コナミのカジノ生体認証システム
現在、日本ではあまり一般的ではないカジノですが、2018年7月にカジノを含むIR(統合型リゾート)を作る法案が正式に成立したことは記憶に新しいところです。IRでは、カジノだけでなく、ホテル、劇場、ショッピングモールなどのエンタメ施設、国際会議場や展示場などをまとめた複合施設を作ることで、IRひとつあたり約1万人の雇用を創出することが計画されています。このうちカジノディーラーはIR施設ひとつあたり2000人が必要とされており、誘致を目指す自治体は新たな地域おこしに期待を寄せていると考えられます。
このようにIRで注目されるカジノですが、海外で既に運営されているカジノをみると、「防犯対策」「詐欺(イカサマ)対策」には相当な注意を払う必要があり、そこにかかるコストもかなりの額になるようです。今回紹介する発明は、カジノにおける顧客の生体認証システムに関するものです。防犯対策等にどのように役立てられるのでしょうか、詳説していきます。
発明の背景
近年のカジノにおける成長および競争、ならびにカジノで提供されるゲーミング(遊戯)環境の技術的高度化および複雑化は、カジノのオペレータに挑戦と機会を提供しています。
近年、カジノの収益は、ホテルおよびホスピタリティ、小売、食事、エンターテイメント、ならびにその他のカジノ製品またはサービスなどの非ゲーミング収益源の分野で劇的に増加しました。その中で、顧客トラッキングシステム、つまり顧客管理システムは、電子ゲーミングマシン、テーブルゲーム、ならびにビンゴおよびキノなどの他のゲーミング顧客を認証・追跡することに重点を置いてきました。従来から、顧客は、ゲーミングプレイ中、「トラッキングIDカード」や「顧客識別番号(PIN)」によって識別管理されてきました。このような認証を行うことで、顧客のゲーミングプレイを認証し、顧客別のポイントやボーナスを与えたり、他のインセンティブを付与するようにしていました。
このような周知のカジノ管理システムは、ゲーミングマシンに接続された顧客管理装置として活用されています。磁気エンコードされた顧客アカウント番号を含む識別カードを顧客がゲーム機に挿入することを必要とします。
しかし、このような装置は、顧客が遊技機でのゲームプレイ中に認証されることに関心がある場合にしか有効ではないという点が弱点です。多くの顧客は、顧客アカウントにサインアップする手間をかけたくないというような理由や、彼らの個人情報をカジノに提供したくないという理由で、認証・追跡されることを望まないのです。
そのような状況を許容しておくことで生じる不都合な点の一つは、常連プレイヤーが特典、プロモーション、広告などを得る機会を逃すことがあるということです。加えて、マネーロンダリング防止(AML:Anti−Money Laundering)および銀行秘密法(BSA:Bank Securities Act)のために不審な行動を報告するために、匿名プレイヤーを管理・追跡する必要もあります。カジノオペレータは、規制当局の圧力および罰金の増加によりAML関連の課題に直面しています。匿名ユーザを管理・追跡するシステムを組み込むことによって、犯罪者に詐欺行為をやめさせることができると考えられるのです。
どんな発明?
