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アニメの世界到来!?
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目次

カラバリいらず!色が変わる靴

おしゃれスニーカー特許弁理士

ナイキの変色シューズ

映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で登場した自動ひも調整シューズを、ナイキが実現したという話は有名ですよね。
実はそのナイキ、またしても未来型シューズの発明を進めています。今回のシューズのカギを握るのは、電気信号によって色が変わる素材(有機ELなどにも使われる素材です)。その素材を備えることで、スマホなどの端末から操作して、自由にカラーを変えられるというのです。ということは、服に合わせてカラーコーデを楽しんだりするほか、色だけではなく、好みの模様や文字を浮かび上がらせてみたりと可能性は無限大。さぁ、アナタならカラーが変幻自在のカメレオン・シューズをどんな風に使いますか?

■発明のポイント

本発明は、変色部を有する履物を作動させる方法です。履物の具体的な例は、スポーツシューズです。

本発明の方法では、エレクトロクロモグラフィック材料を含む変色部を備えた履物で様々な測定をしつつ、測定値に応じて変色部の色を変化させます。エレクトロクロモグラフィック材料とは、電気によって色が変わる材料全般です。例えば有機ELなども知られています。
さらに詳しく説明しますと、本発明の方法では、履物に性能パラメータを測定させます。性能パラメータとは、例えばランナーがかかとで踏む回数などです。その回数を1カウントずつ測定していきます。そして、そのカウント数が特定の範囲に入ったときに、変色部の色を特定の色に色付けします。さらに、カウント数が別の範囲に入ったときに、変色部の色を別の色に色付けします。 色付け命令は、現時点での性能パラメータの値(カウント数)をダウンロードしたソフトウェアが、変色部に信号を送信することで実行されます。ソフトウェアは、履物と通信するコンピュータに実装されています。なお、色付けのきっかけとなったカウント数は、そのソフトウェアによってリセットされます。

上記の方法によって、具体的には以下のようなことが可能です。例えば、図1に示すようなスポーツシューズを履いたランナーが、上記の方法を使用した とします。

【図1】

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シューズは、ランナーが走るときのかかと踏み回数をカウントします。走り始めてカウント数が増えていき、例えばカウント数が2,000となると、図3のごとく1マイルの距離に相当します。このとき、変色部208を黄色224などに色付けするように、ソフトウェアが変色部208に命じます。ソフトウェアは、例えばランナーが持っているスマートフォンに実装されています。そして、ランナーが走り続け、例えばカウント数が10,000となると、図4のごとく5マイルの距離に相当します。このとき、変色部208をオレンジ色226などに色付けするようにソフトウェアが命じます。

【図3】

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【図4】

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シューズの色を確認すれば、走った距離を確認できるので、知らない場所をランニングしたとしても、走行距離を簡単に知ることができて便利です。 走り終えたら、スマートフォンに実装されたソフトウェアから指示することによって、カウント数を初期の状態にリセットできます。

本発明の方法では、上述したような特徴だけでなく、さらなる工夫もできます。
変色部は、単に色付けされて目印になるだけでなく、色を使って模様、言葉、数字が表示されるように設計されていてもよいのです。これによって、より楽しくなり、より便利になります。
なお、性能パラメータとしてかかとの踏み回数のカウントを例に挙げましたが、このような例に限られません。例えばジャンプした回数をカウントしても構いません。

以上ご説明しましたように、シューズを履いた使用者のさまざまな動きを測定した測定結果を基にして、シューズの表面で、有用情報を色によって表現します。このような工夫が詰め込まれたシューズ(履物)の使用法は、注目できる発明です。


続いて、上記の特許出願から分割された子出願についてご説明します。

■発明のポイント【子出願】

本発明の方法は、理解しやすいように説明しますと、使用者の服の色に関連する情報を基にして、服の色に応じて履物の変色部に表示する色を決め、変色部に電気信号を送って、変色部に特定色を表示させる方法です。そして、色を表示させるための電源が外部電源か内部電源であるかに応じて、高出力モードにしたり、低出力モードにしたりする方法です。
具体的なイメージとしては、使用者が着ている服の色に応じて、カラーコーディネートするように履物の変色部に色を表示する方法です。

