熱いぜ!スポーツテック特許

INTRODUCTION

今回のテーマは「スポーツテック」です。

スポーツテックとはスポーツとテクノロジーという2つの言葉を組み合わせた造語のことですが、近年のIT技術の発展及びその導入により、スポーツをより楽しむことができるようになりました。

従来、スポーツというとテレビや大型スクリーン等で視聴するだけでしたが、近年では、スポーツ中継での映像についても、様々なエフェクトや合成を加えてより視聴が楽しめるようなったり、スポーツ中の様々なデータを取得することで、そのデータを活用、加工して視聴者にスポーツの魅力を伝えることができるようになりました。

またハードウェアについても技術が進歩し、デバイスやセンサ等がよりコンパクト化したことで、ユーザの生体情報を容易に取得できるようになり、ユーザ自身の身体管理が身近なものになりました。

また、市場規模に目を向けると、世界のスポーツテック市場は2024年までに右肩上がりで拡大、成長すると予想されており、ここにビジネスチャンスが見込まれ、多くの知的財産が生まれております。

世界中では、優れた技術を持ち、スポーツテックに特化したスタートアップが次々と誕生し、ますますスポーツテック市場を盛り上げてくれそうです。

そこで今回は、このようなスポーツテックに関する特許・発明についてご紹介します。

CONTENTS

  • #1仮想テニスシミュレーションシステムとは?

  • #2試合の全てを把握・記録する追跡システム

  • #3ボールの光でアスリートが強化!?

  • #4CONCLUSION


近年、ゴルフや野球において、室内の狭い空間においても、実際のフィールドでゴルフや野球をするような、練習や競技のための仮想コンテンツを提供する、いわゆるスクリーンゴルフ、スクリーン野球といわれる施設が人気を博しています。このような技術を応用して、大衆的な球技として人気の高いテニスにおいても、スクリーンテニスのシステムが登場するようになってきました。

しかし、テニスはゴルフや野球とは異なり、プレイヤーが一箇所にとどまってボールを打撃するものではなく、ラケットを持ってフィールドをダイナミックに動きながら、相手選手とラリーを繰り広げることにこそ、醍醐味があるスポーツですが、従来の技術では、プレイヤーが多様な位置でボールを打撃しながら、映像内の相手と持続的なラリーを、臨場感を持って繰り広げるには、テニスの特性に合った多様な情報処理ができず、不十分なものでした。

今回紹介する発明は、テニスというダイナミックなスポーツの特性をプレイヤーが十分に経験できるようにし、プレイヤーが打撃したボールに対する情報処理のみならず、プレイヤーの動きに対してもリアルタイムな分析を行うことで、よりリアルなテニス経験を提供するもので、韓国企業が開発し、すでに実用化されている技術です。

シミュレーターというとどんなものをイメージしますか。

鉄道運転シミュレーターやフライトシミュレーターなどを思い浮かべる方は多いと思います。

シミュレーターというのは、実体を模擬する装置のことで、簡単に作り出せない状態をいろいろな条件を設定して仮想的に作り出すハードウェアやソフトウェアのことをいいます。

実はいろいろな現場で、数々のシミュレーターが活躍しています。

その一つ、フライトシミュレーターはパイロットの養成に使われるのが目的だと思われがちですが、非常時の訓練や新機種の運転訓練などにも利用されています。

飛行機の先端を模した装置の中には、実際の飛行機と同じコックピットが用意され、窓の部分にはフライト中の仮想的な映像が映し出されます。

その装置の外側にはいろいろなアクチュエータが装備され、装置の姿勢を変更できるようになっています。この装置によって、コックピットで操作した結果が飛行における機体の姿勢や振動、窓から見える景色も模擬し、あたかも実際に操縦しているような体験を得ることができます。

また、自動車の開発でも、路面状態を模したシミュレーターや気象条件を模擬できるシミュレーターなど多くのシミュレーターが利用されています。

シミュレーターは試験条件を均一にできるので、工場内で効率よく開発を行えることができるようになっています。

こういった訓練や開発に使用されるシミュレーターは私たちが目にすることはほとんどありません。

私たちがよく目にするシミュレーターは、ゴルフや野球のようなスポーツのシミュレーターでしょう。

室内の狭い空間でも、実際のフィールドでゴルフや野球をするように練習や競技をするための仮想コンテンツ、いわゆるスクリーンゴルフやスクリーン野球などが登場し、技術的な進歩によってより臨場感のあるものに発展することでさらに人気が集まっています。

また、ボールを利用する最も代表的なスポーツであるテニスについても、一人でテニスを楽しめるスクリーンテニスシステムが登場するようになりました。

テニスというスポーツは、ゴルフや野球とは違って、プレイヤーが一ヵ所でボールを打ち続けるのではなく、ラケットを持ったプレイヤーが、コート上を非常にダイナミックに動きながら、相手選手とボールを持続的にやり取りするラリーを繰り広げるスポーツです。

このようなテニスというスポーツの特徴を、スクリーンテニスシステムでも適切に実現するのが求められています。

発明の目的

テニスというスポーツは、ラケットを持ったプレイヤーが、自分のコート上を自由に動き回って相手プレイヤーとボールを打ち合いラリーを繰り広げるスポーツです。

そのような特徴のテニスというスポーツを臨場感高く、仮想の相手コート上の仮想の相手プレイヤーとラリーの打ち合いができるスクリーンテニスシステムを提供することを目的にしています。

発明の詳細

この発明を図で説明します。

図1はスクリーンテニスシステムの概要です。

プレイヤーPは自分のコート(コート底部30)上でプレイします。コート底部30の反対側(相手コート側)はネット32とスクリーン20があり、スクリーン20には仮想の相手コートと仮想の相手プレイヤーが映像出力機420によって投影されます。