発明の目的
本発明は上記の問題に鑑みてなされたもので、ネットワーク化されたカジノ管理コンピュータシステムを開発し、特許を取得したものとなります。
取得された特許の概略としては、顔認識システムおよびカジノ管理サーバを含むカジノ管理コンピュータシステムであって、この顔認識システムは、カジノ施設内に置かれた複数の撮像装置、および顔認識サーバシステムを含むものです。
顔認識サーバシステムは、複数の撮像装置のうちの少なくとも1つの撮像装置からビデオ画像を受け付け、顔画像に関する顔画像データおよびユニークな顔IDを含む複数の生体認証データレコードを有する生体認証データベースにアクセスし、受け付けたビデオ画像と照合が取れる画像データを有する生体認証データレコードを取得するプログラムを有しています。取得された生体認証データレコードに含まれた、対応する顔IDおよび撮像装置位置IDを含む通知信号は、カジノ管理サーバに送信されます。
カジノ管理サーバは、顔認識サーバから通知信号を受け付け、対応するカジノユーザに関するユーザ情報、ユニークなユーザID、およびユーザ顔IDを含む複数の既知のユーザアカウントレコードを有するユーザアカウントデータベースにアクセスし、受け付けた通知信号に含まれる対応する顔IDと一致するユーザ顔IDを有する既知のユーザアカウントレコードを特定することを含むアルゴリズムを実行するようにプログラムされます。そして撮像装置位置IDに関連付けられたゲーミングマシンを特定し、ゲーミングセッションを開始して対応するユーザ行動をモニターすることを特徴とします。
同様の課題解決手段について、異なる側面からコナミから2つの特許が登録され、管理コンピュータシステムの構成に関して「特許第6720392号」、その分割出願として、カジノ管理者側が有するトラッキング装置の利便性について「特許第6952163号」が取得されました。今回はこれら2つの特許について、まとめて解説していきます。
発明の詳細
では、本発明の詳細を説明していきます。
図1に示されるのは、顔認識システムを含むネットワーク化されたカジノ管理コンピュータシステムの概要図です。システム10は、顔認識などの生体認証データを使用して、顧客が現存のプレイヤートラッキングアカウントにログインすることや、匿名プレイヤートラッキングアカウントを作成することを可能にすることができます。
本発明は、生体認証データキャプチャデバイスを使用して送信される生体認証データを使用してプレイヤートラッキングアカウント情報に顧客がアクセスすることを可能とするものです。生体認証データキャプチャデバイスは、カジノ環境のどこに置かれても構いません。たとえば、生体認証データキャプチャデバイスは、ゲーミングマシン、テーブルゲーム、カジノ入口、ホストスタンドなどに置かれてもよいでしょう。本システムは、カジノにおける現存の顧客および匿名顧客の両方の顧客の賭け行動をモニターし、賭け行動に基づいて顧客および匿名顧客にボーナス特典を提供します。
図1−4を参照して説明していきますが、ネットワーク化されたカジノ管理コンピュータシステム10は、顔認識システム2と、たとえば、コナミが提供するSYNKROS(登録商標)などのカジノ管理サーバ18とを含みます。
カジノ管理サーバ18は、カジノ施設内に置かれた複数のゲーミングマシン12と通信で接続されます。
ゲーミングマシン12は、スロットマシンを含む電子ゲーミングマシン(EGM:electronic game machine)、電子テーブルゲーム(ETG:electronic table game)、ビデオスロットマシンおよびビデオゲーミングマシン、キオスク、ゲーミングテーブル、電子ゲーミングテーブル、テーブルゲームディーラーコンピューティングデバイス、モバイルコンピューティングデバイス(たとえばスマートフォンなど)を含みます。
顔認識システム2は、たとえば、カジノ施設内に置かれたインターネットプロトコルカメラ(IPカメラ)などの複数の撮像装置6に通信で接続された顔認識サーバシステム4を含みます。
顔認識サーバシステム4は、複数の生体認証データレコードを含む生体認証データベース7A、7B(後述の図11A、11Bも参照)に接続されます。
各生体認証データレコードは、カジノユーザの顔画像に関する顔画像データおよびユニークな顔IDを含むものです。
