動くIoTベッド&枕
疲労回復に大切な睡眠を十分にとるための手助けを補助します。身近な製品に特許の技術が活かされている例をご紹介します。
年齢を重ねると思うように睡眠がとれなくなる人が多いようです。十分に睡眠が取れれば疲労が回復して次の日の活力も生まれ、充実した日々が送れるのになぁ、と思っている人も多いようです。十分な睡眠をとるためには、サプリメント、場合によっては薬を利用することもあります。しかし、できれば眠るときの環境を工夫することによって自然な眠りを取りたいものです。
近年、眠りについての研究も進み、「眠りとは何か」の他に「より快適に眠るための環境作り」の研究も進んでいます。特に、寝具に関わる研究は進歩しているようです。研究結果を活かしたベッドや枕もいろいろと販売されています。
今回、そのような研究を活かした寝具について、特許出願されたベッドや枕の発明例を詳しくご説明します。
発明のポイント
ベッド
本発明は、より快適な眠りを提供できる電動家具(ベッド)です。
本発明のベッドは、制御部42を含みます。この制御部42が、快適な眠りを提供するためにベッドを様々にコントロールします。
本発明の電動家具310では、例えば図1に示すように、マットレス(図示なし)の下に検出部60(例えばセンサ62)が設けられます。検出部60は、マットレスの上にいる使用者の体動などの生体信号を検出します。得られた生体信号によって、使用者がどのような状況にあるかを予想したうえで、制御部42によってマットレスの形状を変えるように設計されています。
【図1】
電動家具(ベッド)の主なしくみの具体例は、次の通りです。概要を説明しますと、使用者が入眠したことを生体信号によって検知してから、さらに生体信号を取り続けて、より深い眠りに入ったと検知したときに、ベッドの形状をより快適な形状へと変えるように電動家具(ベッド)が構成されています。
詳しく説明しますと、まず、使用者が「睡眠」に入ったと判定します。この判定は、生体信号(呼吸数または心拍数など)に対応する信号SSの変動ΔSが、小さくなった事実を基にして行われます。
「使用者が睡眠状態である」と判定された時刻から例えば0分を超え120分以下の所定の時間(20分など)が経過すると、第1入眠動作HS1へ移行します。
第1入眠動作HS1は、例えば、使用者の生体信号に対応する信号SSを取得する動作です。使用者の体の動きなどを検出することになります。
そして、制御部42は、生体信号の変動が所定の条件(第1変動条件)を満たしたときに、第2入眠動作HS2を実施します。所定の条件(第1変動条件)とは、例えば心拍数がより少なくなったときです。
第2入眠動作HS2では、例えば図2(b)から(c)への変化のように、マットレスをよりフラットな状態へ変化させます。
なお、使用者の好みに応じて、図2(e)に示すようにベッドを複雑な形状に変化させることもできます。
【図2】
本発明の電動家具は、上述したような特徴を備えるだけでなく、より快適な眠りを提供するために、例えば睡眠中における工夫も備わっています。
睡眠状態に「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」があることはご存じと思います。「ノンレム睡眠」のときの脳は十分に休んでいる状態であり、一方、「レム睡眠」のときの脳はやや活発化している状態です。
上述したように検出部60で生体信号を検出することによって、使用者がどちらの睡眠状態であるかを予想することができます。
例えば図4(a)の縦軸に示すように、使用者の信号SSは睡眠中に変動ΔSを示します。例えば、第1信号状態st1は、レム睡眠に対応すると考えられ、第2信号状態st2は、ノンレム睡眠に対応すると考えられます。
【図4】
これに対応するように、例えば図2(b)のθ2、及び、図2(c)のθ1に示すように、ベッドの角度を変更して、より快適な眠りを得ることもできます。
例えば、レム睡眠からノンレム睡眠に移行するときにベッドの角度をフラットからθ2へ増大させてもよく、ノンレム睡眠からレム睡眠に移行するときにベッドの角度をフラットへ変化させることもできます。
なお、ベッドの構造は図1に示した構造に限定されていません。例えば図6及び図7に示すように、使用者の身長方向に並んだ複数の複数のエアセル76aでマットレス76が構成されていてもかまいません。エアセル76aに入れる空気量を調整することでエアセル76aの高さを調節できるため、マットレスの形状を自由に変更できます。これにより、上記と同様に快適な眠りを得ることができます。
【図6】
【図7】
枕
本発明は、適した高さを簡便に設定する枕です。
本発明の枕は、使用者の頭部を支持する膨縮部11と、膨縮部11を膨縮させる膨縮機構12と、使用者情報を取得して使用者情報に応じて膨縮機構を制御する制御部14と、を備えています。
例えば、制御部は、使用者情報として、使用者の頭部荷重、使用者の呼吸状態、使用者の寝姿勢などを検出するように設計されています。
詳しくは、図1、図2、図4、及び、図6をご覧頂けるとわかりやすいと思います。図1では、上側に使用者の頭の頂部が配置され、下側に首元(胴体側)が配置されます。図2は、図1を横方向に延びる直線に沿って、枕を切断した断面図です。図4は、枕の概念を表すブロック図です。図6は、使用者の使用例を模式的に示した図です。
【図1】
【図2】
【図4】
【図6】
具体的に説明しますと、制御部14が、使用者Pの頭部荷重(使用者情報)を取得することによって、使用者Pの頭部荷重に応じて膨縮機構12をコントロールできます。例えば、頭部荷重が高いときには膨縮機構12が膨縮部11を膨張させ、頭部荷重が低いときには膨縮機構12が膨縮部11を収縮させます。これにより、使用者Pを適した高さで支持することができます。
さらなる例では、制御部14が、呼吸状態(使用者情報)を取得することによって、呼吸状態に基づいて、使用者Pが睡眠時無呼吸状態であるか否かを判定できます。使用者Pが睡眠時無呼吸状態であると制御部14が判定した場合は、例えば図6(A)から(B)への変化で示すように、膨縮機構12を制御して、膨縮部11のうち首元側Fの高さを頭頂側Hの高さよりも高くできます。これにより、使用者Pに、睡眠時無呼吸状態の予防用の特別な装置を取り付けることなく、使用者Pの気道P1を確保することができます。よって、眠時無呼吸状態を緩和できます。
また、制御部14が、使用者の寝姿勢(例えば、仰臥位、側臥位)を使用者情報として取得することによって、寝姿勢に応じて適した高さに設定できます。よって、睡眠時の寝返りに対応して高さを自動的に調節し、寝違いや肩こりを抑制することができます。
なお、スマートフォンなどの入力部41を利用することもできます。制御部14は、使用者の好みの枕高さを入力したスマートフォンを利用して、使用者の希望する枕本体24の高さ(膨縮部11の膨縮の程度)情報の入力を受け付けることができます。
以上ご説明しましたように、睡眠中に高さを自動的に調節できる上記の枕も、アイデアが詰まった注目発明です。
特許の概要
発明の名称
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電動家具 |
出願番号
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特願2018-227422 |
特許番号
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特許第6626951号 |
出願日
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平成30年12月4日(2018.12.4) |
登録日
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令和1年12月6日(2019.12.6) |
出願人
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パラマウントベッド株式会社 |
発明の名称
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枕装置 |
出願番号
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特願2016-80413 |
公開番号
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特開2017-189382 |
出願日
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平成28年4月13日(2016.4.13) |
登録日
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平成29年10月19日(2017.10.19) |
出願人
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パラマウントベッド株式会社 |