アスリートはプロ・アマを問わず、自分のパフォーマンスを向上させることを望んでいます。身体能力の向上はもちろんのこと、視覚、反応時間、その他の能力に向けられた演習を行うことによって、大幅な上達を得ることも可能です。このうち、視覚に関しては、従来、視覚向上エクササイズなどが知られていて、これらはアスリートが様々なパターンを容易に記憶できるような、静的なスポーツ用デバイスを利用することが多いものでした。
しかし、これらのデバイスはそれぞれを適切に用いなければならないところ、誤って利用されることも多かったという問題も持っていました。
今回紹介する発明は、動的な発光(しるし、インディシア)が可能なスポーツ用デバイスです。例えばアメフト用のボールや、ホッケー、野球、サッカーといったスポーツで従来から用いられている用具に対して設けられます。例えば、外面から視覚的に認知できる出力で、特殊な光り方ができる発光デバイスをボールに組み込むことで、ボールの回転に応じて発光パターンを変化させるなどが可能です。
このようなデバイスを用いて練習を行うことで、アスリートの視覚を強化することができるそうです。具体的にどのようなデバイスなのか、詳説していきます。
発明の背景
本発明は、アメリカンフットボールのボールなどに適用されるスポーツ用デバイス(装置)に関します。
アマチュアまたはプロのどちらであっても、アスリートは、自分が取り組んでいるスポーツまたは競技活動におけるパフォーマンスを向上させたいと考えています。
アスリートは、身体能力を向上させることだけでなく、動的視力などの視覚能力を練習によって大幅に上達させることも目指しています。アスリートは、多くの場合、視覚能力向上のために「静的な」スポーツ用デバイスを利用します。「静的な」スポーツ用デバイスは、あらかじめ決めておいたさまざまな表示パターンを簡単に表示できるデバイスです。「静的な」スポーツ用デバイスの具体例としては、ボールの回転が速いか遅いかがわかるように、表面の一部をあらかじめ各種のパターン(模様、色など)で表示するように構成されたボールなどが相当します。しかし、「静的な」スポーツ用デバイスを利用して、さまざまなパターンで練習したとしても、自己流で利用される等の理由により、あまり希望通りの結果を得られません。
一般的に、用具やデバイスの使用法が不適切であれば、競技パフォーマンスが低下します。同様に、練習法が不適切であれば、適切なトレーニングが妨げられて、アスリートのパフォーマンスがその時点での最大能力レベルに達しないという、残念な結果になってしまいます。
どんな発明?
発明の目的
上記のような問題点から、改善されたスポーツ用デバイス、および、スポーツ用デバイスの改善された利用方法が要望されています。本発明は、このような問題点を解決できる新規なスポーツ用デバイスおよびスポーツ用デバイスの利用方法に関します。
発明の詳細
本発明のスポーツ用デバイスおよびの具体例について、以下に説明します。
本発明のスポーツ用デバイスとしては、フットボール、ホッケー、野球、サッカーといったスポーツ(競技活動)のために設計された(従来から利用されている)用具が例示されます。たとえば、スポーツ用デバイスは、フットボール、サッカーボール、バットなどです。
スポーツ用デバイスの表面には、表示パターンを変化させるための視覚情報(以下、「動的視覚情報」ともいいます)が、適切なタイミングで表示されます。具体的には、発光/光反射デバイスによって、視覚的に認知できる出力が表示されます。発光/光反射デバイスは、たとえばエレクトロクロムを含みます。エレクトロクロムは、電圧をかけると色が変化する材料です(後に詳しく説明します)。スポーツ用デバイスは、メモリを有し、メモリがコンピュータに、実行可能な命令を与えます。命令が実行されると、発光/光反射デバイスの出力が変化します。
一例において、スポーツ用デバイスは、パワースカベンジングデバイスを備えます。パワースカベンジングデバイスは、そのスポーツ用デバイスを利用しているアスリートから電力を受け取ることができます。たとえば、パワースカベンジングデバイスは、パスされて回転するアメリカンフットボールの螺旋状の動き、または、蹴られたサッカーボールの回転から発生する電力を受け取ることができます。
さらに、本発明は、スポーツ用デバイスの発光/光反射デバイスの出力を変化させるシステムおよび方法に関します。このシステムおよび方法によって、たとえば、アスリート(ユーザ)のトレーニングにおいて、「動的視覚情報」を選択(入力)できます。具体的には、スポーツ用デバイス上にある入力手段を操作することによって、ユーザ入力を受信します。たとえば、アメリカンフットボールのレース部分(ボールの縫い目部分)が、ユーザ入力の受信に利用されます。さらなる例では、たとえば無線電話、メディアプレイヤ、タブレット、ネットブック、またはノートブックコンピュータといった携帯通信デバイスなどの外部の電子デバイスから、ユーザ入力を受信できます。
