特許を見れば未来がわかる!?新発明で変わる未来生活とは

INTRODUCTION

始まりました!+VISION創刊号となる特許マガジンVol.1のテーマは「特許を見れば未来がわかる!?新発明で変わる未来生活とは」です。

 

はじめまして+VISION編集部です!

みなさん、特許ってご存知でしょうか?特許文献って読んだことがありますか?

特許とは新しいアイデアや技術に対して独占権を付与してその申請者に一定のインセンティブを与える制度のことです。新しいアイデアでなければ特許権を取得できませんので、その特許の内容を見ればまさに最新の技術情報が手に入るわけです。

しかも、特許庁のデータベースにアクセスして検索すれば誰でもその特許文献を入手することができます。

+VISION編集部では、数ある特許文献の中から創刊号のテーマにふさわしい特許を7つ選定しました。まさに、これを見れば“未来の生活”が変わりそう?な発明ばかりです。

それでは皆さん、+VISION創刊号はじまるよーー♪

CONTENTS

  • #1機械学習での献立提供プログラム

  • #2ホログラム再生装置

  • #3う〇こチェック機能付トイレ

  • #4シャツ折り畳み装置

  • #5人より綺麗に掃除

  • #6スマートクローゼット

  • #7動くIoTベッド&枕

機械学習での献立提供プログラム


主菜は何にしよう?副菜は何品?栄養バランスはもちろん、季節感や、味付けや彩りなど、献立決定のプロセスは色々な要素を絡めた煩雑な作業。毎日続けていくのは大変な労力ですよね。

そんな日々の献立決めに強力な助っ人が登場!それがこの献立提供装置です。栄養面や主菜副菜のバランスはもちろん、最大の特徴は、食材の数、制限時間、料理の手数、道具の使用数、主になる食材の重複を避ける等など、キッチンに立った人が考える実務的な条件をクリアした献立が提案されること!

献立を組み立てる数々のルールのなかから適合するものを選び出し、栄養士などの専門家が組み立てる献立にどれくらい近いのかを判定するという技術が使われています。将来的にはお料理ロボットにこの装置を利用させる構想もあります。

朝はロボットが用意した完璧な朝ごはんが時間通りにできあがっている!なんて未来もそう遠くはないかも!?

メインの料理に栄養バランスのよいサブメニューを提案する献立提案システムはすでに普及していますが、さらにこの装置では料理にまつわる実務的な条件を献立選択のプロセスに加えています。

具体的には、以下に示す要素を組み合わせ、条件を適切に満たした献立がルールベースで適合されたデータとして特定されます。

  • 料理に含まれる栄養成分値
  • 完成させるまでの手順の数
  • 使用される食材の数
  • 完成させるまでの時間
  • 料理区分(主菜、副菜、主食または汁物など)
  • 料理ジャンル(和風、洋風、中国風、韓国風またはエスニックなど)
  • 食材(食材の重量など)
  • 季節性
  • 所定の調理器具(例えばフライパンなど)が使用されるか
  • 汁物が入っているか?
  • 栄養成分(例えばタンパク質など)が主となっているか?
  • 小鉢料理が入っているか?
ルールベースの適合データがどれだけプロの献立に近いかを判定

ルールベースで適合した献立データは、さらに専門家が「相応しい」か「相応しくない」かを判別したラベルデータを使って機械学習することにより献立判定モデルが生成されます。

適合データは適合の判定でも、専門家が未判定だった場合、この献立判定モデルが専門家推奨の献立にどれくらい近いのか(難易度)を判定し、より適合している献立をユーザーに届けることができるのです。

夕食の献立メニュー
料理レシピの提供サービスをグレードアップ!

実用例を見て行きましょう。

例えばスマートフォンやパソコンでメインになる単品料理を選びます。献立提案のアイコンを選ぶとメイン料理に加え2品の副菜が提示されます。

これは、その献立全体が一定の基準、=栄養バランスや献立を立てるときに考慮される様々な条件を満たした献立なのかどうかを瞬時に判断し選ばれた副菜が画面上に表示されたものです。知識を蓄えた専門家が優れた献立を提案しても、幾通りものバリエーションを考えるのは大変な作業です。それを一瞬で代替する献立判定プログラムはインターネット上で料理のレシピ等を提供するサービスにより有益です。

