実はデジタル化されていた!話題のカジノ関連特許

INTRODUCTION

カジノと特許は、異なる分野に属するように思われるかもしれませんが、実際には互いに関連している面があります。カジノ業界は長い歴史を持ち、数々のギャンブルゲームやエンターテイメント体験を提供してきました。一方、特許は新しい発明や技術の保護を目的としており、イノベーションを促進する役割を果たしています。

カジノ業界は競争が激しく、新しいゲームやギャンブルの形式を開発することが求められます。一部のカジノオペレーターは、独自のゲームを特許化し、競合他社からの模倣を防ぐことを目指しています。これにより、彼らは知的財産権の保護を受けることができ、独自のゲームの開発に取り組む意欲が高まります。

特許が関連する技術やデバイスに目を向けると、カジノゲームにおいて、、例えば、電子スロットマシンやオンラインカジノプラットフォームなどの開発には、特許技術の導入が欠かせません。これにより、ゲームの公正性、セキュリティ、およびユーザエクスペリエンスの向上を図ることができるとされています。

それでは、カジノと特許の間に見られる興味深い関係について、一部ご紹介します。

CONTENTS

  • #1eスポーツのギャンブルプラットフォーム

  • #2コナミのカジノ生体認証システム

  • #3イカサマは許さない!カジノのカード管理システム

eスポーツのギャンブルプラットフォーム


現在、様々なゲームにおいて、そのプレイ動画、ゲーム実況が配信されており、その視聴者も増え続けています。eスポーツなどは、実際にプレイするのは難易度が高かったり、高スペックのマシンが必要だったりと、なかなかハードルの高さを感じるところではありますが、そのプレイ状況を観戦したりするのは、リアルなスポーツ中継を楽しむことと同様、誰でも楽しめる一般的なエンタメになっているといえるでしょう。

このような、特に勝敗がはっきりしているゲームにおいては、リアルなスポーツにおいてもギャンブルの対象になるケースが多々あります。今回紹介する発明は、eスポーツなどのゲームに対して、ギャンブルの要素を付与するための方法を示すものです。具体的にどのような技術なのか、詳説していきます。

コンピュータゲームの世界は、そのシミュレーションにより、プレイヤーや観客にとって、「勝者/敗者」「生存/死亡」などを仮想的に描くことができることは、ゲームをプレイする人なら誰でも知っていることでしょう。このようなシミュレートは、勝ち負けがはっきりしていることから、ギャンブルの対象とできることも容易に理解できます。

本発明は、e-スポーツのギャンブルプラットフォームを提供することを目的としています。掛け率(オッズ)はパリミュチュエル方式で確立され、過去のプレイの統計を使用して計算されます。

※パリミュチュエル(Parimutuel betting)とは、ロトなどの配当を決定する方法として使われるもので、投票券の総売上を全てプールし、胴元(興行主)がそこから一定の利益を差し引き、残りの金額を勝ち投票券に配分する方法のことをいいます。

発明の目的

上記背景に基づいて、本発明では、独創的で非日常的なギャンブルの形を提供することを目的として、その一態様として、eスポーツまたはコンピュータゲームを含むコンピュータ・シミュレーションをプレイするプレイヤーの、過去のゲーム履歴データにアクセスし、例えば勝敗率、キル統計、最高点、などに基づいて、賭けオッズを決定することとし、これをゲーム上にオーバーレイして、コントローラから上記オッズを使用した賭け金の入力を可能にすることとしました。

発明の詳細

では、本発明の詳細を説明していきます。

図1は、本発明のシステム例のブロック図となります。

言うまでもないことかもしれませんが、本発明は、コンピュータシミュレーションネットワークなどに限らず、家庭用電子機器(CE)デバイスネットワークの態様を含むクライアントコンポーネントで適用可能なものです。クライアントコンポーネントには、Sony PlayStation®などのゲームコンソール、MicrosoftやNintendo製のゲームコンソール、またはその他のメーカーの仮想現実(VR)ヘッドセット、拡張現実(AR)ヘッドセット、ポータブルテレビ(スマートTVなど)を含む1つ以上のコンピューティングデバイスが含まれる場合があります。

もちろん、ラップトップやタブレットコンピューターなどのポータブルコンピューター、およびスマートフォンを含むその他のモバイルデバイスなども含め、さまざまな動作環境で動作する可能性があります。一部のクライアントコンピュータは、例として、LinuxのOS、MicrosoftのOS、Unix OS、またはAppleまたはGoogleが製造したOSを使用する場合があります。

例えば、TVチューナを備えたインターネット対応TV(TVを制御するセットトップボックス)などのオーディオビデオデバイス(AVD)12などの家庭用電子機器(CE)デバイスが用いられます。

しかしながら、AVD12は、代わりに、例えばコンピュータ化されたインターネット対応の冷蔵庫、洗濯機、または乾燥機などの電気製品または家庭用品であってもよいでしょう。AVD12あるいは、コンピュータ化されたインターネット対応(「スマート」)電話、タブレットコンピュータ、ノートブックコンピュータ、例えばコンピュータ化されたインターネット対応時計、コンピュータ化されたインターネット対応のブレスレット、他のコンピュータ化されたインターネット対応デバイスなどのウェアラブルコンピュータ化デバイスであっても構いません。

さらには、1つ以上の他のCEデバイスを含むことが考えられます。AVD12に直接送信されるコマンドを経由させたりサーバーを経由させるなどして、2番めのCEデバイス、例えばプレーヤーが着用する VR ヘッドセット46などを同時に使用することもできるでしょう。 さらにより多くのデバイスが使用されることも考えられます。たとえば、複数の観客47がそれぞれのヘッドセットまたはCEデバイスを備えた状態で、プレーヤーによってプレイされているゲームの様子を「観察」して、そこに賭けることができます(いわば、競馬の場外馬券場のようなものです)。

図2は、サーバー、ゲーム、および観客のデバイスの任意の組み合わせによって実行できる本発明のロジックについて開示されています。

まずブロック200では、ゲーム分析にアクセスします。前述のとおり、これらの分析には、eスポーツやその他のゲームなどのプレイヤーチームや個人プレイヤーの過去の履歴を含めることができます。過去の履歴は、賭けられているゲームの以前のプレイに限定される場合もあれば、プレーヤーが参加したその他のゲームの一部またはすべてを含む場合もあります。統計には、勝敗率、キル統計、最高点などが含まれる場合があります。

このゲーム分析に基づいて、ブロック202では、賭け(ベット)の提案オッズが示されます。このオッズを算出するにあたっては、過去の計算に基づく機械学習が採用されます。

この提案ベット(賭けの種類)には、ゲームでどちらかが勝つかという直接的なベットが含まれる場合もありますし、合計および個別のポイントスコアや、キャラクターが「x分以内に殺される」かどうかなど、幅広い特殊な賭けも可能です。

提案ベットが定義されると、それらのベットのオッズは、人間によって、またはシミュレーション参加者の一部または全員のゲーム分析データにアクセスするアルゴリズムによって確立されます。

ブロック204では、提案ベットおよびそこに付随するオッズが観客に提供されます。

ブロック206では、ゲームの残り時間がどれだけ残っているかに応じてオッズを変更できます。よって、オッズはゲームのプレイ中に刻々と変化する可能性があります。

ブロック210は、提案された賭け金の承諾が観客から得られたことを示します。

ブロック212では、結果に応じて支払いが行われます。

図3は、ユーザーのインターフェース300に反映される本発明の態様を示しています。これは、ユーザーのモニターへのリアルタイムオーバーレイで表現されます。

ゲームのフレンドリストなどから抽出されたリスト304が提示され、賭ける対象が示されています。賭けの対象は様々なものが採用可能ですから、種々の種類から選択できます。リスト308の提案ベットや、それぞれのオッズ310などが同時に示されます。図示されている例では、2つの賭けが示されています。1つ目は、特定のキャラクターAがゲーム中の任意の時点で仮想武器で攻撃されること、2つ目は、そのキャラクターが次の1分以内に攻撃されることです。それぞれにオッズが異なります。観客は、提案された賭けを受け入れるか断るかを選択することができます。

図4は、過去の賭け履歴に基づいて様々なオファーができるように、賭けを観客に合わせてカスタマイズできることを示しています。例えば、IPアドレスから観客の地理的位置を取得することも、パラメータのひとつとして有用でしょう。

図5は、賭けを行った観客に対してさらに表示されるメッセージ例です。アドバイスメッセージ502は、観客が現在のゲームにおいて賭けに勝っているか負けているかを示しています。セレクタ504は、観客が、賭けの時点で受け付けられたオッズよりも低いオッズで賭けを終了できるようにするために提供されます。逆に、賭けが当たりそうな場合に観客が賭けを2倍にできるようにセレクタ506を設けることもできます。

図6は、観客がブッキーオッズ、すなわち提供者によって確立されたオッズを受け入れること、又はパリミューチュエルオッズを受け入れるかを選択させる画面例です。パリミューチュエルオッズは、賭けをする人々が実際に賭けた額に基づいて確立されるオッズであり、通常は賭けが進むにつれて変化します。

本発明で開示された技術を用いると、eスポーツ等のゲームのリアルタイム実況をただ視聴するだけでなく、視聴者はそこで提示される条件に応じたギャンブルに参加できるようになり、ゲームを多面的に楽しむことが可能になるといえるでしょう。

現在、様々な配信サイトを通じてゲーム実況動画などが頻繁に公開されています。このような実況動画は、チャットでメッセージを送ったり、「投げ銭」をしたりといった双方向のやりとりは既に実現しています。

一方、古くから、例えばボクシングなどを観戦するにあたっては単に試合の勝敗を楽しむだけでなく、そこにギャンブルの要素を入れるということが普通に行われてきました。その良し悪しは別として、本発明はゲームをより多面的に興趣性の高いエンタメにできる方法として、興味深い提案となるものではないでしょうか。

発明の名称

E-sports betting platform

出願番号

US201916678630A

公開番号

US20210142624A1

出願日

2019.11.08

公開日

2021.5.13

出願人

Sony Interactive Entertainment Inc.