スクリーン20の真ん中にはボールマシン100があり、ボール発射ホール22から、ボール1をプレイヤーPのコート上に発射します。

コート底部30上にはセンシング装置200が装備され、プレイヤーPの位置や打ったボールの方角や速度などの情報を取得します。取得した情報は制御装置300により処理されます。

【図1】

図2はスクリーンテニスシステムにおいて、図1の制御装置で処理された結果として、仮想相手プレイヤーVPが打った仮想ボールTbの軌跡と、その延長線上にボールマシン100が、現実のボール1をプレイヤーPのコート上に発射している様子を表しています。仮想の相手コートVC上に仮想相手プレイヤーVPがプレイし、プレイヤーPに対して仮想相手プレイヤーVPが打った仮想ボールTbの映像が映写されるので実際にテニスコートでテニスをプレイしているような臨場感を得ることができます。

【図2】

図3はこのスクリーンテニスシステムにおいて、プレイヤーと仮想相手プレーヤがラリーをするためのシステムが行うフローチャートを示しています。

  • S100で、プレイヤーのコート(コート底部)に対する仮想の相手コートの画像を映写します。
  • S110で、プレイヤーのコート(コート底部)グリッドを設定します。このグリッドによってプレイヤーの位置や仮想相手プレイヤーの打ち返したボールが飛んでゆく目標値を設定できます。
  • S120で、仮想相手コート上に立体グリッド(平面とその高さ方向のグリッド)を設定します。これにより、プレイヤーが打ったボールが仮想の相手コートのどこに飛ぶのかを計算できます。
  • S130で、仮想プレイヤーが打ちかえす位置(仮想ボールの出発点)が決まります。
  • S140で、プレーヤのコートのどの位置に打ち返すか目標位置を設定します。
  • S150で、ボールの運動条件を決め、S160でS130で決まった位置からボールの運動条件で仮想ボールの軌跡をシミュレーションします。
  • S170で、シミュレーション結果がS140で設定した目標位置の範囲内に入っているかを判断します。
  • 範囲に入っていなければS172で、ボールの運動条件を修正してS160を繰り返します。このS160、S170、S172のループを目標位置の範囲内に入るまで繰り返します。
  • S174で、目標範囲に入ればボールの運動条件をデータベースに保存します。
  • スクリーンテニスシステムはこのデータベースに保存されたボールの運動条件で映像をスクリーンに投影し、かつ設定された条件(速度や方向など)でボールマシンがボールを目標位置に向けて発射します。

【図3】

図1におけるセンシング装置は、カメラを2台使えばプレーヤーのコート上を3次元的にセンシングでき、プレーヤーの位置ばかりでなく、フォアハンドの打球かバックハンドの打球かも判断できるようになり、より多様な情報を取得できます。

ラケットを持ったプレイヤーが、自分のコート上を自由に動き回って相手プレイヤーとボールを打ち合い、ラリーを繰り広げるテニスというスポーツを模擬体験できるスクリーンテニスシステムを提供します。

プレイヤーのコート上のセンシング装置により、プレイヤーの位置や姿勢、打球の運動条件(速度や方向など)の情報を取得し、仮想相手コートのどこに飛んでいくのかを計算し、仮想相手プレイヤーが打ち返すポイントを計算します。

また、打ち返したボールの目標地点がプレイヤーのコートのどこにするかを設定し、仮想相手プレイヤーが打ち返すポイントからプレイヤーのコートの目標地点に到達する仮想ボールの運動条件を探し決定します。

決定した仮想ボールの運動条件で、仮想相手プレイヤーの動き(ボールを追う、打つ)の映像をスクリーンに映し出しかつ、打った仮想ボールの軌跡も映写します

さらにこの映像と重なるように目標地点に向けてボールマシンで実際のボールを発射します。

プレイヤーはこのボールを追い打ち返します。

このように映像と連動する実際のボールを打ち返すことで、さも相手プレイヤーとラリーを繰り返しているようなプレーを体験できます。

この特許を取得したのは、ニューディン コンテンツ カンパニー リミテッドという韓国の会社です。「Newdin」と検索をかけると韓国語のホームページがヒットします。

ホームページには、Newdinのテニスシミュレーターのブランド「TENNISPOT」がありました。「TENNISPOT」のタグをクリックすると動画と説明が現れます。この特許を使用したシステムのようですね。

また「TENNISPOT」で検索すると、このサイトのほかにこのシミュレーターを導入しているテニスレッスンのスタジオのホームページもヒットします。

実際にボールを打つことと仮想の相手プレイヤーの動きや相手プレイヤーが打ったボールの軌跡の映像が見れるのでより臨場感が増すようです。

臨場感のあるゲームというとバーチャルの世界を想像してしまいますが、リアルはリアルの良さがあり、でも対戦相手にしばられず一人でプレイできるのはよい環境だと思いました。

もしかするとボールマシンが複数機並べばライン際のボールも模擬できプレーの幅が広がります。また、制御が発展すれば、対戦相手は仮想の相手プレイヤーでなく、違う場所でプレーする他の人と遠隔でプレイすることも可能かもしれません。有名なプレイヤーとの対戦もできそうですね。

発明の名称

仮想テニスシミュレーションのためのテニス人工知能具現方法、それを用いた仮想テニスシミュレーションシステム及び方法

出願番号

特願2020-548808(P2020-548808)

公開番号

特表2021-516129 (P2021-516129A)

特許番号

特許第7070874号(P7070874)

出願日

平成31年3月13日(2019.3.13)

公開日

令和3年7月1日(2021.7.1)

登録日

令和4年5月10日(2022.5.10)

審査請求日

令和2年9月29日(2020.9.29)

出願人

ニューディン コンテンツ カンパニー リミテッド

発明者

ヤン、ドン ウン
国際特許分類

A63B 69/38 (2006.01)

経過情報

・出願審査請求後、拒絶理由が通知さましたが、特許請求の範囲の全文を補正し、意見書を提出し特許査定となりました。

発明の名称

仮想テニスシミュレーションシステム、これに用いるセンシング装置及びセンシング方法

出願番号

特願2020-548727(P2020-548727)

