プレイヤーも開発者も白熱!eスポーツ特許特集〜ソフト編〜

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プレイヤーも開発者も白熱!
eスポーツ特許特集〜ソフト編〜

目次

INTRODUCTION

ドイツの調査会社Statistaの統計によると、2020年における世界のゲーム人口は約27億人といわれ、ゲーム業界の市場規模予測として、2027年には68億2000万ドル(約7400億円)もの巨大市場になると予測されています。

このようなゲーム業界の中で、競技としてのゲーム、いわゆるeSportsの市場規模も拡大を続けると予測されており、9億5750万ドル(2019年)から16億1770万ドル(2024年)への成長が見込まれています。
参考)https://www.statista.com/statistics/490522/global-esports-market-revenue/

このように、世界中で人気が高まっているeSportsについて、今回も前回の特集に引き続き、今度はソフトウェアの観点から、特許をご紹介したいと思います。

自宅で過ごす時間が長くなっている世界情勢の中にあって、eSportsは誰もが楽しめる、世界的エンタメとなっています。

しかし、当然のことではありますが、eSportsはプラットフォームとなる優良なソフトウェアがあってはじめて楽しめるものです。このようなソフトウェアに対しても、数多くの特許が取得され、活用されています。

みなさんご存知のゲームについても、実は特許が隠れていたのか、と驚くことと思いますよ。

では、eSportsソフトウェアにまつわる特許情報の一部を解説していきます。

弱点を生成するためのシステム

単調なリソース集めを退屈させないアイデア特許

単調なリソース集めを退屈させないアイデア特許

先の見えない外出自粛が続いていますが、そのような背景から、オンラインゲームを新たに始めた方も多いのではないでしょうか。

時間はたっぷりあるけど外に遊びにいくわけにもいかない、という方にとってはゲームの世界はとても魅力的ですよね。

ところで、世界的なヒットとなっているフォートナイトやRUSTなど、多くのゲームでは、他のプレイヤーよりも優位に立ったり、または「建築」を行ったり、アイテムの生成を行うために、いわゆる「リソース(原料)」の収集をしなければなりません。

ロールプレイングゲームで敵を倒して得られる「経験値」に近いかもしれませんが、リソース集めをたくさん行ってリソースを貯め込むことによって、望みの報酬やアイテム等が得られるというわけです。

しかし、これらのリソース集めは、時間がかかる割には、単調で退屈な作業を延々としないといけないという側面があり、この点がゲームの面白さを半減させてしまうという現状がありました。

そして、その単調さからか、リソース収集を簡易化するような不正改造プログラム(チートコード)まで出回るようになっているのです。

そこで、米国のゲーム会社大手EPIC GAMES INC.は、リソース収集の単調さをなるべく回避するための特許を出願し、2017年8月29日に米国特許庁USPTOにて特許が認められました。この特許は一見非常に単純です。

リソース収集のためには、ゲーム内においてプレイヤーは所定の構造物(車や岩石など)を、武器やツルハシなどを使って破壊していく必要があるのですが、このとき、破壊対象の構造物の「弱点」が表示されるようにし、ここをピンポイントで叩くことで多くのダメージが入ったり、短時間で構造物を破壊してリソースを入手できるようにしました。

このようにすることで、ただ単純に構造物を叩いて破壊するというだけでなく、弱点を探して効率的にリソースを集めるという新たな目的が生まれ、これにより退屈さを回避することができるようになったのです。

このようなゲーム内の仮想的な仕組みについても、しっかりと審査がされ、特許が認められています。

私達が普段なにげなく遊んでいるゲームにも、たくさんの特許がひそんでいるかもしれませんね。

 

弱点を生成するためのシステム及び方法

本発明は、ゲームプレイの間に、ゲーム内の物体(オブジェクト)の「弱点」を表示するための動的計算のためのシステム及び方法の提供について出願され、特許化されたものです。

ここでいう「弱点」とは、プレイヤーが操るキャラクタ等が対象オブジェクトを攻撃するなどして衝撃を与えた際に、そのオブジェクトの表面上のどこかに出現する攻撃ポイントのことをいいます。