顔認識サーバシステムは、ビデオ画像を複数の撮像装置のうちの少なくとも1つの撮像装置から受け付け、複数の生体認証データレコードを含む生体認証データベースにアクセスして、受け付けたビデオ画像と照合が取れる画像データを有する生体認証データレコードを取得するようにプログラムされます。そして、取得された生体認証データレコードに含まれた対応する顔IDおよび撮像装置位置IDを含むカジノ管理サーバ18への通知信号を生成および送信します。
顔認識サーバシステム4は、中央ハブ顔認識サーバクラスタ8Aおよびエッジ顔認識サーバクラスタ8Bを含みます。顔認識サーバシステム4は、履歴生体認証データベース7A(図11A参照)に接続されます。履歴生体認証データベースは、対応するユーザアカウントレコードを有するすべての既知のカジノユーザ(たとえば、すべてのカジノ顧客、カジノ従業員、ホスト、契約オペレータなど)に関する顔画像データおよびユニークな顔IDを含む複数の履歴ユーザ生体認証データレコードを有しています。
エッジ顔認識サーバクラスタ8Bは、カジノ施設内に現在滞在している顧客に関する現存のユーザ生体認証レコードのキャッシュを含む高速検索生体認証データベース7B(図11B参照)に接続されます。現存のユーザ生体認証レコードは、履歴生体認証データベースに含まれる履歴ユーザ生体認証データレコードから選択されます。
エッジサーバクラスタ8Bは、現存の顧客7Bの生体認証データベース(すなわち、ユーザIDと一致する顔ID)を含むことになります。そして以下のロジックに基づいて、迅速な検索・照合が行われます。
- ホテル予約など、既知のプレイヤーがチェックインした場合、顔IDにかかる生体認証レコードのコピーが、より高速な検索のためにエッジサーバクラスタに移動されます。
- カード/顔認証を用いたPOSまたはエッジシステム購入が行われると、顔IDにかかる生体認証レコードのコピーがより高速な検索のためにエッジサーバクラスタに移動されます。
- プレイヤークラブへのプレイヤーのサインアップが行われると、顔IDにかかる生体認証レコードが、エッジサーバクラスタおよび中央ハブサーバクラスタの両方ならびにカジノ管理サーバ18に加えられます。これにより顔IDとユーザIDとのコネクションがカジノ管理サーバ18において記録されます。
- プレイヤーの第1のカード認証(すなわち「中央ハブサーバクラスタ生体認証データベース」からの最初の顔認識検索)、生体認証レコードのコピーが「エッジクラスタ」に移され、そこで所定の時間にわたり保持されます。追加のプレイが記録されない場合、レコードは所定の時間後に期限切れとなります。
- NEC監視(すなわち、カジノの入口のカメラ、ホテルのカメラ、駐車場のカメラなど)と統合された場合、生体認証レコードのコピーは「エッジクラスタ」に移され、そこで所定の時間にわたり保持されます。
- ポテンシャルジオフェンシング、SYNKConnect(登録商標)モバイルアプリケーション(すなわち、プレイヤーセルフォンアプリ)が検出された場合、顔IDにかかる生体認証レコードのコピーは高速検索のためにエッジサーバクラスタに移動されます。
- 「エッジサーバクラスタ」を小さく維持するためにプレイヤーが所定の時間内にトランザクションを実行しなかったなどの生体認証データを「期限」切れとさせるロジックが存在します。エッジクラスタサーバは、他のEGM、テーブルゲームにおいて最初の「カード認証」およびその後の「カード認証」の高速検索のために、およびプレイヤーがEGMまたはテーブルゲームにおいてまだプレイしていることを検証するために使用されます。
エッジ顔認識サーバクラスタ8Bは、撮像装置からビデオ画像を受け付け、受け付けたビデオ画像に基づいてユーザ顔認識画像データを生成するようにプログラムされます。エッジ顔認識サーバクラスタ8Bは、次いで、高速検索生体認証データベースにアクセスし、生成されたユーザ顔認識画像データと照合が取れる顔画像データを有する現存のユーザ生体認証レコードを高速検索生体認証データベースが含むかどうかを判定します。
エッジ顔認識サーバクラスタ8Bは、次いで、照合が取れる現存のユーザ生体認証レコードを特定したときに、特定された現存のユーザ生体認証レコードに含まれる顔IDおよび撮像装置位置IDを含む通知信号をカジノ管理サーバ18に送信します。カジノ管理サーバ18は、次いで、特定された現存のユーザ生体認証レコードに含まれる顔IDを使用して、既知のユーザアカウントレコードを特定します(ユーザアカウントの例として図8A、8Bを参照ください)。
エッジ顔認識サーバクラスタ8Bは、高速検索生体認証データベースが、照合が取れる現存のユーザ生体認証レコードを含まない場合、生成されたユーザ顔認識画像データを中央ハブ顔認識サーバクラスタ8Aに送信するようにさらにプログラムされます。
