キャンプをより快適に!特許取得のアウトドアギア3選

目次

INTRODUCTION

太陽の日差しと吹き抜ける風が最高に心地よい季節は、非日常を求めてアウトドアライフを楽しみたくなりますよね。

バーベキューやキャンプは、大人も子供も、誰もがわくわくするイベントです。一口にキャンプと言っても、最近はそのスタイルが非常に多様化していて、例えばお金をかけずに楽しめる車中泊だったり、一人キャンプなども流行しています。わざと過酷な自然環境に身を置く、という限界突破型の楽しみ方もあるようです。

数年前にはアウトドアを楽しむキャンプをラグジュアリーに進化させた「グランピング(グラマラス+キャンプ)」という言葉も生まれ、多種多様なキャンプスタイルが楽しまれています。

今回は、キャンプを行うために用意すべき、さまざまなキャンプ道具についての特許をご紹介したいと思います。

キャンプ道具なんて昔から変わらないでしょ、なんて思うかもしれませんが、実は日々進化しているのです。
特に、昨今のアウトドアブームによって、キャンプに関わる人が多くなればなるほど、発明の機会は多くなるわけですから、それだけ多くの特許が生まれるというわけですね。

では、キャンプ道具にまつわる特許情報の一部を解説していきます。

寝心地アップ!テントのようなハンモック

寝心地アップ!テントのようなハンモック

寒い季節が終わり、屋外活動が気持ち良い時期になると、都会の喧騒や人混みを避けて、キャンプに行きたくなりますよね。

キャンプといえば大自然に囲まれた中でのテント泊が楽しみの一つ、という方は多いのではないでしょうか。

また、木の間にハンモックを吊るしてゆったりと揺られるというのも、憧れますよね。

ところで、ハンモックというのは、椅子として使用する「ベンチ用ハンモック」と、ベッド代わりに使用する「睡眠用ハンモック」の2つに大きく分けられます。

このうち、睡眠用ハンモックは、従来からいくつかの構造的欠陥が指摘され、快適な睡眠が得られにくいという問題がありました。

すなわち、従来型の睡眠用ハンモックでは、多くの場合、非平坦で湾曲した形状となり、使用者の快適性に悪影響を与えていました。

さらに、安定性を提供するための張力を適切に分布させるには不十分な構造であり、これにより十分な耐久性を発揮することができませんでした。

そこで、米国ユタ州在住のデレク・ティロットソン氏(ILLOTSON, Derek)は、ハンモックの快適性を向上させ、さらには多くの屋外活動(例えばバックパッキングなど)にも適用できる新たなハンモックの構造を発明し、米国特許商標庁を受理官庁として、2019年10月19日に特許協力条約に基づく国際特許出願を行いました(国際公開番号:WO2020/082093)。

このハンモックは、テントとしても使用できるように蚊帳(網)やフラップが設けられています。

従来のハンモックと異なり、ハンモックの両側2点で木などに支持させるのではなく、2本の木の間に渡されたロープ(リッジライン)に吊り下げられるように寝台が構築されます。

このような構造とすることで、ハンモックの両側(頭と足側)が斜め上に引っ張られることがなくなり、横たわった際に腰が落ちてしまうことが防止できるのです。

本発明では、ハンモックを吊るすロープにかかる力の方向を論理的にコントロールし、単純な構造ながら、上述した従来の問題点を解決する発明となっています。

そして、単純な構造ゆえに、畳んだ際には非常にコンパクトになり、登山の荷物量をぐっと減らせると考えられます。

発明者のデレク氏は日頃からアウトドアライフを楽しんでいるそうですが、このような個人発明家のアイディアが特許とともに製品化されるなんてすごいことですね。

必要は発明の母、といいますが、我々もなにか発明できることはないか、身の回りを見渡すことからはじめてみるといいかもしれませんね。

目的

本発明は、従来の睡眠用ハンモック(例えばハンモックテントなど。座るためのハンモックチェアとは区別されます)が従来抱えていた構造的・設計的欠点を改善し、従来型のハンモックにおける利用者への不快感を解消させることを目的として国際出願されたものです。