本発明の他の例では、スポーツ用デバイスの内部や外部にあるセンサを利用します。センサによって、競技中における、スポーツ用デバイスの動きパラメータ(加速度など)を検出します。検出されたパラメータ情報に反応して、そのパラメータ情報を表す「動的視覚情報」が、スポーツ用デバイスに表示されます。たとえば、ボールの加速度がしきい値を超えたときに、ボールの一部の色が変化するといったしくみです。このようなしくみは、複数のスポーツ用デバイスからのデータを利用して実施できます。
別の例において、パフォーマンスしきい値に達していなければ、発光/光反射表示を変化させないようなしくみを採用できます。たとえば、2人以上のアスリートがパフォーマンスしきい値を超えない限り、特定の「動的視覚情報」が示されません。より具体的には、特定の「動的視覚情報」を表示させるためには、ボールを投げる方のアスリートは、特定の特性(投球速度、ボールの回転など)となるように、スポーツ用デバイスを投げる(パスやピッチング)必要があります。一方、ボールを受ける方のアスリートは、所望の特性(たとえば、キャッチ、ストライクゾーン)に従うように反応する(たとえば、キャッチする、バットで打つ)必要があります。
本発明において、「動的視覚情報」は、フットボール300などのスポーツ用デバイス100上に示されます(後の図1および図3~図5をご参照)。しかしながら、「動的視覚情報」は、例示したフットボール300での利用に限定されません。フィットネス、競技、またはスポーツの際に、さまざまな装置、ツール、用具に適用されます。
スポーツ用デバイスは、特定の団体スポーツまたは競技活動のために設計された、従来から利用されているスポーツ用具などです。スポーツ用デバイスを例示しますと、ゴルフボール、バスケットボール、野球ボール、サッカーボール、フットボール、パワーボール、ホッケーのパック、砲丸、バット、クラブ、スティック、パドル、マットなどですが、これらに限定されません。したがって、本発明の範囲は、競技活動中にアスリートによって直接的または間接的に操作される、さまざまなアイテムです。スポーツ用デバイスは、たとえばグローブやシューズのように、ユーザに着用されて使用される場合もあります。
スポーツ用デバイス以外にも、本発明には、「動的視覚情報」を備えたスポーツ用構造も包含されています。スポーツ用構造としては、たとえば、ゴール、ネット、バスケットリング、バックボード、フィールドの一部といった、スポーツ環境内の物体が挙げられます。また、たとえば、ミッドライン、外側境界線マーカー、ベースといった、特定のスポーツのために利用される、スポーツ環境内の物体が挙げられます。なお、スポーツ用デバイスがスポーツ用構造の一部である場合があり、その逆の場合もあります。スポーツ用構造は、スポーツ用デバイスと相互反応するように構成される場合もあります。以下、スポーツ用構造の説明は、スポーツ用デバイスの説明に包含させて行います。
図3~図5に示す例示的なスポーツ用デバイス(フットボール300)を参照しつつ説明します。
図3Aは、アメリカンフットボールで使用するために構成された、視覚トレーニングシステムの一例の正面等角投影図です。図3Bは、図3Aのフットボールの側面図です。
【図3】
図4は、図3Aのフットボールの一方の端部(尖った部分)で表示される視覚表示パターン例です。図5は、図3Aのフットボールの他方の端部で表示される視覚表示パターン例です。
フットボール300は、たとえば、302、304、306で表されている第1のパターン(以下、パターンAといいます)を表示しています。パターンAは、フットボール300の外面(面308など)に表示される場合、または、透明である場合があります。
【図4】
【図5】
別の例では、「動的視覚情報」から作成されるパターンAは、たとえば図3Bおよび図5に示されるように、フットボール300のそれぞれの端部316、318に配置された、さまざまな色の円および同心円状の環310、312、314です(図4および図5をご参照)。
一方、第2のパターン(以下、パターンBといいます)は、パターンAと異なり、円310、312、314を有しません。パターンBは、たとえば、円310、312、314に代わるさまざまなサイズや色の円です。極端な例では、パターンBは、円や環をまったく有しません。
