大手企業が挑む新事業特許!

INTRODUCTION

少子高齢化、人口減少、雇用減少、外国からの輸入による外国企業との激しい競争、顧客ニーズの変化などともに、商品のライフサイクルの短縮化、IT技術の発展による消費者行動の変化など、マーケット環境は日々進化しております。

 

そのような背景がある中、企業は、既存の事業を継続しているだけでは企業活動を継続できなくなってきております。
そこで、近年、スタートアップ、中小企業、大企業、すべての企業にとって、新規事業を展開するということが企業活動をする上で重要になっております。

しかしながら、企業が新規事業を展開しようと思っても、技術力、ノウハウ、人材、社内資源に限界があります。

現在、多くの企業は、外部リソースの活用したオープンイノベーションを積極的に活用しております。ここで、オープンイノベーションの活用状況としては以下のようなものがあります。
1.技術・ノウハウを持った他の企業とのアライアンス、共同研究開発、エコシステム
2.大学・研究機関との共同研究開発
3.産学官連携による共同研究開発
4.国・地方公共団体による技術支援

今回の+VISIONでは、企業が生き残りをかけて挑戦する新規事業や注目すべき新規事業に関する特許をご紹介することで、未来が見えてくるかもしれません!

CONTENTS

  • #1【京セラ】歯磨きが楽しくなる歯ブラシ

  • #2【富士フィルム】AIも多数決で意思決定する?

  • #3【落合 陽一】超音波で清潔なヘアケアを実現

  • #4CONCLUSION


電動歯ブラシは既に多くの愛用者を有する生活必需品のひとつです。もちろん、電動歯ブラシの前には手動の歯ブラシが存在しているわけですが、手動の歯ブラシと電動の歯ブラシの違いは、単に電動で高速に動く、ということ以外、何ら付加機能がないものが大半です(もちろん、ユーザが他の機能を求めていないということもあるでしょう)。

ところで、電動歯ブラシの多くは、ブラシ部分を超音波振動させることで効果的に汚れを落とす機能をもっています。このとき、ブラシを振動させて対象物(歯など)を磨くと同時に、ブラシからの振動に音声信号(楽曲信号)を含ませることで、対象物を振動させ、同時に可聴域の音を発生させるようにしました。

このような機能をもたせることで、歯を磨きなら同時に音楽を聞くことができるようになるのです。これにより、例えば小さな子どもが楽しく歯磨きを行うことができるといった効果を奏します。今回は、従来の歯ブラシの常識からは思いもよらない、ユニークな発明について、紹介していきます。

本発明は、ブラシに関します。掃除用のブラシも本発明の範囲内ですが、主に歯ブラシに関する発明です。

歯ブラシとしては、さまざまなタイプが販売されていますが、ブラッシング操作は面倒な作業であるため、楽にブラッシングするために、たとえば電動歯ブラシが利用されつつあります。

しかし、一般的に販売されている主な電動歯ブラシは、汎用されている手動の歯ブラシを単に電動にしただけの歯ブラシです。このような電動歯ブラシは、楽にブラッシングできる道具ですが、電動歯ブラシを使用しても、ブラッシングが単調な作業であるため楽しさがありません。

発明の目的

上記のような問題点から、ブラッシング操作をおこなうユーザが楽しくブラッシングできる電動歯ブラシが要望されています。もし、ブラッシング中に音楽も楽しめる電動ハブラシがあれば、毎日のブラッシングが楽しくなると予想されます。

本発明は、このような問題点を解決できる新規な電動ブラシに関します。

発明の詳細

まず、概要を説明しますと、本発明のブラシは、ヘッド部およびボディ部を備えます。ヘッド部は、毛部、振動板、および、振動板にとりつけられた振動源を備えます。ヘッド部は、ボディ部に取り付けられています。ボディ部は、耳で聞こえる信号を含んだ供給信号をヘッド部へ伝えるための回路を備えます。

図1~図4は、各実施形態の歯ブラシの断面図です。図面ごとに縮尺を適宜変更しているため、すべての図において縮尺が必ずしも同じではありません。なお、歯ブラシ以外のブラシもあり得ます。

図1に示す構造例1を参照しつつ説明します。歯ブラシは、主に3つの部材で構成されています。1つ目の部材は、毛部を備えたヘッド部Hです。2つ目の部材は、持ち手の部分、つまり把柄部を備えたボディ部Bです。3つ目の部材は、乾電池で動く場合は不要ですが、充電可能なバッテリで動く場合に便利な充電台Dです。

ヘッド部Hは、毛部11、振動板12、圧電素子22、電極パッド23を備えます。

【図1】

毛部11は、たとえば、直径が0.1~0.4mm程度のナイロン製の繊維集合体で構成されます。毛部11は、約30~40mmの長さの繊維を15~20本程度まとめて束にした後、束の真ん中で2つ折りにして、後述する振動板12の穴に挿入されています。すなわち、挿入後には、30~40本程度の繊維の束が1つの穴に入っています。挿入後の毛部11は、長さをそろえるためにカットされます。カット後において、振動板12から突出した毛部11の先端までの長さは、たとえば0.7mm~13mmです。平坦なカット面となるようにカットする場合、または、のこぎりの歯状のギザギザしたカット面となるようにカットする場合があります。

振動板12は、たとえばアクリルやポリカーボネート等のプラスチック素材で構成されます。振動板12の表面には、前述した毛部11を埋め込むために、直径1.3mm~2.1mm程度の穴が、おおよそ24個から36個程度設けられています。

