作用も可能です。

上位代替基盤層では、鉱物粒(真砂土または赤土)または人工粒を使用することができ、これにより、降雨後でも劣化せず長期間にわたって粒の間隙を維持できます。

本発明では、下位基盤層に含まれる骨材は、角粒体および角粒体の表面に付着したコーティング層で構成されています。コーティング層は、酸性官能基を有する自然由来の湿潤物質(アロフェンまたは腐植)を含みます。

本発明によって、高価な下位基盤層の使用量を削減できます。また、下位基盤層を削減した分の代替材として上位代替基盤層を利用して透水基盤材層を形成することにより、高い保水性能を備えつつ、舗装面の冷却効果を持続できます。したがって、従来困難であったヒートアイランド対策とゲリラ豪雨対策の両立が可能です。

本特許は、東邦レオ社から出願されました。東邦レオ社は、環境問題に配慮したさまざまな“グリーン”事業を手掛けている会社です。さまざまな事業のうちの1つが、グリーンインフラ事業であり、ヒートアイランド対策に関わる事業もグリーンインフラ事業の1つです。

本特許発明は、電力などのエネルギーを使わなくてもヒートアイランド対策に寄与できるアイデアです。上述した「J-ミックス」という製品はすでに販売されており、本発明は、この製品を利用した発明に相当すると考えられます。今後ますます地球温暖化が進み、夏季の猛暑対策をエコロジカルな方法で実施しようとした場合に、本発明の技術は利用価値を有すると思われます。

発明の名称

保水性舗装路の構造

出願番号

特願2018-231642

公開番号

特開2020-094356

特許番号

特許第6601989号

出願日

平成30年12月11日(2018.12.11)

公開日

令和2年6月18日(2020.6.18)

登録日

令和1年10月18日(2019.10.18)

審査請求日

令和1年10月18日(2019.10.18)

出願人

東邦レオ株式会社

発明者

木田 幸男、武田 治夫、太田 太郎
国際特許分類

E01C 7/32
E01C 15/00
E01C 11/24

経過情報

本願は早期審査請求によって早期に審査され、1回の拒絶理由通知を経て特許となりました。


飲みやすさを向上させたストロー式携帯型浄水ボトル


暑い夏は楽しい季節ではありますが、最近の日本の猛暑は身体の水分が急速に奪われるため、脱水症状や熱中症のリスクが非常に高まっています。

外出先やアウトドア活動中には特に水分補給が重要となりますが、その水源には不安要素があります。特に自然水源や公共の水源は、細菌や汚染物質にさらされている可能性があるからです。

このような環境下、手軽に持ち運べる携帯型の浄水ボトルは脱水症状や健康上の問題を回避するために非常に有用です。今回紹介する発明は、ストロー式で飲みやすさを向上させた携帯用浄水ボトルについてです。

従来から、携帯用浄水ボトルは種々の態様が採用されています。例えば、文献1に示されているような、ノズルヘッドの上下動で作動するポンプ機構を用いて浄水を供給するタイプなどが挙げられます。

(例)実開平7−34992号

しかし、使用者が口で吸い出し可能な中空の吸口(いわゆるストロー型)を携帯用浄水ボトルに適用することについては、これまであまり検討されてきませんでした。

発明の目的

本発明は、従来の携帯用浄水ボトルと比較して、吸口部材から水を吸い出すために必要な吸引力の軽減を図ることを目的としています。

発明の詳細

では、図を参照しながら、本発明の詳細を説明していきます。

図1は、携帯用浄水ボトル10の分解斜視図です。携帯用浄水ボトル10は、濾過材を用いて浄水を供給可能に構成された水筒です。携帯用浄水ボトル10は、ボトル本体100と、浄水カバー200と、浄水カートリッジ300と、キャップ本体400と、接続パッキン500と、吸口部材600とを備えます。

【図1】

本発明の携帯用浄水ボトル10のボトル本体100は、一端に開口部180を有する円筒状です。ボトル本体100における開口部180側の外周面には、キャップ本体400に嵌り合う雄ネジ170が形成されています。ボトル本体100は、ポリエチレンテレフタレート(PET)を主成分とする樹脂成形品です。

ボトル本体100からキャップ本体400が取り外されることによって、ボトル本体100の開口部180からボトル本体100の内部へと水WTを受け入れ可能に構成されてます。