発明者

Chow Michael
国際特許分類

G06Q 50/34

経過情報

本特許出願は2022年5月10日に放棄書が提出されている。



コナミのカジノ生体認証システム


現在、日本ではあまり一般的ではないカジノですが、2018年7月にカジノを含むIR(統合型リゾート)を作る法案が正式に成立したことは記憶に新しいところです。IRでは、カジノだけでなく、ホテル、劇場、ショッピングモールなどのエンタメ施設、国際会議場や展示場などをまとめた複合施設を作ることで、IRひとつあたり約1万人の雇用を創出することが計画されています。このうちカジノディーラーはIR施設ひとつあたり2000人が必要とされており、誘致を目指す自治体は新たな地域おこしに期待を寄せていると考えられます。

このようにIRで注目されるカジノですが、海外で既に運営されているカジノをみると、「防犯対策」「詐欺(イカサマ)対策」には相当な注意を払う必要があり、そこにかかるコストもかなりの額になるようです。今回紹介する発明は、カジノにおける顧客の生体認証システムに関するものです。防犯対策等にどのように役立てられるのでしょうか、詳説していきます。

近年のカジノにおける成長および競争、ならびにカジノで提供されるゲーミング(遊戯)環境の技術的高度化および複雑化は、カジノのオペレータに挑戦と機会を提供しています。

近年、カジノの収益は、ホテルおよびホスピタリティ、小売、食事、エンターテイメント、ならびにその他のカジノ製品またはサービスなどの非ゲーミング収益源の分野で劇的に増加しました。その中で、顧客トラッキングシステム、つまり顧客管理システムは、電子ゲーミングマシン、テーブルゲーム、ならびにビンゴおよびキノなどの他のゲーミング顧客を認証・追跡することに重点を置いてきました。従来から、顧客は、ゲーミングプレイ中、「トラッキングIDカード」や「顧客識別番号(PIN)」によって識別管理されてきました。このような認証を行うことで、顧客のゲーミングプレイを認証し、顧客別のポイントやボーナスを与えたり、他のインセンティブを付与するようにしていました。

このような周知のカジノ管理システムは、ゲーミングマシンに接続された顧客管理装置として活用されています。磁気エンコードされた顧客アカウント番号を含む識別カードを顧客がゲーム機に挿入することを必要とします。

しかし、このような装置は、顧客が遊技機でのゲームプレイ中に認証されることに関心がある場合にしか有効ではないという点が弱点です。多くの顧客は、顧客アカウントにサインアップする手間をかけたくないというような理由や、彼らの個人情報をカジノに提供したくないという理由で、認証・追跡されることを望まないのです。

そのような状況を許容しておくことで生じる不都合な点の一つは、常連プレイヤーが特典、プロモーション、広告などを得る機会を逃すことがあるということです。加えて、マネーロンダリング防止(AML:Anti−Money Laundering)および銀行秘密法(BSA:Bank Securities Act)のために不審な行動を報告するために、匿名プレイヤーを管理・追跡する必要もあります。カジノオペレータは、規制当局の圧力および罰金の増加によりAML関連の課題に直面しています。匿名ユーザを管理・追跡するシステムを組み込むことによって、犯罪者に詐欺行為をやめさせることができると考えられるのです。

発明の目的

本発明は上記の問題に鑑みてなされたもので、ネットワーク化されたカジノ管理コンピュータシステムを開発し、特許を取得したものとなります。

取得された特許の概略としては、顔認識システムおよびカジノ管理サーバを含むカジノ管理コンピュータシステムであって、この顔認識システムは、カジノ施設内に置かれた複数の撮像装置、および顔認識サーバシステムを含むものです。

顔認識サーバシステムは、複数の撮像装置のうちの少なくとも1つの撮像装置からビデオ画像を受け付け、顔画像に関する顔画像データおよびユニークな顔IDを含む複数の生体認証データレコードを有する生体認証データベースにアクセスし、受け付けたビデオ画像と照合が取れる画像データを有する生体認証データレコードを取得するプログラムを有しています。取得された生体認証データレコードに含まれた、対応する顔IDおよび撮像装置位置IDを含む通知信号は、カジノ管理サーバに送信されます。

カジノ管理サーバは、顔認識サーバから通知信号を受け付け、対応するカジノユーザに関するユーザ情報、ユニークなユーザID、およびユーザ顔IDを含む複数の既知のユーザアカウントレコードを有するユーザアカウントデータベースにアクセスし、受け付けた通知信号に含まれる対応する顔IDと一致するユーザ顔IDを有する既知のユーザアカウントレコードを特定することを含むアルゴリズムを実行するようにプログラムされます。そして撮像装置位置IDに関連付けられたゲーミングマシンを特定し、ゲーミングセッションを開始して対応するユーザ行動をモニターすることを特徴とします。

同様の課題解決手段について、異なる側面からコナミから2つの特許が登録され、管理コンピュータシステムの構成に関して「特許第6720392号」、その分割出願として、カジノ管理者側が有するトラッキング装置の利便性について「特許第6952163号」が取得されました。今回はこれら2つの特許について、まとめて解説していきます。

発明の詳細
では、本発明の詳細を説明していきます。

図1に示されるのは、顔認識システムを含むネットワーク化されたカジノ管理コンピュータシステムの概要図です。システム10は、顔認識などの生体認証データを使用して、顧客が現存のプレイヤートラッキングアカウントにログインすることや、匿名プレイヤートラッキングアカウントを作成することを可能にすることができます。

本発明は、生体認証データキャプチャデバイスを使用して送信される生体認証データを使用してプレイヤートラッキングアカウント情報に顧客がアクセスすることを可能とするものです。生体認証データキャプチャデバイスは、カジノ環境のどこに置かれても構いません。たとえば、生体認証データキャプチャデバイスは、ゲーミングマシン、テーブルゲーム、カジノ入口、ホストスタンドなどに置かれてもよいでしょう。本システムは、カジノにおける現存の顧客および匿名顧客の両方の顧客の賭け行動をモニターし、賭け行動に基づいて顧客および匿名顧客にボーナス特典を提供します。

図1−4を参照して説明していきますが、ネットワーク化されたカジノ管理コンピュータシステム10は、顔認識システム2と、たとえば、コナミが提供するSYNKROS(登録商標)などのカジノ管理サーバ18とを含みます。

カジノ管理サーバ18は、カジノ施設内に置かれた複数のゲーミングマシン12と通信で接続されます。

ゲーミングマシン12は、スロットマシンを含む電子ゲーミングマシン(EGM:electronic game machine)、電子テーブルゲーム(ETG:electronic table game)、ビデオスロットマシンおよびビデオゲーミングマシン、キオスク、ゲーミングテーブル、電子ゲーミングテーブル、テーブルゲームディーラーコンピューティングデバイス、モバイルコンピューティングデバイス(たとえばスマートフォンなど)を含みます。

顔認識システム2は、たとえば、カジノ施設内に置かれたインターネットプロトコルカメラ(IPカメラ)などの複数の撮像装置6に通信で接続された顔認識サーバシステム4を含みます。

顔認識サーバシステム4は、複数の生体認証データレコードを含む生体認証データベース7A、7B(後述の図11A、11Bも参照)に接続されます。

各生体認証データレコードは、カジノユーザの顔画像に関する顔画像データおよびユニークな顔IDを含むものです。

顔認識サーバシステムは、ビデオ画像を複数の撮像装置のうちの少なくとも1つの撮像装置から受け付け、複数の生体認証データレコードを含む生体認証データベースにアクセスして、受け付けたビデオ画像と照合が取れる画像データを有する生体認証データレコードを取得するようにプログラムされます。そして、取得された生体認証データレコードに含まれた対応する顔IDおよび撮像装置位置IDを含むカジノ管理サーバ18への通知信号を生成および送信します。

顔認識サーバシステム4は、中央ハブ顔認識サーバクラスタ8Aおよびエッジ顔認識サーバクラスタ8Bを含みます。顔認識サーバシステム4は、履歴生体認証データベース7A(図11A参照)に接続されます。履歴生体認証データベースは、対応するユーザアカウントレコードを有するすべての既知のカジノユーザ(たとえば、すべてのカジノ顧客、カジノ従業員、ホスト、契約オペレータなど)に関する顔画像データおよびユニークな顔IDを含む複数の履歴ユーザ生体認証データレコードを有しています。