公開番号

特表2021-516576 (P2021-516576A)

特許番号

特許第6981719号(P6981719)

出願日

平成31年3月13日(2019.3.13)

公開日

令和3年7月8日(2021.7.8)

登録日

令和3年11月22日(2021.11.22)

審査請求日

令和2年10月22日(2020.10.22)

出願人

ニューディン コンテンツ カンパニー リミテッド

発明者

ジェオン、セオ イェオン
国際特許分類

A63B 69/38 (2006.01)
A63B 69/00 (2006.01)
A63F 13/812 (2014.01)
A63F 13/213 (2014.01)
A63F 13/573 (2014.01)
A63F 13/55 (2014.01)
A63F 13/25 (2014.01)
A63F 13/52 (2014.01)
G06T 7/20 (2017.01)

経過情報

・出願審査請求後、拒絶理由が通知されることなく、特許査定となりました。


複数のメンバーでチームとなって行うスポーツのことを日本語では一般に「団体競技」といいますが、このような団体競技において、特に2チームに分かれて得点を競うスポーツは、古くから数多く楽しまれてきました。 人気度からいえば野球やサッカー、ラグビーなどが思いつくところですし、米国ではバスケットボールの人気が非常に高いことは多くの人がご存知のことでしょう。

このような競技において、競技フィールド上でボールがどのように動き、誰がいつゴールを決めるかという点が最も注目されるところではありますが、熱心なファンの視点や、特にチームの監督などからすれば、ボールだけ追いかけているわけにはいかず、選手それぞれがどのようにフォーメーションを組んで戦略的に動くかを把握し、分析したいという思いをもつことは当然のことです。

しかし、フィールドが広かったり、人数が多かったりすればそれだけ、全体を把握することは困難を極めることになります。人間の特性として、どうしても一点を集中して見てしまいますから、リアルタイムに競技フィールド上の事象を俯瞰的に把握するには、コンピュータの力を借りるしかありません。

今回紹介する特許は、このような課題を背景に、競技フィールド上の選手やボールを全てタグ付けし、その三次元的位置関係、また、相互の位置関係を全てリアルタイムで把握し、記録し、分析するためのシステムです。 このようなシステムを用いることで、試合の楽しみを著しく向上させることができると期待されます。

ほとんどのスポーツ活動において、個々の選手やチームがどのようにパフォーマンスを発揮しているかを詳細に検討及び分析することは、スポーツのパフォーマンスを改善するために極めて重要なことです。したがって、競技フィールド(例えばバスケットボールコートやホッケーリンクなど)で起こる様々な事象を識別及び分析する能力を高めるツールは皆が望むものといえます。

さらにいえば、試合で多くの選手やボールが全て同時に動いていることを考えれば、起きている全てのことを全て同時に明確に見ることは、相当な困難性があると容易に想像できます。

よって、スポーツの事象の動作をモニタリングして、かつ分析でき、ファンやコーチが見るためにその分析結果が表示されるとすれば、試合の楽しみを著しく高めることができるといえます。

発明の目的

本発明は、上述の課題を鑑みて、競技フィールド上での選手及び対象(ボールなど)の位置及び動き並びに試合に関係する特定の事象の発生を自動でモニタし、追跡し、記録するシステム及び装置を提供することを目的としています。

この目的を達成するために、本発明では、競技フィールド、例えばバスケットボールコート上の無線対応アンカー及びタグを含む位置及び事象追跡システムを用意します。タグは選手及びボール等に付加されます。これにより、タグのそれぞれの空間内での位置を判定及び評価していくのです。

そして例えば、選手とボールに関連するタグ同士の近さを評価して、選手がボールを保持しているかどうかを判断します。また、ボールがバスケットゴールゾーンの領域内にあり、かつ、アテンプトゾーン(バスケットゴールゾーン領域内の、さらに限定された領域。あとで詳述します)内にあった場合、システムはボールがどのような順番で空間内を通過していたかを評価することにより、ゴールが決まったかどうかを判定するのです。

また同時に、多くの場合、ゴールを決めたのがどの選手であるかという情報も重要な情報ですから、その判定として、ボールを保持していた最後の選手がゴールを決めた選手であるとして示されるようになっています。

このような判定を行うため、本発明では、競技フィールド上の選手及びボール等を追跡し、かつ、ゴールが決まったかどうかを判定するためのシステムを提供します。このシステムは、複数の選手タグ及び対象タグ(ボールのタグ)、これらのタグを遠隔的に検出することができる複数のセンサとを含みます。検出された情報はコンピュータ上で処理されます。

発明の背景
では、図・画像を参照しながら、本発明の詳細を説明していきます。

【図1】バスケットボールコートにおける位置及び事象追跡実装の概略

この図面は、一般的なバスケットボールコートにおける位置及び事象追跡実装を示す概略的な平面図です。この図に示されるように、いくつかの超広帯域(UWB)無線対応アンカが競技領域の周りに位置します(マスタアンカAM及びスレーブアンカAS1〜ASn)。これらのアンカはコートに支持されるパイロンやスタンドに搭載されることによって、選手と同じ高さに設置してもよいし、以下の図2のようにスポーツ施設の垂木に設置することも可能です。

【図2】バスケットボールコートにおける位置及び事象追跡実装の概略の側面図

ここに加えて、選手P1〜Pnのそれぞれは、UWB無線対応タグT1〜Tnをそれぞれ着用し、ボールのそれぞれは、その内部又は表面に位置する同様のUWB無線対応タグB1〜Bnを有します。アンカは、様々なタグと、互いにスヌーピングと呼ばれる特定の双方向測距法を使用して通信し、接続されたコンピュータ等で実行される位置及び事象追跡アプリケーションを使用して、3次元空間内でのタグのそれぞれの位置を識別することができるのです。 コンピュータ上では、競技フィールド上の全ての物体・事象の位置関係を座標系内に「配置」します。フィールドの角の位置を始め、バスケットゴールではゴールリングやネットを含めて細かい範囲でゾーンを分けて把握します。例としては、図3のように、ゴールゾーンに加えて、アテンプトゾーン308、「得点」入口ゾーン310、「得点」ゾーン312及び「得点」出口ゾーン314もそれぞれ規定されます。