発明の名称

献立提供装置、献立提供方法および献立提供プログラム

出願番号

特願2018-36962(P2018-36962)

出願日

平成30年3月1日(2018.3.1)

公開日

令和1年9月12日(2019.9.12)

出願人

味の素株式会社

経過情報

・平成30年3月1日に特許出願され、現時点では出願審査請求はされていません。

ホログラム再生装置


皆さん、「ホログラフィー」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

ホログラフィーとは、“光の回折とを利用して立体画像を記録再生する方法”のことを指し、物体の形状や大きさの計測(光計測)や立体表示の分野にて主に利用されています。

最近になって、サムスンがこのホログラム再生装置を搭載した「スマートフォン」を開発していることが明らかになっており、特許申請も行われています。

従来の技術では、光の回折を上手くコントロールすることができず、大きくて品質の悪いホログラム映像しか作り出せませんでしたが、彼らの特許技術では、特殊なフィルターを装置内に設置することによって、コンパクトで高品質なホログラフィー像を提供し、加えてホログラム再生装置の小型化も可能にしています。 

今回の特許発明(ホログラム電話)によって、“家にいても友達同士集まって会話できて一人暮らしの寂しさも解消”、そんな生活が近い将来現実になること間違いなしです。

本発明は、ホログラム再生装置に関する発明であって、主に「ホログラムパターンを表示するディスプレイ(上図10)」、リレーレンズユニット(上図20, 30)」および「空間光変調器(SLM)(上図40)」から構成されている。

番号 名称 説明
10 ディスプレイ ホログラムパターンを表示する
20 第1レンズユニット ディスプレイの前面に配置された第1レンズアレイ、第1レンズアレイの前面に配置された第2レンズアレイを含む
30 第2レンズユニット 第2レンズアレイの前面に配置された第3レンズアレイ、第3レンズアレイとSLMの間に配置された第4レンズアレイを含む
40 空間光変調器(SLM) ホログラムを描くための感光層を有する。感光層の前面には液晶ディスプレイパネルが設置されていて、入射光を回折光に変調する
50 導光板 第二レンズユニットとSLMの間に設置されている。拡大されたコリメート光を得るためのエキスパンダーを有する
60 フィルター Bragg gratingフィルターとルーバーフィルターを有しており、回折光を調節する
70 集光レンズ 回折光を集光する

また、導光板(上図50)は下記のような構造を有する。

51:エキスパンダー
52:再生光をエキスパンダーに規定した入射角で入射させる装置
53:再生光の一部をエキスパンダーの外へ放出させる装置

上記導光板の構造によって、「再生光がSLMの領域全体に均一に放射される」という技術的特徴を有する

本発明によれば、高品質のホログラフィー像を提供することができるとともに、ホログラム再生装置のコンパクト化が可能となる。

特許出願のクレーム範囲(概略)は以下の通り。

【請求項1】

以下の構成を含むホログラム再生装置

  • ホログラムパターンを表示するディスプレイ
  • ディスプレイの前画面に配置され、ディスプレイから放出された光を集光するマイクロレンズを含むレンズアレイを備える第1のレンズユニット
  • 第1のレンズユニットにて集光された光をさらに集光するマイクロレンズを含むレンズアレイを備える第2のレンズユニット
  • ホログラムを描く空間光変調器(SLM)
  • 再生光をSLMへ誘導するための導光板
  • SLMの前画面に配置され、回折光を調整するフィルター
  • 回折光を集光するレンズ

上記のような構成を持つホログラム再生装置は、本発明の権利範囲に含まれる可能性があり、競合他社は注意する必要がある。

発明の名称

ホログラム再生装置およびその操作方法

出願番号

15/869,732

公開番号

US2018/0341219

出願日

2018年1月12日(米国)

公開日

2018年11月29日(米国)

出願人

Samsung Electronics Co.,Ltd.

経過情報

・米国においては、2018年1月12日に特許出願が行なわれ、現在は特許審査係属中である。尚、本特許の出願国は米国と韓国のみであり、日本には特許出願が行なわれていない。

う〇こチェック機能付トイレ


自分でできる健康チェックといえば、思い浮かべるのは体温や血圧の測定。それらももちろんアリですが、実は大便の性状で健康状態が簡単にわかることはご存知でしょうか?