エッジ顔認識サーバクラスタ8Bは、カジノ施設内に現在滞在している顧客に関する現存のユーザ生体認証レコードのキャッシュを含む高速検索生体認証データベース7B(図11B参照)に接続されます。現存のユーザ生体認証レコードは、履歴生体認証データベースに含まれる履歴ユーザ生体認証データレコードから選択されます。

エッジサーバクラスタ8Bは、現存の顧客7Bの生体認証データベース(すなわち、ユーザIDと一致する顔ID)を含むことになります。そして以下のロジックに基づいて、迅速な検索・照合が行われます。

  • ホテル予約など、既知のプレイヤーがチェックインした場合、顔IDにかかる生体認証レコードのコピーが、より高速な検索のためにエッジサーバクラスタに移動されます。
  • カード/顔認証を用いたPOSまたはエッジシステム購入が行われると、顔IDにかかる生体認証レコードのコピーがより高速な検索のためにエッジサーバクラスタに移動されます。
  • プレイヤークラブへのプレイヤーのサインアップが行われると、顔IDにかかる生体認証レコードが、エッジサーバクラスタおよび中央ハブサーバクラスタの両方ならびにカジノ管理サーバ18に加えられます。これにより顔IDとユーザIDとのコネクションがカジノ管理サーバ18において記録されます。
  • プレイヤーの第1のカード認証(すなわち「中央ハブサーバクラスタ生体認証データベース」からの最初の顔認識検索)、生体認証レコードのコピーが「エッジクラスタ」に移され、そこで所定の時間にわたり保持されます。追加のプレイが記録されない場合、レコードは所定の時間後に期限切れとなります。
  • NEC監視(すなわち、カジノの入口のカメラ、ホテルのカメラ、駐車場のカメラなど)と統合された場合、生体認証レコードのコピーは「エッジクラスタ」に移され、そこで所定の時間にわたり保持されます。
  • ポテンシャルジオフェンシング、SYNKConnect(登録商標)モバイルアプリケーション(すなわち、プレイヤーセルフォンアプリ)が検出された場合、顔IDにかかる生体認証レコードのコピーは高速検索のためにエッジサーバクラスタに移動されます。
  • 「エッジサーバクラスタ」を小さく維持するためにプレイヤーが所定の時間内にトランザクションを実行しなかったなどの生体認証データを「期限」切れとさせるロジックが存在します。エッジクラスタサーバは、他のEGM、テーブルゲームにおいて最初の「カード認証」およびその後の「カード認証」の高速検索のために、およびプレイヤーがEGMまたはテーブルゲームにおいてまだプレイしていることを検証するために使用されます。

エッジ顔認識サーバクラスタ8Bは、撮像装置からビデオ画像を受け付け、受け付けたビデオ画像に基づいてユーザ顔認識画像データを生成するようにプログラムされます。エッジ顔認識サーバクラスタ8Bは、次いで、高速検索生体認証データベースにアクセスし、生成されたユーザ顔認識画像データと照合が取れる顔画像データを有する現存のユーザ生体認証レコードを高速検索生体認証データベースが含むかどうかを判定します。

エッジ顔認識サーバクラスタ8Bは、次いで、照合が取れる現存のユーザ生体認証レコードを特定したときに、特定された現存のユーザ生体認証レコードに含まれる顔IDおよび撮像装置位置IDを含む通知信号をカジノ管理サーバ18に送信します。カジノ管理サーバ18は、次いで、特定された現存のユーザ生体認証レコードに含まれる顔IDを使用して、既知のユーザアカウントレコードを特定します(ユーザアカウントの例として図8A、8Bを参照ください)。

エッジ顔認識サーバクラスタ8Bは、高速検索生体認証データベースが、照合が取れる現存のユーザ生体認証レコードを含まない場合、生成されたユーザ顔認識画像データを中央ハブ顔認識サーバクラスタ8Aに送信するようにさらにプログラムされます。

中央ハブ顔認識サーバクラスタ8Aは、次いで、履歴生体認証データベースにアクセスし、生成されたユーザ顔認識画像データと照合が取れる顔画像データを有する履歴ユーザ生体認証レコードを履歴生体認証データベースが含むかどうかを判定します。

そして、中央ハブ顔認識サーバクラスタ8Aが、照合が取れる履歴ユーザ生体認証レコードを特定した場合、中央ハブ顔認識サーバクラスタ8Aは、次いで、履歴ユーザ生体認証レコードをエッジ顔認識サーバクラスタに送信します。エッジ顔認識サーバクラスタ8Bは、中央ハブ顔認識サーバクラスタ8Aから受け付けた履歴ユーザ生体認証レコードに含まれる顔IDおよび画像データを含んだ対応する現存のユーザ生体認証レコードを高速検索生体認証データベースに生成および格納するようにプログラムされます。

エッジ顔認識サーバクラスタ8Bは、次いで、対応する現存のユーザ生体認証レコードに含まれる顔IDおよび撮像装置位置IDを含む通知信号を、既知のユーザアカウントレコードの特定において使用するために、カジノ管理サーバ18に送信します。

中央ハブ顔認識サーバクラスタ8Aは、エッジ顔認識サーバクラスタ8Bから受け付けられ生成されたユーザ顔認識画像データと照合が取れる顔画像データを有する履歴ユーザ生体認証レコードを履歴生体認証データベースが含まないと判定した場合、新規の顔IDおよび画像日付を含む新規の履歴ユーザ生体認証レコードを生成するようにさらにプログラムされます。

中央ハブ顔認識サーバクラスタ8Aは、次いで、高速検索生体認証データベースに格納された新規の現存のユーザ生体認証レコードの生成に使用するためにエッジ顔認識サーバクラスタ8Bに新規の履歴ユーザ生体認証レコードを送信します。

中央ハブ顔認識サーバクラスタ8Aは、未知の顧客アカウントレコードの生成に使用するためにカジノ管理サーバ18に新規の顔IDおよび撮像装置位置IDを送信するようにさらにプログラムされます。

カジノ管理サーバ18は、次いで、特定されたゲーミングマシンにゲーミングセッションを開いて対応するユーザ行動をモニターさせるおよび未知の顧客アカウントレコードをゲーミングセッション情報を含むように修正するのに使用するためにカジノ管理サーバ18にゲーミングセッション情報を送信させる命令を含むセッション開始信号を、特定されたゲーミングマシンに送信します。

ここで、エッジ顔認識サーバクラスタ8Bは、画像を前処理するために使用される顔認識ロジック(すなわち、画像を切り取る、最も近い顔を選択する、顔の様々なポイントの照合を行って、それが最高の画像であることを確保して、高い割合で照合が取れる可能性を有する生体認証データベースに対して検証する等)を適用します。

エッジ顔認識サーバクラスタ8Bは、取得した画像を、エッジサーバに絶えず渡していきます。エッジサーバは、連続的に同じカメラからのこれらの画像を処理することになります。このロジックの最初は、これが、カメラの前に示されたライブ画像または写真であるかを特定することです。ライブ画像として特定されると、それは、それが変化したかを確認するために、前の画像と比較されます。変化していない(同じプレイヤーがまだプレイしている)場合、そのとき、さらなる処理は行われず、画像が変化していた場合、次いで、プレイヤーが実際に変わった(そして、カメラの視野から瞬間的に出なかったまたは会話若しくは飲み物を持つために横を向かなかった)ことを確認するために、次のキャプチャの構成に基づいて、最も近い画像が、エッジサーバキャッシュに格納された顔テンプレートに対して照合されます。

エッジ顔認識サーバクラスタ8Bは、所定の間隔で(たとえば、毎秒1フレーム(画像))画像を要求することができ、それにより画像が毎秒送信され、EGMの前に同一プレイヤーが存在することが照合により検証されます。

カジノ管理サーバ18は、照合が取れる割合が低い(すなわち、その人がEGMから目を逸していた)場合も、念のためにEGMにクレジットが存在するかどうかを、同一プレイヤーがまだプレイしていることの指標としてさらに識別します。

たとえば、動作中に、プレイヤーが歩み寄り、スロットマシンの前に座ったとします。顔は生体認証データキャプチャデバイスによってキャプチャされ、エッジサーバクラスタが当日に来場していることが識別されているプレイヤーから検索します。その人が見付からない場合、それは認証済みおよび未認証プレイヤーのデータベース全体との照合を取るために中央ハブサーバクラスタに送られます。

照合が取れない場合には、新規の匿名登録が起動され、カジノ管理サーバ18の疑似プレイヤープロファイルとリンクされます。顔テンプレートは、プレイヤーを継続的に認証するための「1:1照合」に使用するためにエッジサーバクラスタに送り返されます。プレイヤーがまだ存在することをチェックするために、毎秒、新規の顔が「エッジサーバクラスタ」においてキャプチャおよび照合され続けます。

カジノ管理サーバ18は、その顧客がEGMを使用する権限を付与されていないと判定したときにEGMにロックアウト命令を送信するようにプログラムされてもよく、ロックアウト命令は、顧客によるEGMの操作を妨げるようにEGMを機能させます(ネットゲームでいう、いわゆるBANされるということです)。