プレイヤーは、表示された弱点となるポイントを攻撃することで、より多くのダメージを当該オブジェクトに与えることができます。

また、プレイヤーの操るカメラや視点は、生成される可能性のある任意の弱点を見つけるために使用されます。

リソース集めの苦痛

多くのコンピュータゲームでは、ゲーム内でのアイテム収集や、他のプレイヤーよりも優位に立つためのリソースあつめが必要となっています。

しかし、このようなリソース収集は単調であり、多くのプレイヤーにとって苦痛となるものでした。

その結果、これらの行動が単なる「作業」となってしまい、ゲームによって本来得られるであろうプレイ体験とはかけ離れたものとなってしまっていました。

さらには、この単調な作業を回避するためのチートコード(不正プログラム)などが使われるようになっていました。

従来ゲームにおける弱点

また、従来のゲームにおいてもオブジェクトに「弱点」を表示させるという機能があったものもありますが、これらの弱点は静的な、固定された部位に設定されるものでした。

言い換えれば、ゲームを製作するときに事前に計算された位置に弱点が設けられるというものでした。

したがって、この固定された弱点の位置が判明すれば、プレイヤーはこの位置を記憶することができるわけですから、結局のところリソース収集等が単調な作業であることに変わりがないということになっていました。

弱点ポイントの表示

そこで、本発明では、プレイヤーがキャラクターを介してオブジェクトを攻撃すると、当該オブジェクトの表面のうち、攻撃された場所とは違う場所のどこかに弱点ポイントが表示されることがあり、

プレイヤーがその弱点を攻撃すると、弱点の表示が一旦消え、オブジェクトに与えられたダメージが増加して積算されるということにしました。

これらの弱点生成の計算を、ゲーム中にリアルタイムに行うという点が、本発明の最大の特徴です。

【図1】本発明実施例のフローチャート

サイクルフロー

本発明では、206〜212のサイクルフローを、ゲームプレイ中に、リアルタイムに実行します。

すなわち、オブジェクトを攻撃するたびに、208が実行されるというわけです。

なお、弱点ポイントの生成は、静的なオブジェクトに限定されるものではありません。

例えば、非プレイヤーキャラクタ(NPC)または他の動的な、移動物体等に弱点ポイントを生成することも可能です。

また、オブジェクトを攻撃する目的についても、例えば車両を攻撃することで金属や車のパーツなどのリソースを得ることや、

ゲームの進行上、必要な経路をクリアするために邪魔なオブジェクトを破壊することや、ゲーム空間のレイアウトを変更するための攻撃など、様々な理由を含みます。

【図2】例示的な弱点生成方法のフローチャート

弱点生成のための一連

上記フローチャートは弱点生成のための一例ですが、302でプレイヤーがオブジェクトを攻撃すると、304でサーバーはプレイヤーのカメラ位置と方向が決定されます。

306でオブジェクトの表面上の点が識別されます。これは、任意のカメラ位置からみて、

オブジェクトを打撃したことをトレースし、プレイヤーのカメラの位置及び方向から生成された弱点が確実に視認できるようにするために使用されます。

308では、生成されたポイントが記録されます。オブジェクトが攻撃された点も記録され、

また、副次的に使用している武器/工具の種類やオブジェクトの初期ヒットの角度、オブジェクトの初期ヒット位置、ヒットした回数などを記録することが可能です。

310で、記録された点が互いに比較されます。弱点が生成される位置については、プレイヤーの熟練度が考慮される場合もあります。

より高いレベルの/熟練したプレイヤーには、より硬い弱点が提供される場合もあります。

312では比較に基づいて、最良の弱点ポイントが選択されます。

314で、最良の位置での弱点生成がされます。

弱点ポイントは、特定の位置に生成させることもでき、また、特定の長さの時間だけ生成されるように、寿命を有する弱点とすることもできます。

【図3】例示的な弱点生成方法のフローチャート

第2弱点

本発明の実施形態は図のような例示で説明できます。

プレイヤーが操るキャラクタ402は、武器404を有しています。もちろん、種々の武器のスタイル、タイプが想定できます。

プレイヤーが攻撃できる箇所が、照準406として表示されていてもよいでしょう。

このようにして、プレイヤーは車両オブジェクトを標的とすることができます。

もちろん、車両に限らず、人間、動物、または他の生命体等で置き換えることも考えられます。

このとき、上記例示では、「第2弱点」702が表示されています。

第2弱点はプレイヤーがオブジェクトを攻撃してから表出する弱点とは、異なる効果(報酬)を設定することができます。

【図4】例示的な弱点生成方法のフローチャート

弱点にアニメーションを付与

次に、プレイヤーキャラクタは武器404によって車両オブジェクト408の標的406の位置を攻撃します。

打撃によって、デブリ雲502を発生させてもよいでしょう。

そして、打撃の結果として、弱点ポイントである504が表示されます。弱点504の表示は一時的であってもよく、所定の長さの時間だけ現れるということにしてもよいでしょう。