この穴に上記の毛部11が押し込まれています。この振動板12において、たとえば、穴が設けられた面(穴側の面という)の縦の寸法(長さ)は、15~35mmです。横の寸法(幅)は、たとえば8~15mmです。振動板12の厚さは、圧電素子22も入れてたとえば2~10mmです。振動板12の内部には、圧電素子22が埋め込まれています。

圧電素子22は、板状です。圧電素子22の一方の面(以下、第1面という)は、上記の振動板12の“穴側の面”と対向しています。そして、第1面の縦の寸法(長さ)は、たとえば、“穴側の面”の長さ(15~35mm)の約0.5倍~0.9倍です。圧電素子の第1面の幅は、たとえば、“穴側の面”の幅(5~15mm)の約0.5倍~0.9倍です。圧電素子の厚さは、約0.3~2.0mm程度です。

圧電素子22は、供給信号(電圧)が印加されると伸縮または屈曲(湾曲)する素子で構成されています。素子は、たとえばセラミック製や水晶製です。

圧電素子22は、まず、第1面側が縦方向に沿って伸びる一方で、第1面とは逆側の面が縮むことにより、厚さ方向に湾曲します。次に、第1面側が縦方向に縮む一方で、第1面と逆側の面が縦方向に伸びることにより、先ほどと逆側に湾曲します。これを繰り返すことによって振動を発生させます。

圧電素子22は、後述する供給信号に応じて湾曲します。そして、圧電素子22の湾曲に応じて、振動板12が湾曲するように振動します。これにより毛部11も振動してブラシとして機能します。

電極パッド23には、圧電素子22からのびる電極配線が接続されています。電極パッド23は、振動板12の端部(持ち手側)で、表面に露出しています。振動板12の端部(持ち手側)をボディ部B(後述)のなかに挿入したときに、電極パッド23は、ボディ部Bの電極パッド33と電気的に接続されます。

ボディ部Bは、たとえば、持ち手となる把柄部31、制御系やメモリ等を搭載した基板32、電極パッド33、キャップ部40、バッテリ35、および、操作部34で構成されています。

把柄部31は、たとえば筒状です。上述したように、把柄部31の内部に振動板12の端部(持ち手側)が挿入されるため、把柄部31は、ヘッド部Hを支持する機能を有します。また、把柄部31は、ユーザの手によって把持される柄の機能を有します。また、内部に基板32やバッテリ35等を収納する筐体としての機能を有します。把柄部31は、たとえば、プラスチック材料、アルミニウムやステンレス等の金属材料、強化ガラスなどで構成されます。把柄部31の長さは、たとえば10cm~25cm程度です。筒状の把柄部31の外径は、約1~3cm程度であり、内径は、約0.5~2cm程度です。ヘッド部Hの端部を収納した状態では、水の侵入を防ぐために、基板32等を収容している空間は外界と遮断され、密閉されます。たとえば、ヘッド部Hの端部の外径と、把柄部31の内径とを合わせるか、または、隙間を埋めるパッキン等を用いることで、防水性を有しています。

基板32は、防水された筒状の内部空間に収納されています。基板には、図5のブロック図で表される各機能部が搭載されます。たとえば、基板32は、信号生成部36、駆動アンプ37、メモリ38などを搭載します。

電極パッド33および電極パッド23等を通じて、圧電素子22に駆動信号が供給されます。駆動信号は、たとえば図7,図8のような周波数特性を有します。

操作部34は、ブラシのON・OFFを切り替える電源スイッチ(たとえばボタンスイッチ)、および、音量調整する調整スイッチ(たとえば+ボタン・-ボタン)を備えます。これらのスイッチは、把柄部31に配置されています。ユーザは、把柄部31の表面にある各スイッチを操作できます。たとえば、把柄部31の表面に防水シートが貼付され、防水シートの内側にスイッチが配置されます。

バッテリ35は、把柄部31の内部に収納されています。バッテリ35は、電極パッド43から供給される電力を蓄えることができ、また、操作部34でのユーザの操作に応じて基板32へ電力を供給できます。バッテリ35は、たとえば乾電池です。

キャップ部40は、把柄部31の端部(ヘッド部Hが挿入される側とは反対側)に取り付けられます。キャップ部40は、バッテリ35や基板32を収容している内部空間を密閉します。なお、キャップ部40の露出面(外側の面)には、電極パッド43が設けられています。

キャップ部40の電極パッド43は、充電時における電力線回路の一部であり、充電台Dの電極パッド53からの電力を、把柄部31内部のバッテリ35へと伝達します。また、電極パッド43は、供給信号や音楽データ等をメモリ38に書き込むための信号線回路の一部です。

充電台Dは、筐体51、基板52、電極パッド53、およびプラグ54を備えます。充電台Dの筐体51は、ボディ部Bを乗せることができる平板を備えます。平板の上に配置された電極パッド53は、充電時において、ボディ部Bの電極パッド43と電気的に接続されます。筐体51の内部には、基板52が収容されています。基板52は、プラグ54から供給された電力を交流から直流に変換し、また、直流となった電力の変圧機能を備えます。

なお、ヘッド部Hの毛部11が摩耗や劣化して、交換が必要となったときには、新しいヘッド部Hだけを購入して、新たなヘッド部Hを使用することができます。

次に、図2を参照しながら構造例2を説明します。特に図1との変更点を中心に説明します。図1の構造例1と異なる構造は、特にヘッド部Hの構造です。

【図2】

構造例2のヘッド部Hは、毛部11および振動板12で構成される第1パーツを備えます。また、構造例2のヘッド部Hは、筐体21、圧電素子22、電極パッド23、および配線等を有する第2パーツを備えます。