中央ハブ顔認識サーバクラスタ8Aは、次いで、履歴生体認証データベースにアクセスし、生成されたユーザ顔認識画像データと照合が取れる顔画像データを有する履歴ユーザ生体認証レコードを履歴生体認証データベースが含むかどうかを判定します。
そして、中央ハブ顔認識サーバクラスタ8Aが、照合が取れる履歴ユーザ生体認証レコードを特定した場合、中央ハブ顔認識サーバクラスタ8Aは、次いで、履歴ユーザ生体認証レコードをエッジ顔認識サーバクラスタに送信します。エッジ顔認識サーバクラスタ8Bは、中央ハブ顔認識サーバクラスタ8Aから受け付けた履歴ユーザ生体認証レコードに含まれる顔IDおよび画像データを含んだ対応する現存のユーザ生体認証レコードを高速検索生体認証データベースに生成および格納するようにプログラムされます。
エッジ顔認識サーバクラスタ8Bは、次いで、対応する現存のユーザ生体認証レコードに含まれる顔IDおよび撮像装置位置IDを含む通知信号を、既知のユーザアカウントレコードの特定において使用するために、カジノ管理サーバ18に送信します。
中央ハブ顔認識サーバクラスタ8Aは、エッジ顔認識サーバクラスタ8Bから受け付けられ生成されたユーザ顔認識画像データと照合が取れる顔画像データを有する履歴ユーザ生体認証レコードを履歴生体認証データベースが含まないと判定した場合、新規の顔IDおよび画像日付を含む新規の履歴ユーザ生体認証レコードを生成するようにさらにプログラムされます。
中央ハブ顔認識サーバクラスタ8Aは、次いで、高速検索生体認証データベースに格納された新規の現存のユーザ生体認証レコードの生成に使用するためにエッジ顔認識サーバクラスタ8Bに新規の履歴ユーザ生体認証レコードを送信します。
中央ハブ顔認識サーバクラスタ8Aは、未知の顧客アカウントレコードの生成に使用するためにカジノ管理サーバ18に新規の顔IDおよび撮像装置位置IDを送信するようにさらにプログラムされます。
カジノ管理サーバ18は、次いで、特定されたゲーミングマシンにゲーミングセッションを開いて対応するユーザ行動をモニターさせるおよび未知の顧客アカウントレコードをゲーミングセッション情報を含むように修正するのに使用するためにカジノ管理サーバ18にゲーミングセッション情報を送信させる命令を含むセッション開始信号を、特定されたゲーミングマシンに送信します。
ここで、エッジ顔認識サーバクラスタ8Bは、画像を前処理するために使用される顔認識ロジック(すなわち、画像を切り取る、最も近い顔を選択する、顔の様々なポイントの照合を行って、それが最高の画像であることを確保して、高い割合で照合が取れる可能性を有する生体認証データベースに対して検証する等)を適用します。
エッジ顔認識サーバクラスタ8Bは、取得した画像を、エッジサーバに絶えず渡していきます。エッジサーバは、連続的に同じカメラからのこれらの画像を処理することになります。このロジックの最初は、これが、カメラの前に示されたライブ画像または写真であるかを特定することです。ライブ画像として特定されると、それは、それが変化したかを確認するために、前の画像と比較されます。変化していない(同じプレイヤーがまだプレイしている)場合、そのとき、さらなる処理は行われず、画像が変化していた場合、次いで、プレイヤーが実際に変わった(そして、カメラの視野から瞬間的に出なかったまたは会話若しくは飲み物を持つために横を向かなかった)ことを確認するために、次のキャプチャの構成に基づいて、最も近い画像が、エッジサーバキャッシュに格納された顔テンプレートに対して照合されます。
エッジ顔認識サーバクラスタ8Bは、所定の間隔で(たとえば、毎秒1フレーム(画像))画像を要求することができ、それにより画像が毎秒送信され、EGMの前に同一プレイヤーが存在することが照合により検証されます。
カジノ管理サーバ18は、照合が取れる割合が低い(すなわち、その人がEGMから目を逸していた)場合も、念のためにEGMにクレジットが存在するかどうかを、同一プレイヤーがまだプレイしていることの指標としてさらに識別します。
たとえば、動作中に、プレイヤーが歩み寄り、スロットマシンの前に座ったとします。顔は生体認証データキャプチャデバイスによってキャプチャされ、エッジサーバクラスタが当日に来場していることが識別されているプレイヤーから検索します。その人が見付からない場合、それは認証済みおよび未認証プレイヤーのデータベース全体との照合を取るために中央ハブサーバクラスタに送られます。