例えば、図19、図20をご覧頂けるとわかりやすいと思います。図19で示されるように、スマートフォンなどの携帯デバイス1900が、シャツ1940の電子識別デバイス1934から、シャツ1940の色や種類の情報を受け取ることができます。電子識別デバイス1934は、例えば無線周波数識別タグです。携帯デバイス1900は、シャツ1940の色などを特定したうえで、シャツ1940とカラーコーディネートするような履物の色を選択して、変色部にその色を表示させます。
なお、電子識別デバイス1934は、履物と有線または無線で接続されます。

【図19】

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また、図20で示されるように、携帯デバイスのカメラなどを使うこともできます。使用者は、鏡に映った自分のシャツ1942を写真で撮って、携帯デバイス1900が写真を分析します。携帯デバイス1900は、シャツ1942とカラーコーディネートするような色を選択して、変色部にその色を表示させます。

【図20】

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さらには、図21の概念図で示すように、電源が内部電源であるときには、低出力モードにして変色部の現在の色を表示し続け、一方、電源が外部電源であるときには、高出力モードにして変色部の色を変化させます。

【図21】

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以上ご説明しましたように、スマートフォンなどを使って、着ている服の色と調和する色をシューズに表示させる上記の方法も、アイデアが詰まった注目発明です。


続いて、上記の子出願から分割された孫出願についてご説明します。これから審査されるため、まだ特許となっていません。
分割出願であるため、上記の親特許や子出願と異なる内容で特許となると思われます。従いまして、今後特許となると予想される内容についてご説明します。

■発明のポイント【孫出願】

本発明は、変色部を有する履物を作動させる方法です。現段階では、大きく3つの内容で特許請求項の範囲が構成されています。
親出願および子出願がすでに特許となっているため、特許になった内容とは異なる内容で特許になると思われます。そのうちの1つの方法を具体的にご紹介いたします。

本発明の方法は、理解しやすいように説明しますと、履物(シューズ)を履いている使用者(スポーツ選手)の状況に合わせて、シューズの色を変える方法です。

具体的なイメージとしては、バスケットボールの試合がホームかアウェイで行われるかによって、シューズの色(デザイン)を変える方法です。

例えば、図10、図11をご覧頂けるとわかりやすいと思います。図10で示されるように、シューズは、ロゴの形態の変色部1002、アッパーの半分以上を占める変色部1006などを備えています。試合が本拠地で行われる場合、ソフトウェアインターフェイス750を利用して、試合が本拠地での試合であることを表す「ホーム」を選択します。すると、シューズの半分以上が白色となり(ホームチームは通常白色を着る)、ロゴの部分がチームカラーとなります。
反対に、試合が敵地で行われる場合、図11で示されるように、ソフトウェアインターフェイス750で「アウェイ」を選択します。すると、シューズの半分以上がチームカラーとなり、ロゴの部分が白色となります。

【図10】

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【図11】

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ホームとアウェイとで別々のシューズを使用しなくてもよいという点で、選手のパフォーマンス向上にも役立ちそうです。

■概要【親出願】

発明の名称︓変色部を有する履物および色を変化させる方法
出願番号︓特願2013-516653(P2013-516653)
特許番号︓特許第6300523号(P6300523)
出願⽇︓平成23年6月20日(2011.6.20)
登録⽇︓平成30年3月9日(2018.3.9)
出願⼈ ︓ナイキ イノヴェイト シーヴィー

■概要【子出願】

発明の名称︓変色部を有する履物および色を変化させる方法
出願番号︓特願2017-205080(P2017-205080)  分割出願
特許番号︓特許第6549201号(P6549201)
出願⽇︓平成29年10月24日(2017.10.24)
登録⽇︓令和1年7月5日(2019.7.5)
出願⼈ ︓ナイキ イノヴェイト シーヴィー

■概要【孫出願】

発明の名称: 変色部を有する履物および色を変化させる方法
出願番号: 特願2019-117478(P2019-117478) 分割出願
公開番号: 特開2019-188185(P2019-188185A)
出願日 : 令和1年6月25日(2019.6.25)
公開日 : 令和1年10月31日(2019.10.31)
出願人 : ナイキ イノヴェイト シーヴィー