第1パーツと第2パーツとは接着部材13によって接合されています。接着部材13は、たとえば熱硬化性接着剤、UV硬化性接着剤、または、両面テープ等です。

第2パーツの筐体21は、内部に空間Sが形成されています。詳しくは、第2パーツの筐体21には、凹部があります。また、凹部を密閉する蓋部材があります。蓋部材の内側面には、接着部材13が貼り付けられ、この接着部材13に圧電素子22が取り付けられています。つまり、第2パーツの筐体21の凹部内には、圧電素子22が収納されています。凹部内に空間があるため、圧電素子22の湾曲が阻害されないように設計されています。すなわち、凹部の深さは、圧電素子22の湾曲時の最大振幅、圧電素子22の厚さ、接着部材13の厚さや収縮率を計算して設計されています。

なお、接着部材の代わりに、熱溶着や超音波溶着によって接着する場合もあります。

第2の構造例では、ヘッド部Hが、第1パーツと第2パーツとに分かれています。そのため、たとえば、毛部11が劣化や摩耗によって交換されるときに、ヘッド部Hの第1パーツだけを交換すればよく、摩耗した第1パーツとともに第2パーツを廃棄する必要はありません。そのため、環境に優しいブラシを提供できます。

【図3】

構造例3は、毛部11、振動板12、接着部材13、筐体21、圧電素子22、電極パッド23などで構成されます。圧電素子22は、接着部材13によって振動板12に接合されています。特徴としては、振動板12は、毛部11の支持部材である一方で、圧電素子の支持部材でもあり、また、筐体21の蓋部材でもあります。このような構成であるため、圧電素子22が振動板12を直に湾曲させるため、構造例3は、図2の構造例よりも強い振動が得られます。ただし、構造例3は、図2のように2つのパーツに分かれていないため、メンテナンス性の点では、図2の構造例の方が優れています。図2の例と同様に、筐体21の凹部の深さは、圧電素子22の湾曲時の最大振幅、圧電素子22の厚さ、接着部材13の厚さや収縮率を計算して、湾曲を干渉しない空間Sとなるように設計されています。

さらに、図4を参照しながら構造例4を説明します。図4に示す2つの例では、図1,図2,図3の板状の圧電素子とは異なり、(平板状でなく)厚さを有する圧電素子22,または、22L,22Rを用いています。これらの圧電素子22,22L,22Rは、たとえば一辺の長さが1mm~10mmの四角形のセラミック層を厚さ方向に積層した焼結体(たとえば0.5mm~5mm厚さ)で構成されます。上述した圧電素子とは異なり、構造例4の圧電素子22,22L,22Rは、電圧の印加によって、厚さ方向に伸縮を繰り返します。図4の上側に示す例では、筐体21の空間内に配置された圧電素子22が厚さ方向に伸縮します(両矢印で示す)。この伸縮運動に対応して、振動板12が湾曲する振動をします。これを繰り返して、毛部11を振動させることができます。

【図4】

また、図4の下側に示す例では、たとえば2つの圧電素子(右の圧電素子22Rおよび左の圧電素子22L)を用いています。両者が同じ動きをするように電圧を印加して、振動板12を厚さ方向に往復運動させる場合もあります。これを繰り返して、毛部11を振動させることができます。

一方、右の圧電素子22Rと左の圧電素子Lとに逆の電圧を印加する場合もあります。この場合、最初、一方の圧電素子22Rが厚さ方向に伸びたときに、他方の圧電素子L22Lが縮むことになります。これにより振動板12は、右側が上がり、左側が下がることになります。また、次の瞬間には、矢印で示すように、圧電素子22Rが縮むときに圧電素子L22Lが伸びることになります。よって、右側が下がり、左側が上がります。これを繰り返して、毛部11を振動させることができます。なお、図4のいずれの場合でも、振動と同時に音声を再生できます。

引き続いて、図5を示しつつ、回路構成等の電気的な接続関係を説明します。

【図5】

充電台Dは、たとえば100V、1.5A、50/60Hzの商用電源に接続されるプラグ54を備えます。プラグ54から供給される電力は、基板52に搭載されたAD変換機および変圧器を通して、適切な電圧、たとえば5V~20V、1A~5Aの直流電流に変換されます。

基板52から供給される直流電力は、電極パッド53,43を通って、バッテリ35に蓄積されます。

ボディ部Bは、電極パッド43、操作部34、バッテリ35、メモリ38、信号生成部36、駆動アンプ37、電極パッド33等で構成されています。

操作部34は、たとえば、ブラシのON・OFF切り替えスイッチ回路、および、音量調整回路を備えます。さらには、楽曲を選択するためのスイッチ回路を備えます。

バッテリ35は、充電回路、過充電防止回路などを備える場合があります。

ボディ部Bのメモリ38は、圧電素子を駆動するための信号を記憶します。具体的には、可聴域において所定の周波数帯域からなる信号、すなわち可聴域の周波数において“連続的な広がりを有する信号”を記憶します。“連続的な広がりを有する信号”は、たとえばアナログやデジタルの音声信号です。音声信号は、楽曲信号や人間の会話データ、歌声等です。

メモリに記憶される信号は、たとえば20,000Hz超から100,000Hzまでの周波数に対応する超音波信号をさらに含む場合があります

これらの信号を記憶するためのメモリ38は、不揮発性メモリです。たとえば、キャップ34を取り外して、外部へ持ち出し可能なメモリは、SDメモリカード(SDHC,SDXC、、、、)等です。SDメモリカードであれば、パーソナルコンピュータやスマートフォンを利用してユーザが楽曲を書き込むことができるため、歯ブラシによって、好みの楽曲を再生することができます。