普段目にする睡眠用ハンモック

我々が普段目にする睡眠用ハンモックは、非平坦で湾曲した面で寝ることになります。

「そんなことは常識」と思うかもしれませんが、このような姿勢は、使用者の快適性や身体の支持(安定性)に多くの悪影響を与えます。

このような問題点は古くから指摘されており、従来市販されているハンモックの中にも、平坦な寝床面を有する、いわゆる平坦プラットフォーム型の睡眠用ハンモックも存在しています。

しかし、平坦プラットフォーム型のハンモックであっても、どれも不安定であったり、耐久性に問題があるものばかりでした。

一般的にハンモックは屋外のキャンプ等で使われるため、耐久性が要求されます。このような背景から、従来の平坦プラットフォーム型ハンモックは、耐久性や剛性を高めるために、とてもかさばり、かつ重量が大きくなってしまい、バックパッキングなどの屋外活動には不向きなものでした。

新たな構造のハンモックテント

そこで、米国ユタ州在住のアウトドアを愛好する発明家、デレク・ティロットソン氏(Derek Tillotson)は、上記問題点を解決するために、新たな構造のハンモックテントを発明しました。

なお、当該発明を特許出願後に、クラウドファンディングにて資金を調達し、すでに一般販売に至っています。

本発明と従来発明の共通点

本発明では、垂直に立っている木々など、2つの支点の間にハンモックを吊るすという基本概念は同じです。

従来のハンモック

しかし、従来のハンモックの場合、2つの支点に向かって、寝床面が直接斜めに引っ張られる構造となっていました。

このため、寝床面に寝転ぶと、頭と足が斜め上に向いてしまい、自らの体重によって寝床面が変形し、腰が落ちてしまうことが避けられませんでした。

本発明のハンモック

これに対して、本発明のハンモックの場合には、2つの支点に向かって、リッジラインを構成する一本のワイヤーを設けるだけで、従来の問題点を解決しました。

このリッジラインこそが、本発明の最大の特徴といえます。

【図1】本発明実施例

【図2】本発明実施例の側面図

プラットフォーム114

本発明では、図1−2の通り、平坦なプラットフォーム114を有しています。

このプラットフォームに使用者が寝転んでも、従来型ハンモックのように、2つの支点に向かって斜めにプラットフォームが引っ張られることはありません。

それはリッジライン104が存在しているために、2つの取付点112で使用者の体重が支持されるからです。

この構造において、使用者が寝転がるプラットフォーム部分は、張力をもったリッジラインに対して単にぶら下がるだけの構造になっているために、プラットフォームの変形が起こりにくいというわけなのです。

リッジライン104

このリッジラインは本発明の心臓部ともいえ、張力に対して耐久性のある素材が選択されます。

本発明の明細書には、一例としてナイロン製のウェビング構造が示されていますが、もちろんこれに限定されるわけではありません。

【図3】本発明実施例の平面展開図

リッジライン104

図3は本発明のハンモックを平面的に展開したものです。リッジライン104はワイヤー等のロープですが、その他の構成要素は軽量で耐水性を有するクロス(例えばナイロンやポリエステル)であって、通常のテント等にも使われているものです。