<免責事由>
本解説は、主に発明の紹介を主たる目的とするもので、特許権の権利範囲(技術的範囲の解釈)に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解を示すものではありません。自社製品がこれらの技術的範囲に属するか否かについては、当社は一切の責任を負いません。技術的範囲の解釈に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解については、特許(知的財産)の専門家であるお近くの弁理士にご相談ください。

雲の上を走る!すべらない靴

ランニングシューズ特許弁理士

onのグリップ力向上シューズ

ナイキの「厚底シューズ」がさまざまな話題を生んだのはご存知の通り。
シューズの世界においては、日々、スポーツメーカー各社がしのぎをけずるテクノロジー合戦が行われているのですが、今回はその中でも特殊なソールで“雲の上”のような履き心地という「オン」のシューズのお話です。こちらのシューズ、ドーナツ型の穴の空いた小さな素材が、靴底にたくさん張り付いているようなソールが特徴。それにより、地面の形状に合わせて、ソールにあるいくつものパーツがバネのように独自に変形し、抜群のクッション性とグリップ力を実現可能に。足元のちょっとした感覚でプレーの質は変わるもの。今までプレー中のスリップで転倒したり、踏み外してミスをしたり、そんな残念なシーンが減るかも!?

■発明のポイント

本発明は、柔軟な靴のソール構造に関する発明であって、地面と靴底とが接するときにおいて、接地面積を大きくすることにより接地時間がながくなりスリップしにくくする発明と推測できます。

主に「軟弾性ミッドソール(20)」、「溝形エレメント(21)」、「縦スロット(22)」および「所定折畳切欠(25)」から構成されている。

【図1】

ランニングシューズ特許弁理士

以下、上図の各部分の名称と主な役割を解説する。

番号 名称 説明
10 アッパー 足を収めるアッパー。ソール以外の部分
20 ミッドソール アウトソール(靴底)とインソール(足裏)との間に入れる軟弾性のパーツ。本発明ではアウトソールをほとんど排除することで、ミッドソールの一部は地面に直接接触している
21 溝形エレメント ミッドソールの長手方向に対し横方向に伸びている。本発明では複数のエレメントが互いにほぼ同一の幅で分配されている
23 エッジストリップ 溝形エレメント21の外部補強を与えるパーツ
24 側面開口 歩行時に作用する力によって閉じる。これにより溝形エレメントの変形が実質的に停止し、次の一歩の蹴り出しのための頑丈な固定表面を形成する
25 所定折畳切欠 溝形エレメントの側面開口24の高さに対応する垂直幅を有し、それぞれ溝形エレメントの側面開口と整列している
26 窪み 所定折畳切欠25に対応する窪み。エレメント21の最後部に設けられている。
27 溝形エレメントの底

本発明のソール構造において、所定折畳切欠25は、溝形エレメント21の側面開口24の高さに対応する垂直幅を有し、それぞれ溝形エレメントの側面開口と整列していることを特徴とする。これによって、溝形エレメントは平底形状を維持した状態でせん断し、地面と靴底が水平滑動(スリップ)するのを防ぐことができる。

また、図1の靴を下から見た図を以下に示す。

【図2 図2の靴を下から示した図】

ランニングシューズ特許弁理士

21:溝形エレメント
22:縦スロット
30:カバー

複数の溝形エレメント21は互いにほぼ同一の幅で分配されている。また、ミッドソール20内のかかと部から指球部にわたって「縦スロット22」が伸びており、ミッドソールを内側部分と周辺部分とに分割している。これにより、地面の形状に応じてミッドソールの内側部分と周辺部分が互いに独立して最適に変形することができ、靴全体としての安定感を保つことができる。
また、溝形エレメントと縦スロットとの間において下方に開口する凹部は、それぞれ底に向かってわずかに広がっていることで、凹部に石が詰まるのを妨げ、ソール構造の自己清掃を促すことができる。