ボディ部Bの信号生成部36は、メモリ38に記録された信号を、圧電素子22に供給するための供給信号に変換します。ただし、変換不要な場合もあります。そして、所定の周波数帯の強化等が行われたのち、駆動アンプ37、電極パッド33,23等を経て、供給信号が圧電素子22へと供給されます。

ここで、圧電素子22に供給する信号(供給信号)について詳しく説明します。

図6は、特定の周波数帯において強調補正をした場合、および、しない場合の、信号処理補正特性を示します。

【図6】

たとえば図6に示す供給信号のうち、基本信号S1(点線)は、低音の40Hzから高音の20,000Hzまでの平坦な周波数特性を有する信号です。この基本信号S1と比べたときに、低周波数帯(振動に適した周波数帯)だけを強化した強化信号S2を圧電素子22に供給します。この場合、たとえば100Hzから500Hzまでの周波数特性を約20dBだけ強化した強化信号S2を供給します。このように、低周波数帯の信号パワーを局所的に上げることにより、ブラッシング効果を向上できます。

具体的には、メモリ38から出力された基本信号S1を、駆動アンプ37にかける際に、強化したい周波数帯域をイコライザにて強める補正を行ったうえで(信号生成プロセス)、補正された強化信号S2を圧電素子22に供給することができます。もちろん、強化信号S2自体を最初からメモリに記憶することもできます。

次に、図7を用いて、歯ブラシから楽曲を出力させる場合の供給信号について説明します。図7は、特定の周波数帯において強調補正をした場合と、しない場合とにおける、周波数特性を示します。

【図7】

信号は、たとえば楽曲の基本信号S3です。楽曲の基本信号S3に従って、圧電素子22は、湾曲振動を生じます。圧電素子22の湾曲によって(たとえば図1~図3に示す)振動板12も湾曲します。このような湾曲を供給信号に従って繰り返すことで、楽曲が再生されます。楽曲の再生のためには、たとえば楽曲の基本信号S3と比べて、低周波帯(振動に適した周波数帯)だけを強化した強化信号S4を圧電素子22に供給します。この場合、たとえば200Hz付近から500Hz付近までの周波数特性を約20dBだけ強化した強化信号S4を供給します。このように、低周波数帯(振動に適した周波数帯)の信号パワーを上げることにより、ブラッシング効果を向上できます。

具体的には、メモリ38から出力された楽曲の基本信号S3を、駆動アンプ37にかける際に、強化したい周波数帯域をイコライザにて強める補正を行ったうえで(信号生成プロセス)、強化信号S4を圧電素子22に供給します。もちろん、強化信号S4自体を最初からメモリに記憶しておくこともできます。

また、操作部34の音量調整スイッチのモードを切り替えることが可能です。たとえば電源スイッチの長押しおよび短押しによって、モードの切り替えを行います。具体的には、音量調整モード、および、ブラッシングの強度調整モードに相互に切り替えが可能です。たとえば、音量調整モードのときに、音量調整スイッチが操作されると、特定の周波数に関係なく、圧電素子22に供給するパワーの大小が変更されて、楽曲全体のボリュームが上下します。一方、ブラッシングの強度調整モードのときは、特定の周波数帯(特に、低周波数帯)に対してだけ、圧電素子22に供給するパワーの大小が変更されて、ブラッシングの強度が上下します。

図6、図7に示したように、圧電素子22には、可聴域(低音の10Hzから高温の20,000Hzまで)の所定の周波数特性の範囲において、連続的な信号が供給されます。これにより、たとえば可聴域の様々な周波数の振動を含む楽曲が供給信号となって、ユーザに音楽を聞かせることができます。また、曲を様々に変更することで、様々な周波数帯域の振動を得ることもできます。よって、好みの音楽を聴きながら歯ブラシ操作が可能です。

図8は、可聴域の周波数帯と、超音波域周波数帯において動作するように設定された供給信号の周波数特性を表します。

【図8】

圧電素子22は、可聴域(低音の10Hz~高温の20,000Hz)に加えて、超音波帯(20,000Hz以上)でも振動させることもできます。たとえば図8に示すように、可聴域(低音の10Hz~高温の20,000Hz)の連続的な振動に加え、50,000Hz付近で振動させることも可能です。この場合、超音波振動によるブラッシングが可能です。

次に、図1から図3の各構造例1,2,3に対応する周波数特性のグラフを例として示しつつ、各構造例の動作などを説明します。図9は、各構造例における周波数特性対フォースレベルを示すグラフです。

図9に示すように、いずれも歯ブラシをしながら音楽を聴くために十分な振動が振動板12において生じていることがわかります。

【図9】

図1の構造例1では、圧電素子22が振動板12に埋め込まれているため、圧電素子22が湾曲すると、振動板12も湾曲します。この湾曲を周波数に応じて交互に繰り返すことで、振動板12が振動して歯ブラシとして使用されることとなります。同時に周波数に対応する音も発生するため、曲や声を聴かせることもできます。

図2の構造例2では、筐体12の蓋部材に接着部材13により圧電素子22が取り付けられているため、圧電素子22が湾曲すると、この筐体21の蓋部材も湾曲します。蓋部材は、接着部材13によって振動板12に貼り付けられているため、結果として、圧電素子22が湾曲すると、振動板12が湾曲します。このような圧電素子22の湾曲を交互に繰り返すことで、振動板12も交互に湾曲するように振動するため、歯ブラシとして使用可能となります。振動と同時に、周波数に対応する音も発生するため、曲や声を聴かせることもできます。また、振動板12を有する第1パーツ、および、筐体21を有する第2パーツが分離できるため、メンテナンス性に優れています。