これにより、自己入場規制またはカジノによる入場規制のなされたプレイヤーについては、顔の照合が完了した後は、システムは、ゲームをロックまたはテーブルゲームディーラーに警告し、警告を監視部門に送信します。

この例では、EGMに対してロックアウト命令を送信することで規制されたプレイヤーの制限を行っていますが、テーブルゲームなどにおいては、ディーラーに直接警告を送信することも考えられます。

カジノ管理サーバ18は、テーブルゲーム用の「氏名非開示プレイヤー」アカウントをさらに生成することができます。「氏名非開示プレイヤー」は、テーブルゲーム用に使用されるプレイヤーレコード(氏名、アドレスなどを有さない)を含みます。レーティングが、このプレイヤーのために開かれる(ただし、ポイントなし)。

たとえば、「氏名非開示プレイヤー」が、チップ買い入れまたはチップを持った席移動によって現金10,000ドルに達した場合、マネーロンダリング防止(AML)レコードが作成され、プレイヤーは、彼の/彼女のIDを付与し、それにより、既知のプレイヤーに変換されなければなりません。加えて、氏名非開示プレイヤーがテーブルからテーブルに移動することも考えられますので、彼らのレーティングセッションは、カジノ管理サーバ18に「氏名非開示プレイヤー」のプレイ履歴としてすべて記録されます。

カジノ管理サーバ18は、顧客がカジノ施設においてプレイする権限を付与されていないと判定したときにディーラーコンピューティングデバイスに自己入場規制通知命令を送信するようにさらにプログラムされます。自己入場規制通知命令は、ディーラーコンピューティングデバイスにディーラーに対する通知を表示させ、顧客がカジノ施設においてプレイする権限を付与されていないことをディーラーに通知します。

システム10は、複数の生体認証データを現存のプレイヤーアカウントおよび匿名プレイヤーアカウントの両方と関連付けることができます。たとえば、システム10は、顧客の顔画像、声紋、指紋、年齢、性別、推定所得水準(すなわち、大きな指輪、スーツ、宝飾品)なお、顧客の他の任意の属性をキャプチャすることができます。

複数の生体認証データのキャプチャにおいて、本システムは、現存のプレイヤートラッキングアカウントと匿名プレイヤートラッキングアカウントとの両方を更新することができます。態度に基づいて変化する任意のトラッキングデータは、現存のプレイヤートラッキングアカウントと匿名プレイヤートラッキングアカウントとの両方について更新されます。加えて、匿名プレイヤーの年齢は、経時的にシステム10を更新することと、いつ匿名プレイヤーが長期間にわたりカジノ環境を訪問するかをトラッキングすることとによって、推定され得ます。

また、本システムは、生体認証データを使用してボーナス特典を与える態様もとることができます。たとえば、ゲーミングマシンでのゲームのプレイ中に、顧客が顔をしかめていることがあったとします。本システムは、顧客が顔をしかめていることを認識し、プレイ中にプレイヤーの気分をもっとよくするためにボーナスをプレイヤーに付与することもできます。顔をしかめることに加えて、本システムは、他の生体認証データ、たとえば、顧客の姿勢、動き、声量、口調などを使用して、プレイヤーの気分を検出することができます。本システムは、このような生体認証データを所定の時間にわたってキャプチャし、所定の時間内にボーナス特典を起動することができます。たとえば、顔を5分間しかめているプレイヤーに、本システムは1分間またはプレイヤーが顔をしかめなくなるまで、ボーナス特典をプレイヤーに付与するなどの態様が考えられます。

本システムは、複数の位置において生体認証データキャプチャデバイスを実装し得る。複数の位置は、カジノ環境、通路、入口、プレイヤークラブ、ホストスタンド、VIPラウンジ、EGM、および/またはゲーミングテーブル席などです。ゲーミングテーブルは、ゲーミングマシンと置き換え可能です。

本システムは、キャプチャされた生体認証データを使用してゲーミングテーブルでのプレイを開始し、ゲームの過程においてプロモーションチップなどのボーナス特典を受け取ることができます。プレイヤーがトラッキングされることに関心があってもなくても、システム10は、各位置で新規の匿名プレイヤートラッキングアカウントに、キャプチャされた生体認証データを自動的に書き込んでもよいでしょう。現存のユーザと匿名ユーザとの両方のトラッキングがされるゲーミング行動は、テーブルレーティングのために使用されます。

また、生体認証データキャプチャデバイスは、顧客を検出し、画面上で、たとえばホストスタンドにおいて、ユーザ情報を自動的に追加することができます。情報は、ホストスタンドが顧客を認識するのを助け、顧客トラッキングアカウントに基づいて、顧客特別席、ボーナスなどを付与することができます。

一方で、不審な行動を特定し、マネーロンダリング防止(AML)および銀行秘密法(BSA)のためにこの情報を報告することもできます。キャプチャされた生体認証データが、設定可能な精度を満たす場合、プレイヤー(現存のプレイヤーと匿名プレイヤーとの両方)は、特定のゲーム日における所定の総額を超える現金投入および現金引き出しトランザクションについてトラッキングされます。現金投入または現金引き出しが、所定の総額、たとえば、特定のゲーム日に10,000ドルなどを超えると、不審な行動報告が作成されるとしても良いでしょう。不審な行動報告は、特定のゲーム日に所定の総額を超えた全現金投入および現金引き出しトランザクションと共に、生体認証データキャプチャデバイスでキャプチャされた生体認証データ(すなわちプレイヤー画像)を供給することによって、システムにより自動的に作成されます。

EGMまたは適宜のサーバー上に存在しうるプレイヤートラッキングモジュール90は、顧客プログラムファイル106および匿名顧客プログラムファイル124を実行して、複数の既知のユーザアカウントレコード154および複数の匿名顧客アカウントレコード156を含むデータベース42に格納されたユーザアカウントデータテーブル152(例として前出の図8A〜図8B参照)を生成します。

各ユーザアカウントレコード154は、ユニークなユーザID110、ユニークな顔ID114、顧客名、誕生日、賭けに供するものの合計150、現在の階層ポイント、次の階層への階層ポイント、日付142、性別130、年齢132、ユーザのタイプ153、および顔のサイズ151など、カジノユーザに関する情報を含みます。

各匿名顧客アカウントレコード156も同様に、ユニークなユーザID128、ユニークな顔ID114、賭けに供するものの合計150、日付142、性別130、年齢132、ユーザのタイプ153、および顔のサイズ151など、カジノユーザに関する情報を含みます。匿名顧客アカウントレコード156は、既に設定された匿名ユーザID128に関連付けられてもよく、または新規の匿名ユーザID128が、匿名顧客アカウントレコード156のために生成されてもよいでしょう。

匿名カジノユーザが匿名でなくなることを決定した場合には、匿名顧客は、顧客名、誕生日、および/または現存のユーザアカウントレコード154に関連付けられる異なるユーザIDなど、より多くの情報を匿名顧客アカウントレコード156に入力します。

ユーザのタイプ153は、プレイヤーまたは見物人でもよい(キャプチャ時にはどちらも区別なく顔認証されてしまいます)。ここで認証される顔のサイズ151は、顔の長さおよび幅を測定したものとなります。たとえば、第1の顧客の顔のサイズの長さおよび幅が、所定のエリア内で第2の顧客の顔のサイズのそれよりも大きい場合、第1の顧客は、画面のより近くにいる可能性があると判断されます。第1の顧客の顔のサイズが、より大きい場合、本システムは、顔のサイズがより大きいのがプレイヤーであり、顔のサイズがより小さいのが見物人であると判定します。

顧客がプレイヤーか見物人かを判定することによって、システム10は顧客がプレイせずにEGMのそばを歩いてEGMをただ見ているかどうかなどを判定します。システム10は、アルゴリズムを使用して顔の楕円形の外縁、顔の目の位置、顔の鼻の位置、および顔の口の位置(各々の相対角度と共に)を検出し、総合的に判断を行います。

図14は、ゲーミング施設サービスをカジノユーザに提供するために使用される情報を生成するために、カジノ管理サーバ18によって実行される複数のアルゴリズムステップを含む方法200のフローチャートです。

方法200は、複数のステップを含みます。各方法ステップは、他の方法ステップから独立してまたは他の方法ステップと組み合わせて実行されてもよいものです。方法200の一部は、システム10の構成要素のうちのいずれか1つによって、またはシステム10の構成要素の任意の組合せによって実行されてもよいものとします。

方法ステップ202では、システム10は、カジノ環境のエリア画像を受け付けます。例えば、プレイヤーが着座し得るEGM12前のスツールの場所、お金を回収するキオスクの前、および/または、プレイヤーがプレイヤーアカウントにログインするために生体認証データを提示し得る他の任意のエリアでもよいでしょう。

方法ステップ204では、システム10は、所定のエリア内で複数の顔IDをキャプチャします。生体認証データは、プレイヤーアカウント108または匿名プレイヤーアカウント126に関連付けられます。生体認証データは、顔画像、網膜画像、および/または、指紋、声などを含む追加の生体認証データを含みます。