■権利範囲

特許出願のクレーム範囲(概略)は以下の通り。
【請求項1】
以下の構成および特徴を有する柔軟な靴のソール構造
・歩行時、地面に少なくとも部分的に接触する軟弾性ミッドソール(20)
・側面が開口した平底を備え、前記ミッドソールの長手方向に対して横方向に方向付けられており、地面に向かって下方に突出している溝形エレメント(21)
・各溝形エレメント(21)を繋ぎ、溝形エレメント内の溝の断面を狭め、側面開口(24)の高さを決定するエッジストリップ(23)
・溝形エレメント(21)の外側に面するフェース側に設けられており、側面開口(24)の高さに対応する垂直幅を有し整列している所定折畳切欠(25)
・歩行時、垂直及び/又は長手方向に作用する力に応じて、溝形エレメント(21)はその側面開口(24)が閉じるまで垂直及び/又は長手方向に変形され得る

上記のような構成を持つ靴のソール構造は、本発明の権利範囲に含まれる可能性があり、競合他社は注意する必要がある。

■概要

発明の名称:柔軟な靴のソール構造
出願番号:特願2018-512486
公表番号:特表2018-516727
出願日:2016年5月18日
公表日:2018年6月28日
出願人 :オン クローズ ゲーエムベーハー
経過情報:本特許は2016年5月18日に出願がなされ、国内では現在特許審査係属中である。尚、本特許は日本以外に米欧中韓などの先進主要国にも出願が行なわれている。

<免責事由>
本解説は、主に発明の紹介を主たる目的とするもので、特許権の権利範囲(技術的範囲の解釈)に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解を示すものではありません。自社製品がこれらの技術的範囲に属するか否かについては、当社は一切の責任を負いません。技術的範囲の解釈に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解については、特許(知的財産)の専門家であるお近くの弁理士にご相談ください。

新グローブで落球エラー知らず!?

おすすめグローブ特許弁理士

アシックスの吸い付くグローブ

大事な場面で飛んできたフライボールが、グラブからぽろり…。
そんな痛恨の落球エラーで、トラウマを抱えてしまったプレイヤーは、世の中にどれほどいるのでしょうか。しかし、もう大丈夫。落球エラーにおびえる時代は終わりを告げようとしています。今回ご紹介するのは、アシックスが手掛けている新型ウェブ(グラブの親指と人差し指の間の網状部分)とそのウェブを搭載したグラブ。ボールをキャッチしたときに、ウェブの一部が内側に向かって傾斜する、つまり、ボールを逃がさないための“かえし”のようになるグラブで、落球の可能性を軽減するという機能性を持っています。ボールがグラブに吸い付くような感覚を味わえるというこのグラブ、ぜひ試してみたいですよね。

■発明のポイント

本発明は野球用の捕球具(グラブ)のウェブ(グラブの親指と人差し指の間にある網状の部位)、及びそのウェブを備えたグラブに関するものです。

本発明のグラブは、主にグラブの親指袋5と人差し指袋6の間に設けられたウェブ10と、ウェブ10の上端に設けられた上側横バー1とで構成され、上側横バー1の上側がグラブの前面(球を受ける面)寄りに、上側横バーの下側がグラブの背面寄りに位置するようウェブ10に取り付けることで、上側横バーを前下がりに傾斜させる点がポイントになります。
通常のグラブで強い打球を捕球する場合、ボールを一度グラブ内に収めてもボールの勢いが衰えず、グラブから転がり出てしまうことがあります。他にも、上側横バーで直接打球を受けた場合、上側横バーがボールの勢いに負けてグラブ背面側に反ってしまうとボールを捕球することができません。

しかし、本発明のグラブなら、上側横バーが前下がりに傾斜しているため、一度グラブに収まったボールがグラブから転がり出てしまうことがなく、また、強い打球を上側横バーで受けても上側横バーが背面側に反ってしまうことがないため、通常のグラブよりも落球する可能性を減らすことができます。