図3の構造例3では、圧電素子22が接着部材13によって振動板12に貼り付けられているため、圧電素子22が湾曲すると、振動板12も湾曲します。このような湾曲を周波数に応じて交互に繰り返すことで、振動板12が振動して毛部11が振動し、歯ブラシとして使用可能となります。振動と同時に対応する音声も発生するため、曲や声を聴かせることもできます。構造例3では、構造例2よりも振動が強く出やすいというメリットがあります。

本発明では、ボディ部Bではなく、ヘッド部Hに圧電素子等の振動源を配置して振動板を湾曲させているため、ユーザは、歯にブラシを当てたときに歯の振動に起因する音(歯における骨伝導音)を聴くことができます。つまり、歯にブラシの毛部を当てた場合、当てない場合よりも、ユーザに聴こえる音が大きくなります。そのため、たとえば音を聞きたいという幼児の好奇心を、歯にブラシを当てたいという気持ちへ変えることができます。

以上の例では、具体例として歯ブラシを挙げましたが、たとえば鍋等の調理器具を洗うためのブラシやデッキブラシ等も本発明の範囲内です。このような場合、圧電素子やその他の構造部品を用途に合わせて大型化すれば、上述した基本構造を変える必要はありません。ブラシの毛部が鍋などにきちんと当たれば、鍋などが振動して音が聞こえるため、家事が楽しくなります。

上記の通り、本発明は、たとえば、ブラッシングしながら音楽を楽しめる電動歯ブラシを提供します。

本出願で特許となった本発明のポイントを解説しますと、ブラシを歯に当てると、骨伝導によって大きな音として聴こえる音楽などを楽しめる点に特徴があります。

本発明を要約しますと、本発明のブラシは、ヘッド部およびボディ部を備えます。ヘッド部は、毛部、振動板、振動板にとりつけられた振動源を備え、ボディ部に取り付けられています。ボディ部は、振動源に供給信号を供給する回路を備えます。供給信号は、耳で聞こえる周波数の信号(楽曲信号)を含みます。供給信号を振動源に供給するときに、200Hz~500Hz付近の周波数特性を少なくとも20デシベル(dB)強化した強化信号(楽曲信号)だけでなく、20,000Hz以上の超音波帯域の信号も含めた超音波信号も、振動源に供給します。

そして、振動源が振動して、毛部が振動するとともに、振動板から楽曲信号に基づく楽曲の音声が発生します。なお、ユーザが操作部を操作することで、強化信号の大小の調整が可能です。

本発明のもう1つは、ブラシの使用方法です。

本発明のブラシの使用方法では、上記のブラシを使用します。ブラシの毛部を振動させて対象物(歯や汚れた調理器具など)を磨くと同時に、ブラシの毛部から伝達された振動によって、対象物を振動させます。対象物の振動により楽曲信号に基づく楽曲の音声を発生させます。

本特許は、京セラから出願されたものです。本来は、個人用製品(パーソナル製品)よりも産業用製品(ビジネス製品)に強みを持っている会社です。身近な個人用製品としては、携帯電話(ガラケーやスマホ)がありますが、意外な個人用製品もあるようです。本発明は、歯を通じた骨伝導で音楽を聞かせながら、子供の仕上げブラッシングを楽しく実施できる「Possi(ポッシ)」という商品に利用されていると考えられます。

本特許の発明は、個人用製品のなかでもオーラルケア製品に関するものです。家庭内でブラシを使った動作(特に歯のブラッシング)を楽しくおこなうために考え出されたアイデアであると思われます。様々な分野にすでに挑戦している会社ですが、ヘルスケア産業の分野にさらに挑戦しようという意図があるようです。

発明の名称

ブラシ及び交換部材

出願番号

特願2021-096781

公開番号

特開2021-137618

特許番号

特許第7084529号

出願日

令和3年6月9日 (2021/6/9)

公開日

令和3年9月16日 (2021/9/16)

登録日

令和4年6月6日 (2022/6/6)

審査請求日

令和3年6月9日 (2021/6/9) 早期審査

出願人

京セラ株式会社

発明者

稲垣 智裕、日高 瑞穂
国際特許分類

A61C 17/34K
A46B 13/02
A61C 17/22D

経過情報

・本願は拒絶理由通知を2回受けた後に特許となりました。
・本願は分割された子出願です。親出願も特許となっています。


近年、自律型ロボットや、人工知能搭載家電など、いわゆる「AI」が搭載される機器が身の回りにも増えてきました。今後の日本の人口分布を見れば、少子高齢化の影響で労働人口は急速に減少しますので、産業の自動化や省力化は、労働生産性の向上はもちろん、産業の維持という観点からも非常に重要な課題です。

今回紹介する発明は、人工知能を搭載した機器において、その処理動作を単一の人工知能の判断に基づいて決定するのではなく、複数の人工知能に判断を行わせることで、動作の信頼性を向上させるというものです。

例えば、2つの人工知能を用いる場合、互いに異なる人工知能を使用します。具体的には、アルゴリズムの方式が異なるものや、アルゴリズムの方式は同じでも、学習に関するパラメータが異なる場合(一方は機械学習、他方は深層学習など)が例示できます。

このように、異なる人工知能を用いる場合、同じインプットがされた場合であっても、異なるアウトプットがされることがあります。異なるアウトプットがされた場合に、もう一度検討を行ったり、3つ以上の人工知能であれば多数決を行ったりすることで、最終的な結果の信頼性を向上させることができるというわけです。人工知能同士が民主主義的に意思決定するなんて、とても興味深い発明ですね。