【図3】バスケットボールリングの周りの様々なゾーンを示す側面図

これらの位置計測はゲーム中も常に行われ、アプリケーションは少なくとも100Hzのサンプリングレートを使用してコート上の選手及びボールの位置を追跡します。また、本システムは、選手及びボールの位置関係を把握するのはもちろんのこととして、選手がボールを持っているかを判断することが必要です。つまり、単にボールが選手の近くにあるだけなのか、選手がボールを保持しているのかを適切に判別しないといけません。 この評価のために、システムは、図9A及び図9Bに示す、選手の周りより小さい保持ゾーンZp、Rpの半径及び高さの寸法を使用します。ボールがこの保持ゾーンの中に、どの程度長く選手の近くにあるかを、カウントしていきます。所定の時間超過が起きると、推定上、ボールを保持している選手であると指定されます。

【図9A】選手の周りのボール保持ゾーン及びボール保有ゾーンを示す側面図

【図9B】選手の周りのボール保持ゾーン及びボール保有ゾーンを示す平面図

それぞれのタグが双方向通信でやりとりするデータには、バイオメトリク情報、タグステータス情報、タグ電池の状態なども含まれます。 ボールを保持していると指定された選手からボールがゴールリングの上の「得点」入口ゾーンへボールが運ばれたとき、ボールが「シュート」されたと判断されます。そして、ボールが所定の経路をたどって「得点」出口ゾーンから出てきたことをもって、得点が入ったことが判断されます。 本発明は、ゲーム中にリアルタイムでコート上の選手及びボールの位置を追跡し、実時間表示し長期分析するために各選手のシュートの試み、行われたシュート、ボールの保持時間、及び他の運動情報も全て追跡し記録するシステムです。これらのデータを全てクラウドに保存することにより、ゲーム中のみならず、後日の長期分析のために役に立つデータを提供できるという効果を奏します。 ここまで説明してきた通り、本発明ではスポーツ試合中の選手及びボール等の動きを追跡し、記録分析するためのシステムが開示されています。このようなシステムを用いることで、コーチ等はより戦略を立てやすくなりますし、ファンの目線としてはコート全域に注意を向けていなくても、あとから視点を変えて試合を楽しみ直すことができるという点で、従来よりもさらに深くスポーツを楽しむことができそうです。

発明の名称

スポーツの試合のための位置及び事象追跡システム

出願番号

PCT/US2016/061162

公開番号

WO2017/083407

特許番号

特許第6813762号

出願日

平成27年11月10日(2015.11.10)

公開日

平成29年5月18日(2017.5.18)

登録日

令和2年12月22日(2020.12.22)

審査請求日

令和1年10月1日(2019.10.1)

出願人

ディーディースポーツ、インコーポレイテッド

発明者

イアニ、ブルース、シー 他
国際特許分類

A63B 71/06 (2006.01)
A63B 43/00 (2006.01)
G01S 5/14 (2006.01)
G01S 13/76 (2006.01)
G06Q 50/10 (2012.01)

経過情報

・米国で国際特許出願がされ、日本国内に国内移行された後、一度拒絶理由通知を受けたが、補正書と意見書の提出を経て特許査定となった。


アスリートはプロ・アマを問わず、自分のパフォーマンスを向上させることを望んでいます。身体能力の向上はもちろんのこと、視覚、反応時間、その他の能力に向けられた演習を行うことによって、大幅な上達を得ることも可能です。このうち、視覚に関しては、従来、視覚向上エクササイズなどが知られていて、これらはアスリートが様々なパターンを容易に記憶できるような、静的なスポーツ用デバイスを利用することが多いものでした。

しかし、これらのデバイスはそれぞれを適切に用いなければならないところ、誤って利用されることも多かったという問題も持っていました。

今回紹介する発明は、動的な発光(しるし、インディシア)が可能なスポーツ用デバイスです。例えばアメフト用のボールや、ホッケー、野球、サッカーといったスポーツで従来から用いられている用具に対して設けられます。例えば、外面から視覚的に認知できる出力で、特殊な光り方ができる発光デバイスをボールに組み込むことで、ボールの回転に応じて発光パターンを変化させるなどが可能です。

このようなデバイスを用いて練習を行うことで、アスリートの視覚を強化することができるそうです。具体的にどのようなデバイスなのか、詳説していきます。

本発明は、アメリカンフットボールのボールなどに適用されるスポーツ用デバイス(装置)に関します。

アマチュアまたはプロのどちらであっても、アスリートは、自分が取り組んでいるスポーツまたは競技活動におけるパフォーマンスを向上させたいと考えています。

アスリートは、身体能力を向上させることだけでなく、動的視力などの視覚能力を練習によって大幅に上達させることも目指しています。アスリートは、多くの場合、視覚能力向上のために「静的な」スポーツ用デバイスを利用します。「静的な」スポーツ用デバイスは、あらかじめ決めておいたさまざまな表示パターンを簡単に表示できるデバイスです。「静的な」スポーツ用デバイスの具体例としては、ボールの回転が速いか遅いかがわかるように、表面の一部をあらかじめ各種のパターン(模様、色など)で表示するように構成されたボールなどが相当します。しかし、「静的な」スポーツ用デバイスを利用して、さまざまなパターンで練習したとしても、自己流で利用される等の理由により、あまり希望通りの結果を得られません。

一般的に、用具やデバイスの使用法が不適切であれば、競技パフォーマンスが低下します。同様に、練習法が不適切であれば、適切なトレーニングが妨げられて、アスリートのパフォーマンスがその時点での最大能力レベルに達しないという、残念な結果になってしまいます。