図2に示すように、キャップ本体400に吸口部材600が収納された状態にある携帯用浄水ボトル10は、ボトル本体100の内部に水WTを密閉状態で貯留可能に構成されています。

【図2】

携帯用浄水ボトル10の浄水カバー200は、浄水カートリッジ300を覆う筒状のカバーです。浄水カバー200は、ポリプロピレンを主成分とする樹脂成形品です。浄水カバー200は、浄水カートリッジ300に取り付けられていて、浄水カバー200は、浄水カートリッジ300と共にボトル本体100の内部に保持されています。

【図3】

図3および図4に示すように、キャップ本体400から吸口部材600が引き起こされた状態では、携帯用浄水ボトル10は、携帯用浄水ボトル10の使用者が口で吸口部材600から水WTを吸い出し可能に構成されています。

図3に示すように、ボトル本体100の貯留されている水WTは、浄水カバー200および浄水カートリッジ300によって形成される流路FP1を通過した後、接続パッキン500を介して、吸口部材600から外部へと吸い出されます。

携帯用浄水ボトル10の浄水カバー200は、浄水カートリッジ300を覆う筒状のカバーです。浄水カバー200は、ポリプロピレンを主成分とする樹脂成形品です。浄水カバー200は、浄水カートリッジ300に取り付けられており、浄水カバー200は、浄水カートリッジ300と共にボトル本体100の内部に保持されています。浄水カバー200は、筒状部210と、筒状部220とを有します。

【図4】

浄水カバー200の筒状部210は、筒状部220より細い円筒状を成します。筒状部210の下方は、ボトル本体100の内部に開放されています。筒状部210の上方は、筒状部220に接続されています。筒状部210は、水WTを流通可能な流路292を内側に形成する。流路292は、流路FP1の一部を構成します。

浄水カバー200の筒状部220は、上方に開口部250を有する円筒状を成し、筒状部220は、浄水カートリッジ300よりも一回り太く構成されます。筒状部220の下方は、筒状部210に接続され、筒状部220の上方には、開口部250から浄水カートリッジ300が嵌め込まれています。開口部250側における筒状部220の内側には、浄水カートリッジ300に嵌り合う雌ネジ部240が形成されています。筒状部220の内側には、浄水カートリッジ300が保持されています。筒状部220は、水WTを流通可能な流路294を浄水カートリッジ300との間に形成し、流路294は、流路FP1の一部を構成します。

浄水カバー200に形成される流路292と流路294との間には、フィルタ260が設けられています。このフィルタ260は、流路292から流路294へと通過する水WTからゴミを除去するものです。さらに、浄水カートリッジ300は、ボトル本体100の内部から吸口部材600へと流通する水WTを浄化可能に構成されています。浄水カートリッジ300は、濾過部310と、保持部330とを有します。

浄水カートリッジ300の濾過部310の濾過材は、活性炭を含みます。そして保持部330は、濾過部310を保持する円筒状を成し、ポリプロピレンを主成分とする樹脂成形品でできています。保持部330の下方側の外周には、浄水カバー200の雌ネジ部240に嵌り合う雄ネジ部320が形成されており、雄ネジ部320の上端部において、浄水カバー200の開口部250と、浄水カートリッジ300の保持部330との間には、ニトリルゴム製のOリング810が挟み込まれています。このOリング810により、開口部250と保持部330との間を密閉します。

浄水カートリッジ300の保持部330は、濾過部310を通過して浄化された水WTを吸口部材600へと流通可能な流路390を形成します。流路390は、流路FP1の一部を構成し、流路390の中心軸AX1は、ボトル本体100、浄水カバー200および浄水カートリッジ300の中心軸上に位置します。

浄水カートリッジ300の保持部330は、上方へと円筒状に延びた出口部370を有します。出口部370は、流路390の出口となります。出口部370の外周には、キャップ本体400および接続パッキン500に嵌り合う雄ネジ部380が形成され、雄ネジ部380の下端部において、浄水カートリッジ300の保持部330と、キャップ本体400との間に、ニトリルゴム製のOリング820が挟み込まれています。Oリング820は、浄水カートリッジ300の保持部330とキャップ本体400との間を密閉します。

