+VISION

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ウィルスに立ち向かえ!
人類を助ける特許たち

INTRODUCTION

COVID-19(新型コロナウィルス感染症)の急速な拡大により、世界中の都市がロックダウンとなり日本でも緊急事態宣言が発令され、外出自粛等の対策が取られました。
さらに基本的なウィルス対策として手洗いウガイの予防だけでなく、マスクやアルコール消毒の製品による対策も当たり前になりつつあります。
そんな中、実はその他にもウィルスや菌から身を守るための様々な技術やアイディアグッズが数多く存在し、研究者や発明家は日々、人類とウィルスの戦に挑んでいます。

今回はそんなウィルスに立ち向かう特許たちに着目し、その一部を解説していきます。

※新型コロナウィルスへの効果を証明、解説する内容ではありません。

目次

G-mist

人体フレンドリーに殺菌!

人体フレンドリーに殺菌!

2020年5月に入ってコロナウイルスの終息がやっと見え始めました。
今回の感染症の蔓延で、再び優秀な消毒液として脚光を浴びているのが、次亜塩素酸水溶液です。というのも次亜塩素酸水溶液は、高い殺菌力を有する上に、人体にも優しいという事で脚光を浴びています。しかし今までは限られた域内でのペット用品、ベビー用品、水道水、プールの殺菌等に使用されてきました。というのも次亜塩素酸は有機物や紫外線等に触れた瞬間に水に戻るという性質があり、人体には安全である反面、長期間安定して殺菌力を保つのが困難な消毒液でした。そこで次亜塩素酸液がより安定して殺菌力を保てるようにという事で「次亜塩素酸水溶液の製造又は調製方法及び装置」が発明されました。この発明のポイントは、次亜塩素酸水溶液の製造過程において、消毒力を低下させる要因となる金属イオンの除去率を大きく飛躍させた点です。この発明によって安全安心な消毒液が日本中の人の手に渡る日も近いでしょう。

■従来の課題

次亜塩素酸水溶液は、食品の殺菌洗浄、プールや医療用の消毒等を始め、幅広い分野に用いられている。

クレベリン

魔法のゲルが人類を救う?

魔法のゲルが人類を救う?

映画でも昨今のニュースにおいても、感染症や特にコロナウイルスへの危惧が度々特集されています。
こんな時に私たちの救世主となるのが、ウイルス等を退治してくれる殺菌剤です。その中でも二酸化塩素は特に、大気中ウイルスへの強い殺菌力があるものとして、殺菌剤や抗菌として重宝されてきました。しかし一方で、二酸化塩素はガス状と不安定であり、またその強い酸化力の人体への悪影響が懸念されてきました。そこで二酸化塩素を安定化させると共に、人体への安全も確保するものとして「純粋二酸化塩素液剤、これを含有するゲル状組成物及び発泡性 組成物」が発明されました。この発明のポイントは、気体である二酸化塩素を扱いやすいゲル状にした事、また気体である二酸化塩素を、濃度をほぼ一定に長期間に渡って保つ事ができる液体の製造を可能にした事です。この発明によって、ウイルスや感染症への心配から解放される日も近いかもせしれません。

二酸化塩素を利用した抗ウイルス・抗菌製剤、消臭製剤の製品に関して、2つの特許をご紹介します。
本技術に関する特許は、実は、同様の内容で2つ出願されています。第1特許および第2特許と称することにします。第1特許および第2特許は、それぞれ国際特許出願され、いったんはどちらも特許にできなかったものの、分割出願することによって、下記に紹介しますようにそれぞれ特許となっています。
最初に紹介する1番目の特許は、第1特許出願から分割出願されて、最終的には「ゲル状組成物」の内容で権利化されています。
一方、次に紹介する2番目の特許は、第2特許出願から分割出願されて、最終的には調整方法(製造方法)の内容で権利化されています。

まず、1番目の特許についてご紹介します。

■従来の課題

二酸化塩素は、酸化力を有する物質です。この酸化力によって、ウイルスや細菌を死滅させたり、嫌な臭いを消したりできます。しかし、濃度が高すぎると人体にも悪い影響を与える可能性があるため、低濃度で利用されなければなりません。

UVロボット

光が医療現場を救う!

光が医療現場を救う!