時間の長さは所定のファクターに基づいてよく、例えば、プレイヤーキャラクタ402のレベルまたはスキルセット、武器404、車両408の種類など、様々な要因を含むことが可能です。

また、現れる弱点504にはアニメーションが付与されていてもよく、例えば、稲妻のようなアニメーションを伴っていてもよいでしょう。

より面白みを付与できる

このようにして、ゲーム内のオブジェクトを破壊等することで行われるリソース収集など、従来は単調な作業が、

動的に生成される弱点ポイントの発現によって、より面白みをもったゲーム体験としてプレイヤーが楽しめるようになりました。

修復ポイント

また、本発明は「弱点」の生成という名称がついていますが、同様の手法で、例えばゲーム内の建築物の一部を叩いて修復する「修復ポイント」の発現にも応用が可能となっています。


発明の名称:System and Method For Object Breakpoints Generation
出願番号:US2015/183029
特許番号:US9744461B1
出願日:2016.6.15
出願人:Epic Games, Inc
経過情報:2017年8月29日に米国特許庁(USPTO)にて特許済。

<免責事由>
本解説は、主に発明の紹介を主たる目的とするもので、特許権の権利範囲(技術的範囲の解釈)に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解を示すものではありません。自社製品がこれらの技術的範囲に属するか否かについては、当社は一切の責任を負いません。技術的範囲の解釈に関する見解及び発明の要旨認定に関する見解については、特許(知的財産)の専門家であるお近くの弁理士にご相談ください。

画像表示システム

現実世界の映像にリアルタイムで仮想世界映像を融合させる

現実世界の映像にリアルタイムで仮想世界映像を融合させる

昨今のVR/AR技術の進歩と一般化によって、家庭用ゲーム等のハードウェアとしてヘッドマウントディスプレイ(HMD、VRゴーグルともいわれています)は気軽に購入できる機器となってきました。

初期のHMDは仮想現実の世界のみを見せるものでしたが、昨今では現実世界の映像情報に仮想世界の映像情報をリアルタイムで融合させることのできる装置として一般的に認知されています。

しかし、従来のHMDでは、仮想世界の映像情報を表示することができても、その映像情報を装着者の動き(特に手や足の動き)に合わせて変化させることができず、映像への没入感や臨場感を高めることができませんでした。

そこで、meleap社(東京都港区)は、装着者の位置と動きに応じてHMDに表示する映像情報を制御することのできるシステムを開発し、2016年1月15日に特許出願し、2018年6月12日に特許査定を受け、2018年7月6日に特許登録となりました(特許第6362631号、権利存続中)。

また、世界153カ国を指定国とした国際特許出願も行っています。(国際公開番号:WO2017/122367)

この発明では、プレイヤーから見えるAR視野に対して、HMDが有するカメラによってリアルタイムで撮影した現実世界の映像情報と、CGで生成された仮想世界の映像情報をミックスして映し出し、

さらに、プレイヤーが自らの身体を動かすことで、その動きに応じたコマンドを発動することができるようにしました。

さらに、HMDのカメラとは異なるカメラを用意し、少し離れた場所からプレイヤー自身を撮影することによって、

例えばHMDのAR視野内でプレイヤーとモンスターが戦っている場合、第三者の視点でプレイヤーとモンスターとを両方表示させて、観客の視点で見ることもできるようにしました。

これにより、プレイヤーとモンスターとの戦いを「観戦」することができ、プレイヤーと観客との一体感を強めることができるのです。

プレイヤーはHMDを頭部(眼部)につけ、腕や足にはモーションセンサーを装着します。モーションセンサーが検出する動きに対応してコマンドを割り当てることができ、

例えば両腕を顔の前でクロスさせる動きが「防御」、腕を前方に素早く突き出す動きが「攻撃」、腕を素早く揺さぶる動きが「武器の切り替え」といった複数のコマンドが考えられます。

HMDや外部カメラとしては一般的なスマートフォンなどの携帯端末でよく、このような端末を用いてリアルタイムでのCG生成とサーバとの通信を同時に行うことができます。

既に一般的に普及した機器であるスマホを使って、このような仮想空間を観客と一緒に楽しめるようになると、自宅でのゲーム時間も孤独感なく過ごせそうですね。

過度な課金を防ぎつつもゲームの楽しさを低下させないプログラム

ゲームの楽しさを維持しつつ、課金しすぎを制限できる?