携帯用浄水ボトル10のキャップ本体400は、ボトル本体100の開口部180に嵌り合うことによって開口部180を密閉可能に構成されています。キャップ本体400は、ポリプロピレンを主成分とし、貝殻由来の水酸化カルシウムを含有する樹脂成形品です。貝殻由来の水酸化カルシウムは、ホタテ貝殻を焼成した粉末で構成することができます。

キャップ本体400の凹部450には、雌ネジ部420が形成されています。雌ネジ部420は、浄水カートリッジ300の雄ネジ部380に嵌り合う第1の雌ネジ部です。

キャップ本体400の凹部450は、吸口部材600を回転可能に軸支する軸支部456を有します。キャップ本体400の凹部450は、接続パッキン500に嵌り合うとともに吸口部材600を収容可能な形状となっています。

キャップ本体400の凹部450には、シリコンゴム製の逆止弁460が設けられています。この逆止弁460は、ボトル本体100の外部から内部への空気の流通を許容するとともに、ボトル本体100の内部から外部への流体の流通を阻止するものです。

携帯用浄水ボトル10の接続パッキン500は、シリコンゴム製の樹脂成形品です。接続パッキン500は、浄水カートリッジ300で浄化された水WTを吸口部材600へと流通する流路590を形成し、浄水カートリッジ300の流路390と吸口部材600の吸口流路690との間を接続する第2の流路となります。流路590の入口部592は、浄水カートリッジ300の出口部370に隣接します。流路590の出口部598は、吸口部材600に隣接します。流路590の中心軸AX2は、流路390の中心軸AX1に対して傾斜しています。一例としては、中心軸AX2は、中心軸AX1に対して35°の角度で傾斜しています。

接続パッキン500は、雌ネジ部510を有します。雌ネジ部510は、浄水カートリッジ300の雄ネジ部380に嵌り合う第2の雌ネジ部です。キャップ本体400に接続パッキン500が嵌り合った状態において、接続パッキン500の雌ネジ部510は、キャップ本体400の雌ネジ部420と中心軸AX1上において同軸上に隣接します。

接続パッキン500は、吸口部材600に隣接する凹部560を有します。凹部560には、流路590の出口部598が形成されています。図2に示すように、キャップ本体400に吸口部材600が収納された状態では、流路590の出口部598は、吸口部材600によって密閉されます。また、図3および図4に示すように、キャップ本体400から吸口部材600が引き起こされた状態では、流路590の出口部598は、吸口部材600の流路590に連通します。

吸口部材600の回転軸620は、キャップ本体400の軸支部456に嵌り合います。これによって、吸口部材600は、接続パッキン500の流路590を密閉する第1の位置(図2)と、接続パッキン500の流路590に吸口流路690が連通する第2の位置(図3および図4)との間を移動可能となります。

吸口部材600の突起部630は、第1の位置(図2)において上方に突出しています。突起部630は、第2の位置(図3および図4)においてキャップ本体400に当接します。これによって、携帯用浄水ボトル10の使用者は、突起部630に指を引っ掛けることによって、第1の位置(図2)と第2の位置(図3および図4)との間で、吸口部材600の位置を容易に変更できます(ストローを片手で突出させることができるということです)。

吸口部材600の円弧部650は、円弧状に突出した部位です。円弧部650は、第1の位置(図2)において、接続パッキン500における流路590の出口部598を密閉します。

吸口キャップ680は、携帯用浄水ボトル10の使用者によって咥えられる部位です。吸口キャップ680は、シリコンゴム製の樹脂成形品です。吸口部材600のうち吸口キャップ680以外の部位は、ポリプロピレンを主成分とし、貝殻由来の水酸化カルシウムを含有する樹脂成形品です。

本発明によれば、浄水カートリッジ300の雄ネジ部380が、キャップ本体400の雌ネジ部420と接続パッキン500の雌ネジ部510とに嵌り合うため、浄水カートリッジ300の流路390と接続パッキン500の流路590との間の密閉性を向上させることができます。その結果、吸口部材600から水WTを吸い出すために必要な吸引力の軽減を図ることができます。

また、接続パッキン500の流路590が吸口部材600の吸口流路690と同軸上で連通するため、これらの流路が同軸上ではない場合と比較して、吸口流路690から浄水カートリッジ300の出口部370までの流路抵抗を軽減できます。その結果、使用者にとって飲み易い吸口流路690の向きを採用しながら、吸口部材600から水WTを吸い出すために必要な吸引力の軽減を図ることができます。