私たちが病気にかかり、また大怪我をした時に真っ先に駆けつけるのが病院。
この私たちの生命線である病院も清潔を保ってこそ、本来の役割を果たすことができます。しかし病院の清潔さを保つのは、とても大変です。というのも病室や手術室の数だけ消毒液を用いて殺菌しており、数が膨大なのに加え、拭き残しの可能性もあります。そこでより効率よく、より確実に消毒作業をということで、紫外線殺菌ロボットが発明されました。従来から紫外線を用いた殺菌の研究は行われていましたが、隅々まで消毒するのに1度に高い電力を必要とすること、携帯性、そして焼き付きの防止の3要素を同時に実現することが困難でした。本発明では、トリガ電圧回路構成、電源回路構成と占有センサを工夫することで、従来の懸念点をクリアすることができました。医療従事者の負担が軽減し、医療の現場がより安全で安心できる場となる日もすぐそこでしょう。

■従来の課題

本件発明は、病室などの閉鎖空間を紫外光で殺菌・消毒する光消毒装置、およびその方法に関するものです。

INTERVIEW

ライター

松野泰明


1976年宮城県生まれ
一般社団法人 発明学会 事務局長、『発明ライフ』編集長、発明アドバイザー
南米ブラジル、アマゾン川まで足を伸ばす釣りバカ。ブラックバスやライギョのほか、カツオ、マグロまで釣りのターゲットは多種多彩。学生時代に発明した釣り具のアイデアが、釣り雑誌に掲載、受賞したことがきっかけで、発明・アイデアに興味を持ち、発明・知的財産権の世界へ。
以来、約1万件以上の発明相談経験を通し、商品化を目指す発明家と、アイデアを求める企業との懸け橋として多くの発明成功に携わり、有名発明家やアイデアを採用する企業担当者との交流を持つ。
東京バイオテクノロジー専門学校、東京医薬専門学校、大阪ハイテクノロジー専門学校等の非常勤講師、特別講義の講師の他、全国各地の発明サークル「日曜発明学校」や、カルチャーセミナー等で、「発明・アイデア」に関する講演経験多数。
発明・アイデア、知的財産権アドバイザーとして、アイデア発想法や出願書類の書き方、アイデアの売り込み方、発明商品化の発明相談、セミナー講師等を通して、大衆発明家の育成に努めるほか、自身のライフワークである「釣り」を通して発明した、オリジナルの釣り具の販売なども行う予定。

≪主な著書≫
『ネーミング発想・商標出願かんたん教科書(中央経済社)』
『発明・アイデアの教科書(C&R研究所)』
『特許の手続きの教科書(C&R研究所)』。

——特許の概要 (商品説明、特許の活用方法など)をお聞かせください。

私が発明の世界にはいるきっかけとなったのが、上記の発明品です。
≪構造の説明≫ 略楕円形状の本体の一端に、ハリス止めを埋設し、残る一端に、プロペラをネジとカップワッシャーで固定した糸ヨレ解消具。

——アイデアのきっかけとなったエピソードなどはありますか?

私は大の釣り好きなのですが、「スピニングリール」というタイプのリールは、どのメーカーのリールも、ルアーに向かって「左回転方向」に糸ヨレが付いてしまいます。この糸ヨレが蓄積すると、ある時突然ドバっと糸がよじれて、絡んでしまい、釣りができなくなってしまいます。
そこで私は「投げて、巻いてくると、強制的に糸ヨレを戻す、右回転方向に自転する道具」を作ったらいいに違いない!と思いました。そして考えたのが、糸ヨレ解消具です。 ≪使い方≫
ヨレたラインにコブを作って、ハリス止めに引っ掛けたら、ルアーを投げる要領で投げ、まいてくるだけです。すると、糸ヨレ解消具は右回転し、左回転方向に付けられた糸ヨレが解消します。このような工夫は、釣り雑誌に投稿していたところ、なんと誌面で紹介され、金券といっしょに、編集長から嬉しい手紙をもらいました。これがきっかけで、発明と知的財産権に興味を持ち、現在に至っています。


——日頃の考え方やモノゴトに取り組む姿勢など、自分のどのような部分がアイデア発案につながったと思われますか?