【図1】

おすすめグローブ特許弁理士

以下に本発明の詳細を説明します。

本発明のグラブは、上側横バー1の両端部に一対の耳状部材2が飛び出すように設けられています。この耳状部材2が親指袋5の先端と人差し指袋6の先端にそれぞれ取り付けられることになります。
耳状部材2は上側横バー1の上側から突出する上側パーツ21と、上側横バー1の下側から突出する下側パーツ22とで構成され、上側パーツ21は親指袋5と人差し指袋6の前面側に、下側パーツ22は親指袋5と人差し指袋6の背面側に取り付けられます。これにより、上側横バー1を前下がりに傾斜させて取り付けることができます。図2(a)はグラブを背面から見た図で、図2(b)は図2(a)における耳上部財2を模式的に示した図、図2(c)は図2(b)を表面から見た図です。なお、図2(b)、(c)のハッチングで表現された部分は、上側横バー1がグラブに取り付けられた状態で親指袋5、または人差し指袋6によって隠れる部分を示しています。
また、図2(b)を見てわかるとおり、上側横バー1の下端の長さL2は、上側横バー1の上端の長さL1より長くなっています。これにより、上側横バー1の下端が背面側に膨らむように変位するため、より上側横バー1を傾斜させやすくなります。

【図2】

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グラブは更に、親指袋5の中央部と人差し指袋6の中央部をつなぐ下側横バー3と、上側横バー1と下側横バー3とを繋ぐ網状の紐でできた繋ぎ部材4とを有します。
従来のグラブは、繋ぎ部材を上側横バーの背面側に縫い付けて固定し、下側横バーと繋いでいました。そのため、上側横バーの下端が繋ぎ部材によって前面側に押し付けられ、上側横バーが傾斜できませんでした。

しかし、本発明のグラブは、繋ぎ部材4が上側横バー1の下端に空けられた貫通孔11を通ることで下側横バー3と繋ぐため、従来のグラブに比べて繋ぎ部材4が上側横バーを前面側に押し付ける力が弱くなり、上側横バー1が更に傾斜しやすくなります。

【図5(a)】

おすすめグローブ特許弁理士

また、本発明の上側横バー1は、図5(a)をみてもわかるとおり、革紐7によって親指袋5と人差し指袋6の先端部に取り付けられています。図5(a)と、図5(a)を前面から見た図5(b)を使って更に詳細を説明します。

革紐7は親指袋5先端の背面側から出て、上側横バー1の背面側から挿入されます。その後、上側横バー1の上部に巻きつけられます。革紐7の反対側も同じく、人差し指袋6先端の背面側から出て、上側横バー1の背面側から挿入されます。なお、革紐7の両端が上側横バー1の背面側から挿入できるよう、上側横バー1の中央部で革紐7の巻きつける方向を反転させています。
このような革紐7の通し方で上側横バー1を取り付けることで、上側横バー1の上端側には前面側に押し出されるような力が発生するため、より上側横バー1を傾斜させやすくなります。

【図5(b)】

おすすめグローブ特許弁理士

以上にご説明しましたとおり、本発明のグラブは強い打球であっても確実に捕球できるようにするためのアイデアで詰まっており、使った人にボールが吸い付くような感覚を与えてくれます。

■概要

発明の名称:捕球具用ウェブ及び捕球具
出願番号:特願2018-85270(P2018-85270)
公開番号:特開2019-187910(P2019-187610A)
出願日:平成30年4月26日(2018.4.26)
公開日:令和1年10月31日(2019.10.31)
出願人:株式会社アシックス
経過情報:現時点では審査請求はされておりません。

<免責事由>
本解説は、主に発明の紹介を主たる目的とするもので、特許権の権利範囲(技術的範囲の解釈)に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解を示すものではありません。自社製品がこれらの技術的範囲に属するか否かについては、当社は一切の責任を負いません。技術的範囲の解釈に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解については、特許(知的財産)の専門家であるお近くの弁理士にご相談ください。

憧れの神シュートが現実に!?

アディダススパイク特許弁理士

アディダス最強スピンシューズ

サッカー好きなら、誰もが一度は憧れるスタープレイヤーの神シュート。
その夢を叶えてくれる“魔法のスパイク”を、あのアディダスが開発しようとしているのをご存知でしょうか? どんなスパイクかといえば、なんとプレイヤーの動きを察知して、スパイク表面の構造が変形するというシロモノ。つまり、たとえば選手がシュートを打とうとすると、アッパー部分が波状やフィン状に変形してボールをとらえ、摩擦力によって力強いシュートを生みだしたり、また反対に、ドリブルしようとすると、表面が滑らかになってボール・コントロールがしやすくなったりするという恐るべき機能を搭載。このスパイクがあれば、キャプテン翼のドライブシュートも夢じゃないかもしれませんよ!?