さらに、吸口部材600およびキャップ本体400は、貝殻由来の水酸化カルシウムを含有する樹脂からできているため、水酸化カルシウムによって抗菌性を向上させることができます。

浄水機能のついたハンディタイプ(水筒タイプ)の製品は、有名どころではDAFIやBRITA®など、いくつか挙げられますが、本発明はストロータイプである点が他との違いといえそうです。また、構造上、浄水カートリッジと水とが触れる容量が多いため、より浄水性能が優れているように思えます(浄水性能については特許明細書中に記載はありませんでした)。

一方、浄水タイプの水筒は、据置型の浄水器と違って、毎日コンスタントに使うものではないため、浄水カートリッジの交換頻度がユーザーによって大きく異なることが考えられます。よって、今後はより適切なタイミングでカートリッジを交換できるような工夫が加えられるとより便利な製品になると思われます。

発明の名称

携帯用浄水ボトル

出願番号

特願2023-55354

特許番号

特許第7307421号

出願日

2023.3.30

登録日

2023.7.4

審査請求日

2023.3.31

出願人

エ.マ.フ.ル合同会社

発明者

中村 充男
国際特許分類

C02F 1/28
C02F 1/28
C02F 1/42
C02F 1/44
B01D 27/00
B01D 15/00

経過情報

早期審査に付され、出願公開前に特許査定となった。



核融合炉の発電効率を向上させる冷却材の活用法とは


核融合炉の開発は、世界的なエネルギー問題の解決において急務です。化石燃料の使用に伴う気候変動やエネルギー需給の安定性の懸念が高まる中、持続可能なエネルギー源の開発が喫緊の課題となっています。

核融合炉は、安定した核融合反応によってクリーンでほぼ無尽蔵のエネルギーを供給する可能性を持ち、二酸化炭素の排出を削減しながら持続可能なエネルギー供給を実現できます。

そのため、核融合炉の開発は、地球温暖化の緩和やエネルギー需要の増大に対応するために不可欠な技術の一つとされています。このような核融合炉の発電効率をより向上させるための発明が日本の企業により特許出願されましたので、詳説していきます。

核融合炉では、重水素と三重水素(トリチウム)を含む混合燃料を真空容器内でプラズマ化して保持し、核融合反応で生じる14.1MeVの一次中性子からエネルギーを取り出して発電を行います。

トリチウムは自然界に存在しないため、炉を継続的に運転するにはトリチウムの消費分を補いつつ、増殖する必要があります。このため、核融合炉では、核融合反応により生成される中性子の捕獲によるトリチウム生成と、核融合反応により生じる熱の回収とを行うために、真空容器の内面にブランケットが取り付けられます。

従来のブランケットとしては、特別に成分調整された低放射化フェライト鋼(例えば、F82H)で構成された箱形状の金属容器(筐体)に、リチウムを含むトリチウム増殖材、ベリリウムを含む中性子増倍材の層を交互に設けたものがあります。これは、筐体内部に冷却水が流通する流路が形成されて、発生した熱が回収されるものです。

しかし、発生した熱を回収するために冷却水を使用する場合、冷却水が構造材の破損により高温部に吹き込んだ場合には、水素発生などのリスクが避けられません。特に、冷却水を循環させる配管や、精製したトリチウムを回収するための配送ガスを供給・回収するための配管が複雑になると、プラント全体の安全上の懸念及び潜在的なリスクの一つになってしまいます。

発明の目的

本発明は、上述の課題に鑑み、炉設計をシンプル且つ軽量なものとすることによって、プラント全体の構造的な健全性を維持しつつ、高いトリチウム増殖性能を実現する核融合炉用ブランケットを提供することを目的とします。

発明の詳細

では、本発明の詳細を説明していきます。

本発明の核融合炉用ブランケット、複数のブランケットモジュールからなり、それぞれのモジュールは、

  • 核融合プラズマに臨ませて配置される第一壁
  • 第一壁の背後に配置されSiC又はSiC複合材を含む構造材料により形成された内部が中空の筐体
  • 筐体内部の中空内において核融合プラズマから離れる方向に複数連設された内部槽
  • 筐体内において第一壁側の構造材料と最前列に位置する内部槽との間に形成された前面側流路
  • 前面側流路と最前列に位置する内部槽とを連通させる流入孔
  • 隣接された内部槽同士を相互に連通させる連通孔
  • 筐体の外部から前面側流路に冷却材を供給する供給路
  • 最後尾の内部槽から筐体の外部に冷却材を排出する排出路