方法ステップ206においては、システム10は、生体認証データをデータベース42に送信します。方法ステップ208において、システム10は、データベース42が生体認証データおよび/または顔ID114に関連付けられるプレイヤーアカウント108または匿名プレイヤーアカウント126を含むかどうかを判定します。データベース42が、関連プレイヤーアカウントを含む場合、ゲーミングセッション中の任意のゲーミング行動が方法ステップ210において関連プレイヤーアカウントとペアにされます。生体認証データは、所定の精度で関連プレイヤーアカウントと照合されます。なお、プレイヤーの顔画像は80%の精度で現存のプレイヤーアカウント108と照合が取れる必要があります。

システム10による顔認証がどのようなプロセスで進むかの一例を図24に示します。システム10は、どの顔ID114がEGM12Aをプレイするためにログインしているか、および、どの顔ID114がたまたま居合わせた人物若しくは見物人である可能性があるかを判定することができます。システム10は、人物ID4を現存する匿名プレイヤーアカウントと照合し、人物ID4が現存するプレイヤーであると判定します。プレイヤーID4が第1のEGM12Aでのプレイを完了した後に、システム10は、プレイヤーID4の匿名プレイヤーアカウントに関連付けられるように、データベース42にプレイヤーID4のゲーミング行動のすべてを送信することができます。システム10は、人物ID3は見物人であってゲームをプレイしていないと判定したので、システム10は、そのゲーミング行動を人物ID3の匿名プレイヤーアカウントに保存しない選択をします。

システム側からみると、図25に示すように、3つの別個の顔ID114をキャプチャし、顔ID114は3つの別個の匿名プレイヤーアカウントとペアにされると判定し、加えて、システム10は、ID3およびID4はゲーミング行動の見物人であり、ID1はEGM12のプレイヤーであると判定する、というようにプレイヤーの認証を行っていきます。

図27および28は、生体認証データキャプチャデバイス68を使用してプレイヤーの顔のサイズ151および顔ID114をキャプチャするシステム10を示したものです。

図31は、ゲーミング施設サービスをカジノユーザに提供するために使用される情報を生成するカジノ管理サーバ18および/または顔認識サーバシステム4によって実行される複数のアルゴリズムステップを含む方法300のフローチャートです。

方法ステップ302において、顔認識サーバシステム4のプロセッサは、撮像装置からユーザ顔画像を含むビデオ画像データを受け付け、受け付けたビデオ画像に基づいてユーザ顔認識画像データを生成します。

方法ステップ304および306において、顔認識サーバシステム4は、高速検索生体認証データベースにアクセスし、生成されたユーザ顔認識画像データと照合が取れる顔画像データを有する現存のユーザ生体認証レコードを、高速検索生体データベースが有するかどうかを判定します。

照合が取れる現存のユーザ生体認証レコードを特定したときは、顔認識サーバシステム4は、方法ステップ308を実行し、既知のユーザアカウントレコードの特定において使用するためにカジノ管理サーバ18に、特定された現存のユーザ生体認証レコードに含まれる顔IDおよび撮像装置位置IDを含む通知信号を送信します。

照合が取れる現存のユーザ生体認証レコードを高速検索生体認証データベースは含んでいないと判定したとき、顔認識サーバシステム4は、方法ステップ310を実行し、履歴生体認証データベースにアクセスします。

方法ステップ312において、顔認識サーバシステム4は、生成されたユーザ顔認識画像データと照合が取れる顔画像データを有する履歴ユーザ生体認証レコードを履歴生体認証データベースが含むかどうかを判定します。

照合が取れる履歴ユーザ生体認証レコードを特定したとき、顔認識サーバシステム4は、方法ステップ314を実行し、履歴ユーザ生体認証レコードに含まれた顔IDおよび顔画像データを含む高速検索生体認証データベース内の対応する現存のユーザ生体認証レコードを生成および格納します。

方法ステップ316において、顔認識サーバシステム4は、対応する現存のユーザ生体認証レコードに含まれる顔IDおよび撮像装置位置IDを含む通知信号を、既知のユーザアカウントレコードの特定において使用するために、カジノ管理サーバ18に送信します。

顔認識サーバシステム4が、生成されたユーザ顔認識画像データと照合が取れる顔画像データを有する履歴ユーザ生体認証レコードを履歴生体認証データベースは含んでいないと判定した場合、顔認識サーバシステム4は、方法ステップ318を実行し、新規の顔IDを顔画像データに割り当て、新規の顔IDおよび顔画像データを含む新規の履歴ユーザ生体認証レコードを生成します。

方法ステップ320では、顔認識サーバシステム4は、新規の顔IDおよび顔画像データを含む高速検索生体認証データベースに格納された新規の現存のユーザ生体認証レコードを生成します。

方法ステップ322では、顔認識サーバシステム4は、未知の顧客アカウントレコードの生成に使用するためにカジノ管理サーバ18に新規の顔IDおよび撮像装置位置IDを送信します。

本発明で開示された技術を用いると、カジノにおいて、ゲーム機またはゲームテーブルで遊ぶプレイヤーのみならず、カジノに出入りしている見物客まで含めて全員の認証を行い、分類し、追跡を行うことができます。これにより、顧客管理が容易になるだけでなく、マネーロンダリングなどの犯罪抑止にも役に立つこととなります。

冒頭にも述べたとおり、日本ではカジノを含むIRの整備が今後進んでいくことが予測されます。カジノというと海外の遊戯施設(ラスベガスとか)を連想する方も多いかもしれませんが、日本でも合法的なカジノが運営される日もそう遠い未来ではないと思われます。このようなカジノが犯罪の温床とならないように、今回紹介した特許が活用され、皆が安心して楽しむことができるカジノが運営されるとよいですね。

発明の名称

顧客顔認識システムを有するカジノ管理システム、およびそれを操作する方法

出願番号

特願2019-136184

公開番号

特開2020-47260

特許番号

特許第6720392号

出願日

2019.7.24

公開日

2020.3.26

登録日

2020.6.19

審査請求日

2019.7.24

出願人

コナミゲーミング インコーポレーテッド

発明者

トーマス イー. スーカプ 他
国際特許分類

G06Q 50/34 (2012. 01)
G06T 7/00 (2017. 01)

経過情報

・米国での特許出願に基づく優先権を主張して日本国に出願を行ったもの。この特許をもとに、下記の分割出願を行い、こちらも特許査定となった。

発明の名称

顧客顔認識システムを有するカジノ管理システム、およびそれを操作する方法

出願番号

特願2019-136184

公開番号

特開2020-47260

特許番号

特許第6952163号

出願日

2019.7.24

公開日

2020.11.26

登録日

2021.9.29

審査請求日

2020.6.18

出願人

コナミゲーミング インコーポレーテッド

発明者

トーマス イー. スーカプ 他
国際特許分類

G06Q 50/34 (2012.01)
G06Q 50/10 (2012.01)
G06T 7/00 (2017.01)
A63F 9/00 (2006.01)

経過情報

・上記「特許6720392号」を親出願とする分割出願によるもの。



イカサマは許さない!カジノのカード管理システム


カジノでは、トランプなどのカードを使用して様々なゲームが行われています。これらのゲームでは一般的にカードの組み合わせによってゲームの結果が決定するため、当然ながらプレイヤーは配られたカードの種類に強い関心を持ち、そのカードを自分に有利なものにすり替えるなどの不正行為が行われています。これまでにもカジノでは不正行為を防止するためにいくつかの装置が導入されてきましたが、完全なイカサマ防止には至っていませんでした。

今回紹介する発明は、通常のカードを使用しながら、カジノテーブル上でのカードの軌跡を追跡するというものです。カードリーダーをテーブルの下に配置し、カードが置かれた位置、カードが移動した距離や方向、カードが裏返った状態であるかなどを記録し、これらの情報を解析することで不正行為を検知することができます。また、カードリーダーはカードの種類や順序を記憶することができ、カードのすり替えを検知したり、配られたカードの数を正確に把握することで、カードの枚数を数え間違えることを防止できるといいます。維持費や人件費も抑えることができるというこの発明、具体的にどのようなものなのか、詳説していきます。

カジノでは、トランプなどのカードを用いて各種のゲームが行われます。カードの組合せによってゲームの結果が定まるため、プレーヤーは、ディーラーから配られたカードの種類に強い関心を持ちます。ゲームでは、一般的に複数枚のカードを使います。そのため、カードの一部だけが交換されても不正行為が発見されにくく、少しでも有利な結果を得ようとして、ディーラーの目を盗んでカードをすり替えるような不正行為が後を絶ちません。

これに対して、カジノで使用される不正防止装置が知られています。具体的には、ゲームで使用するカードをプレーヤーに配る前に、カードの表面(数値記載がある面)をスキャンし、プレーヤーに配ったカードのシンボルや数値などを記憶させておく装置です。この装置は、ゲームの途中でカードが交換されていないことを確認できます。しかし、不正があったか否かは、ゲームが終了して回収したカードをディーラーがチェックしたときに判るため、不正を行ったプレーヤーを特定することは困難です。