照合が取れない場合には、新規の匿名登録が起動され、カジノ管理サーバ18の疑似プレイヤープロファイルとリンクされます。顔テンプレートは、プレイヤーを継続的に認証するための「1:1照合」に使用するためにエッジサーバクラスタに送り返されます。プレイヤーがまだ存在することをチェックするために、毎秒、新規の顔が「エッジサーバクラスタ」においてキャプチャおよび照合され続けます。
カジノ管理サーバ18は、その顧客がEGMを使用する権限を付与されていないと判定したときにEGMにロックアウト命令を送信するようにプログラムされてもよく、ロックアウト命令は、顧客によるEGMの操作を妨げるようにEGMを機能させます(ネットゲームでいう、いわゆるBANされるということです)。
これにより、自己入場規制またはカジノによる入場規制のなされたプレイヤーについては、顔の照合が完了した後は、システムは、ゲームをロックまたはテーブルゲームディーラーに警告し、警告を監視部門に送信します。
この例では、EGMに対してロックアウト命令を送信することで規制されたプレイヤーの制限を行っていますが、テーブルゲームなどにおいては、ディーラーに直接警告を送信することも考えられます。
カジノ管理サーバ18は、テーブルゲーム用の「氏名非開示プレイヤー」アカウントをさらに生成することができます。「氏名非開示プレイヤー」は、テーブルゲーム用に使用されるプレイヤーレコード(氏名、アドレスなどを有さない)を含みます。レーティングが、このプレイヤーのために開かれる(ただし、ポイントなし)。
たとえば、「氏名非開示プレイヤー」が、チップ買い入れまたはチップを持った席移動によって現金10,000ドルに達した場合、マネーロンダリング防止(AML)レコードが作成され、プレイヤーは、彼の/彼女のIDを付与し、それにより、既知のプレイヤーに変換されなければなりません。加えて、氏名非開示プレイヤーがテーブルからテーブルに移動することも考えられますので、彼らのレーティングセッションは、カジノ管理サーバ18に「氏名非開示プレイヤー」のプレイ履歴としてすべて記録されます。
カジノ管理サーバ18は、顧客がカジノ施設においてプレイする権限を付与されていないと判定したときにディーラーコンピューティングデバイスに自己入場規制通知命令を送信するようにさらにプログラムされます。自己入場規制通知命令は、ディーラーコンピューティングデバイスにディーラーに対する通知を表示させ、顧客がカジノ施設においてプレイする権限を付与されていないことをディーラーに通知します。
システム10は、複数の生体認証データを現存のプレイヤーアカウントおよび匿名プレイヤーアカウントの両方と関連付けることができます。たとえば、システム10は、顧客の顔画像、声紋、指紋、年齢、性別、推定所得水準(すなわち、大きな指輪、スーツ、宝飾品)なお、顧客の他の任意の属性をキャプチャすることができます。
複数の生体認証データのキャプチャにおいて、本システムは、現存のプレイヤートラッキングアカウントと匿名プレイヤートラッキングアカウントとの両方を更新することができます。態度に基づいて変化する任意のトラッキングデータは、現存のプレイヤートラッキングアカウントと匿名プレイヤートラッキングアカウントとの両方について更新されます。加えて、匿名プレイヤーの年齢は、経時的にシステム10を更新することと、いつ匿名プレイヤーが長期間にわたりカジノ環境を訪問するかをトラッキングすることとによって、推定され得ます。
また、本システムは、生体認証データを使用してボーナス特典を与える態様もとることができます。たとえば、ゲーミングマシンでのゲームのプレイ中に、顧客が顔をしかめていることがあったとします。本システムは、顧客が顔をしかめていることを認識し、プレイ中にプレイヤーの気分をもっとよくするためにボーナスをプレイヤーに付与することもできます。顔をしかめることに加えて、本システムは、他の生体認証データ、たとえば、顧客の姿勢、動き、声量、口調などを使用して、プレイヤーの気分を検出することができます。本システムは、このような生体認証データを所定の時間にわたってキャプチャし、所定の時間内にボーナス特典を起動することができます。たとえば、顔を5分間しかめているプレイヤーに、本システムは1分間またはプレイヤーが顔をしかめなくなるまで、ボーナス特典をプレイヤーに付与するなどの態様が考えられます。
本システムは、複数の位置において生体認証データキャプチャデバイスを実装し得る。複数の位置は、カジノ環境、通路、入口、プレイヤークラブ、ホストスタンド、VIPラウンジ、EGM、および/またはゲーミングテーブル席などです。ゲーミングテーブルは、ゲーミングマシンと置き換え可能です。