を備えるものです。

上記冷却材は、増殖材の機能を有するリチウム鉛或いはベリリウム、又はこれら配合して含有する流体であり、第一壁はタングステン薄膜を含みます。

本発明によれば、核融合プラズマを生成する核融合炉の真空容器の内側に沿って複数配置される核融合炉用ブランケットにおいて、炉設計をシンプル且つ軽量なものとし、プラント全体の構造的な健全性を維持しつつ、高いトリチウム増殖性能を実現できます。

詳しく述べると、本発明では、筐体をSiC又はSiC複合材を含む構造材料により形成するとともに、筐体内部に内部槽を複数連設する構造としたため、内部槽のサイズや配置を最適化することができ、核発熱分布に応じた流路の制御ができ、熱の回収率及びトリチウムの増殖性能を適正に向上させることができます。

また、従来のブランケットでは、ベリリウムの充填層が設置できず、また、リチウム鉛が垂直方向に流動する構造になっているものもあり、例えば10m以上の揚程があるようなときには、非常に大きなポンプ動力や電力消費が伴います。これに対して本発明のブランケットモジュールでは、供給路及び排出路が水平方向に配置可能であり、小さいポンプ動力で冷却材を流動させることができます。

さらに、本発明において冷却材としてベリリウムを配合する場合には、ベリリウム増倍反応(Be + n →2He +2n)を誘発する高速中性子束の高い位置に必要量のベリリウムを配置できるため、トリチウム増殖比が調整できます。特に、本発明では、自然比のリチウム鉛やベリリウムを配合することにより、非常にコストが高い高濃縮リチウム鉛(6Li 濃縮度:90%程度)を不要とするか、或いは使用量を低減することができ、コストの低減が可能となります。

図1は、いわゆるトカマク型の核融合炉の構成を一部切り欠いて示したものです。

図1

核融合炉1では、重水素とトリチウムを含む混合燃料を真空容器3の内部でプラズマ化します。発生した高温のプラズマは、各超伝導コイル51〜53などによる磁界によって真空容器3の内部に保持されます。そして、プラズマ内部では、重水素とトリチウムの核融合反応が発生します。なお、ダイバータ6は、核融合反応により生じたヘリウムと燃料粒子の排気を行うとともに、ダイバータ6に流れてきた熱エネルギーの排出を行います。

センターソレノイドコイル53は、真空容器3のドーナツの中心の空間に設けられています。トロイダルコイル51は、真空容器3の大径に沿って互いに間隔をあけて複数が配置されています。これら複数のトロイダルコイル51のそれぞれは、真空容器3のドーナツ状の筒部分を囲むように配されています。それぞれのトロイダルコイル51においては、真空容器3の大径に沿って互いに同一方向の電流が流れるように構成されています。また、ポロイダルコイル52は、真空容器3の大径に沿って形成された環状をなしていて、ドーナツ状の大径と同心に、複数本が垂直方向に互いに間隔をあけて配されています。

図2

重水素とトリチウムを含む混合燃料を真空容器3の内部でプラズマ化し、発生した高温の核融合プラズマP(上図に示すコアプラズマPc及びソルプラズマPs)は、トロイダルコイル51及びポロイダルコイル52などによる全体合成磁場によって、真空容器3の内部に保持されます。この核融合プラズマの内部では、重水素とトリチウムの核融合反応が発生し、ヘリウムと中性子が生成されます。

真空容器3の内側には、ダイバータ6の他に、核融合プラズマにエネルギーを付与するための電子サイクロトロン共鳴加熱(ECH:Electron Cyclotron Heating)装置や、プラズマ中に高エネルギー粒子を注入する中性粒子ビーム入射加熱(NBI: Neutral Beam Injectionheating)装置などの一部も、設けられています。

ブランケットの構成

真空容器3内には、真空容器3の内面に沿って、核融合プラズマを囲むように核融合炉用ブランケット4が設けられています。核融合炉用ブランケット4は、複数のブランケットモジュール4aによって構成された核融合炉用ブランケットであり、それぞれのブランケットモジュール4aは、筐体40の前面の第一壁41を核融合プラズマPに対向させるようにして、核融合プラズマPの周囲を囲んで配置されています。