図3~図5に例示したスポーツ用デバイスには、アメリカンフットボールのボール300において利用されるパターンAが示されています。パターンは、たとえば図3Aに示されているように、フットボール300のそれぞれの端部316、318に配置された異なる色の円や同心円状の環310、312、314です。
「動的視覚情報」として、たとえば外側の環314を利用します。しかも、隣接する中心の円310および内側の環312とは異なる色を外側の環314に表示させます。たとえば、ボール300の一方の端部316には、中心の円310(赤)、内側の環312(青)、および外側の環314(黄)があります(図5)。一方、ボール300の反対の端部318には、中心の円310(青)、内側の環312(赤)、および外側の環314(黄)があります(図4)。外側の環の色(黄)は、どちらの端部でも共通しています。ボールを投げる方のアスリートは、ボールを受ける方のアスリートに、316、318のどちらか一方の端部を向けて、ボール300を投げます。ボールを投げる方のアスリートは、ボール300が空中にある間、自分に向く中心の円310の色(赤または青)を判別して叫びます。これがアスリートの視覚トレーニングになります。
さらに、他の例では、さまざまな幾何学模様のパターンが、「動的視覚情報」として示されます。別の例では、パターンAは、パターンBによって示される形状や色を有しません。「動的視覚情報」は、多数のパターンを形成するために利用されます。この点について説明しますと、あらかじめ設定されたパターンのなかから、特定のパターンがユーザによって選択されます。ある特定の例では、ユーザは、新規なパターンを作り出せるだけでなく、既存のパターンを変更することもできます。表示デバイスは、パターンを試験的に表示するためにも利用されます。既存パターンを変更した後のパターンの確認をユーザにさせることもできます。さらなる例において、パターンは、無線接続や有線接続によって、ダウンロードされ、さらにスポーツ用デバイス100(ボール300など)に送信されます。さらに、たとえばパターンを自動で変化させる場合もあります。具体的には、フットボール300をスローイングするときの一方の端部(尖った部分)、または、キャッチングするときの他方の端部(もう一方の尖った部分)でのパフォーマンス(アスリートの実際の手の動き)に合わせて、センサの検出値に従って、パターンを自動で変化させる場合もあります。
図1は、外部の電子デバイスと通信する例示的なスポーツ用デバイス100を示します。
【図1】
スポーツ用デバイス100は、「部分101」を備えています。たとえば、スポーツ用デバイス100がスポーツ用ボール(たとえば、フットボール、サッカーボール、バスケットボール、等)である場合、「部分101」は、それぞれのボールの外面にあります。なお、必ずしもスポーツ用デバイス100の最も外側に「部分101」がある必要はありません。
スポーツ用デバイス100は、コンピュータ可読媒体をさらに備え、コンピュータ可読媒体は、読み出し専用メモリ(ROM)またはランダムアクセスメモリ(RAM)などのメモリ102を有します。メモリ102に含まれるコンピュータ実行可能な命令は、プロセッサ103によって実行され、たとえば「動的視覚情報」を示すための方法をスポーツ用デバイス100で実施させます。
プロセッサ103は、たとえばマイクロプロセッサです。スポーツ用デバイス100の内部または外部に配置されたプロセッサ103およびメモリ102は、必要に応じてトランシーバ104と通信できます。
電源107は、スポーツ用デバイス100上で「動的視覚情報」を示すべく、トランシーバ104、メモリ102、プロセッサ103、および、表示デバイスなどへ電力を提供するように構成されています。電源107は、たとえばスポーツ用デバイス100の動きから電気エネルギーを生じさせるために、パワースカベンジングデバイスを備える場合があります。たとえば、アメリカンフットボールの「螺旋状の」回転、または、野球ボールのスピン回転が、電気エネルギー生成のために利用されます。同様に、バット、クラブ、スティックなどのスイング動作、または、それらとボールとの接触時の衝撃、アイスホッケーのパックの回転も電気エネルギー獲得のために利用されます。さらに、電源107は、スポーツ環境内におけるたとえばソーラーパワーから、エネルギーを受けることができます。
スポーツ用デバイス100の外面101には、発光する材料があります。外面101の少なくとも一部は、たとえば透明または半透明です。これにより、スポーツ用デバイス100の内部から透過してきた光を、「部分101」の表面、または、スポーツ用デバイス100の表面で認識できます。「動的視覚情報」の出力は、たとえば出力デバイス108によって行われます。
