カラバリいらず!色が変わる靴
ナイキの変色シューズ
映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で登場した自動ひも調整シューズを、ナイキが実現したという話は有名ですよね。
実はそのナイキ、またしても未来型シューズの発明を進めています。今回のシューズのカギを握るのは、電気信号によって色が変わる素材(有機ELなどにも使われる素材です)。その素材を備えることで、スマホなどの端末から操作して、自由にカラーを変えられるというのです。ということは、服に合わせてカラーコーデを楽しんだりするほか、色だけではなく、好みの模様や文字を浮かび上がらせてみたりと可能性は無限大。さぁ、アナタならカラーが変幻自在のカメレオン・シューズをどんな風に使いますか?
■発明のポイント
本発明は、変色部を有する履物を作動させる方法です。履物の具体的な例は、スポーツシューズです。
本発明の方法では、エレクトロクロモグラフィック材料を含む変色部を備えた履物で様々な測定をしつつ、測定値に応じて変色部の色を変化させます。エレクトロクロモグラフィック材料とは、電気によって色が変わる材料全般です。例えば有機ELなども知られています。
さらに詳しく説明しますと、本発明の方法では、履物に性能パラメータを測定させます。性能パラメータとは、例えばランナーがかかとで踏む回数などです。その回数を1カウントずつ測定していきます。そして、そのカウント数が特定の範囲に入ったときに、変色部の色を特定の色に色付けします。さらに、カウント数が別の範囲に入ったときに、変色部の色を別の色に色付けします。 色付け命令は、現時点での性能パラメータの値(カウント数)をダウンロードしたソフトウェアが、変色部に信号を送信することで実行されます。ソフトウェアは、履物と通信するコンピュータに実装されています。なお、色付けのきっかけとなったカウント数は、そのソフトウェアによってリセットされます。
上記の方法によって、具体的には以下のようなことが可能です。例えば、図1に示すようなスポーツシューズを履いたランナーが、上記の方法を使用した とします。
【図1】
シューズは、ランナーが走るときのかかと踏み回数をカウントします。走り始めてカウント数が増えていき、例えばカウント数が2,000となると、図3のごとく1マイルの距離に相当します。このとき、変色部208を黄色224などに色付けするように、ソフトウェアが変色部208に命じます。ソフトウェアは、例えばランナーが持っているスマートフォンに実装されています。そして、ランナーが走り続け、例えばカウント数が10,000となると、図4のごとく5マイルの距離に相当します。このとき、変色部208をオレンジ色226などに色付けするようにソフトウェアが命じます。
【図3】
【図4】
シューズの色を確認すれば、走った距離を確認できるので、知らない場所をランニングしたとしても、走行距離を簡単に知ることができて便利です。 走り終えたら、スマートフォンに実装されたソフトウェアから指示することによって、カウント数を初期の状態にリセットできます。
本発明の方法では、上述したような特徴だけでなく、さらなる工夫もできます。
変色部は、単に色付けされて目印になるだけでなく、色を使って模様、言葉、数字が表示されるように設計されていてもよいのです。これによって、より楽しくなり、より便利になります。
なお、性能パラメータとしてかかとの踏み回数のカウントを例に挙げましたが、このような例に限られません。例えばジャンプした回数をカウントしても構いません。
以上ご説明しましたように、シューズを履いた使用者のさまざまな動きを測定した測定結果を基にして、シューズの表面で、有用情報を色によって表現します。このような工夫が詰め込まれたシューズ(履物)の使用法は、注目できる発明です。
続いて、上記の特許出願から分割された子出願についてご説明します。
■発明のポイント【子出願】
本発明の方法は、理解しやすいように説明しますと、使用者の服の色に関連する情報を基にして、服の色に応じて履物の変色部に表示する色を決め、変色部に電気信号を送って、変色部に特定色を表示させる方法です。そして、色を表示させるための電源が外部電源か内部電源であるかに応じて、高出力モードにしたり、低出力モードにしたりする方法です。
具体的なイメージとしては、使用者が着ている服の色に応じて、カラーコーディネートするように履物の変色部に色を表示する方法です。