ブランケットモジュール4aは真空容器3の内側に配置され、冷却材(液体リチウム鉛)が供給管44から筐体40内部へ供給されて、筐体40内において発生した熱及びトリチウムを冷却材により回収し、排出管47を通じて真空容器3の外部へ排出された冷却材を介して熱交換機(IHX = Intermediate Heat Exchanger)201及びVST(Vacuum Sieve Tray)装置202により熱及びトリチウムが回収され、電磁ポンプ(EM Pump:Electro Magnetic Pump)203により冷却材は再びブランケットモジュール4aに供給されます。

図3

図3に示すものは、本発明のブランケットモジュールの模式図です。各ブランケットモジュール4aは、外観的に、立方体状の筐体40を基体とした構造物であり、供給管44から供給された冷却材を筐体40内部で循環させ、排出管47から外部へ送出する構成を備えています。

図4

内部的には、図4に示すように、筐体40内部に形成された内部槽42と、筐体40外部から冷却材を供給する供給管44に連通された供給路46及び前面側流路45と、内部槽42から筐体40の外部へ連通された排出管47とを備えています。

筐体40は、第一壁41の背後に配置され、密度3.21g/cm3の炭化ケイ素複合材料(SiCf/SiC:SiC又はSiC複合材)を含む構造材料により六面が形成された内部が中空の立方体状の函体です。この第一壁41は、核融合プラズマに臨ませて配置される四角形状のプレートであり、核融合プラズマPに対向する面にタングステン薄膜が塗布されています。なお、タングステン薄膜は0.1mmの厚さとなっています。

内部槽42は、筐体40を構成する炭化ケイ素複合材料と同様の材料によって筐体40の内部に隔成された水密性の空間であり、筐体40内部の中空内において核融合プラズマから離れる方向に複数連設されています。

この内部槽42のプラズマ側前面42aには、内部槽421の内外に連通する流入孔45aが多数穿設されており、内部槽421の外側から内側へ冷却材が流入されるように構成されています。一方、隔壁43にも、隣接する内部槽421,422同士を相互に連通させる連通孔43aが多数穿設されており、プラズマ側の内部槽421から後方の内部槽422へと冷却材が流通されるようになっています。

内部槽42の周囲は、筐体40の内壁との間隙部分が冷却材の供給路となっています。筐体40の下部に接続された供給管44が、内部槽42周囲に形成された供給路46に連通され、この供給路46は、筐体40内において第一壁41側の構造材料40aと最前列に位置する内部槽421との間に形成された前面側流路45と連通されており、供給路46及び前面側流路45から、内部槽421の構造材42aに穿設された流入孔を通じて、内部槽421内へ冷却材が供給されます。

供給管44及び排出管47は、炭化ケイ素複合材料(SiCf/SiC:SiC又はSiC複合材)で形成された厚み1mm、長さ10cmの鉛管が採用されています。供給管44は、筐体40の背面側下部において筐体40背面の構造材40dを貫通させて筐体40内部の供給路46に連通されています。この筐体40内部の供給路46と供給管44とが、筐体40の外部から冷却材を供給する供給路となります。一方、排出管47は、筐体40背面側下部において筐体40背面の構造材40d及び内部槽422背面の構造材42dを貫通させて内部槽422内部に連通されています。この排出管47が、最後尾の内部槽422から筐体40の外部に冷却材を排出する排出路となります。

上記ブランケットモジュール4a内で循環される冷却材は、増殖材の機能を有するリチウム鉛を含有する流体です。このリチウム鉛(LiPb)は、冷却材と増殖材の機能を併せ持つ流体であり、本実施形態では、核融合反応により生じた一次中性子の照射を受けて、冷却材であるリチウム鉛に含まれる質量数6のリチウムの核反応を発生させてトリチウムが生成されます。同時に、冷却材に含まれるリチウム鉛と一次中性子との核反応が発生して二次中性子が生成されます。