本システムは、キャプチャされた生体認証データを使用してゲーミングテーブルでのプレイを開始し、ゲームの過程においてプロモーションチップなどのボーナス特典を受け取ることができます。プレイヤーがトラッキングされることに関心があってもなくても、システム10は、各位置で新規の匿名プレイヤートラッキングアカウントに、キャプチャされた生体認証データを自動的に書き込んでもよいでしょう。現存のユーザと匿名ユーザとの両方のトラッキングがされるゲーミング行動は、テーブルレーティングのために使用されます。
また、生体認証データキャプチャデバイスは、顧客を検出し、画面上で、たとえばホストスタンドにおいて、ユーザ情報を自動的に追加することができます。情報は、ホストスタンドが顧客を認識するのを助け、顧客トラッキングアカウントに基づいて、顧客特別席、ボーナスなどを付与することができます。
一方で、不審な行動を特定し、マネーロンダリング防止(AML)および銀行秘密法(BSA)のためにこの情報を報告することもできます。キャプチャされた生体認証データが、設定可能な精度を満たす場合、プレイヤー(現存のプレイヤーと匿名プレイヤーとの両方)は、特定のゲーム日における所定の総額を超える現金投入および現金引き出しトランザクションについてトラッキングされます。現金投入または現金引き出しが、所定の総額、たとえば、特定のゲーム日に10,000ドルなどを超えると、不審な行動報告が作成されるとしても良いでしょう。不審な行動報告は、特定のゲーム日に所定の総額を超えた全現金投入および現金引き出しトランザクションと共に、生体認証データキャプチャデバイスでキャプチャされた生体認証データ(すなわちプレイヤー画像)を供給することによって、システムにより自動的に作成されます。
EGMまたは適宜のサーバー上に存在しうるプレイヤートラッキングモジュール90は、顧客プログラムファイル106および匿名顧客プログラムファイル124を実行して、複数の既知のユーザアカウントレコード154および複数の匿名顧客アカウントレコード156を含むデータベース42に格納されたユーザアカウントデータテーブル152(例として前出の図8A〜図8B参照)を生成します。
各ユーザアカウントレコード154は、ユニークなユーザID110、ユニークな顔ID114、顧客名、誕生日、賭けに供するものの合計150、現在の階層ポイント、次の階層への階層ポイント、日付142、性別130、年齢132、ユーザのタイプ153、および顔のサイズ151など、カジノユーザに関する情報を含みます。
各匿名顧客アカウントレコード156も同様に、ユニークなユーザID128、ユニークな顔ID114、賭けに供するものの合計150、日付142、性別130、年齢132、ユーザのタイプ153、および顔のサイズ151など、カジノユーザに関する情報を含みます。匿名顧客アカウントレコード156は、既に設定された匿名ユーザID128に関連付けられてもよく、または新規の匿名ユーザID128が、匿名顧客アカウントレコード156のために生成されてもよいでしょう。
匿名カジノユーザが匿名でなくなることを決定した場合には、匿名顧客は、顧客名、誕生日、および/または現存のユーザアカウントレコード154に関連付けられる異なるユーザIDなど、より多くの情報を匿名顧客アカウントレコード156に入力します。
ユーザのタイプ153は、プレイヤーまたは見物人でもよい(キャプチャ時にはどちらも区別なく顔認証されてしまいます)。ここで認証される顔のサイズ151は、顔の長さおよび幅を測定したものとなります。たとえば、第1の顧客の顔のサイズの長さおよび幅が、所定のエリア内で第2の顧客の顔のサイズのそれよりも大きい場合、第1の顧客は、画面のより近くにいる可能性があると判断されます。第1の顧客の顔のサイズが、より大きい場合、本システムは、顔のサイズがより大きいのがプレイヤーであり、顔のサイズがより小さいのが見物人であると判定します。
顧客がプレイヤーか見物人かを判定することによって、システム10は顧客がプレイせずにEGMのそばを歩いてEGMをただ見ているかどうかなどを判定します。システム10は、アルゴリズムを使用して顔の楕円形の外縁、顔の目の位置、顔の鼻の位置、および顔の口の位置(各々の相対角度と共に)を検出し、総合的に判断を行います。
図14は、ゲーミング施設サービスをカジノユーザに提供するために使用される情報を生成するために、カジノ管理サーバ18によって実行される複数のアルゴリズムステップを含む方法200のフローチャートです。