また、ディーラーのカードをカメラで撮像して、撮像したカードの画像認識によって遊技の勝敗や配当金を自動判断する装置も知られています。この装置は、勝敗や配当金を自動的に判断して、誤った配当額のチップを遊技者に払い戻してしまうことを防止でき、カジノの従業員の負担を軽減させます。しかし、この装置は、ディーラーのカードのみを撮像する装置であり、カジノテーブルの狭い領域のみが不正防止の対象です。よって、撮像されていない領域で不正行為が行われても、その不正行為を的確に発見できません。

さらに、カードにタグを内蔵させ、タグから発せられる電波を受信して、カードの位置や識別情報などによって不正の有無を判断する方法も知られています。この方法では、リアルタイムで監視できますが、タグを内蔵したカードは高価であるため、カジノの維持費が高くなります。

その他、カジノテーブルの上に監視用のカメラを設置し、カメラで撮像した画像を別室のモニタに映し出し、その画像を監視員が視認するようにしたカジノも知られています。しかし、ゲームが行われている間、常にモニタを見る必要があり、監視員に負担がかかり、不正が行われた瞬間を見逃す可能性もあります。カメラで撮像した画像を録画しておくこともできますが、膨大な量の画像をチェックすることはきわめて困難であり、また、画像のチェック者に多大な負担がかかります。

発明の目的

本発明は上記問題等を考慮して考えられました。本発明は、カジノなどで用いられるトランプなどのカードの軌跡を追跡できるカジノテーブルに関します。本発明によって、タグなどが内蔵されていない通常のカードを用いて、カジノテーブル上のカードに不正が行われていないかを、維持費や人件費などを抑えて的確に判断できます。以下に、本発明の概要を説明します。

本発明のカジノテーブルは、ゲーム面(たとえばテーブル)、撮像装置(たとえばカメラ)、ゲームを監視する監視用コントロールユニット(たとえばコンピュータ)、ディスプレイ(たとえばモニタ)、などを備えます。

監視用コントロールユニット(たとえばコンピュータ)が有するコントローラ(たとえばCPU)では、
ゲーム面を撮像装置で撮像する処理、
ゲーム面上を移動するカードを検出する処理、
移動するカードの軌跡データを生成する処理、
カードの軌跡データとゲームの結果とが一致するか否かを判断する処理、
および、その判断結果をディスプレイに表示する処理を実行します。

本発明により、タグなどが内蔵されていない通常のカードを用いて、維持費や人件費などを抑えつつ、カジノテーブル上のカードの不正チェックを的確に実施できます。

本発明のカジノテーブルでは、さらに、カードの表面の絵柄(数字等あり)が画像データ化された基準カードデータが記憶されています。そして、コントローラ(たとえばCPU)では、画像データと基準カードデータとを比較して、ゲーム面にカードが存在するか否かを判断する処理などを実行して、カードの軌跡を示す軌跡データを作り出す処理を実行します。

上記のごとき構成により、基準カードデータを用いて画像データと比較するため、カードが存在するか否かを的確に判断できます。精度を高めてカードの軌跡を生成できるため、ゲームの進行中に移動するカードをより確実に追跡でき、不正が行われたか否かを的確に判断できます。

本発明のカジノテーブルにおいて、コントローラ(たとえばCPU)では、 撮像された物体の輪郭を抽出して輪郭データを生成する処理、
輪郭データから線分を抽出する処理、および、
抽出した線分から矩形(カードの四角形)を形成できる場合に、矩形の頂点の位置をカード情報として記憶手段に記憶させる処理、
の3つの処理を実行し、上記3つの処理を繰り返して、カードの軌跡を示す軌跡データを作り出します。

上記のごとき構成により、輪郭データから線分データを得て、線分データからカード情報(四角形の存在)を得るため、カードの存在の検出精度を維持しつつ、処理すべきデータの量を少なくできます。不正行為の判断の精度を低下させずに、監視用コントロールユニットの負担を軽減できます。

監視用コントロールユニット(たとえばコンピュータ)では、軌跡データをディスプレイに表示する処理を実行します。

上記のごとき構成により、軌跡データをディスプレイに表示するため、ディーラーは、表示されたカードの軌跡を視認できます。したがって、ゲームの途中でカードのすり替えまたは消失等の不正行為をリアルタイムで判断できます。

コントローラ(たとえばCPU)では、同じ矩形を示すカード情報が複数存在する場合に、同じ矩形を示すカード情報のうちの1つのカード情報を残して他のカード情報を削除する処理を実行します。

上記のごとき構成により、重複するカード情報を削除するため、データ量の削減が可能であり、カードの検索処理や描画処理などの各種の処理を迅速にできます。

発明の詳細

本発明のカジノテーブルの具体例について図面を参照しつつ説明します。図1は、カジノテーブルの構成の概略を示します。図2は、カジノテーブルの全体の構成を示すブロック図です。図3は、カジノテーブルのプレイ管理装置の構成を示す機能ブロック図です。

<カジノテーブル100>
カジノテーブル100はカジノゲームを行うためのテーブルです。図1に示すように、カジノテーブル100の上部にゲーム面110が設けられています。ディーラーやプレーヤーは、ゲーム面110にトランプなどのカードやカジノチップなどを置きます。カードの表面には、カードを識別するための絵柄などが表示されています。カードの裏面には、カードを区別できないように同じ絵柄が表示されています。たとえば、スペードやダイヤなどの記号と、数字やアルファベットなどの文字が表示されている面がトランプの表面です。

【図1】

<ゲーム管理装置200>
ゲーム管理装置200は、カジノテーブル100の背後や下部に配置され、ディーラーなどのカジノの従業員によって使用されます。図2及び図3に示すように、ゲーム管理装置200には、ディスプレイ220およびキーボード230が接続されています。ディーラーなどのカジノの従業員は、ディスプレイ220に表示された画像を視認でき、キーボード230を操作して、所定の情報をゲーム管理装置200に送信します。なお、キーボード230ではなく、ディスプレイ220のタッチパネル機能による操作も可能です。カジノの従業員の操作によって、所望する情報をゲーム管理装置200に入力できます。

【図2】

図3に示すように、ゲーム管理装置200は、CPU202、ROM204、RAM206、HDD208、入出力バス210、I/Oインターフェース212、および、通信インターフェース214を有します。これらは、入出力バス210を介して、データを入出力できるように互いに接続されています。

【図3】

CPU(中央処理装置)202は、後述する図5に示す処理を実行します。ROM(リードオンリーメモリ)204は、これらの処理を実行するためのプログラムを記憶します。RAM(ランダムアクセスメモリ)206は、CPU202が、上記の処理を実行したときに各種のデータの値を一時的に記憶させます。また、HDD208は、CPU202がこれらの処理を実行したときに、各種のデータの値を永続的に記憶させて蓄積します。

また、図2及び図3に示すように、ゲーム管理装置200には、I/Oインターフェース(アイオーインターフェース)212を介して、カメラ120、カジノチップ読み書き装置130、ICカード読み書き装置300、紙幣識別装置140、および、カード収容箱読み出し装置150が接続されています。I/Oインターフェース212は、これらの各種周辺機器に接続され、それらの機器とゲーム管理装置200との間でデータをやり取りします。

さらに、図3に示すように、ゲーム管理装置200は、通信インターフェース214を介して管理サーバ400と接続されています。ゲーム管理装置200は、取得した各種の情報、たとえば、ゲーム結果、交換されたカジノチップの数、後述するICカードに記憶されている残金情報などの各種の情報を、管理サーバ400に送信します。管理サーバ400は、送信されてきた各種の情報を記憶、演算処理、および統計処理して、それらの結果を記憶します。さらに、管理サーバ400は、必要に応じて通信インターフェース214を介して、管理サーバ400で処理した結果などの各種の情報をゲーム管理装置200に送信します。ゲーム管理装置200は、送信されてきた各種の情報をRAM206やHDD208に記憶させたり、ディスプレイ220に表示したり、ICカード読み書き装置300(図2参照)に送信したりします。

<カメラ120>
ゲーム管理装置200は、カメラ120と接続され、カメラ120によって撮像された撮像データを処理して、カジノテーブル100上のカードの位置を検出したりカードの軌跡データを生成したりします。

カメラ120は、カジノテーブル100の上方に配置されています。カメラ120は、カジノテーブル100のゲーム面110を撮像できます。ゲーム管理装置200に接続されたカメラ120は、ゲーム管理装置200からの指令信号にしたがってゲーム面110を所定のタイミングで撮像し、撮像信号をゲーム管理装置200に送信します。ゲーム管理装置200は、カメラ120から送信された撮像信号を受信し、撮像信号によって画像データを生成して、RAM206やHDD208に画像データを記憶させます。ゲーム管理装置200では、記憶した画像データを用いて、カジノテーブル100上のカードの位置を検出したりカードの軌跡データを生成したりします。

<カジノチップ読み書き装置130>
ゲーム管理装置200は、カジノチップ読み書き装置130と接続されています。カジノチップ読み書き装置130は、カジノテーブル100の所定の位置に設けられ、ディーラーが手を伸ばして操作できる範囲に設けられます(図1もご参照)。