出力デバイス108は、たとえば表示パネルです。表示パネルでは、たとえば、赤、緑、白、青のLED光源が、黒い背景上に配置されています。赤、緑、青のLEDの組み合わせによって、多種多様な色が生成されます。
別の例では、たとえば発光ダイオードが利用されます。なお、液晶ディスプレイ(LCD)、電界放出ディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイといった他のデバイスが使用される場合もあります。
他の例では、出力デバイス108として、クロマティック材料を利用します。クロマティック材料は、電圧、熱、光などの刺激によって色が変化する材料です。クロマティック材料は、スクリーン印刷(孔のあいた版にインキをのせてインキを反対側へ押し出す手法)などの処理によって、スポーツ用デバイス100上に塗工(印刷)されます。これにより、さまざまなパターンが、スポーツ用デバイスの表面上に塗工されます。
エレクトロクロマティック材料(エレクトロクロム)は、たとえばポリマー材料(高分子材料)、金属酸化物のフィルムなどです。
電源107は、受信した熱制御信号に従ってサーモクロム(温度の変化によって物質の色が変化する現象)を制御するように構成されています。電源107は、プロセッサ103と共に作動して、出力デバイス108を構成するサーモクロムにさまざまな熱出力を与えます。たとえば、電源107は、調節可能な電子信号(たとえば、電力レベル)をエレクトロクロムに与えるように構成されています。さまざまな信号によって、スポーツ用デバイス100上にさまざまな「動的視覚情報」が示されます。
一例では、エレクトロクロムにごくわずかな電圧(0Vでもよい)で電子信号が与えられると、その結果、エレクトロクロムが第1状態から第2状態へ切り替えられます。いったん電力を与えた後に、別の電力レベルが材料に与えられるまで、第2状態のままです。第1状態から第2状態へ変わった後、特定のエレクトロクロムは、ごくわずかな電力しか消費せず(または電力を消費せず)第2状態のままであり続けます。具体例では、最初の電子信号を与えた結果、実質的に透明に見えるエレクトロクロムを生じます。したがって、実質的に透明なエレクトロクロムは、スポーツ用デバイス100上での特定の視覚情報とはなりません。電子信号の変化によって、エレクトロクロムを透明から不透明へ、または、逆に不透明から透明へと変えることができます。
エレクトロクロムは、視覚的に異なるさまざまな状態に変化します。たとえば、電子信号が0の場合、または、電子信号のしきい値レベルを下回っている場合には、エレクトロクロムは第1状態(実質的に透明)です。さらに、エレクトロクロムは、電子信号が与えられると、視覚的に第1状態とは異なる第2状態へ変化します。たとえば、エレクトロクロムは、透明から特定の色へと変化します。またさらなる例では、第2状態から第3状態へと変化します。たとえば、第3状態では、エレクトロクロムの色は、第2状態とは異なる色です。
「動的視覚情報」を示す方法の具体例を、図2によって以下に説明します。
図2は、スポーツ用デバイスにおける視覚特性を変化させるべく「動的視覚情報」を利用する方法のフローチャート例です。たとえば、アスリートへの視覚的な合図のために、スポーツ用デバイス100を視覚的に調節する方法を利用します。
【図2】
まず、スポーツ用デバイス100の材料(色の変更が可能な発光性や光反射型の材料)を視覚的に変化させるように構成されたユーザ入力を受信します(たとえば、ブロック202をご参照)。アスリートやコーチから受信されたユーザ入力は、上記材料を視覚的に変化させます。例示的な視覚パターンを図3~図5のフットボール300で表しましたが、これらに限定されません。各種の視覚パターンは、たとえば、パフォーマンスの精度を向上させるための日々の練習においても利用されます。
これに対して、ブロック202で別の選択を行うことによって、スポーツ用デバイス100の表面に、別の視覚情報が、パターンBとして示されます。パターンBは、サイズ、形状、色、位置、向き、部位、明るさなどの点で、パターンAとは異なります。なお、視覚情報の表示パネルは、いったん色が変化しても元に戻れるように構成されています。
本発明では、たとえば、スポーツ用デバイス100の物理的構造を操作することで、ユーザ入力を実行します。例示的な物理的構造は、たとえば、アメリカンフットボールのレース(ボールの縫い目部分)です。たとえば、ユーザ入力を選択するために、レースがアスリートまたは他の個人によって操作されます。