趣味でも、家事や育児の日常生活や、仕事などで、「使いにくい、不便」などの課題に対し、「もっとこうしたら便利になるはず」と思ったら、試作品を作って実験をして、趣味や家事、育児を楽しみながら、繰り返し改良をしていけたことが、発案につながったと思います。
「不便・不満」に対して、「そういうものだ」と決めつけ、それら課題に耐え忍ぶ「おしん」のような人には、アイデアは出ないと思います。
「不便・不満」に対して、試作品を実際に作って問題を解決しようと、前向きに取り組み、行動に移せる人が、発明家に向いていると思います。

——アイデアの実現(開発)に関して、一番大変だったことはどんなことですか?どうやって乗り越えていったかなどエピソードもお聞かせください。

私の発明品「糸ヨレ取り具」は、約2年ぐらいあれこれ改良しながら完成させていきました。でも趣味の釣りの一部であり、苦労だとは思わず、楽しみながら改良していたのを覚えています。もし、これが仕事であり、給料をもらうための活動であれば、上司から、一日も早い完成を求められ、すごいプレッシャーになったでしょう。
私が今所属している発明学会の会員の方々は、私と同じように、趣味や家事の延長で発明くふうを楽しんでいるので、楽しみながら発明を楽しめると思います。

——新しいモノゴトを生みだすためのアドバイスをするとしたら、一番大切なことはどのようなことだと伝えますか?

自分の身の回りにある、実体験で感じた「不便・不満」に着目するとよいと思います。アイデアを求める企業の社長さんは、「消費者目線のアイデア」を求めています。実際に困っている現実から生まれた、アイデアは、リアリティがあり、使い込まれた試作品によって、その必要性が社長に伝わり、商品化されやすいです。
ポイントは、「自分が専門家でいられる分野」で、取り組むことです。 発明学会の会員は、これまでたくさんの商品化採用例を出してきました。そのすべてが、実体験から生まれたものです。
例えば主婦発明家が採用されるのは、ほとんどが「家庭用品」の分野です。台所や掃除、洗濯、フィットネスなど、自分が必要であり、当事者であるからこそ生まれた発明品ばかりです。

——企画のスタートから特許取得に至るまで、どれくらいの期間がかかると想定されていましたか?また、実際にはどれくらいの期間が必要でしたか?

私の「糸ヨレ取り具」は雑誌に投稿後、出願はもちろん、商品化をすることもしませんでした。でも、試作品そのままの形を出願しないでよかったと思います。
実は、その後、他の釣り具メーカーから、写真のような糸ヨレ取り具が発売されました。 私の発明品も、この商品も、どちらも投げて巻けば、右回転方向にぐるぐる回ってくるので、「右回転方向に自転させて糸ヨレを取る」という理論・効果・使い方は全く同じです。 しかし、唯一、構造が、私の発明品よりも圧倒的にシンプルで、量産性や操作性など、あらゆる点で優れています。
発明学会の会員相談で、実際に相談をしているときにいつも思うのが、皆さんは「第一次試作品」で満足して、その形で特許出願しようとする点です。
私は出願しませんでしたが、たとえば、もし出願するとした場合、試作品のそのままの形である、「略楕円形状の本体の一端に、ハリス止めを埋設し、残る一端に、プロペラをネジとカップワッシャーで固定した糸ヨレ取り具」として権利範囲を書いてしまうんです。 でも、これではだめです。部品点数が多いからコスト高になるし、取り付け作業が多いから、量産性にもすぐれません。 右回転すればいいのですから、「プロペラ」と限定したら、ダメ。 一体成型で作れる「本体に右回転方向に自転するように、溝を切ったもの」など、もっと量産性やコストの面にも目を向けないといけません。 特許出願をする際は、発明の効果だけでなく、モノづくりの現場を知り、日々コストダウンと収益性アップのことを考えている社長さんや開発課部長さんの立場に立って、量産性やコストの問題まで考えた特許請求の範囲にしなければいけないと思います。
でも、発明家は、最初に試作品を作ったものが頭にあるので、それ以外の「右回転方向に回転させる手段」まで、頭がまわらない結果、抜け道だらけの権利になってしまいがちです。 企業にアイデアが採用される際は、必ずと言っていいほど、構造が変わります。つまり、量産性に優れた構造に変更されたり、プラスチック製品の場合、より安い費用でプラスチック成型に必要な金型を作れる形状に、変更されるのです。 ですから、理想は、「出願してから売り込む」よりも、「まず売り込んで、企業に気に入ってもらい、企業が商品化する形状が決定したら、図面一式をもらい出願する」方法が、一番無駄がなく良いと思います。 発明者側で、製造の知識や金型の知識なんてありませんから、法律論で権利化することと、モノ作りの現場で、実際に機械を動かして製品を作っていくことを逆にしてしまうと、ムダが多いんです。 特許出願費用も、自分で書類を作ったとしても一件14,000円もかかるわけですから、一般の人には費用もあまりかけられないはず。それよりも企業と一緒に共同開発していくことが必要。そのためには、発明家と企業との接点を持つことができないと、商品化採用はなかなか難しいと思います。