■発明のポイント

サッカー、アメリカンフットボール、ラグビーなどの球技において、競技者の足は非常に様々な状況でボールと接触する。

例えばサッカーの場合、「ゴールを狙ってシュートする」、「他の競技者にパスする」、「ドリブルでボールをキープする」などの状況がある。
そうした状況すべてにおいて、競技者はシューズに対して様々な要求をする。例えばシュートするときには、高い摩擦および最大限のエネルギーがボールへ伝わることを望む。一方、ドリブルでボールをキープするときには、滑らかなボールタッチを望む。
従来の球技用シューズは、そうした様々な要求の間で折り合いをつけたものであり、試合状況の変化によってはシューズが最適に機能しないことがしばしばあった。例えば「ボールにスピンをかけたい」という要求に応えるために表面の構造に変形を加えたシューズは、滑らかなボールタッチには適さないものであった。

今回紹介する特許発明は、試合の状況に応じて最適な表面構造をとることができるシューズに関するものである。従来技術のシューズとは異なり、本発明のシューズは競技者の要求に折り合いをつけたものではない。
例えば、競技者がまさに難しいロングシュートを行っていることをシューズが検知した場合、シューズの表面を、滑らかな表面から、裂けたような波形のまたはフィン状の構造に変えることができる。反対に、競技者がドリブルを行っていることを検知した場合、シューズの表面を、滑らかな構造に変えることができる。

【図1 本発明のシューズの斜視図および特定の部分拡大図】

アディダススパイク特許弁理士

本発明は、様々な試合状況において最適な表面特性を有する球技用シューズに関する発明であって、主に「アッパー(101)」、「アクチュエータ(104)」、「センサ(105)」および「処理ユニット(106)」から構成されている。

以下、上図の各部分の名称と主な役割を解説する。

番号 名称 説明
100 シューズ 球技用のシューズ。サッカー、ラグビーなどの球技に使用することができる
101 アッパー 足を収めるソール以外の部分。革、合成皮革などから製造することができる
102 外面 アッパーの外面
103 ソール 靴底。本発明のセンサ、アクチュエータ、処理ユニットはソールに組み込まれる
104 アクチュエータ センサからの信号を検知し、シューズの表面特性(摩擦力など)を変化させる
105 センサ 競技者のシューズの動きを感知するセンサ
106 処理ユニット センサの信号を処理し、アクチュエータに指令を送るユニット
107 バッテリ 必要な電力をアクチュエータ、センサおよび処理ユニットに供給するバッテリ
200 機構 アッパー外面の表面特性を変える機構
201 フィン アクチュエータによって起こされたり降ろされたりすることで、シューズ外面の表面特性が変化する
202 摺動層 フィーチャと連動してフィンを起こしたり降ろしたりする
203 フィーチャ 摺動層と連動してフィンを起こしたり降ろしたりする

本発明のシューズは、アクチュエータ104、センサ105、および処理ユニット106が連動することで、競技者のシューズの動きに応じてアッパーの外面部分102の表面特性(表面構造、摩擦、表面積)を変えることを可能とする。

例えば、競技者がボールをコントロールしていることを検知した場合、アクチュエータが、アッパーの外面部分の表面構造を変え、ボールの最適なコントロールを可能とする。
表面構造を変える方法としては、例えば、①アクチュエータに複数のフィンが接続されていて、当該フィンが上げ下げされることによって表面構造を変える方法、または②アクチュエータが空気圧弁になっていて、ここに加圧空気が入ることでアッパーの下に配置されたパーツが膨張し、表面構造を変える方法などが挙げられる。

本発明において、競技者が難しいシュートを行っていることを検知した場合、アクチュエータがアッパーの外面の表面摩擦を高め、競技者がたくさんのスピンをかけてボールをシュートできることを可能とする。
加えて本発明では、複数の表面特性(表面構造、摩擦、表面積)を一度に変えることができるところが大きなメリットである。

アクチュエータは、形状記憶合金または電気モータにより選ばれる。

センサは、加速度計、ジャイロスコープまたは磁界センサより選ばれる。

処理ユニットは、
・センサからセンサデータの時系列値を読み出すステップ
・時系列値を前処理するステップ
・時系列値を複数のウィンドウにセグメント化するステップ
・複数のウィンドウのそれぞれにおいてセンサデータから複数の特徴を抽出するステップ
・複数のウィンドウにおいてセンサデータから抽出された複数の特徴に基づいて、複数のウィンドウに関連付けられる事象クラスを推定するステップが含まれる。