「人工知能」と聞くと皆さんはどのようなことを思い浮かべますか。「人工知能」なんて聞いたことがないという方もいるかもしれませんね。

今は「人工知能」ではなく、「AI(エーアイ)」のほうが言葉としては浸透しているようです。

AIによる顔認識やAIによる自動運転、AI搭載のドローン、AI搭載のお掃除ロボットなどなど、テレビ番組、CM、雑誌の記事にはAI付きの言葉がたくさん出現しています。

現在巷で利用されているAI搭載の機器の多くは、便利な機能を提供する一方、人の命にかかわるような機器はまだまだ開発段階のようです。自動運転の列車もまだ運転手がついていますし。しかし、近々無人の自動車が運転される報道がありました。これからどんどんこのような事例が増えてくるでしょう。

一方、「人工知能って信用できるの?」、みなさんはどうですか。想定外の状態になったときAIは最適な判断をしてくれるのだろうか。不安になりませんか。

何をやっているのか中身のわからない人工知能もありますから、判断に至る処理の信頼度を上げることが求められています。

発明の目的

人工知能による処理の信頼性を上げるために、2つの人工知能を使用して、それぞれに同じ情報を入力し処理させます。処理した結果を比較し、結果が同じであれば、その処理は正しいと判断し実行します。

当然、2つの人工知能が全く同じものであれば結果は同じになってしまいますから、使用する人工知能の双方が、異なるアルゴリズムで動作するもの、または、同じアルゴリズムの動作でも学習の習熟度が異なるものの組み合わせで行います。異なる二つの人工知能の処理結果が同じであれば、処理の信頼度が上がるというわけです。

この発明では、人工知能を搭載した機器(例えばロボット)と通信できる端末装置(スマートフォンなど)を用いることで、ユーザがロボットの動作状況をリアルタイムで把握できます。

さらにロボットに搭載された二つの人工知能がロボットの中の限られた計算資源のなかで処理するだけでなく、一方の人工知能、あるいは両方の人工知能を別のコンピュータに移動し処理させることで、処理の高速化や高度化を図ることができます。

これにより人工知能の処理の信頼性を上げることができます。

発明の詳細

この発明の詳細を図で説明します。

図1は人工知能を搭載した機器の例として、人型のロボット10を示しています。図では一般的な構成で頭12があり、目12A・12B、腕13・15、手14・16、脚17・18がありますが、処理する内容によってカメラを装備したり、GPS機能を装備したり構成を変えることができます。このロボットの胴部11には処理のための2個以上の人工知能を含む制御機器が格納されています。

【図1】

図2は、ロボットに装備されている計算資源35において、人工知能1が計算資源1を、人工知能2が計算資源2を使用している様子を表しています。

【図2】

図3は、2つの人工知能の処理結果の比較の様子を表しています。

人工知能1は、入力情報S101を処理1で処理し、結果1を出力します。もう一方の人工知能2は、同じ入力情報S101を処理2で処理し、結果2を出力します。出力された結果1と2を比較し、処理の決定S107をします。

【図3】

図4は、ロボット10と端末装置40の関係を示しています。ロボット10と端末装置40は通信しています。端末装置40の表示画面41には、ロボット10に実装されている人工知能1と人工知能2を表すそれぞれのキャラクタ42Aと42Bが表示されています。キャラクタ42Aは人工知能1とキャラクタ42Bは人工知能2と紐付けられています。

【図4】

図5は、ロボット10と通信している端末装置40の表示画面41の表示例を示しています。装置名41Aにはロボット10が「ロボットA」で表示され、人工知能1及び2に紐付けられたキャラクタ42Aと42Bも表示されています。

この表示を見たユーザは、東京都港区(場所 41D)で動作しているロボット10(ロボットA)が周辺画像の収集(作業1 41B)と移動(作業2 41C)を実行中であることが分かります。

また、キャラクタ42Aと42Bが同じ活動領域41E(ロボット10内の)で動いていることを示していますし、人工知能1(キャラクタ42A)が作業役として動作し、人工知能2(キャラクタ42B)が監視役として動作しているのが分かります。

【図5】

図6は、人工知能がロボット10内の計算資源35から別の計算資源71に移動する過程を示しています。ロボット10の計算資源35の一部である計算資源1を使っていた人工知能1が、サーバ70の計算資源71の一部計算資源1に移動して動作しています。サーバ70の計算資源を使用することで、人工知能1を高速化・高度化できます。

【図6】

図7は、図6の移動の様子を端末装置40の表示画面41にどのように表示するかを示しています。

東京都港区で画像処理をしているロボット10(ロボットA)の作業領域41Eで活動していた作業役である人工知能1のキャラクタ42Aがサーバ70の作業領域41Eに移動した状態を表しています。監視役の人工知能2のキャラクタ42BはロボットAの作業領域にとどまっているのがわかります。

【図7】

図8は、作業役の人工知能1と監視役の人工知能2が別々の装置で動作する例と二つの結果を統合する仕組みを表しています。

【図8】

図9は、ロボット10と通信している端末装置40の表示画面41上で、キャラクタに対するユーザの操作と連動して実行場所を移動する様子を説明しています。

ロボットAの作業領域41E上のキャラクタ42Bを、サーバ70の作業領域41Eに移動操作すると、実際のロボット10の人工知能2がサーバ70に移動し、そこで処理動作をします。

【図9】

人工知能による処理の信頼性を上げるために、異なるアルゴリズムで動作する、または、同じアルゴリズムでも学習の習熟度が異なる2つの人工知能を用いて、それぞれに同じ情報を入力し処理させます。処理した結果を比較し、結果をもとに実行します。 