方法200は、複数のステップを含みます。各方法ステップは、他の方法ステップから独立してまたは他の方法ステップと組み合わせて実行されてもよいものです。方法200の一部は、システム10の構成要素のうちのいずれか1つによって、またはシステム10の構成要素の任意の組合せによって実行されてもよいものとします。
方法ステップ202では、システム10は、カジノ環境のエリア画像を受け付けます。例えば、プレイヤーが着座し得るEGM12前のスツールの場所、お金を回収するキオスクの前、および/または、プレイヤーがプレイヤーアカウントにログインするために生体認証データを提示し得る他の任意のエリアでもよいでしょう。
方法ステップ204では、システム10は、所定のエリア内で複数の顔IDをキャプチャします。生体認証データは、プレイヤーアカウント108または匿名プレイヤーアカウント126に関連付けられます。生体認証データは、顔画像、網膜画像、および/または、指紋、声などを含む追加の生体認証データを含みます。
方法ステップ206においては、システム10は、生体認証データをデータベース42に送信します。方法ステップ208において、システム10は、データベース42が生体認証データおよび/または顔ID114に関連付けられるプレイヤーアカウント108または匿名プレイヤーアカウント126を含むかどうかを判定します。データベース42が、関連プレイヤーアカウントを含む場合、ゲーミングセッション中の任意のゲーミング行動が方法ステップ210において関連プレイヤーアカウントとペアにされます。生体認証データは、所定の精度で関連プレイヤーアカウントと照合されます。なお、プレイヤーの顔画像は80%の精度で現存のプレイヤーアカウント108と照合が取れる必要があります。
システム10による顔認証がどのようなプロセスで進むかの一例を図24に示します。システム10は、どの顔ID114がEGM12Aをプレイするためにログインしているか、および、どの顔ID114がたまたま居合わせた人物若しくは見物人である可能性があるかを判定することができます。システム10は、人物ID4を現存する匿名プレイヤーアカウントと照合し、人物ID4が現存するプレイヤーであると判定します。プレイヤーID4が第1のEGM12Aでのプレイを完了した後に、システム10は、プレイヤーID4の匿名プレイヤーアカウントに関連付けられるように、データベース42にプレイヤーID4のゲーミング行動のすべてを送信することができます。システム10は、人物ID3は見物人であってゲームをプレイしていないと判定したので、システム10は、そのゲーミング行動を人物ID3の匿名プレイヤーアカウントに保存しない選択をします。
システム側からみると、図25に示すように、3つの別個の顔ID114をキャプチャし、顔ID114は3つの別個の匿名プレイヤーアカウントとペアにされると判定し、加えて、システム10は、ID3およびID4はゲーミング行動の見物人であり、ID1はEGM12のプレイヤーであると判定する、というようにプレイヤーの認証を行っていきます。
図27および28は、生体認証データキャプチャデバイス68を使用してプレイヤーの顔のサイズ151および顔ID114をキャプチャするシステム10を示したものです。
図31は、ゲーミング施設サービスをカジノユーザに提供するために使用される情報を生成するカジノ管理サーバ18および/または顔認識サーバシステム4によって実行される複数のアルゴリズムステップを含む方法300のフローチャートです。
方法ステップ302において、顔認識サーバシステム4のプロセッサは、撮像装置からユーザ顔画像を含むビデオ画像データを受け付け、受け付けたビデオ画像に基づいてユーザ顔認識画像データを生成します。
方法ステップ304および306において、顔認識サーバシステム4は、高速検索生体認証データベースにアクセスし、生成されたユーザ顔認識画像データと照合が取れる顔画像データを有する現存のユーザ生体認証レコードを、高速検索生体データベースが有するかどうかを判定します。
照合が取れる現存のユーザ生体認証レコードを特定したときは、顔認識サーバシステム4は、方法ステップ308を実行し、既知のユーザアカウントレコードの特定において使用するためにカジノ管理サーバ18に、特定された現存のユーザ生体認証レコードに含まれる顔IDおよび撮像装置位置IDを含む通知信号を送信します。