よって、不必要に重量が増したり、かさばったりすることもないことが示されています。

これによって、例えばバックパッキングなど、キャンプ用品の小型化・軽量化が要求される活動にも、採用可能となっています。

リッジラインに対して、テントとなるナイロンクロス等をかけることによって、簡便にハンモックテントとすることも可能です。

本発明において、リッジラインは体重を分散させる役割を担いますが、テントや蚊帳(メッシュ)などを設置するのにも役に立つというわけです。

【図4】本発明実施例のテントキャノピー内部

テントのキャノピー内部

リッジライン104にぶら下がるテントのキャノピー内部は上記のような構造となっています。

居住空間を広げるためのスプレッダー・バー146は任意に設けられます。

テント内部にあると便利なポケット136は、種々のテントに用意されているものですね。

そして、快適な就寝に役立つベッドパッド150が用意されます。

これはエアーで膨らませるタイプですが、これも一般的にテント泊で用いられているものですが、ハンモックで適用できると快適性がさらに増しますね。

【図5】本発明実施例のハンモックテント一部拡大図

本発明のハンモックテント

本発明のハンモックテントは、設営にあたりリッジラインに張力がかかるように設営しなければなりませんが、プラットフォーム114に使用者が体重をかけたことに起因してリッジラインに張力が働きますので、ハンモックテントの設営にあたっては、左図のようにリッジライン104が45°の角度まで緩んでいても問題ないそうです。

これにより、設営の難易度について厳密性を求めるものではなくなり、安全性が高まったといえます。

このように、従来のハンモックの問題点をたった一本のリッジラインを用意することで解決し、快適性を向上させるばかりでなく、軽量化や設営の簡易性も併せ持たせることが可能となりました。

発明の名称:Hammock Tents and Related Camping Systems
出願番号:PCT/US2019/058556
国際公開番号:WO2020/082093A1
出願日:2019年10月29日
国際公開日:2020年4月23日
出願人:Derek Tillotson
経過情報:当該国際特許出願の国際調査報告は、韓国特許庁の審査官によって行われ、新規性及び進歩性ありという見解が報告されている。

<免責事由>
本解説は、主に発明の紹介を主たる目的とするもので、特許権の権利範囲(技術的範囲の解釈)に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解を示すものではありません。自社製品がこれらの技術的範囲に属するか否かについては、当社は一切の責任を負いません。技術的範囲の解釈に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解については、特許(知的財産)の専門家であるお近くの弁理士にご相談ください。

2秒で設営完了!?画期的折り畳み式テント

2秒で設営完了!?画期的折り畳み式テント

初夏から秋にかけて、日本ではキャンプ場や登山などでテント泊を楽しむアウトドア愛好家が大勢いらっしゃいます。

キャンプといえば、なによりテント泊が代名詞ですよね。テントの中で仲間や恋人、家族で過ごす時間は、貴重な思い出づくりに最高です。

でも、テントって設営に時間がかかったり、かさばって重たい、金属の支柱を複雑に組み合わせるのが難しい、といった理由から、意外とテントを難なく設営及び収納できる方って少ないのではないでしょうか(逆に、テントを早く設営できる人をみると、ちょっと憧れちゃいますよね)。

このような背景から、テントを素早く展開したり、収納したりすることを目指した製品は、これまで数多く開発されてきました。

しかしながら、このようなテントの欠点は、多くの場合、内部に支柱を設けないことにも起因して、内部容積が小さくなってしまうことでした。

このため、ユーザーが横になったときに、十分な床面積が確保できないという問題点がありました。

さらには、テントの骨組みであるロッドを複雑に組み合わせる必要があり、設営に時間がかかるという問題もありました。

そこで、フランスのアウトドアスポーツメーカーDECATHLONは、2つの傘(アンブレラ)をつなげたような構造のテントを開発し、ちょうど折りたたんだ2つの傘を順番に開くような動作機構によって、わずか数秒で設営が完了するテントを発明しました。

この発明は、2018年10月17日にフランス特許庁に出願され、その後フランスで特許権を取得(特許番号:FR.3087466.B1)、そしてフランスでの出願を優先権基礎とした出願を、日本を含む10カ国に行いました(日本での公開番号:特開2020-76301、公開日:2020年5月21日)。

この出願に係るテントは、Quechua(ケシュア)というブランドから「2 SECONDS EASY」という商品名で既に販売されており、日本国内でも入手が可能です。

商品名の「2秒」というのはちょっと大げさかな、とも思えますが、従来知られているテントよりは大幅に短時間で簡単に設営できそうです。

また、このテントは畳んだ際には2つの傘を束ねたような形となり、円筒形状の格納袋に格納し、簡単に持ち運べるようになります。

このような画期的構造のテントを用いて、設営に時間をとられることなく、キャンプをさらに楽しめるようになるといいですね。素早く設営、撤収すれば、キャンプ慣れしたカッコいい大人にみえるかも・・・?