また、本発明におけるシューズの表面特性を変える部分は以下の通りである。

【図2 本発明の別の形態のアッパーの外面の一部の斜視図】

アディダススパイク特許弁理士

101:アッパー
102:外面
1101:シューズの表面特性を変える部分

シューズの表面特性を変える部分1101は、足の甲のつま先に近いシューズの外側面から、足弓に近い内側面へ延びている。この配置は、サッカー、アメリカンフットボールおよびラグビーなどの球技において最も重要であるインステップのフルキックおよびハーフキックするのに望ましい配置である。
従来の球技用シューズによれば、“ある特定の要求(例えばボールをスピンさせたい)”に応えるためにシューズの表面特性を変えることはできるが、“別の要求(例えばボールをコントロールしたい)”にも同時に応えたいとなると、シューズの構造が最適ではなくなるといった課題が生じていた。
一方本発明では、「様々な試合状況」において、最適な表面特性を有する球技用シューズを提供するという点で、従来技術より優れている。

■権利範囲

日本で登録された特許のクレーム範囲(概略)は以下の通り。
【請求項1】
 球技用シューズであって、
・外面を有するアッパー
・アッパーの前記外面の一部の少なくとも1つの表面特性を変えるように構成されたアクチュエータ
・シューズの動きに感応するように構成されたセンサ
・アクチュエータおよび前記センサに接続され、前記センサから読み出されたセンサデータを処理し、シューズの表面特性を変えるように構成された処理ユニット
を含む球技用シューズ。

上記のような構成を持つ球技用シューズは本発明の権利範囲に含まれる可能性があるため、競合他社は注意する必要がある。

■概要

発明の名称:球技用シューズ
出願番号:特願2016-77842
登録番号:特許第6364438
出願日:2016年4月8日
登録日:2018年7月6日
出願人 :アディダス アーゲー
経過情報:本特許は2018年7月6日に国内で特許登録され、現在も登録は維持されています。特許存続期間の満了日は2036年4月8日となっています。

<免責事由>
本解説は、主に発明の紹介を主たる目的とするもので、特許権の権利範囲(技術的範囲の解釈)に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解を示すものではありません。自社製品がこれらの技術的範囲に属するか否かについては、当社は一切の責任を負いません。技術的範囲の解釈に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解については、特許(知的財産)の専門家であるお近くの弁理士にご相談ください。

必殺スマッシュでも折れない!?

ミズノ特許弁理士

ミズノの技ありシャトル

「なるほど、そうきたか…!」と誰もがうなる“発想の転換”。
今回は、そんな思考の妙技を活かした発明をご紹介します。その発明とは、ずばり、スポーツメーカー・ミズノが発明したバドミントンのシャトル。シャトルには、天然羽根を使ったものと、人工羽根を使ったものがあるのですが、人工羽根のシャトルは、軸部分が硬すぎて、ラケットで打ち返すと折れやすいという問題がありました。では、どうしたら折れない軸が作れるのか…!と普通は考えるのですが、ミズノが着目したのは、軸を固定するベース部分。糸状部材を使った特殊な構造のベース部分で“遊び”をもたせながらも、きちんと固定することで、軸の硬さはそのままに羽根が折れにくいシャトルが誕生しました。

■従来の課題

従来、ガチョウやアヒルの天然羽根を使ったシャトルコックが知られています。

一方で、人工羽根を使ったシャトルコックも使われていますが、人工羽根の軸部分を天然羽根の軸部分の硬さに近づけて硬くすると、ラケットで打ち返されたときに軸部分に力が集中して加わり、軸部分が折れてしまいやすいという問題がありました。

■本発明の効果

本発明は、人工羽根の軸部材が折れにくく、かつ人工羽根の軸部材を確実にベース部に固定できるシャトルコックを提供する。

■全体構成

本発明のシャトルコックは、ラケットの網に直接あたる部分(ベース部1)と、ベース部1に固定された複数の人工羽根2と、複数の人工羽根2を上記のベース部1に固定するベース固定部3とを備えます。