発明の目的

上記のような問題点から、改善されたスポーツ用デバイス、および、スポーツ用デバイスの改善された利用方法が要望されています。本発明は、このような問題点を解決できる新規なスポーツ用デバイスおよびスポーツ用デバイスの利用方法に関します。

発明の詳細

本発明のスポーツ用デバイスおよびの具体例について、以下に説明します。

本発明のスポーツ用デバイスとしては、フットボール、ホッケー、野球、サッカーといったスポーツ(競技活動)のために設計された(従来から利用されている)用具が例示されます。たとえば、スポーツ用デバイスは、フットボール、サッカーボール、バットなどです。

スポーツ用デバイスの表面には、表示パターンを変化させるための視覚情報(以下、「動的視覚情報」ともいいます)が、適切なタイミングで表示されます。具体的には、発光/光反射デバイスによって、視覚的に認知できる出力が表示されます。発光/光反射デバイスは、たとえばエレクトロクロムを含みます。エレクトロクロムは、電圧をかけると色が変化する材料です(後に詳しく説明します)。スポーツ用デバイスは、メモリを有し、メモリがコンピュータに、実行可能な命令を与えます。命令が実行されると、発光/光反射デバイスの出力が変化します。

一例において、スポーツ用デバイスは、パワースカベンジングデバイスを備えます。パワースカベンジングデバイスは、そのスポーツ用デバイスを利用しているアスリートから電力を受け取ることができます。たとえば、パワースカベンジングデバイスは、パスされて回転するアメリカンフットボールの螺旋状の動き、または、蹴られたサッカーボールの回転から発生する電力を受け取ることができます。

さらに、本発明は、スポーツ用デバイスの発光/光反射デバイスの出力を変化させるシステムおよび方法に関します。このシステムおよび方法によって、たとえば、アスリート(ユーザ)のトレーニングにおいて、「動的視覚情報」を選択(入力)できます。具体的には、スポーツ用デバイス上にある入力手段を操作することによって、ユーザ入力を受信します。たとえば、アメリカンフットボールのレース部分(ボールの縫い目部分)が、ユーザ入力の受信に利用されます。さらなる例では、たとえば無線電話、メディアプレイヤ、タブレット、ネットブック、またはノートブックコンピュータといった携帯通信デバイスなどの外部の電子デバイスから、ユーザ入力を受信できます。

本発明の他の例では、スポーツ用デバイスの内部や外部にあるセンサを利用します。センサによって、競技中における、スポーツ用デバイスの動きパラメータ(加速度など)を検出します。検出されたパラメータ情報に反応して、そのパラメータ情報を表す「動的視覚情報」が、スポーツ用デバイスに表示されます。たとえば、ボールの加速度がしきい値を超えたときに、ボールの一部の色が変化するといったしくみです。このようなしくみは、複数のスポーツ用デバイスからのデータを利用して実施できます。

別の例において、パフォーマンスしきい値に達していなければ、発光/光反射表示を変化させないようなしくみを採用できます。たとえば、2人以上のアスリートがパフォーマンスしきい値を超えない限り、特定の「動的視覚情報」が示されません。より具体的には、特定の「動的視覚情報」を表示させるためには、ボールを投げる方のアスリートは、特定の特性(投球速度、ボールの回転など)となるように、スポーツ用デバイスを投げる(パスやピッチング)必要があります。一方、ボールを受ける方のアスリートは、所望の特性(たとえば、キャッチ、ストライクゾーン)に従うように反応する(たとえば、キャッチする、バットで打つ)必要があります。

本発明において、「動的視覚情報」は、フットボール300などのスポーツ用デバイス100上に示されます(後の図1および図3~図5をご参照)。しかしながら、「動的視覚情報」は、例示したフットボール300での利用に限定されません。フィットネス、競技、またはスポーツの際に、さまざまな装置、ツール、用具に適用されます。

スポーツ用デバイスは、特定の団体スポーツまたは競技活動のために設計された、従来から利用されているスポーツ用具などです。スポーツ用デバイスを例示しますと、ゴルフボール、バスケットボール、野球ボール、サッカーボール、フットボール、パワーボール、ホッケーのパック、砲丸、バット、クラブ、スティック、パドル、マットなどですが、これらに限定されません。したがって、本発明の範囲は、競技活動中にアスリートによって直接的または間接的に操作される、さまざまなアイテムです。スポーツ用デバイスは、たとえばグローブやシューズのように、ユーザに着用されて使用される場合もあります。

スポーツ用デバイス以外にも、本発明には、「動的視覚情報」を備えたスポーツ用構造も包含されています。スポーツ用構造としては、たとえば、ゴール、ネット、バスケットリング、バックボード、フィールドの一部といった、スポーツ環境内の物体が挙げられます。また、たとえば、ミッドライン、外側境界線マーカー、ベースといった、特定のスポーツのために利用される、スポーツ環境内の物体が挙げられます。なお、スポーツ用デバイスがスポーツ用構造の一部である場合があり、その逆の場合もあります。スポーツ用構造は、スポーツ用デバイスと相互反応するように構成される場合もあります。以下、スポーツ用構造の説明は、スポーツ用デバイスの説明に包含させて行います。

図3~図5に示す例示的なスポーツ用デバイス(フットボール300)を参照しつつ説明します。

図3Aは、アメリカンフットボールで使用するために構成された、視覚トレーニングシステムの一例の正面等角投影図です。図3Bは、図3Aのフットボールの側面図です。

【図3】

図4は、図3Aのフットボールの一方の端部(尖った部分)で表示される視覚表示パターン例です。図5は、図3Aのフットボールの他方の端部で表示される視覚表示パターン例です。

フットボール300は、たとえば、302、304、306で表されている第1のパターン(以下、パターンAといいます)を表示しています。パターンAは、フットボール300の外面(面308など)に表示される場合、または、透明である場合があります。