健康的な大便はするりと出た黄褐色のソフトなバナナ状と言われ、そうではない場合は何らかの異常が発生していることがわかります。そんな体からのお“便”りを、読み解かずして水に流してしまうにはもったいない!それならトイレにお任せしちゃいましょう、と発明されたのが<健康状態のより精緻な推定結果が得られる便器装置>。

毎日用を足すだけで、トイレがあなたに代わって便の状態をチェックしてくれるのです。この発明のキモとなるのが、便器内部に据えられた特殊なカメラ。排泄した大便を撮影し、性状から推定した情報をもとにライフスタイルの改善アドバイスまで行ってくれるという優れモノ。

健康チェックのスタンダードがトイレとのコミュニケーション、という未来も近いかも?

特殊なカメラが健康状態をつぶさにチェック

健康状態のより精緻な推定結果が得られる便器装置>の大きな特徴は、大便の“性状の変化”を推定できること。

便器内部据えられたカメラでは、大便の排泄後、落下する様子を時系列に撮影。取得した複数の静止画像から、さらに便性推定部で大便の性状と変化を推定します。

こうして、使用者の健康状態、特に消化器系の健康状態(腸内環境)のより精緻なデータを得ることができるのです。

【時系列に撮影された静止画像の例を示す図】

大便の性状とは、硬さや軟らかさのことで、この装置では
①コロコロ
②カチカチ俵
③バナナ
④半練り
⑤泥状
⑥水状
といった6パターンに大別されます。

これらの性状のうち、①コロコロ②カチカチ俵は便秘、③バナナ④半練りは健康、⑤泥状⑥水状は下痢、と定義しています。さらに、①〜③は硬便、④〜⑥は軟便、とも定義しています。

【大便性状のパターン分類の例を示す図】

また、便性推定部では、カメラが時系列に撮影された大便の性状を推定したのち、1回の排便における大便の性状の時系列変化を推定することができます。

下記図では、1回の排便で大便の性状が、①③⑥の3段階に変化したと推定されます。①③の性状パターンで排泄された時間と比較して、⑥の性状パターンで排泄された時間が大部分であるということも推定できます。

【実施例に係る大便性状の時系列変化の推定】

このようにして便器装置は、使用者の健康状態のより精緻な推定結果を得ることができます。

また、便器装置で得た健康状態の推定結果は、便性変化の推定結果に基づく便性改善アドバイスと共に、便器に設置された表示端末に表示されます。

さらに、推定結果データとアドバイス情報と併せて記憶させ、スマートフォン、タブレット、PC等に表示し随時確認することも可能。

例えば、1回の排便において、①から②性状に変化した大便が排泄されたと推定された場合には、「肉類の食べ過ぎの可能性があります。野菜も摂取してバランスの良い食事を心がけましょう」や、「トイレを我慢すると排便タイミングを逃し、便秘に繋がります。便意を催した際にはなるべく素早くトイレに行きましょう」など、具体的なライフスタイルでの改善ポイントも教えてくれます。

※現在は、2019年7月23日に拒絶理由通知書が発送され、2019年9 月9日に意見書が提出さており、審査に係属しています。現時点ではまだ特許にはなっていません。

発明の名称

便器装置

出願番号

特願2016-019763

公開番号

特開2017-137707)

出願日

平成28年2月4日(2016.2.4)

公開日

平成29年8月10日(2017.8.10)

出願人

株式会社LIXIL

シャツ折り畳み装置


皆さん、「ランドロイド」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

「ランドロイド=ランドリーをするロボット」つまり、洗濯作業を担ってくれるロボットです。洗い終わって乾燥まで済んだ衣類を装置へいれるだけで、自動で折り畳み、仕分けまで行ってくれる超優れモノです。

これまでも衣類の自動折りたたみ装置はありましたが、折りたたむ際に衣類が装置の部材に引っ張られることにより“衣類にダメージをうける”という課題がありました。

今回紹介する特許発明は、装置の部材に「回転機構」を設ける工夫を施すことで、衣類へダメージを与えることなく折りたたむことを可能にしています。また、装置もシンプルでメンテナンス・修理が行いやすく、コストも安価です。

今回の発明は、特にクリーニング店などのお困りごとを解決するソリューションになること間違いなしです。

本発明は、シャツなどの衣類を折りたたむ装置に関する発明であって、主に「載置部材(下図31)」、「回転機構」および「板状部材(下図321, 322等)」から構成されます。