カジノチップ読み書き装置130は、リーダ/ライタ132を有します。リーダ/ライタ132は、カジノテーブル100の下面に配置され、カジノテーブル100のゲーム面110に載置されたカジノチップ20と情報を非接触で読み書きできます。後述するように、カジノチップ20は、記憶機能を有するICデバイス22を有し、使用可能情報又は使用不可情報を、リーダ/ライタ132によってICデバイス22に記憶させることができます。

図1に示すように、カジノチップ20はICデバイス22とアンテナコイル24とブースターコイル26とを有します。

ICデバイス22は、演算処理機能、記憶機能、および、入出力制御機能を有します。ICデバイス22は、リーダ/ライタ132からの要求に応じて、ICデバイス22が記憶している情報(使用可能情報や使用不可情報)をリーダ/ライタ132に発したり、リーダ/ライタ132から発せられた情報(使用可能情報や使用不可情報)をICデバイス22に記憶したりします。

アンテナコイル24は、リーダ/ライタ132とICデバイス22との間の信号の送受信を行い、また、リーダ/ライタ132からの搬送波を電力に変換してICデバイス22に電力を供給します。

ブースターコイル26は、リーダ/ライタ132からの電磁波と電磁結合するように構成されています。ブースターコイル26によって、積み重ねられたカジノチップ20のうち上方に位置するものとリーダ/ライタ132とが通信でき、ICデバイス22の情報をリーダ/ライタ132に渡せます。これにより、積み重ねられた複数のカジノチップ20の各々のICデバイス22と読み書きが可能です。

<管理サーバ400>
図2に示すように、ゲーム管理装置200は、ネットワーク410を介して管理サーバ400と接続されています。複数のカジノテーブル100が設置されたカジノでは、各種のゲームが行われます。

たとえば、あるカジノテーブル100ではブラックジャックが行われ、他のカジノテーブル100ではポーカーが行われ、別のカジノテーブル100ではルーレットが行われます。これらの複数のカジノテーブル100には、ゲーム管理装置200がそれぞれ設置されています。これらのゲーム管理装置200のそれぞれを管理サーバ400と接続することによって、それぞれのカジノテーブル100で行われたゲームの結果、カジノチップに交換するために投入された現金、交換されたカジノチップの数などの情報を一括して管理できます。

管理サーバ400は、カジノの所定の場所に設けられ、ディーラーなどのカジノの従業員のみが使用できます。

管理サーバ400は、CPU、ROM、RAM、HDD(ハードディスク)、入出力バス、および、通信インターフェースを備えます。CPU、ROM、RAM、および通信インターフェースは、入出力バスを介して互いに接続され、データを入出力できるように構成されています。

CPU(中央処理装置)は、ゲーム管理装置200から送信された各種の情報を受信します。そして、受信した情報をRAMやHDDに記憶させ、また、受信した各種の情報を用いて演算処理や統計処理などを実行し、その結果をRAMやHDDに記憶させます。ROM(リードオンリーメモリ)は、このような処理をするためのプログラムを記憶します。RAM(ランダムアクセスメモリ)は、CPUが、各種の処理を実行したときに各種のデータの値を一時的に記憶します。また、HDDは、CPUが各種の処理を実行したときに、各種のデータの値を永続的に記憶させて蓄積します。

以下の具体例では、カジノテーブル100のゲーム面110上を移動するカードの軌跡のデータを生成します。

<カード軌跡データ生成処理>
図5は、カジノテーブル上を移動するカードの軌跡データを生成する処理(カード軌跡データ生成処理)を示すフローチャートです。

【図5】

まず、ゲームが開始されたか否かを判断します(ステップS511)。ゲームが開始されたか否かは、ディーラーがキーボード230に所定の操作をしたか否かで判断できます。

この操作は、ディーラーがカードをプレーヤーに配る前に行います。これにより、ディーラーがカードをプレーヤーに配るときから、カードの軌跡を追跡できます。また、カード収容箱160のカード収容箱読み出し装置150の上をカードが通過したか否かで判断することも可能です。これにより、ディーラーがゲーム管理装置200のキーボード230に入力する手間を省けます(図1および図2参照)。

そして、ゲームが開始されていると判別した(YES)場合、カメラ120によってカジノテーブル100のゲーム面110を撮像し(ステップS513)、撮像した撮像データをHDD208に記憶させます(ステップS515)。HDD208に大量の撮像データを記憶させることができます。

次に、ゲームが終了したか否かを判断します(ステップS517)。ゲームが終了したか否かは、ディーラーがキーボード230に所定の操作をしたか否かで判断できます。この操作は、ディーラーがプレーヤーから全てのカードを回収した後に行います。これにより、ディーラーが全てのカードを回収するまで、カードの軌跡を追跡できます。

ゲームが終了していないと判別した(NO)場合、ステップS513に処理を戻します。これにより、ゲームが行われている間、カジノテーブル100のゲーム面110をカメラ120で撮像し、ゲーム継続中のカードの軌跡データを生成できます。

一方、ゲームが終了したと判別した(YES)場合、HDD208に記憶させた撮像データにカードが撮像されているか否かを判断します(ステップS519)。HDD208に記憶させた撮像データにカードが撮像されていると判別した(YES)場合、その撮像データからカードを検出し(ステップS521)、カードの軌跡データを生成します(ステップS523)。

上述したステップS519及びS521の処理では、たとえば、カードと推定される所定の大きさの長方形の画像を抽出できるか否かを判断します。抽出できた場合、その長方形の画像の頂点の位置や中心の位置が、カードの位置情報としてRAM206やHDD208に記憶されます。このとき、カードの位置情報だけでなく、時刻の情報や処理の順番なども記憶させます。これにより、ステップS523の処理でカードの軌跡データを生成できます。また、カードの位置情報、時刻の情報、処理の順番、ゲームの結果などを、実施したゲームごとにRAM206やHDD208に記憶させます(図8参照)。これにより、ゲームが終了した後もゲームの履歴情報を残すことができ、過去に遡って不正の有無が判断しやすくなります。

上述した図5に示した処理を実行することにより、ディーラーがプレーヤーにカードを配ったときから、ディーラーがカードを回収(ゲーム終了)するまでの間、ゲーム面110をカメラ120で撮像してカードの軌跡データを生成できます。よって、ゲームの途中でカードをすり替えたり消失させたりする等の不正な行為をリアルタイムで判断できます。

ゲームでは、ゲーム面110上で複数のカードが動きます。図5に示した処理によって、カメラ120で撮像した撮像データに含まれている全てのカードの軌跡データが生成されます。よって、複数のカードのうちの1枚にすり替えや消失が起こっても、不正な行為をリアルタイムで判断できます。

なお、カード軌跡データ生成処理では、そのゲームで使用するカードの絵柄(裏面の同一柄など)を取得して基準カードデータとして記憶させることが可能です。そして、撮像データに基準カードデータが存在すると判別した(YES)場合、撮像データからカードの位置を算出できます。この場合、例えばカードの位置は、基準カードデータが存在する場所におけるカード頂点の位置、または、カード中心の位置をカードの位置情報として算出します。

基準カードデータとしてカードの片面の絵柄(トランプの裏面の絵柄など)を用いると、カードを配っているときなどに裏面の画像データを基準カードデータとして比較できます。しかし、プレーヤーの関心対象であるカードの表面が出ているときに、カードの表面がカメラ120で撮像されるときもあります。このような状況では、カードの有無を的確に判断できません。代わりに、カードの裏面の画像データからカードの外形や輪郭を取得し、外形データや輪郭データを基準カードデータとして用いることも可能です。この場合、カードの大きさや形状などのデータを用いて、撮像データに基準カードデータが存在するか否かを判断します。これにより、カードの表面または裏面のいずれが撮像されても、カードの有無を的確に判断してカードの軌跡データを生成できます。

<カード軌跡データ表示処理>
上記のカード軌跡データ生成処理で生成した軌跡データを表示する処理について説明します。

まず、ゲーム管理装置200のCPU202は、図5のステップS523などの処理で生成した軌跡データをディスプレイ220に表示します。

次に、ディーラーのキーボード230の操作によって、ゲーム結果が入力されます。たとえば、ゲームがポーカーである場合、スリーカードやロイヤルストレートフラッシュなどの役の種類がキーボード230から入力されます。

続いて、カードの軌跡データとゲームの結果とが一致するか否かを判断します。カードの軌跡データとゲームの結果とが一致すると判別した場合、特に問題はありません。

一方、カードの軌跡データとゲームの結果とが一致していないと判断した場合、警告メッセージをディスプレイ220に表示します。

これらの処理は、ゲーム管理装置200のディスプレイ220に表示されるため、ディーラーは、1ゲームが終了するたびに結果を確認できます。よって、ゲームで不正があったか否かを直ちに判断できます。

上述したように、カード収容箱160に設けられたカード収容箱読み出し装置150の上をカードが通過するときに、カードに印刷された絵柄が読み取られ、そのカードを識別するための識別情報がゲーム管理装置200に送信されます(図1参照)。たとえば、カードの表面に印刷された絵柄を読み取ることで、「ハートの4」という識別情報を有するカードであること、または、「ダイヤの5」という識別情報を有するカードであることを取得できます(図8参照)。