【図4】

【図5】

別の例では、「動的視覚情報」から作成されるパターンAは、たとえば図3Bおよび図5に示されるように、フットボール300のそれぞれの端部316、318に配置された、さまざまな色の円および同心円状の環310、312、314です(図4および図5をご参照)。

一方、第2のパターン(以下、パターンBといいます)は、パターンAと異なり、円310、312、314を有しません。パターンBは、たとえば、円310、312、314に代わるさまざまなサイズや色の円です。極端な例では、パターンBは、円や環をまったく有しません。

図3~図5に例示したスポーツ用デバイスには、アメリカンフットボールのボール300において利用されるパターンAが示されています。パターンは、たとえば図3Aに示されているように、フットボール300のそれぞれの端部316、318に配置された異なる色の円や同心円状の環310、312、314です。

「動的視覚情報」として、たとえば外側の環314を利用します。しかも、隣接する中心の円310および内側の環312とは異なる色を外側の環314に表示させます。たとえば、ボール300の一方の端部316には、中心の円310(赤)、内側の環312(青)、および外側の環314(黄)があります(図5)。一方、ボール300の反対の端部318には、中心の円310(青)、内側の環312(赤)、および外側の環314(黄)があります(図4)。外側の環の色(黄)は、どちらの端部でも共通しています。ボールを投げる方のアスリートは、ボールを受ける方のアスリートに、316、318のどちらか一方の端部を向けて、ボール300を投げます。ボールを投げる方のアスリートは、ボール300が空中にある間、自分に向く中心の円310の色(赤または青)を判別して叫びます。これがアスリートの視覚トレーニングになります。

さらに、他の例では、さまざまな幾何学模様のパターンが、「動的視覚情報」として示されます。別の例では、パターンAは、パターンBによって示される形状や色を有しません。「動的視覚情報」は、多数のパターンを形成するために利用されます。この点について説明しますと、あらかじめ設定されたパターンのなかから、特定のパターンがユーザによって選択されます。ある特定の例では、ユーザは、新規なパターンを作り出せるだけでなく、既存のパターンを変更することもできます。表示デバイスは、パターンを試験的に表示するためにも利用されます。既存パターンを変更した後のパターンの確認をユーザにさせることもできます。さらなる例において、パターンは、無線接続や有線接続によって、ダウンロードされ、さらにスポーツ用デバイス100(ボール300など)に送信されます。さらに、たとえばパターンを自動で変化させる場合もあります。具体的には、フットボール300をスローイングするときの一方の端部(尖った部分)、または、キャッチングするときの他方の端部(もう一方の尖った部分)でのパフォーマンス(アスリートの実際の手の動き)に合わせて、センサの検出値に従って、パターンを自動で変化させる場合もあります。

図1は、外部の電子デバイスと通信する例示的なスポーツ用デバイス100を示します。

【図1】

スポーツ用デバイス100は、「部分101」を備えています。たとえば、スポーツ用デバイス100がスポーツ用ボール(たとえば、フットボール、サッカーボール、バスケットボール、等)である場合、「部分101」は、それぞれのボールの外面にあります。なお、必ずしもスポーツ用デバイス100の最も外側に「部分101」がある必要はありません。

スポーツ用デバイス100は、コンピュータ可読媒体をさらに備え、コンピュータ可読媒体は、読み出し専用メモリ(ROM)またはランダムアクセスメモリ(RAM)などのメモリ102を有します。メモリ102に含まれるコンピュータ実行可能な命令は、プロセッサ103によって実行され、たとえば「動的視覚情報」を示すための方法をスポーツ用デバイス100で実施させます。

プロセッサ103は、たとえばマイクロプロセッサです。スポーツ用デバイス100の内部または外部に配置されたプロセッサ103およびメモリ102は、必要に応じてトランシーバ104と通信できます。

電源107は、スポーツ用デバイス100上で「動的視覚情報」を示すべく、トランシーバ104、メモリ102、プロセッサ103、および、表示デバイスなどへ電力を提供するように構成されています。電源107は、たとえばスポーツ用デバイス100の動きから電気エネルギーを生じさせるために、パワースカベンジングデバイスを備える場合があります。たとえば、アメリカンフットボールの「螺旋状の」回転、または、野球ボールのスピン回転が、電気エネルギー生成のために利用されます。同様に、バット、クラブ、スティックなどのスイング動作、または、それらとボールとの接触時の衝撃、アイスホッケーのパックの回転も電気エネルギー獲得のために利用されます。さらに、電源107は、スポーツ環境内におけるたとえばソーラーパワーから、エネルギーを受けることができます。

スポーツ用デバイス100の外面101には、発光する材料があります。外面101の少なくとも一部は、たとえば透明または半透明です。これにより、スポーツ用デバイス100の内部から透過してきた光を、「部分101」の表面、または、スポーツ用デバイス100の表面で認識できます。「動的視覚情報」の出力は、たとえば出力デバイス108によって行われます。

出力デバイス108は、たとえば表示パネルです。表示パネルでは、たとえば、赤、緑、白、青のLED光源が、黒い背景上に配置されています。赤、緑、青のLEDの組み合わせによって、多種多様な色が生成されます。

別の例では、たとえば発光ダイオードが利用されます。なお、液晶ディスプレイ(LCD)、電界放出ディスプレイ(FED)、プラズマディスプレイといった他のデバイスが使用される場合もあります。

他の例では、出力デバイス108として、クロマティック材料を利用します。クロマティック材料は、電圧、熱、光などの刺激によって色が変化する材料です。クロマティック材料は、スクリーン印刷(孔のあいた版にインキをのせてインキを反対側へ押し出す手法)などの処理によって、スポーツ用デバイス100上に塗工(印刷)されます。これにより、さまざまなパターンが、スポーツ用デバイスの表面上に塗工されます。