まず、シャツなどの衣類(被折りたたみ物)は、載置部材にその一部が垂れ下がるように載置されます。板状部材が、回転機構によって回転させられ載置部材に接近し、載置部材31と第1板状部材321との間でシャツの一部が挟まれることで折りたたまれます。

続いて、第1板状部材321と第2板状部材322の回動によってシャツの他の一部が折りたたまれ、更に第2板状部材322と第3板状部材323の回動により、シャツの残りの部分が折りたたまれます。

本発明によれば、衣類へのダメージやストレスを与えにくくすることができます。また、折りたたみ装置の構成を簡略化し、メンテナンス及び修理がしやすく、加えて安価にすることもできます。

特許成立した請求の範囲(概略)は以下の通りです。

【請求項1】
  • 被折り畳み物の一部が垂れ下がるように載置可能な載置部材と、
  • 前記載置部材の第1面を回転させる回転機構と、
  • 前記回転機構により前記載置部材を回転させることによって、前記被折り畳み物の一部を前記載置部材の近傍に位置させた後、
  • 前記被折り畳み物の一部を挟み込むように前記載置部材側に移動可能な複数の板状部材とを備えた、
  • 折り畳み装置。

回転機構を利用した衣類の折りたたみ装置は、本発明の権利範囲に含まれる可能性があり、競合他社は注意する必要があります。

発明の名称

折り畳み装置、運搬装置、折り畳み方法および載置装置

出願番号

特願2008-534410

公開番号

特許第5147017

出願日

平成19年9月14日(2007.9.14)

公開日

平成24年12月7日(2012.12.7)

出願人

株式会社アイ.エス.テイ

経過情報

・2012年12月7日に特許登録がなされ、現在も登録は維持されています。特許存続期間の満了日は2027年9月14日となっています。

人より綺麗に掃除


現広く普及している床領域を掃除する全自動お掃除ロボットに関する特許発明を紹介します。

この特許発明は、ロボットが普及し始める以前(2001年)にイギリスにて出願さ れ、国際出願を経て日本に出願されたものです。

この特許発明が出願される以前は、ロボットが移動するマップを構築するための情報収集 の際に誤差が蓄積してしまい、正確なマップを作成できないという課題がありました。

これに対して、この特許発明では、ロボットが移動してマップ内の前のポジションに戻る 際に、現在のポジションと前のポジションとが同一になるようにマップを修正することで 、誤差の蓄積を抑えて正確なマップを作成可能にしています。

このように、この特許発明は、現在広く普及している全自動お掃除ロボットの進化過程を 体感できる内容です。

本発明の自律マシンの具体例であるロボット真空掃除機100は、図1及び図2に示すよ うに、トラクションモーターによって前進方向あるいは後退方向に駆動できる駆動ホイー ル104を備えており、トラクションモーターのそれぞれを独立的に制御することで全区域移動が可能になっています。

また、掃除機100には、障害物の存在などの情報を得る ための複数のセンサー、オドメトリー情報を得るためのオドメトリーホイール、及び、こ れらの情報から作業領域のマップを作成してマップに基づいて掃除作業を行わせるための ナビゲーションシステムが設けられています。

【図6】

【図7】

掃除機100が最初にスタートする際、掃除機100は自身が配置される領域の知識を持っていません。

このため、掃除機100はまず、作業する領域の知識を獲得するために、 この領域をスキャニングします。例えば、図4及び図5に示すように、掃除機100をポ イントAからスタートしてスキャニングを行います。

掃除機100は、部屋の境界回りで 航行を行い、連続的に壁405や障害物420~426の存在を検知して、自身が壁や障 害物から所定の距離だけ離れた状態を維持します。

掃除機100は、自身が部屋の境界を たどる間に獲得した経路に関する情報を連続的に記録します。掃除機100は、オドメト リーホイールセンサー160、162から移動距離および移動方向に関する情報を取り出します。

このとき、ナビゲーションシステムは、規定距離間隔で、掃除機100の方向に おける角度変化(前のサンプルにおける方向との比較で)のサンプリングを行い、さらに 作業領域のマップを構築するため掃除機100がたどる経路を詳細にプロットします。