例えば、図19、図20をご覧頂けるとわかりやすいと思います。図19で示されるように、スマートフォンなどの携帯デバイス1900が、シャツ1940の電子識別デバイス1934から、シャツ1940の色や種類の情報を受け取ることができます。電子識別デバイス1934は、例えば無線周波数識別タグです。携帯デバイス1900は、シャツ1940の色などを特定したうえで、シャツ1940とカラーコーディネートするような履物の色を選択して、変色部にその色を表示させます。
なお、電子識別デバイス1934は、履物と有線または無線で接続されます。
【図19】
また、図20で示されるように、携帯デバイスのカメラなどを使うこともできます。使用者は、鏡に映った自分のシャツ1942を写真で撮って、携帯デバイス1900が写真を分析します。携帯デバイス1900は、シャツ1942とカラーコーディネートするような色を選択して、変色部にその色を表示させます。
【図20】
さらには、図21の概念図で示すように、電源が内部電源であるときには、低出力モードにして変色部の現在の色を表示し続け、一方、電源が外部電源であるときには、高出力モードにして変色部の色を変化させます。
【図21】
以上ご説明しましたように、スマートフォンなどを使って、着ている服の色と調和する色をシューズに表示させる上記の方法も、アイデアが詰まった注目発明です。
続いて、上記の子出願から分割された孫出願についてご説明します。これから審査されるため、まだ特許となっていません。
分割出願であるため、上記の親特許や子出願と異なる内容で特許となると思われます。従いまして、今後特許となると予想される内容についてご説明します。
■発明のポイント【孫出願】
本発明は、変色部を有する履物を作動させる方法です。現段階では、大きく3つの内容で特許請求項の範囲が構成されています。
親出願および子出願がすでに特許となっているため、特許になった内容とは異なる内容で特許になると思われます。そのうちの1つの方法を具体的にご紹介いたします。
具体的なイメージとしては、バスケットボールの試合がホームかアウェイで行われるかによって、シューズの色(デザイン)を変える方法です。
例えば、図10、図11をご覧頂けるとわかりやすいと思います。図10で示されるように、シューズは、ロゴの形態の変色部1002、アッパーの半分以上を占める変色部1006などを備えています。試合が本拠地で行われる場合、ソフトウェアインターフェイス750を利用して、試合が本拠地での試合であることを表す「ホーム」を選択します。すると、シューズの半分以上が白色となり(ホームチームは通常白色を着る)、ロゴの部分がチームカラーとなります。
反対に、試合が敵地で行われる場合、図11で示されるように、ソフトウェアインターフェイス750で「アウェイ」を選択します。すると、シューズの半分以上がチームカラーとなり、ロゴの部分が白色となります。
【図10】
【図11】
ホームとアウェイとで別々のシューズを使用しなくてもよいという点で、選手のパフォーマンス向上にも役立ちそうです。
■概要【親出願】
発明の名称︓変色部を有する履物および色を変化させる方法
出願番号︓特願2013-516653(P2013-516653)
特許番号︓特許第6300523号(P6300523)
出願⽇︓平成23年6月20日(2011.6.20)
登録⽇︓平成30年3月9日(2018.3.9)
出願⼈ ︓ナイキ イノヴェイト シーヴィー
■概要【子出願】
発明の名称︓変色部を有する履物および色を変化させる方法
出願番号︓特願2017-205080(P2017-205080) 分割出願
特許番号︓特許第6549201号(P6549201)
出願⽇︓平成29年10月24日(2017.10.24)
登録⽇︓令和1年7月5日(2019.7.5)
出願⼈ ︓ナイキ イノヴェイト シーヴィー
■概要【孫出願】
発明の名称: 変色部を有する履物および色を変化させる方法
出願番号: 特願2019-117478(P2019-117478) 分割出願
公開番号: 特開2019-188185(P2019-188185A)
出願日 : 令和1年6月25日(2019.6.25)
公開日 : 令和1年10月31日(2019.10.31)
出願人 : ナイキ イノヴェイト シーヴィー
<免責事由>
本解説は、主に発明の紹介を主たる目的とするもので、特許権の権利範囲(技術的範囲の解釈)に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解を示すものではありません。自社製品がこれらの技術的範囲に属するか否かについては、当社は一切の責任を負いません。技術的範囲の解釈に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解については、特許(知的財産)の専門家であるお近くの弁理士にご相談ください。