照合が取れる現存のユーザ生体認証レコードを高速検索生体認証データベースは含んでいないと判定したとき、顔認識サーバシステム4は、方法ステップ310を実行し、履歴生体認証データベースにアクセスします。
方法ステップ312において、顔認識サーバシステム4は、生成されたユーザ顔認識画像データと照合が取れる顔画像データを有する履歴ユーザ生体認証レコードを履歴生体認証データベースが含むかどうかを判定します。
照合が取れる履歴ユーザ生体認証レコードを特定したとき、顔認識サーバシステム4は、方法ステップ314を実行し、履歴ユーザ生体認証レコードに含まれた顔IDおよび顔画像データを含む高速検索生体認証データベース内の対応する現存のユーザ生体認証レコードを生成および格納します。
方法ステップ316において、顔認識サーバシステム4は、対応する現存のユーザ生体認証レコードに含まれる顔IDおよび撮像装置位置IDを含む通知信号を、既知のユーザアカウントレコードの特定において使用するために、カジノ管理サーバ18に送信します。
顔認識サーバシステム4が、生成されたユーザ顔認識画像データと照合が取れる顔画像データを有する履歴ユーザ生体認証レコードを履歴生体認証データベースは含んでいないと判定した場合、顔認識サーバシステム4は、方法ステップ318を実行し、新規の顔IDを顔画像データに割り当て、新規の顔IDおよび顔画像データを含む新規の履歴ユーザ生体認証レコードを生成します。
方法ステップ320では、顔認識サーバシステム4は、新規の顔IDおよび顔画像データを含む高速検索生体認証データベースに格納された新規の現存のユーザ生体認証レコードを生成します。
方法ステップ322では、顔認識サーバシステム4は、未知の顧客アカウントレコードの生成に使用するためにカジノ管理サーバ18に新規の顔IDおよび撮像装置位置IDを送信します。
ここがポイント!
本発明で開示された技術を用いると、カジノにおいて、ゲーム機またはゲームテーブルで遊ぶプレイヤーのみならず、カジノに出入りしている見物客まで含めて全員の認証を行い、分類し、追跡を行うことができます。これにより、顧客管理が容易になるだけでなく、マネーロンダリングなどの犯罪抑止にも役に立つこととなります。
未来予想
冒頭にも述べたとおり、日本ではカジノを含むIRの整備が今後進んでいくことが予測されます。カジノというと海外の遊戯施設(ラスベガスとか)を連想する方も多いかもしれませんが、日本でも合法的なカジノが運営される日もそう遠い未来ではないと思われます。このようなカジノが犯罪の温床とならないように、今回紹介した特許が活用され、皆が安心して楽しむことができるカジノが運営されるとよいですね。
特許の概要
発明の名称
|
顧客顔認識システムを有するカジノ管理システム、およびそれを操作する方法 |
出願番号
|
特願2019-136184 |
公開番号
|
特開2020-47260 |
特許番号
|
特許第6720392号 |
出願日
|
2019.7.24 |
公開日
|
2020.3.26 |
登録日
|
2020.6.19 |
審査請求日
|
2019.7.24 |
出願人
|
コナミゲーミング インコーポレーテッド |
発明者
|
トーマス イー. スーカプ 他 |
国際特許分類 |
G06Q 50/34 (2012. 01)
G06T 7/00 (2017. 01)
|
経過情報 |
・米国での特許出願に基づく優先権を主張して日本国に出願を行ったもの。この特許をもとに、下記の分割出願を行い、こちらも特許査定となった。
|
発明の名称
|
顧客顔認識システムを有するカジノ管理システム、およびそれを操作する方法 |
出願番号
|
特願2019-136184 |
公開番号
|
特開2020-47260 |
特許番号
|
特許第6952163号 |
出願日
|
2019.7.24 |
公開日
|
2020.11.26 |
登録日
|
2021.9.29 |
審査請求日
|
2020.6.18 |
出願人
|
コナミゲーミング インコーポレーテッド |
発明者
|
トーマス イー. スーカプ 他 |
国際特許分類 |
G06Q 50/34 (2012.01)
G06Q 50/10 (2012.01)
G06T 7/00 (2017.01)
A63F 9/00 (2006.01)
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経過情報 |
・上記「特許6720392号」を親出願とする分割出願によるもの。
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