図8は、時刻の情報や処理の順番やゲームの結果とともに記憶させるカードの位置情報の例を示す表です。

【図8】

上述した図5の処理を実行することで、カジノテーブル上の複数のカードの各位置を所定の時間ごとに取得できます。これにより、複数のカードの各位置を、カードの位置を取得した日時とともにRAM206やHDD208に記憶させて軌跡データを生成できます(図8参照)。図5の処理を実行したときに、カードが存在しないと判別され、カードの位置を取得できなかった場合、軌跡データには、位置情報とは異なる情報を記憶させます。これにより、カードの位置を取得できなかったことを迅速に検索できます。

このような軌跡データを生成することで、カードの軌跡データとカードを識別するための識別情報との関連付けが可能です(図8参照)。また、ゲームが終了したときには、カードの軌跡データからカードの並びや組合せを特定できます。カードの並びや組合せと、ゲームの結果とが一致するか否かを判断することによって、そのときのゲームで不正が行われたか否かを判断できます。

なお、軌跡データの判断では、カードの並びや組合せとゲーム結果とを比較せず、軌跡がゲームの途中で消滅したり、新たな軌跡が生じたり、所定の長さよりも軌跡が長く途切れたりしていることを判別して警告メッセージをディーラー用ディスプレイ220に表示することも可能です。

以下、別の具体例について説明します。別の具体例では、カジノテーブル100のゲーム面110上のカードの軌跡のデータを生成します。言い換えると、上述した方法と異なる方法で、ゲーム面110上のカードを検出してその位置を取得します。

まず、カジノテーブル100のゲーム面110(カードも映り込んでいる)をカメラ120によって撮像した撮像データに対して、所定の画像処理を施します。この画像処理では、ゲーム面110の撮像データからカードを検出するために必要な処理を行います。たとえば、シャープネスを強めたり、明るさを強めたり、コントラストを強めたりする画像処理などを行います。

次に、画像処理を施した撮像データから、物体の輪郭線を抽出して複数の輪郭線データを生成します。たとえば、撮像データから、ピクセルなどの単位座標系を用いて、輪郭線データを生成できます。輪郭線データは、輪郭線の始点および終点の各座標、ならびに、輪郭線を特徴付けるパラメータ(輪郭線の幅や高さなど)の値で構成されます。

さらに、2組の平行線ペアが近い位置に存在する状態の有無を判断して、矩形(くけい)の4辺を構成(すなわち4つの直線が四角形を構成)しているかどうかを判断します。具体的には、平行線ペア(向かい合う2直線)の2組で構成される4本の線分(直線)によって矩形(四角形)が構成される場合、4つの頂点および4本の線分(直線)によって矩形を構成できると判断します。

2組の平行線ペアによって矩形を構成できると判別した場合、カメラ120によって撮像された撮像データにカードが存在すると判断して、2組の平行線ペアを構成する4本の線分の線分データから、矩形の4つの頂点の座標を求め、頂点の座標をカード情報として登録します。

2組の平行線ペアによって矩形を構成できないと判断した場合でも、3辺によって矩形が構成されているかどうかを検討します。具体的には、1つの平行線ペア(平行する2つの線分)と他の1本の線分とから構成される3本の線分が矩形を構成できるか否かを判断します。

ディーラーやプレーヤーは、カードを手に持って移動させるため、カメラ120によってカードの4辺の全てを常に撮像できることは稀です。ディーラーやプレーヤーがカードを手にもっていると、手によってカードの1辺を十分に撮像できない場合があります。このような場合を想定して、判断処理によって、矩形の3辺を構成できるか否かを判断します。矩形の3辺を構成できれば、矩形の4辺を構成できるとして処理を実行します。

全ての線分データについて処理をしたと判別したときに、登録したカード情報のうち、ほぼ同じ位置に同じ大きさの矩形が重複して存在するか否かを判断し、重複して矩形が存在すると判別した場合、1つの矩形のカード情報のみを残し他の矩形のカード情報を削除します。これにより、カード情報のデータ量を低減でき、また、カード情報の検索処理やカードの表示処理などの各種の処理時間を短縮できます。

以上説明しましたように、本発明のカジノテーブルは、
A.ゲームが行われるゲーム面(たとえばテーブル)、
B.ゲーム面を撮像して撮像信号を発する撮像装置(たとえばカメラ)、
C.撮像装置から発せられた撮像信号によってゲームを監視する監視用コントロールユニット(たとえばコンピュータ)、
D.ゲームの結果の入力を受付けるゲーム結果受付装置、
E.監視用コントロールユニットから発せられた表示信号による表示画像が表示されるディスプレイ(たとえばモニタ)、を備えます。

C.の監視用コントロールユニット(たとえばコンピュータ)は、以下の(1)~(6)の処理を実行するコントローラ(たとえばCPU)、および、処理に用いるデータが記憶される記憶手段(たとえばRAMやハードディスク)、を有します。

コントローラ(たとえばCPU)で実行する処理には、以下の処理が含まれます。
(1) ゲームの開始及び終了を判別してゲーム中であるか否かを判断する処理、
(2) ゲーム中にゲーム面を撮像装置で撮像する処理、
(3) 撮像装置(たとえばカメラ)からの撮像信号で生成された画像データから、ゲーム面上のカードを検出する処理、
(4) ゲーム中にゲーム面上を移動するカードの軌跡データを生成する処理、
(5) カードの軌跡データとゲームの結果とが一致するか否かを判断する処理、および、
(6) 上記一致するか否かの判断結果をディスプレイに表示する処理。

上記の本発明では、ゲーム面を撮像して、ゲーム面上のカードを検出して、カードの軌跡データを生成するため、ゲームの進行に伴って移動するカードを追跡でき、ゲームの途中でカードが消失したり入れ替わったりすることを検出できます。したがって、ゲームで不正な行為があったか否かを容易にかつ的確に判断できます。また、タグなどが内蔵されていない通常のカードを用いて、カードの位置を追えるため、維持費や人件費などを抑制できます。さらに、監視者の注意力に依存することなく監視できるため、ゲームの正当性を的確に判断できます。

本特許は、ユニバーサルエンターテインメント社およびアルゼゲーミングアメリカインク社から出願されました。つまり共願です。ユニバーサルエンターテインメント社は、ジュークボックスの製造販売から事業を始め、パチスロおよびパチンコ遊戯機の大手メーカーとなった会社です。アルゼゲーミングアメリカインク社は、カジノ事業を手掛けています。

本特許発明は、人による監視を行わなくても、自動システムによってカジノゲームでの不正行為を見つけ出せるアイデアです。本発明は、今後予定されている日本でのカジノ会場で利用されるかもしれません。例えば、全自動でカジノゲームを楽しめる施設が日本のカジノに採用された場合に、本発明の技術は重宝されると思われます。

発明の名称

カジノテーブル

出願番号

特願2009-273595

公開番号

特開2011-115266

特許番号

特許第5770971号

出願日

平成21年12月1日(2009.12.1)

公開日

平成23年6月16日(2011.6.16)

登録日

平成27年7月3日(2015.7.3)

出願人

1) 株式会社ユニバーサルエンターテインメント
2) アルゼゲーミングアメリカインク

発明者

江森 和樹、渡辺 裕之

国際特許分類

A63F 1/06
経過情報

・本願は2回の拒絶理由通知を経て特許となりました。他に、アメリカおよびオーストラリアでも特許となっています。



CONCLUSION

特許応用のチャンスを見逃すな!

世界では特段新しくはないが、日本においては初のなるIRカジノ。

カジノはトランプやルーレットなど、古典的な遊戯も多くあり、あまり技術関与がないイメージかと思いますが、不正防止の技術や瞬時にオッズを計算するシステム、さらには新しいギャンブルとして、eスポーツへのベット、さらにはVR空間上でのカジノ体験などの特許情報があります。

カジノや、大型IRリゾートと聞くと別世界で参入障壁が高そうに感じてしまい、ビジネスチャンスがありそうでも、なかなか検討しづらいと思いますが、遊戯に直接関係しなくても、その周辺ニーズをイメージすることで既存技術を応用できるかもしれないです。

例えば、カードゲームのディーラーを電動雀卓の様に自動にする。RFIDをカードに仕込めば、役などのゲーム結果を瞬時に判断することができます。

遊戯用のコインは不正できないように、ブロックチェーンで管理されており唯一無二性が証明されます。換金もアプリ上でOK。

さらに、楽しんでいるプレイヤーにお酒を配るのはもちろん配膳ロボ。ゲームをしながらゆっくり飲みたい人用に、「溶けにくい氷」もアリかもしれません。

それは、まさに「駐車場の前にある自動販売機商法」のように、コアとなるものでなく、それに関連する周辺ニーズにも意外とチャンスがあるものです。

こういった、瞬発的なビジネスチャンスには既存特許の応用がおすすめです。既にあるアイディアや技術をジャンル分野を変えるだけでいいので、スピード感を持って対応できるので、ちょっとした思い付きをすぐに具体化可能。

日本人は衛生面を気にするので、衛生技術の応用なんかもチャンスがあるかもしれないですね!

是非、当サイトのIPマーケットを見ながらカジノ関連ビジネスを発掘してみてください。