【図4】

【図5】

図8には図4に示す部屋のマップの実例を示しています。境界周囲の掃除機100の経路 の各ポイントは、このマップ上の座標によって規定されます。

そして、掃除機100は、 境界に沿って以前訪れたポジションに戻ってきたかどうかを確証します。具体的には、角 度経路データの直近のLメートル値と経路データの以前のLメートルブロックを比較します。

その後、現在のポジションと前のポジションとが同一になるようにマップを修正します。これにより、誤差の蓄積を抑えて正確なマップを作成可能にしています。その後、掃除機100は、誤差の蓄積が抑えられた正確なマップを利用して、作業領域の掃除作業を開始することができます。

【図8】

発明の名称

自律マシン

出願番号

特願2003-542414号

特許番号

特許第4249624号

登録日

平成21年1月23日(2009.1.23)

出願人

ダイソン・テクノロジー・リミテッド

経過情報

・2009年1月23日に特許登録がなされましたが、現在は年金不納により登録抹消されています。

スマートクローゼット


みなさんは、毎日コーディネートを考えるのにどのくらい時間をかけているでしょうか。

働き方改革の流れもあって、会社員の方でもスーツから私服勤務へと変わり、ファッションへ気を使う必要が出てきた方もいるかもしれません。

とはいえ、毎朝ただでさえ忙しい出勤前の準備時間に、コーディネートを意識して着る服を決めるのはストレスに感じる方も多いでしょう。しかもコーディネートが決まらないと、その日1日は気分があまり乗りませんよね。

そんな悩む時間や労力を嫌って、Appleのスティーブ・ジョブズやFaceBookのマーク・ザッカーバーグが同じ服を着るという話は有名です。

ただ、われわれが実際に毎日同じ服を着ていくというのは、やはり抵抗感があります。

この悩みを解決してくれるのが、今回紹介する発明「スマートクローゼット」です。スマートクローゼットは、登録したあなたのファッションアイテムから最適なコーディネートを機械学習で提案してくれます。 日常生活を少し未来に変える特許を紹介します。

本発明は、バーチャル評価システムおよびプログラム、いわゆるAI領域の機械学習に関するものとなっています。

具体的には、選んだファッションアイテムに合うファッションアイテムをバーチャル評価システムが予測して提案する、という発明です。

本発明で画期的なポイントは、これまでの一般的な機械学習とは異なる手法とったことで、正確性の高い予測をより低コストで実現できるところでしょう。

機械学習はある入力値に対して、プログラムやアルゴリズムで評価を行い予測値を返します。

今回の発明の特許範囲は、まさにこのプログラムやアルゴリズムなわけですが、一般的に機械学習の正確性を高めるためには踏むステップは次のとおりです。

  • ある評価基準をベースにプログラムやアルゴリズムを構築し、大量の教師データを学習させて数値化させます。
  • 入力値に対する予測値の返すロジックを決定、ユーザからのフィードバックでさらに学習し練度を高めるという流れです。

しかし、このような機械学習の手法には次の2つの課題がありました。

  • ベースとなる評価基準は扱うアイテムのプロ目線で決められることが多いが、人のバイアスなのでバラツキが発生して正確性に欠ける
  • 教師データの学習や数値化にセンシングを用いられるが、時間とコストがかかるため十分なデータ量を得るまでのハードルが高い

本発明ではこの課題を、ユーザ間の特徴量知覚の相関、つまり似た好みやセンスを持つユーザの評価基準を教師データとして適用させることで解決しました。

バーチャル評価システムの構成は、上図のとおりユーザのアプリ操作端末と計算処理部、データベースの大きく3つです。

基本的には、アプリでユーザが決めたアイテムの特徴量と評価値をデータベースへ保存し、そのデータをもとに計算処理部で入出力の相関関係を学習するシステムを構築しています。

入出力の相関関係は、ユーザとエキスパートの入力・出力をクロス分析することで、より高い精度を実現しています。

具体的なバーチャル評価システムの流れは、次の図のとおりです。

ユーザから推薦リクエストがあると、そのリクエスト対象アイテムに対して上図のフローが走ります。

最終的にバーチャル評価システムが予測する結果をもとに、推薦アイテムをユーザ端末へ表示される、という仕組みです。

さらに、予測の試行回数を重ねるごとに予測結果をデータベースへ蓄積、さらに予測値の精度を高めるループを形成しています。

発明の名称

バーチャル評価システムおよびプログラム

出願番号

特願2017-129527(P2017-129527)

