工場は海の中??

巨大な海中構造物のつくりかた

工場は海の中??

工場は海の中??

海に囲まれた日本では、昔から船舶を始めとした海上・海中構造物を製造する、造船業などの産業は欠かせないものとなっています。一般に、断面径が10m程度の船舶や潜水艇などは、予め陸上のドックで製作し、海上まで牽引することや、パーツごとに分割したものをドックで製作し、海上で水密性を確保した状態で一体化させる方法が採用されています。


しかし、大きさが数100mとなるような大型の海中構造物を構築する場合には、陸上で完成物を作って海上まで牽引することは困難であるし、パーツごとに分割したとしても、すべての分割体を、水密性を維持したまま接合・一体化させることは困難でした。

そこで、新たな海上施工システムとして、海中構造物の球状外殻を、耐水圧性を有した躯体フレーム構造とし、また、フレームの内側には中央タワーを併せて構築することで、外殻が水圧などの外力を受けた場合の変形を防ぐ効果を奏する一方、タワー内に商業施設、例えばホテル、オフィス、共同住宅や社宅などを設けることも可能なものとしました。

このような中央タワーの外側の海上で、海中構造物の外殻を構築し、できたものから海中に沈めていくという施工方法をとることで、巨大な海中構造物が可能となるそうです。快適な海中生活をしながら船舶等の製造に携われるなんて、宇宙ステーションを海の中に作ったようで、なんだかワクワクしませんか?

■従来の課題

船舶・潜水艇などに代表される海中の構造物は、予め陸上の製作し易いドック等の場所で製作し、設置現場の海上まで船で牽引する方法、または、球殻型海中構造物を分割した大きさのものをドック等の場所で製作し、設置現場となる海上でこれら分割された構造体を組み立てて一体化させる方法などによって構築される。

しかしながら、このような従来の方法では、例えば大きさが数百メートル規模の「大型」の海中構造物を構築する場合には、陸上の製作場所で一度に製作することが困難であり、かつ海上輸送も難しく、加えて外殻部の水密性を確保するのが難しくなるため、構造物の安定性が低下するという問題があった。

■本発明の効果

本発明によれば、構造物に安定した外殻部を設けることで、大径の楕円球状であっても安定な構造物を構築することができる。また、本発明の海中構造物は、水中における浮力を調整することができ、海中における上下移動を可能とする。

■特許請求の範囲のポイントなど

本発明のポイントを下記に示す。

海中に設けられ、内部空間を有する外殻部を備えた球殻海中構造物であって、


・メッシュ状に配置されたコンクリート製の躯体フレームと、


・該躯体フレームによって囲まれる部分に水密な状態で嵌合され、耐水圧性及び透明性を 有する耐水圧板を備え、


・前記外殻部の内部には、上下方向に延びる前記外殻部の中心軸に沿う中央タワー部が設 けられ、


・前記中央タワー部は、前記外殻部の中心軸に設けられるコア部と、該コア部の径方向外 側に設けられる中央タワー外殻部を備え、


・前記中央タワー外殻部は、上下方向の多層構造をなしていることを特徴とする球殻海中 構造物。

本発明の更なるポイントとして、以下が挙げられる。
・前記躯体フレームは、三角格子状に形成されていることを特徴とする。
・前記外殻部には、浮力を調整することが可能なバラストが設けられ、バラスト量を変更することで前記外殻部が上下移動することを特徴とする。

本発明の更なるポイントとして、以下が挙げられる。
・前記時間特定部は、取得された音声信号を用いてユーザーの発話内容を認識する処理を実行し、発話内容の認識に失敗した音声信号に対応する時間をユーザーが意味をなさない発声をしている時間として特定することを特徴とする。
・前記出力部は、特定された評価対象時間と、取得された音声信号から認識されたユーザーの発話内容とに応じた出力を行うことを特徴とする。

■全体構成

本発明の球殻型海中構造物の一例を図1及び図2に基づいて説明する。

【図1】球殻海中構造物の全体構成を示した側面図

【図2】球殻海中構造物の内部空間の構成を示す縦断面図

・球殻海中構造物10は、内部空間Rを形成する球状の外殻部11と、外殻部11内の内部空間Rの平面視中央に上下方向に沿って配置される中央タワー部12と、外殻部11の下方に連結されたバラスト13を備えている。


・球殻海中構造物10は、外殻部11の上部の一部分のみを海上に浮上させた状態、全体が海中に潜水させた状態、或いは外殻部11の下部の一部分のみを海中に潜らせた状態など、バラスト13の重量バランスを調整することで、海中における上下移動が可能となるよう構築されている。


・球殻海中構造物10の上部には、内部空間Rへの出入口となるエントランス部15が設けられている。


・中央タワー部12は、図2に示すように、外殻部11の上下方向に延びる中心軸Oに沿って設けられるコア部21(支持柱)と、中央タワー部12の外殻を構成する中央タワー外殻部22を備えている。