次に、図2に示すブロック204によって、スポーツ用デバイス100の材料(発光性や光反射型の材料)、または、出力デバイス108(図1参照)を、視覚的に変化させることができます。ブロック202でユーザ入力が受け取られた結果、色、明るさ、タイミング、サイズ、部位などが変化して視覚的な変化が起こり、たとえばパターンAから別のパターンへ変化します。
続いて、決定206において、出力デバイス108の出力を調節するかどうかが決定されます。たとえば、動きのしきい値に達した(実際に動き出した)ことをスポーツ用デバイス100が検出したときにのみ、決定206が実施され、視覚的に変化します。具体的には、ボールが投げられるまで、または、サッカーボールが蹴られるまで、最初の「動的視覚情報」は示されません。これは、ボールが動く前に受け手がパターンを知ってしまうという不具合を防止するためです。
ここで、図5を示しつつ、フットボール300を使用する場合について説明します。
【図5】
たとえば、中心の円310および環312、314のサイズを、視覚トレーニングのために最適化できます。パターンAでは、パターンBよりも、大きな円310や環312、314を表示することができます。さらなる例では、一対の小さな明るい色の円320が、各端部316、318の中心円を挟み込むように、互いに向かい合わせに配置することができます。
フットボール300の端部316(図5に示すボールの一方の尖った部分)では、以前の練習中よりも小さなサイズで、中心の円310および環312、314が表示されます。したがって、視覚パターンAの使用によってアスリートの視覚トレーニングが進歩するにつれて、より難しい視覚パターンBを利用して、さらにアスリートの能力を向上させることができます。他のスポーツでも、たとえば野球用デバイスであれば、「ストライクゾーン」などの視覚パターンが上記の視覚パターンに相当し、アスリートに不足している能力を進歩させることができます。
加えて、番号324や文字326が、フットボール300のようなスポーツ用デバイスに提供されます。これらの番号324および文字326によって、フットボールが空中を飛んでいる間に、番号/文字を判別する視覚トレーニングが可能となります。
スポーツ用デバイス100は、センサ109(図1参照)を備えることができます。たとえば、スポーツ用デバイス100は、力や力の方向を測定するように構成されたセンサを備えます。一例として、センサ109は、バスケットボール内部にセンサを備え、さらに別のセンサが、バスケットボールのコートのバックボード上に配置されます。センサ109は、加速度を検出するように構成された取り外し可能な加速度計モジュールを備えます。加速度計モジュールは、異なるセンサ(圧力センサなど)と取り替え可能です。取り替え可能なセンサは、サッカーボール、パワーボール、フットボールなどのスポーツ用デバイスで使用することも可能です。また、センサ109は、その重量によってスポーツ用デバイス100のバランスや重心が変わらないように配置されます。なお、センサ109は、加速度計や力センサに限定されず、さまざまなタイプ(ジャイロスコープ、カメラ、温度計)などが採用されます。
センサ109が、しきい値を上回るパラメータを検出したら、ブロック207が実施され、視覚的な表示が調節されます。たとえば、通常の高さよりもサッカーボールが高く蹴られたことをセンサ109が検出したときに、パターンBがスポーツ用デバイス100上に表示されます。パターンBは、たとえばパターンAよりも大きなサイズであったり、パターンAとは色合いや明るさが異なったりします。これによって、受け手がより良好に認知できます。
好ましくは、アスリートが日々の練習によって上達していくときに、その練習に関連づけられて表示された視覚パターンを(上達に伴って)変化させます(たとえば、ブロック211を参照)。具体的には、センサ109は、アスリートが適切な「キャッチゾーン」内でスポーツ用デバイスを受け取ったことを検出します。別の例では、センサ109は、たとえば、スティックでホッケーのパックを止めたことの情報、バットで野球ボールを打ったことの情報、バスケットボールを投げたことの情報を収集します。このように、アスリートのパフォーマンスの特性やスポーツ用デバイス100の動きの特性を反映した電子信号を送信するように、ブロック211の一部が実施されます。ブロック211は、表示パターンを調節することによって、練習の難易度を調節します。
したがって、スポーツ用デバイス100を使用し続けると、アスリートのパフォーマンスの特性またはスポーツ用デバイス100自体の動きの特性に起因して(上達に伴って)、さまざまなパターンへと変化させることができます。なお、ブロック207、209、211が実施されない場合もあります。