極寒でも快適睡眠、快適性を向上させた寝袋

極寒でも快適睡眠、快適性を向上させた寝袋

アウトドアで宿泊する場合、ある程度気温の高い夏場は別として、気温の下がる季節や場所では睡眠中の体温管理のために、寝袋(シュラフ)の使用は安全面から見ても好ましいでしょう。

最近では様々な場所で車中泊をすることがブームになっていますが、車の中であっても、就寝中にずっとエンジンをかけておくわけにはいきませんから、寝袋があると安心です。

寝袋は大きく分けて二通り、その構造から、いわゆる「封筒型」と「マミー型」に分けられます。かなり例外的なものとして、寝袋を着たまま動き回れるような「ヒト型」なんていうものもありますが、構造的に単純な封筒型は、保温性は比較的劣るものの、価格が安く、寝袋内での身動きがしやすいという特徴があります。

マミー型は隙間ができにくく、少々動きにくくはなりますが保温性が高く、氷点下でも使用可能なものが多いという特徴があります。

今回の発明は、マミー型の寝袋に関するものとなり、従来よりもさらに保温性及び快適性を向上させることを目的につくられました。

この寝袋は広島のアウトドアメーカーBears Rock社が開発し、2015年4月6日に特許出願され、2019年6月21日に特許が登録されています(特許番号:特許第6542564号)。

さて、従来のマミー型寝袋では、寝袋に入った後、最後に顔の部分を締める際、寝袋の開口縁を縮めるような機構であったため、どうしても開口部が横長の形状になってしまい、特に頬に対応する横の部分の間隔が開いてしまい、十分な密閉性が確保できない(つまりここから冷気が入ってきてしまう)という問題がありました。

そこで、使用者の顔部分を露出可能な開口部の周縁部を、使用者の顔部分の形状に似た形状に維持できるようにしたものが、今回の発明となります。

この発明を採用した寝袋は、Bears Rock社から既に販売されており、なんと−34℃の環境下でも使用可能という、圧倒的性能を誇ります。

アウトドア愛好家の間では大人気の商品のようで、品薄が続いているそうです。

寝袋は、キャンプなどのアウトドア・レジャーだけでなく、災害時にも活躍することが想定されますから、本発明品のような高性能なものを家族の人数分、揃えておいてもいいかもしれませんね。

総評

ライター

コロナ禍で「ソロキャン」や「お家キャンプ」など、本格的なアウトドアよりも気軽に楽しめるアウトドアがトレンドとなってます。

それに伴いアウトドアギアも”性能・品質”から、”簡単さ・快適性”のニーズが高まっており、それに向けた様々な商品が発売さています。

今回解説されている特許らも、そういったトレンドニーズを満たす発明商品の根幹になっています。

アウトドアギアの中でも、本格的なものに関してはテクノロジーや最先端技術が必要になってきますが、簡単さや快適性のニーズに対応するには、「折り方」「組み立て方」「切り方」など、ちょっとした工夫で画期的な商品が生まれる可能性があります。

そういった意味では、技術や専門知識がなくても、誰でもちょっとしたアイディアでヒット商品を発明できる可能性を秘めていそうですね。

また、本来自然を楽しむためのアウトドアなので、商品自体もアナログで古典的な商品であった方が、現在のトレンドマーケットに対しては親和性が高いと考えられます。

今後も、コロナ状況が落ち着いてもSDGsや環境・自然への意識の強まりから、この「気軽に楽しめるアウトドア」のトレンドは続くと思われ、競合商品や類似商品が多くでてくる分野だと予想してます。
そうなると、特許や意匠などで差別化することは商品をマーケティングする上で重要な要素になりそうです。