エレクトロクロマティック材料(エレクトロクロム)は、たとえばポリマー材料(高分子材料)、金属酸化物のフィルムなどです。

電源107は、受信した熱制御信号に従ってサーモクロム(温度の変化によって物質の色が変化する現象)を制御するように構成されています。電源107は、プロセッサ103と共に作動して、出力デバイス108を構成するサーモクロムにさまざまな熱出力を与えます。たとえば、電源107は、調節可能な電子信号(たとえば、電力レベル)をエレクトロクロムに与えるように構成されています。さまざまな信号によって、スポーツ用デバイス100上にさまざまな「動的視覚情報」が示されます。

一例では、エレクトロクロムにごくわずかな電圧(0Vでもよい)で電子信号が与えられると、その結果、エレクトロクロムが第1状態から第2状態へ切り替えられます。いったん電力を与えた後に、別の電力レベルが材料に与えられるまで、第2状態のままです。第1状態から第2状態へ変わった後、特定のエレクトロクロムは、ごくわずかな電力しか消費せず(または電力を消費せず)第2状態のままであり続けます。具体例では、最初の電子信号を与えた結果、実質的に透明に見えるエレクトロクロムを生じます。したがって、実質的に透明なエレクトロクロムは、スポーツ用デバイス100上での特定の視覚情報とはなりません。電子信号の変化によって、エレクトロクロムを透明から不透明へ、または、逆に不透明から透明へと変えることができます。

エレクトロクロムは、視覚的に異なるさまざまな状態に変化します。たとえば、電子信号が0の場合、または、電子信号のしきい値レベルを下回っている場合には、エレクトロクロムは第1状態(実質的に透明)です。さらに、エレクトロクロムは、電子信号が与えられると、視覚的に第1状態とは異なる第2状態へ変化します。たとえば、エレクトロクロムは、透明から特定の色へと変化します。またさらなる例では、第2状態から第3状態へと変化します。たとえば、第3状態では、エレクトロクロムの色は、第2状態とは異なる色です。

「動的視覚情報」を示す方法の具体例を、図2によって以下に説明します。

図2は、スポーツ用デバイスにおける視覚特性を変化させるべく「動的視覚情報」を利用する方法のフローチャート例です。たとえば、アスリートへの視覚的な合図のために、スポーツ用デバイス100を視覚的に調節する方法を利用します。

【図2】

まず、スポーツ用デバイス100の材料(色の変更が可能な発光性や光反射型の材料)を視覚的に変化させるように構成されたユーザ入力を受信します(たとえば、ブロック202をご参照)。アスリートやコーチから受信されたユーザ入力は、上記材料を視覚的に変化させます。例示的な視覚パターンを図3~図5のフットボール300で表しましたが、これらに限定されません。各種の視覚パターンは、たとえば、パフォーマンスの精度を向上させるための日々の練習においても利用されます。

これに対して、ブロック202で別の選択を行うことによって、スポーツ用デバイス100の表面に、別の視覚情報が、パターンBとして示されます。パターンBは、サイズ、形状、色、位置、向き、部位、明るさなどの点で、パターンAとは異なります。なお、視覚情報の表示パネルは、いったん色が変化しても元に戻れるように構成されています。

本発明では、たとえば、スポーツ用デバイス100の物理的構造を操作することで、ユーザ入力を実行します。例示的な物理的構造は、たとえば、アメリカンフットボールのレース(ボールの縫い目部分)です。たとえば、ユーザ入力を選択するために、レースがアスリートまたは他の個人によって操作されます。

次に、図2に示すブロック204によって、スポーツ用デバイス100の材料(発光性や光反射型の材料)、または、出力デバイス108(図1参照)を、視覚的に変化させることができます。ブロック202でユーザ入力が受け取られた結果、色、明るさ、タイミング、サイズ、部位などが変化して視覚的な変化が起こり、たとえばパターンAから別のパターンへ変化します。

続いて、決定206において、出力デバイス108の出力を調節するかどうかが決定されます。たとえば、動きのしきい値に達した(実際に動き出した)ことをスポーツ用デバイス100が検出したときにのみ、決定206が実施され、視覚的に変化します。具体的には、ボールが投げられるまで、または、サッカーボールが蹴られるまで、最初の「動的視覚情報」は示されません。これは、ボールが動く前に受け手がパターンを知ってしまうという不具合を防止するためです。

ここで、図5を示しつつ、フットボール300を使用する場合について説明します。

【図5】

たとえば、中心の円310および環312、314のサイズを、視覚トレーニングのために最適化できます。パターンAでは、パターンBよりも、大きな円310や環312、314を表示することができます。さらなる例では、一対の小さな明るい色の円320が、各端部316、318の中心円を挟み込むように、互いに向かい合わせに配置することができます。

フットボール300の端部316(図5に示すボールの一方の尖った部分)では、以前の練習中よりも小さなサイズで、中心の円310および環312、314が表示されます。したがって、視覚パターンAの使用によってアスリートの視覚トレーニングが進歩するにつれて、より難しい視覚パターンBを利用して、さらにアスリートの能力を向上させることができます。他のスポーツでも、たとえば野球用デバイスであれば、「ストライクゾーン」などの視覚パターンが上記の視覚パターンに相当し、アスリートに不足している能力を進歩させることができます。

加えて、番号324や文字326が、フットボール300のようなスポーツ用デバイスに提供されます。これらの番号324および文字326によって、フットボールが空中を飛んでいる間に、番号/文字を判別する視覚トレーニングが可能となります。

スポーツ用デバイス100は、センサ109(図1参照)を備えることができます。たとえば、スポーツ用デバイス100は、力や力の方向を測定するように構成されたセンサを備えます。一例として、センサ109は、バスケットボール内部にセンサを備え、さらに別のセンサが、バスケットボールのコートのバックボード上に配置されます。センサ109は、加速度を検出するように構成された取り外し可能な加速度計モジュールを備えます。加速度計モジュールは、異なるセンサ(圧力センサなど)と取り替え可能です。取り替え可能なセンサは、サッカーボール、パワーボール、フットボールなどのスポーツ用デバイスで使用することも可能です。また、センサ109は、その重量によってスポーツ用デバイス100のバランスや重心が変わらないように配置されます。なお、センサ109は、加速度計や力センサに限定されず、さまざまなタイプ(ジャイロスコープ、カメラ、温度計)などが採用されます。