出願日

平成29年6月30日(2017.6.30)

公開日

平成30年1月11日(2018.1.11)

出願人

SENSY株式会社

経過情報

・審査請求は未請求状態 米国へ優先権主張で出願中

動くIoTベッド&枕


疲労回復に大切な睡眠を十分にとるための手助けを補助します。身近な製品に特許の技術が活かされている例をご紹介します。

年齢を重ねると思うように睡眠がとれなくなる人が多いようです。十分に睡眠が取れれば疲労が回復して次の日の活力も生まれ、充実した日々が送れるのになぁ、と思っている人も多いようです。十分な睡眠をとるためには、サプリメント、場合によっては薬を利用することもあります。しかし、できれば眠るときの環境を工夫することによって自然な眠りを取りたいものです。

近年、眠りについての研究も進み、「眠りとは何か」の他に「より快適に眠るための環境作り」の研究も進んでいます。特に、寝具に関わる研究は進歩しているようです。研究結果を活かしたベッドや枕もいろいろと販売されています。

今回、そのような研究を活かした寝具について、特許出願されたベッドや枕の発明例を詳しくご説明します。

ベッド

本発明は、より快適な眠りを提供できる電動家具(ベッド)です。

本発明のベッドは、制御部42を含みます。この制御部42が、快適な眠りを提供するためにベッドを様々にコントロールします。

本発明の電動家具310では、例えば図1に示すように、マットレス(図示なし)の下に検出部60(例えばセンサ62)が設けられます。検出部60は、マットレスの上にいる使用者の体動などの生体信号を検出します。得られた生体信号によって、使用者がどのような状況にあるかを予想したうえで、制御部42によってマットレスの形状を変えるように設計されています。

【図1】

電動家具(ベッド)の主なしくみの具体例は、次の通りです。概要を説明しますと、使用者が入眠したことを生体信号によって検知してから、さらに生体信号を取り続けて、より深い眠りに入ったと検知したときに、ベッドの形状をより快適な形状へと変えるように電動家具(ベッド)が構成されています。

詳しく説明しますと、まず、使用者が「睡眠」に入ったと判定します。この判定は、生体信号(呼吸数または心拍数など)に対応する信号SSの変動ΔSが、小さくなった事実を基にして行われます。

「使用者が睡眠状態である」と判定された時刻から例えば0分を超え120分以下の所定の時間(20分など)が経過すると、第1入眠動作HS1へ移行します。

第1入眠動作HS1は、例えば、使用者の生体信号に対応する信号SSを取得する動作です。使用者の体の動きなどを検出することになります。

そして、制御部42は、生体信号の変動が所定の条件(第1変動条件)を満たしたときに、第2入眠動作HS2を実施します。所定の条件(第1変動条件)とは、例えば心拍数がより少なくなったときです。

第2入眠動作HS2では、例えば図2(b)から(c)への変化のように、マットレスをよりフラットな状態へ変化させます。

なお、使用者の好みに応じて、図2(e)に示すようにベッドを複雑な形状に変化させることもできます。

【図2】

本発明の電動家具は、上述したような特徴を備えるだけでなく、より快適な眠りを提供するために、例えば睡眠中における工夫も備わっています。

睡眠状態に「ノンレム睡眠」と「レム睡眠」があることはご存じと思います。「ノンレム睡眠」のときの脳は十分に休んでいる状態であり、一方、「レム睡眠」のときの脳はやや活発化している状態です。

上述したように検出部60で生体信号を検出することによって、使用者がどちらの睡眠状態であるかを予想することができます。

例えば図4(a)の縦軸に示すように、使用者の信号SSは睡眠中に変動ΔSを示します。例えば、第1信号状態st1は、レム睡眠に対応すると考えられ、第2信号状態st2は、ノンレム睡眠に対応すると考えられます。

【図4】

これに対応するように、例えば図2(b)のθ2、及び、図2(c)のθ1に示すように、ベッドの角度を変更して、より快適な眠りを得ることもできます。

例えば、レム睡眠からノンレム睡眠に移行するときにベッドの角度をフラットからθ2へ増大させてもよく、ノンレム睡眠からレム睡眠に移行するときにベッドの角度をフラットへ変化させることもできます。