さらに、人工知能を搭載した機器(例えばロボット)と通信できる端末装置(スマートフォンなど)を用いることで、ユーザが遠隔操作するロボットの動作状況をリアルタイムで把握できたり、ロボット上で動作する人工知能を別に用意したサーバに移動し動作させることで高速化・高度化でき、人工知能の処理の信頼性を高めることができます。

特許権者である「富士フィルムビジネスイノベーション株式会社」のホームページを見ましたが該当するような事例はありませんでした。AIは目覚ましく進化していますし、AIを搭載した機器は新しいものがどんどん市場に登場しています。

便利になっていきますし、すごいなとも思いますが、やはり「いざとなったらまともに動くのか?」「本当に大丈夫?」という不安はなかなか消えません。

別々のAI同士がお互いを監視しあうのは、AIが出力した結果の信頼性が上がることが期待できます。AIの開発者は、さらに信頼性の高いAIの開発に努力をし続けるでしょう。安心して乗車できる無人運転のバスや列車の登場はそれほど遠い未来の事でなく、もうすぐそこまでやってきてます。

発明の名称

情報処理装置、情報処理方法及びプログラム

出願番号

特願2017-48618(P2017-48618)

公開番号

特開2018-151950 (P2018-151950A)

特許番号

特許第6938980号(P6938980)

出願日

平成29年3月14日(2017.3.14)

公開日

平成30年9月27日(2018.9.27)

登録日

令和3年9月6日(2021.9.6)

審査請求日

令和2年1月21日(2020.1.21)

出願人

富士フイルムビジネスイノベーション株式会社

発明者

得地 賢吾
国際特許分類

G06N 5/04 (2006.01)
B25J 13/00 (2006.01)
G06F 13/00 (2006.01)



誰しも年齢を重ねてくると、頭髪のケアが気になりますよね。白髪や抜け毛が目立ってくるのは年のせいで仕方ない、という考えの方もいるかもしれませんが、やはり頭髪ケア製品は男女問わず広い年齢層で気になるものです。

従来、頭髪ケアのための装置としては、例えばモーターによる作動部位を直接頭皮に当ててマッサージする製品や、微弱な電流を流すことで毛根に刺激を与えて血流を改善するものなどが知られていました。しかしこれらはどれも直接頭髪・頭皮に接触させる必要がありました。

今回紹介する発明は、原理的に非接触で、衛生的な頭髪ケアが可能な、超音波ビームを用いた頭髪ケア装置に関するものです。すでに実用化もされている特許発明ですので、その原理をぜひ御覧ください。

古くから、頭髪の問題(薄毛又は抜け毛)を解消するために、様々な手段で育毛又は発毛を促進させる取り組みがされてきました。一例としては、頭皮に電極を装着することにより、育毛又は発毛を促進する発毛育毛装置が知られていました。

【特開2015-134144号公報】

しかし、このような技術では、発毛育毛装置の一部を頭皮に直接接触させるため、衛生面での悪影響を避けることができませんでした。

発明の目的

本発明は、上述の課題を鑑みて、頭髪ケアにおいて、衛生面への悪影響を解消することを目的としています。その解決方法として、複数の超音波振動子を凹状の曲面形状に沿って配置し、その凹状曲面形状に応じて決まる焦点に集束する集束超音波を放射させることで、焦点に位置する施術部位にこの集束超音波による音響放射圧を非接触で与えることとしました。

発明の詳細

では、図・画像を参照しながら、本発明の詳細を説明していきます。

【図1】第1実施形態

この図面は、本発明の第1実施形態の概要の説明図です。

本発明の頭皮ケア装置の一部である振動子盤16は、放物面16Sを含み、放物面16Sには複数の超音波振動子15が配列されています。

このような構成を持つ振動子盤16から超音波振動子15を駆動させると、超音波振動子15の放射面に対して直行する方向(Z方向)に向かって、超音波ビームが放射されます。複数の超音波振動子15から同時に放射された超音波ビーム(すなわち、集束超音波)は、放物面16Sの形状によって決まる焦点FPに集束します。これにより、ユーザUの施術部位に集束超音波による音響放射圧が印加されます。印加された音響放射圧によって、ユーザUの施術部位は超音波振動子15と一切接触することなく、Z方向への押圧刺激を受けることになります。

このような音響放射圧を、頭皮ケア装置のプロセッサによって、所定の振動周波数(例えば10Hz)で間欠的に駆動させると、ユーザUの施術部位には音響放射圧が間欠的に印加されることになります。そうすると、施術部位は超音波振動子15と接触することなく、上記振動周波数で振動することになります。このようにしてユーザUの頭皮が振動すると、頭部の休止期の毛乳頭細胞は、振動に起因する活性化により、成長期に移行します。成長期の毛乳頭細胞は、振動に起因する活性化により、成長が促進されます。具体的には、プロセッサは所定の施術時間(例えば2分間〜60分間程度)が終わるまで、複数の超音波振動子を所定の振動周波数で同時に、かつ間欠的に駆動させ続けます。

【図2】第1実施形態の構成例1-1

この図面は、本発明の頭髪ケア装置の構成例1-1を示したものです。

構成例1-1は、頭髪ケア装置を、ハンディ型、かつ光学的な焦点案内機能を備えるように構成しています。

頭髪ケア装置100は、メッシュカバー101と、プッシュボタン102と、光学ガイド103と、グリップ104を備えます。頭髪ケア装置の施術時間は一例として2分間です。