上述したスポーツ用デバイスは、アスリートが、能力向上に役立てるために利用できます。また、多種多様な空中のボール、ボールのルート、ボールのパスと、自分の視覚とを連係させる練習に利用できます。
ここがポイント!
上記の通り、本発明は、たとえば、ユーザの意向に応じて、ユーザが示したい情報に関わる表示パターンを、ボールの表面で表示できるスポーツ用デバイス、および、その利用方法を提供します。
本出願で特許となった本発明のポイントを解説しますと、本発明は、ユーザ入力に応じて表示パターンをさまざまに変えることができる点に特徴があります。
本発明を要約しますと、本発明のスポーツ用デバイスは、視覚的に認知できる出力を表面に表示させるためのエレクトロクロム(色の変更が可能な発光性や光反射型の材料)を含む表示デバイス(色が変化する塗工部分など)を備えます。また、プロセッサ(CPU等)および非一時的なコンピュータ可読媒体(ROMなど)をさらに備えます。
そして、本発明のスポーツ用デバイスは、コンピュータによって実行可能な命令を、プロセッサによってコンピュータ可読媒体から読み取って、以下のプロセスを実行するように構成されています。
選択A、選択B、選択Cといった複数の選択のそれぞれの電子信号を、ユーザ入力によって受け取るプロセスを実行します。
また、選択Aを受け取ると、視覚パターンAを表示させるために、表示デバイスの表示パターンを変化させるプロセスを実行します。詳しくは、エレクトロクロムを実質的に透明な状態から色のある状態に切り替え、新たに命令がない限り、その色のある状態を維持します。
未来予想
本特許は、あの有名なアメリカの会社「ナイキ」社から出願されたものです。ご存じのようにスポーツに関わる製品を販売してきた会社です。ナイキブランドの製品は、シューズなどが有名ですが、本発明は、将来的に力を入れていきたい分野に応用したいアイデアであると考えられます。
本特許の発明は、アスリートのパフォーマンスをさらに向上させるために考え出されたアイデアであると思われます。スポーツファッション分野だけでなく、アスリート能力を向上させるスポーツ工学的な分野にも積極的に進出して、今までにないユニークな製品を販売しようという意図があるようです。
特許の概要
発明の名称
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動的な視覚インディシアを有するスポーツ用デバイスおよび構造 |
出願番号
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特願2014-543537 |
公開番号
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特表2015-501699 |
特許番号
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特許第6325983号 |
出願日
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平成24年11月20日 (2012.11.20) |
公開日
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平成27年1月19日 (2015.1.19) |
登録日
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平成30年4月20日 (2018.4.20) |
審査請求日
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平成27年10月9日 (2015.10.9) |
出願人
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ナイキ イノベイト セー. フェー. |
発明者
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ホムシ クリストファー、マルホトラ ヴィクラム |
国際特許分類 |
A63B 71/06
A63B 69/00
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経過情報
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・本願は、国際特許出願(PCT出願)された後に、日本国へ移行されたものです。
・日本国の審査では、2回の拒絶理由通知を経て特許となりました。 |