この二次中性子も核融合炉用ブランケット4内の冷却材と核反応してトリチウム生成に寄与します。なお、冷却材としてベリリウムを充填することで天然Li比のリチウム鉛(6Li比率:7.8%)でもトリチウム増殖比>1を達成可能です。同時に、核融合炉用ブランケット4では、筐体40の内部に供給され流通する冷却材であるリチウム鉛を介して、プラズマから生じる熱が回収されます。

核融合炉の動作

まず、重水素とトリチウムを含む混合燃料を真空容器3の内部でプラズマ化します。発生した高温のプラズマは、各超伝導コイル51〜53などのコイルの磁界によって真空容器3の内部に保持されます。そして、プラズマ内部では、重水素とトリチウムの核融合反応が発生し、ヘリウムと中性子が生成されます。粒子及び熱的エネルギーの一部は、ダイバータ6によって真空容器3の内部で捕獲され、ダイバータ6により核融合反応により生じたヘリウム等の排気が行われるとともにダイバータ6に流れてきた熱エネルギーが排出・回収されます。

一方、核融合炉用ブランケット4では、各ブランケットモジュール4aにおいて、電磁ポンプ203により供給管44を通じて筐体40内部へ冷却材(液体リチウム鉛)が供給され、供給された冷却材によって筐体40内において発生した熱及びトリチウムが回収され、排出管47を通じて真空容器3の外部へ排出されます。この各ブランケットモジュール4aから排出された冷却材を介して熱交換機201及びVST装置202により熱及びトリチウムが回収されます。そして、電磁ポンプ203により冷却材は再びブランケットモジュール4aに供給されます。

詳述すると、電磁ポンプ203により供給管44を通じて筐体40内部へ冷却材(液体リチウム鉛)が供給され、筐体40内に供給された冷却材は、内部槽42の周囲に形成された供給路46を通じて、第一壁41側の構造材料40aと最前列に位置する内部槽421との間に形成された前面側流路45へと流入され、次いで前面側流路45から、内部槽421の構造材42aに穿設された流入孔を通じて、内部槽421内へ供給されます。

また、内部槽42内において冷却材は、隔壁43に多数穿設された連通孔43aを通じて、プラズマ側の内部槽421から後方の内部槽422へと流通します。このように、冷却材は、供給管44から供給路46、前面側流路45を経て、内部槽421,422を通過する間に、筐体40内において発生した熱及びトリチウムを捕捉します。

この間、液体リチウム鉛の冷却材は、増殖材の機能を有することから、核融合反応により生じた一次中性子の照射を受けて、リチウム鉛に含まれる質量数6のリチウムの核反応を発生させてトリチウムが生成されるとともに、同時に、冷却材に含まれるリチウム鉛と一次中性子との核反応が発生して二次中性子が生成されます。この二次中性子も核融合炉用ブランケット4内の冷却材と核反応してトリチウム生成に寄与します。

その後、冷却材は、熱及びトリチウムを捕捉した状態で、最後尾の内部槽422から排出管47を通じて、筐体40の外部に排出され、これら各ブランケットモジュール4aから排出された冷却材を介して熱交換機201及びVST装置202により熱及びトリチウムが回収されます。

本発明の核融合炉用ブランケット4によれば、炭化ケイ素複合材料(SiCf/SiC)及び自己冷却リチウム鉛増殖材を用いた高温運転可能なブランケット設計が可能となります。具体的には、核融合炉用ブランケット4は、第一壁41にタングステン薄膜、ブランケットモジュール4aの構造材として炭化ケイ素複合材料(SiCf/SiC)を採用し、液体リチウム鉛は増殖材と冷却材を兼ねることから、核融合により発生した熱の取り出し、トリチウムの生産及び放射線の遮蔽の役割を果たすこととなります。

また、リチウム鉛は非圧縮性流体であり、空気や水との化学反応性が低いため、漏洩等の想定しうる事故シナリオにおいても安全です。さらにはリチウム鉛を循環させて冷却するため、加圧水やヘリウムガスといった冷却材をブランケット内部に入れる必要がなく、シンプルなブランケット構造が可能となります。

また、筐体42内部に内部42槽を複数連設する構造とするとともに、筐体40、内部槽42,各流路をSiC又はSiC複合材を含む構造材料により形成するため、内部槽42のサイズや配置を最適化することができ、核発熱分布に応じた冷却材の流路を制御することができ、熱の回収率及びトリチウムの増殖性能を適正に向上させることができます。