——特許取得に至るまで、どれくらいのコスト(開発・特許申請の金銭面、労力面)が必要でしたか?
私は特許出願はしませんでしたので、出願に関する費用は掛かっていませんが、試作品作成やテスト釣行などにはお金がかかっています。 趣味の延長ですから、いくらお金がかかったかは覚えていません。 町の発明家が商品化採用を目指す際は、どうせお金をかけるのであれば、「出願」にお金をかけるより「試作」にお金をかけてほしいと思います。 試作品がない発明品は、ほぼ採用されません。また、実際に効果が確かめられないものも、採用は難しいでしょう。  たとえ見た目が悪くても、発明の効果さえ確かめることができれば十分です。試作品を見た企業の社長さんに、興味を持ってもらうためにも、試作品と実験は頑張っていただきたいと思います。

——特許取得に関して、一番大変なことはどんなことだと思いますか?
これも、私は特許出願はしていないので、発明学会の発明事業化の経験からお話しします。
特許取得よりも、売り込みをして、企業の社長の心を動かすことのほうが大変です。 そして、その商品を販売するために、マスコミを利用したりと、世の中に拡販していくことももっと大変です。 権利対策は、企業の社長の心を動かし、実際にその会社で採用する形が決まったら、その時に、その図面を使って出願すればよいだけですから、ある意味一番カンタンと言えるかもしれませんね。

——特許取得による結果どのように展開することができるかをお聞かせください。
これも、私は特許出願はしていないので、発明学会の発明事業化の経験からお話しします。
下記3つのパズルの発明品があります。
これはすべて異なる3社から商品化契約された、当会会員の発明品ですが、なんと一つの特許権から、3件もの実施料契約を結んでいます。特許権のライセンスは、特許権をただ売ることではありません。購買ターゲットに合わせた新事業を提案することであり、ある会社には「幼児用知育玩具」として、またある会社には「幼稚園小学校低学年向けパズル」として、そして最後は「大人用超難解頭の体操用パズル」として売るなど、顧客層の違いごとに契約を結ぶことができるわけです。 こうなると、一件の特許から、3倍の実施料を得ることができます。売り込みの際は、ここも見据えてプレゼンする必要があり、これを可能にする契約方法などもアドバイスしています。

——今後の特許の未来への展開・発展、もしくは、新たな企画の方向性など、これからの活動について、公開できる範囲でお聞かせください。
発明学会と、私松野のこれからの目標としてお答えいたします。
発明学会としては、発明家のアイデアに対し、「発想が面白い!ぜひわが社で商品化したい!」という会社と出会う機会を増やすことが、無駄なく商品化を目指す近道だと思っています。 そこで発明学会では、「身近なヒント発明展」「ミニコンクール」という、「アイデアを求める企業」が協賛する、発明コンクールを開催し、「企業」と「発明家」の接点を作っています。 プレスの歯が入らない。金型が作れないという問題は、発明家にはもちろん、我々だってわからないことがあります。 でも、身近な生活の中でひらめいたくふうが、大ヒット発明に化けるかもしれない。それをめざして、ひらめいたアイデアを特許出願していなくても応募ができるようにして、企業側に見てもらう機会を作っています。
発明学会は面白い商品がたくさん取材できるとあって、昔から交流のあるテレビ局があります。このマスコミを利用した試みも行っています。 当会では、商品化採用が決まったら、100名近い発明画家が参加する東京発明学校というイベントの中で、「公開契約調印式」を開催しています。 このイベント開催情報をマスコミに流すと、取材に来てくれるのです。 テレビで新商品が紹介されると、注文が殺到し、発売前に初速がついて企業は喜ぶし、発明家はテレビに出られて大喜び。発明学会も「町の発明家を応援する公益法人」としての名をアピールできてうれしいわけです。
私自身としては、試作品段階の相談から、出願書類のアドバイス、良さそうな企業の紹介から、商品化契約、マスコミ出演支援まで、新商品が誕生するすべてに携わる事ができて、とても楽しい毎日を送っています。 元々、工夫が好きで、釣りにものめり込んでいったわけですが、今、釣り具の発明に着手中です。ジュラルミンをマシニングで切削し、趣味のライギョ釣りで実釣による実験の最中です。 試作の段階で釣り具屋にも営業を行い、販売手数料の交渉も無事終わり、商品化された際は取り扱いも決まっています。 ぜひ今年中には、商品化させ、自分のアイデア商品を世の中に出していきたいです。

取材協力:一般社団法人 発明学会 https://www.hatsumei.or.jp/