なお、ベッドの構造は図1に示した構造に限定されていません。例えば図6及び図7に示すように、使用者の身長方向に並んだ複数の複数のエアセル76aでマットレス76が構成されていてもかまいません。エアセル76aに入れる空気量を調整することでエアセル76aの高さを調節できるため、マットレスの形状を自由に変更できます。これにより、上記と同様に快適な眠りを得ることができます。

【図6】

【図7】

本発明は、適した高さを簡便に設定する枕です。

本発明の枕は、使用者の頭部を支持する膨縮部11と、膨縮部11を膨縮させる膨縮機構12と、使用者情報を取得して使用者情報に応じて膨縮機構を制御する制御部14と、を備えています。

例えば、制御部は、使用者情報として、使用者の頭部荷重、使用者の呼吸状態、使用者の寝姿勢などを検出するように設計されています。

詳しくは、図1、図2、図4、及び、図6をご覧頂けるとわかりやすいと思います。図1では、上側に使用者の頭の頂部が配置され、下側に首元(胴体側)が配置されます。図2は、図1を横方向に延びる直線に沿って、枕を切断した断面図です。図4は、枕の概念を表すブロック図です。図6は、使用者の使用例を模式的に示した図です。

【図1】

【図2】

【図4】

【図6】

具体的に説明しますと、制御部14が、使用者Pの頭部荷重(使用者情報)を取得することによって、使用者Pの頭部荷重に応じて膨縮機構12をコントロールできます。例えば、頭部荷重が高いときには膨縮機構12が膨縮部11を膨張させ、頭部荷重が低いときには膨縮機構12が膨縮部11を収縮させます。これにより、使用者Pを適した高さで支持することができます。

さらなる例では、制御部14が、呼吸状態(使用者情報)を取得することによって、呼吸状態に基づいて、使用者Pが睡眠時無呼吸状態であるか否かを判定できます。使用者Pが睡眠時無呼吸状態であると制御部14が判定した場合は、例えば図6(A)から(B)への変化で示すように、膨縮機構12を制御して、膨縮部11のうち首元側Fの高さを頭頂側Hの高さよりも高くできます。これにより、使用者Pに、睡眠時無呼吸状態の予防用の特別な装置を取り付けることなく、使用者Pの気道P1を確保することができます。よって、眠時無呼吸状態を緩和できます。

また、制御部14が、使用者の寝姿勢(例えば、仰臥位、側臥位)を使用者情報として取得することによって、寝姿勢に応じて適した高さに設定できます。よって、睡眠時の寝返りに対応して高さを自動的に調節し、寝違いや肩こりを抑制することができます。

なお、スマートフォンなどの入力部41を利用することもできます。制御部14は、使用者の好みの枕高さを入力したスマートフォンを利用して、使用者の希望する枕本体24の高さ(膨縮部11の膨縮の程度)情報の入力を受け付けることができます。

以上ご説明しましたように、睡眠中に高さを自動的に調節できる上記の枕も、アイデアが詰まった注目発明です。

発明の名称

電動家具

出願番号

特願2018-227422

特許番号

特許第6626951号

出願日

平成30年12月4日(2018.12.4)

登録日

令和1年12月6日(2019.12.6)

出願人

パラマウントベッド株式会社

発明の名称

枕装置

出願番号

特願2016-80413

公開番号

特開2017-189382

出願日

平成28年4月13日(2016.4.13)

登録日

平成29年10月19日(2017.10.19)

出願人

パラマウントベッド株式会社

CONCLUSION

特許は企業の未来地図

近未来技術はSFみたいで夢があってワクワクしますよね。今回はより普段の生活に近い特許たちの紹介でした。

実際に実用化されている商品の技術や、「あったらいいな」を実現可能にする技術などみなさんにとってもイメージしやすいものだったと思います。

特許情報を活用する1つの方法として、「特許は企業や発明者が商品やプロダクトを世の中に出すより前に、先行して出願するもの」という性質を利用し、読解することで「ある企業がどういった商品を開発しようとしているか?」など未来を少し先読みすることができのではないかと考えております。

もちろん、特許を取得する理由や内容によっては、該当しないケースも存在しますが、うまく活用すればなんとなく未来図を描くことができます。

注目している企業やライバル企業の特許があれば、特許視点でチェックし方向性を探ってみるのもいいかもしれません。