筐体40の各構造材や配管に密度3.21g/cm3のSiCf/SiC構造材を使用する利点として他に、軽量性に優れ、鉄鋼材(約8 g/cm3)に比べて遥かに軽いうえ、鉄鋼材料の構造材と比較して水素同位体の透過が極めて少ないことが挙げられます。SiCf/SiCを構造材とするブランケットではトリチウム透過による燃料損失や放射性物質の漏洩による問題がほとんど生じません。

さらに、SiCf/SiCは、高温・中性子照射下においても、熱化学的安定性と損傷回復性に優れており、従来材料よりも交換の頻度を下げることができ、メンテナンスコストも低減できます。また、SiCf/SiCは、他の鉄鋼材料と比較して中性子の反射・吸収が非常に少ないことから、高いトリチウム増殖比を達成できます。

加えて、SiCf/SiCは、1000°Cを超える温度においても安定しているので、冷却材を高い温度で循環させることができ、鋼構造材にとって重大な課題である化学的な腐食を引き起こしません。高温耐久性を利用して、高効率ブレイトンサイクルを用いると、55%を超える発電効率が達成されます。

なお、冷却材に加圧水を用いる場合、熱効率は33%程度にしかなりません。また、加圧冷却水を使用する場合、加圧冷却水が構造材の破損により高温部に吹き込んだ場合に冷却水損失事故時の水素発生など、事故のリスクが避けられないという問題もあります。これに対して、本実施形態に係るブランケットモジュールでは、自己冷却で冷却水を使用しないため、この冷却水損失事故が原理的に生じません。

エネルギー問題は、現代社会が直面する最も重要な課題の一つです。地球温暖化の影響や化石燃料の枯渇により、持続可能なエネルギー源の開発が喫緊の課題となっています。その中で、核融合炉の発電効率向上は、エネルギー革命の可能性をもたらす画期的な技術として注目されています。

本発明を活用することにより得られる核融合炉の発電効率向上は、産業の発展と経済成長に大きなインパクトをもたらすでしょう。エネルギーは経済活動の基盤であり、エネルギー供給の安定性とコストの面での改善は、産業の発展を促進します。さらに、エネルギー費用の削減によって、企業の競争力が高まり、新たなビジネスモデルや産業クラスターが生まれる可能性があります。

さらには、発電効率向上は、環境へのポジティブな影響ももたらすと考えられます。化石燃料による発電は大気汚染や温室効果ガスの排出を引き起こしますが、核融合炉はほとんどの環境負荷を排除することができます。また、廃棄物の処理に関する問題も少なく、地球への負荷を軽減することが期待できます。これによって、持続可能な環境を築くための重要な一歩を踏み出すことができるでしょう。

発明の名称

核融合炉用ブランケット

出願番号

特願2021-133804

公開番号

特開2023-028231

出願日

2021.8.19

公開日

2023.3.3

出願人

京都フュージョニアリング株式会社

発明者

向井 啓祐 他

国際特許分類

G21B 1/13
経過情報

本願発明は審査請求されていない。


CONCLUSION

グローバル課題を解決するSDGs技術でワンチャンス!

日本では一時程の盛り上がりは落ち着いたものの、環境をテーマにしたビジネスは定着化しつつあり大企業としてはもはや当然のことになってきそうです。

一方で東南アジアでは、SDGsではなくESGの名目で特に大企業を中心に取り組み課題として積極的に投資が行われている。

今回取り上げられた技術はもちろんだが、SDGs関連の特許は世界共通の課題となるため、その技術が認められ活用が進めばグローバルビジネスでワンチャンスが期待できる。

特に、エネルギー分野に関しては規模が大きくなかなか中小企業は参加しづらいと思うが、その周辺にチャンスがあると考えている。

例えば、タイではEV車の普及が今後進むと予測されており既に中国メーカーの安価なEV車が人気で売れているが、そうなると、充電スポットや待ち時間が課題になる。これは日本でも同じことでイマイチ普及しなかった課題ですが、タイムラグがあるので、日本で普及しなかった課題解決を他国で時差展開することができます。

今からEV車や電池を作ることは難しくても、充電ができる駐車場や充電しながら待てるカフェであれば、チャレンジできそうでは無いでしょうか。
そういったマーケットニーズの波を捉えて、グローバルチャレンジするのもアリですね。その際は国際出願はお忘れなく!