さらに詳しく説明しますと、ベース部1には、人工羽根の軸部材22(軸の部分)が突き刺さって入り込むための複数の挿入穴が形成されています。
例えば図1に示すように、ベース部1は、細長い球を半分に割ったような形状をしています。先端の丸い部分(ラケットの網に当たる部分)がベース部1の下面11で、人工羽根2が並んでいる方の平らな面がベース部1の上面12です。

【図1】

ミズノ特許弁理士

■細部

人工羽根2は、軸部材22と、羽部材21とを有します。軸部材22の一部は、ベース部の上面12に刺さって下面11へ向けて挿入されています(図3および図4をご参照)。

【図3】

ミズノ特許弁理士

【図4】

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■本発明のポイント

本発明の最も特徴的なところは、人工羽根2の軸部材22を固定するベース固定部3です。ベース固定部3は、図5に示すように、軸部材22の周囲に巻き付けられた糸状部材31と、糸状部材31を丸ごと包み込んでいる接着部材32とを有します。ベース部1(半球状部分)の上面12の近くにおいて、ベース固定部3によって人工羽根の軸部材22が固定されています。よって、人工羽根2の軸部材22が折れにくく、軸部材22を確実にベース部1に固定できます。一方、従来のシャトルコックでは、羽根の軸を硬くするという工夫があったものの、単に硬くしても軸が折れてしまいやすかったという問題がありました。

【図5】

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■実施例

本発明のシャトルコックには、さらに工夫があります。図1に示すように、上述したベース固定部3と同様の構造を有する第1の軸固定部4及び第2の軸固定部5をさらに有します。第1の軸固定部4は、人工羽根2の羽部材21よりも少しベース部側で人工羽根の軸部材22を固定しています。第2の軸固定部5は、ベース固定部3と第1の軸固定部4との間で、人工羽根の軸部材22を固定しています。第1及び第2の軸固定部は、上述したベース固定部3と同様に、軸部材の周囲に巻き付けられた糸状部材と、糸状部材を丸ごと包み込んでいる接着部材とを有します。
天然羽根の軸よりも人工羽根の軸部材が硬さの点で劣るにも関わらず、上記のように第1及び第2の軸固定部で人工羽根の軸部材22をさらにしっかりと固定することによって、天然シャトルに近い飛翔特性を得ることができます。

さらなる工夫もあります。ベース固定部3の幅(厚さ)をW1とし、第1の軸固定部4の幅(厚さ)をW2とし、第2の軸固定部5の幅(厚さ)をW3としたときに、W1≧W3≧W2の関係を満たすと、次のような良い点があります。
もし、ベース固定部3の幅(W1)が狭いと、シャトルコックの飛翔時に周囲の空気が回り込んで、シャトルコックの飛翔特性が劣化します。これに対して、ベース固定部3の幅(W1)を第2の軸固定部5の幅(W3)よりも広くすることによって、このような周囲の空気の回り込みを抑制できるため、飛翔特性を良好にできます。

以上ご説明しましたように、細くて折れやすい人工羽根を使っていても、人工羽根の軸部材をうまく固定することによって、軸部材が折れにくく、また、飛翔特性も良好にすることができます。このような工夫が詰め込まれたシャトルコックは、注目できる発明です。

■権利範囲

本発明は、主にバドミントン用のシャトルコック(羽根球)です。国際出願(いわゆるPCT出願)されて、日本国での審査を待っている状態です。

■概要

発明の名称:シャトルコック
出願番号:特願2018-522452(P2018-522452)
出願日:2017年6月2日
公開日:2017年12月14日
出願人 :美津濃株式会社
経過情報:2017年6⽉2⽇に国際特許出願され、2020年1月29日に審査請求され、現時点では特許査定になっていません。

<免責事由>
本解説は、主に発明の紹介を主たる目的とするもので、特許権の権利範囲(技術的範囲の解釈)に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解を示すものではありません。自社製品がこれらの技術的範囲に属するか否かについては、当社は一切の責任を負いません。技術的範囲の解釈に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解については、特許(知的財産)の専門家であるお近くの弁理士にご相談ください。