・コア部21は、鉄筋コンクリート造であり、上下方向に沿って一定の円形断面により形成されている。


・中央タワー外殻部22は、鉄骨または炭素繊維強化プラスチック(CFRP)より構成される骨組み造であって、コア部21から径方向の外側に離れた位置に配置されている。また、中央タワー外殻部22は、上端及び下端の両側から上下方向の中心に向うに従い、次第に水平断面積が小さくなる「くびれた形状」をとっている。

■細部

本発明の海上施工システムを用いた海上構築方法につき、以下の図面に基づいて説明する。

【図3】球殻海中構造物の施工状態を示す斜視図、(b)外殻部の詳細図

【図4】(a)~(c)海上施工システムを用いた施工手順を示した縦断面

図3及び図4(a)~(c)に示すように、本発明における球殻海中構造物10の海上構築方法は、躯体製造ユニット4における移動式型枠41を外殻部11の所定位置に位置決めする『第1工程』と、移動式型枠41内に混合コンクリート16Cを打設して躯体フレーム16を製造する『第2工程』と、製造された躯体フレーム16によって囲まれる被嵌合部分に仕上げユニット5を配置し、当該被嵌合部分に耐水圧板17を水密に嵌合する『第3工程』からなる。


そして、躯体製造ユニット4及び仕上げユニット5を外殻部11の形状に沿って案内ガイド3によって所定位置に移動させつつ、上記の第1工程、第2工程、及び第3工程を行う制御部で制御する構成となっている。


また、図4(a)~(c)に示すように、外殻部11の施工とほぼ同時に、中央タワー部12の施工も第2揚重設備36及び第3揚重設備37を使用して構築される。

具体的には、第2揚重設備36を使用してコア部21の上端において、スリップフォームを用いてコンクリート打設により上方に延長する。また、張出アーム31、32の下面に沿って水平走行する第3揚重設備37を使用して、鉄骨または炭素繊維強化プラスチック(CFRP)構造からなる中央タワー外殻部22を立ち上げる。なお、これら中央タワー部12に使用する資材に関しても、第1揚重設備35を使用して資材台船8より外殻部11内へ搬入される。

本発明の解錠施工システムを用いた施工状態を図5に示す。

【図5】海上で海上施工システムを用いた施工状態を示す縦断面図

図5に示すように、バラスト13は、外殻部11の海中における浮上位置を制御する機能と、波による外殻部11の振動を制御する機能を有している。バラスト13は、中空球形状をなし、外殻部11の底面から上下方向に複数(ここでは3つ)が連結されている。各バラスト13の内部には砂と空気とが所定の割合で充填されており、その砂と空気との割合を調整することにより浮力が変動される構成となっている。

なお、構築された球殻海中構造物10は、下図(図6)に示すように、状況に応じてバラスト13のバラスト量を調整して浮力を変え、海中において上下移動が可能となっている。例えば、通常時S1は、球殻海中構造物10の上部の一部が海上に出る程度の位置で保持させる。また、台風時S2などで海が荒れて海面付近で波や風の影響が大きい場合には、バラスト13の浮力を通常時S1よりも小さくして球殻海中構造物10を完全に海中に潜水させておくことができる。また、球殻海中構造物10のメンテナンス時S3には、バラスト13の浮力を通常時S1よりも大きくして例えば球殻海中構造物10の上半分以上の部分が海上に出るようにすることができる。

【図6】構築された球殻海中構造物の上下方向の移動状態を示す側面図

展望、結語

本特許に記載の発明によれば、これまで課題とされていた大型の海中構造物の製造困難性、及び海中構造物における外殻部の安定性が低下するという課題を解決し、大径の楕円球状であっても安定な海中構造物を構築することができる。本発明によれは、船舶を含む多種多様な海洋構造物のニーズにも応えることができ、世に与える貢献は非常に大きいものと推察される。

■概要

出願国:日本 発明の名称:球殻海中構造物
出願番号:特願2014-228462
特許番号:特許第6372699号
出願日:2014年11月10日
公開日:2016年5月23日
登録日:2018年7月27日
出願人:清水建設株式会社
経過情報:2018年に特許が登録され、現在も特許は維持されている
その他情報:本特許の出願国は日本のみである
IPC:B63B35/44,B63B5/20,B63B5/24,B63B43/08

<免責事由>
本解説は、主に発明の紹介を主たる目的とするもので、特許権の権利範囲(技術的範囲の解釈)に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解を示すものではありません。自社製品がこれらの技術的範囲に属するか否かについては、当社は一切の責任を負いません。技術的範囲の解釈に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解については、特許(知的財産)の専門家であるお近くの弁理士にご相談ください。