センサ109が、しきい値を上回るパラメータを検出したら、ブロック207が実施され、視覚的な表示が調節されます。たとえば、通常の高さよりもサッカーボールが高く蹴られたことをセンサ109が検出したときに、パターンBがスポーツ用デバイス100上に表示されます。パターンBは、たとえばパターンAよりも大きなサイズであったり、パターンAとは色合いや明るさが異なったりします。これによって、受け手がより良好に認知できます。

好ましくは、アスリートが日々の練習によって上達していくときに、その練習に関連づけられて表示された視覚パターンを(上達に伴って)変化させます(たとえば、ブロック211を参照)。具体的には、センサ109は、アスリートが適切な「キャッチゾーン」内でスポーツ用デバイスを受け取ったことを検出します。別の例では、センサ109は、たとえば、スティックでホッケーのパックを止めたことの情報、バットで野球ボールを打ったことの情報、バスケットボールを投げたことの情報を収集します。このように、アスリートのパフォーマンスの特性やスポーツ用デバイス100の動きの特性を反映した電子信号を送信するように、ブロック211の一部が実施されます。ブロック211は、表示パターンを調節することによって、練習の難易度を調節します。

したがって、スポーツ用デバイス100を使用し続けると、アスリートのパフォーマンスの特性またはスポーツ用デバイス100自体の動きの特性に起因して(上達に伴って)、さまざまなパターンへと変化させることができます。なお、ブロック207、209、211が実施されない場合もあります。

上述したスポーツ用デバイスは、アスリートが、能力向上に役立てるために利用できます。また、多種多様な空中のボール、ボールのルート、ボールのパスと、自分の視覚とを連係させる練習に利用できます。

上記の通り、本発明は、たとえば、ユーザの意向に応じて、ユーザが示したい情報に関わる表示パターンを、ボールの表面で表示できるスポーツ用デバイス、および、その利用方法を提供します。

本出願で特許となった本発明のポイントを解説しますと、本発明は、ユーザ入力に応じて表示パターンをさまざまに変えることができる点に特徴があります。

本発明を要約しますと、本発明のスポーツ用デバイスは、視覚的に認知できる出力を表面に表示させるためのエレクトロクロム(色の変更が可能な発光性や光反射型の材料)を含む表示デバイス(色が変化する塗工部分など)を備えます。また、プロセッサ(CPU等)および非一時的なコンピュータ可読媒体(ROMなど)をさらに備えます。

そして、本発明のスポーツ用デバイスは、コンピュータによって実行可能な命令を、プロセッサによってコンピュータ可読媒体から読み取って、以下のプロセスを実行するように構成されています。

選択A、選択B、選択Cといった複数の選択のそれぞれの電子信号を、ユーザ入力によって受け取るプロセスを実行します。

また、選択Aを受け取ると、視覚パターンAを表示させるために、表示デバイスの表示パターンを変化させるプロセスを実行します。詳しくは、エレクトロクロムを実質的に透明な状態から色のある状態に切り替え、新たに命令がない限り、その色のある状態を維持します。

本特許は、あの有名なアメリカの会社「ナイキ」社から出願されたものです。ご存じのようにスポーツに関わる製品を販売してきた会社です。ナイキブランドの製品は、シューズなどが有名ですが、本発明は、将来的に力を入れていきたい分野に応用したいアイデアであると考えられます。

本特許の発明は、アスリートのパフォーマンスをさらに向上させるために考え出されたアイデアであると思われます。スポーツファッション分野だけでなく、アスリート能力を向上させるスポーツ工学的な分野にも積極的に進出して、今までにないユニークな製品を販売しようという意図があるようです。

発明の名称

動的な視覚インディシアを有するスポーツ用デバイスおよび構造

出願番号

特願2014-543537

公開番号

特表2015-501699

特許番号

特許第6325983号

出願日

平成24年11月20日 (2012.11.20)

公開日

平成27年1月19日 (2015.1.19)

登録日

平成30年4月20日 (2018.4.20)

審査請求日

平成27年10月9日 (2015.10.9)

出願人

ナイキ イノベイト セー. フェー.

発明者

ホムシ クリストファー、マルホトラ ヴィクラム
国際特許分類

A63B 71/06
A63B 69/00

経過情報

・本願は、国際特許出願(PCT出願)された後に、日本国へ移行されたものです。
・日本国の審査では、2回の拒絶理由通知を経て特許となりました。

CONCLUSION

スポーツの世界では、人と人が汗をかいて、正々堂々とぶつかり合う。

そんなイメージが強くテクノロジーの関与については賛否両論あり、「人間の不確実性や失敗も、それも込で楽しむのがスポーツだ!」そんな風に思っている方もいるかと思います。

一方で、メジャーリーグではAI審判導入が始まるのではと言われており、大きな方向性としては今後テクノロジーの関与が進んでいきそうですね。

今までプレーヤー側としては、トレーニングや戦略・分析など様々なところですでにテクノロジーは導入されていましたが、今後は見る側にとって分かりやすいテクノロジーが増えてくると想像できます。

個人的にはより選手のパフォーマンスを向上させたり、ファンがよりエキサイティングするような、新しいスタイルでの観戦方法など、スポーツやエンターテインメントの分野は、非常にテクノロジーとの相性がいいと思ってます。

1種目のために発明された技術でも、他の種目に応用しやすいと思いますので、そういった観点でチャンスを探ってみても面白いと思いますし、今まであまり人気がなかったスポーツが、テクノロジーによってメジャーになる。 そんな可能性も秘める要チェックな分野だと思います。