光学ガイド103は、ユーザUに焦点FPの位置を案内するように構成されます。具体的には、光学ガイド103は、可視光線を焦点FPの位置に応じて照射します。このような光学ガイドによって、ユーザUは焦点FPがどこにあるかを視覚により認知して施術部位の位置決めを容易にすることができます。

【図3】第1実施形態の構成例1-2

この図面は、第1実施形態の構成例1-2を示したものですが、構成例1-2は頭髪ケア装置を据え置き型、かつ物理的な焦点案内機能を備えるように構成する例です。メッシュカバー111と、ベース115と、アーム116とを備えます。この構成例では、頭髪ケア装置の施術時間は、一例として20分間です。

ベース115は寝台の上に据え付けることができます。そして、ベース115はユーザUに焦点FPの位置を物理的に案内する物理ガイド115aを備えます。物理ガイド115aは、ユーザUの頭部を固定することで、ユーザUの施術部位を焦点FPに物理的に案内します。

【図4】第1実施形態の構成例1-3

この図面は、頭髪ケア装置を据え置き型とした例の1つです。ベース125は、ユーザUに焦点FPの位置を物理的に案内する物理ガイド125aを備えます。この物理ガイドは、ユーザUの顎を固定することにより、ユーザUの施術部位を焦点FP付近に留めさせます。

【図5】第1実施形態の構成例1-4

この図は、頭髪ケア装置をハンディ型として、かつ、物理的な焦点案内機能とヘアケア剤の塗布機能を備えるように構成したものです。グリップ134の部分にプッシュボタン132が備えられています。プッシュボタンを押すことで、ユーザUの頭皮及び毛髪にヘアケア剤を塗布することができます。ヘアケア剤は、育毛剤や発毛剤のみならず、例えばシャンプーやカラーリング剤、整髪料を適用することも可能です。この構成例では、頭髪ケア装置の施術時間は、一例として2〜5分間です。

【図6】その他の構成例

その他の構成例として、ヘアケア剤をミスト化して噴射できるタイプ、頭部に装着したウェアラブルタイプ、ハンディ型でありながら頭部への物理ガイドを備えたタイプが例示されています。

【図7】その他の構成例

第1実施形態では超音波振動子は曲面に配置され、全ての振動子を同時に駆動させるものでしたが、第2実施形態では超音波振動子を平面に配置し、焦点で超音波ビームがちょうど重なるように、振動子を時間差で駆動させます。この方式を採用した場合、焦点の位置は振動子の駆動タイミングの差でコントロールすることができるため、よりユーザに合わせた構成が可能です。

【図8】その他の構成例

この構成例は、据え置き型、かつ焦点可変機能、状態適応施術機能、およびコンテンツ再生機能を備えるように構成したものです。メッシュカバー201に、例えばユーザのスマートフォンを備え、Bluetoothなどを利用してスピーカから音楽を再生することなどが可能です。また、ユーザのスマートフォンのカメラを通じてユーザの状態(例えば施術部位の状態)を判定し、焦点位置等の施術パラメータを決定することができます。

本発明は、振動子盤の放物面上に複数の超音波振動子を設け、それらを同時に駆動すること、又は、平板上に備えられた超音波振動子を時間差を設けて駆動させることで発生する焦点に超音波ビームを集束させることで、ユーザの頭皮を非接触で振動させるものです。この振動による活性化で、頭髪のハリ及びコシが向上し、頭髪の見た目がよくなるという効果を奏します。

ここまで説明してきた通り、本発明は非接触で衛生的な頭髪ケア装置に関するものです。昨今の衛生観念の高まりにより、今後は一層非接触によるボディケアの需要は高まる可能性があります。また、非接触であるがゆえに、不特定多数を相手にする施設(例えば美容室など)や、家族での共用なども、心理的ハードルなく実現できるといえるでしょう。頭髪ケア装置のみならず、今後、さらに非接触製品が増えていくものと予想できます。

発明の名称

頭髪ケア装置、および、プログラム

出願番号

特願2020-72559

公開番号

特開2021-168767

特許番号

特許第7144813号

出願日

令和2年4月14日(2020.4.14)

公開日

令和3年10月28日(2021.10.28)

登録日

令和4年9月21日(2022.9.21)

審査請求日

令和4年2月8日(2022.2.8)

出願人

ピクシーダストテクノロジーズ株式会社

発明者

落合 陽一 他
国際特許分類

A61H 23/02 (2006.01)

経過情報

早期審査請求に基づき審査され、拒絶査定となったが、拒絶査定不服審判の請求と同時に補正を行い、前置審査において特許査定となった。


CONCLUSION

大手企業といえど、時代の変化が早い時代は、変化に対応するべく常にチャレンジングな姿勢でいなければライバル企業や新規参入のベンチャー企業たちに、アッと言う間に抜かれてしまいます。

大企業は資金力があり、特許申請のコストもスタートアップほど気にせず積極的に出願できますので、何か新しい事業に取り組むときは出願してる傾向にあります。そのため、特許情報を読み解くとその企業がどんなことに興味を持っているかを予想することができます。
まさに+VISIONの活用方法としてはベストなVOLだったかと思います。

今回は「京セラ」「石黒教授」「サイバーエージェント」「落合陽一」とネームバリューもある方々が関連する特許で、テクノロジー系やIoT関連の技術でした。
出願時から既にサービス化をイメージしていることが伝わる内容でしたので、他に応用できるかどうかでなく、一つの方向性として捉えこの特許を侵害せずにさらに新しい発明をするのが「切磋琢磨」に繋がると思いますので、ぜひライバルとして挑んでみてはいかがでしょうか。