ゲームの楽しさを維持しつつ、課金しすぎを制限できる?

ソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)型のネットワークシステムを利用した、いわゆるソーシャルゲーム(ソシャゲ)は、スマートフォンなどの携帯型情報通信端末をプラットフォームとして広く普及し、若者だけでなく、年代を問わず楽しまれています。

ユーザーは、スマホを介して、他のユーザーとの間で格闘ゲーム、戦闘ゲーム、RPGなどのゲームを、いつでも、どこにいても楽しめるというわけです。

また、最近ではSNS等を利用してユーザーが指定したアイテムや音楽、画像などの各種アイテムデータをユーザーに提供するマーケットや、様々なアイテムの中からランダムにユーザーへ提供を行う抽選イベント(いわゆるガチャ)も登場してきました。

ところで、上記ガチャイベントというものは、アイテムを獲得するための娯楽性はあるものの、ガチャを引くこと自体が射幸心(幸運を得たいと願う、人間の本質的な心理的欲求のこと)を強く煽る構造にもなっており、プレイヤーによっては希望するアイテムを獲得するまで、繰り返しガチャを実行させてしまい、結果として高額な課金が生じてしまう要因にもなっています。

特に、現在ソーシャルゲームで行われているガチャシステムにおいては、当選確率の低い「レアアイテム」を獲得可能に設定することによって、より高額な課金の要因になっているといえます。

そこで、ゲーム業界大手のバンダイナムコエンターテインメント社は、ガチャシステムのような射幸心を煽ることによって生じる過度な課金を制限する一方で、課金に基づいてゲームを進行させる場合の楽しさや利点を低下させないシステムを発明し、一度も拒絶理由通知を受けることなく特許を取得しました(いわゆる一発特許査定)。

発明の内容は、ゲームの制御サーバーにおいて、プレイヤーごとの課金履歴を管理し、一定の期間内における累積課金額をプレイヤーごとに算出させ、所定の上限額に達したかどうかを判定します。

上限額に達したプレイヤーは、それ以上の課金は制限されますが、上記「一定の期間内」において、上限金額までの到達時間に応じて、残り期間におけるゲームの進行に係る特典を、到達プレイヤーに付与することとしました。

これにより、射幸心を煽ることによって生ずる過度な課金を制限する一方で、単位会計期間における累積課金額が予め定められた上限額に達したプレイヤーに、特典を付与することができます。

そして到達プレイヤーには、得られた特典を使用することで、ゲームを容易に進行可能にできるなどの優位性をもたせることで、上限額到達までの課金によって得られた面白さ(興趣性)を、新規の課金をすることなく維持することができるというわけです。

このようなゲーム内の仕組みや考え方も、所定の特許要件を満たせば特許権を得ることができるのですね。

私達がなにげなく遊んでいるスマホゲームにも、たくさんの特許が絡んでいるかもしれません。


総評

ライター

今回紹介された特許らは全てゲーム内の技術でしたね!
私はフォートナイトをよくプレイしますので、その特許に関してはすごくイメージがわきました。

ゲーム内の特許は、リアルビジネスへの応用はなかなか難しいなぁ~との印象を持ちました。
やはり、ゲーム内での処理や表現の特許なので、他分野での展開は想定しずらいですよね。

ですが、ゲームの業界に絞った場合であれば、利用シーンが変わっても中心的な役割となる特許もあると思います!

例えば、、、
「単調なリソース集めを退屈させないアイデア特許(特許番号:US9744461B1)」

これに関しては、「ゲーム内の物体の弱点が移動する」点がポイントなので、
それを応用すれば「相手より早く壁を壊しながら進んでいくゲーム」や「シューティングゲームで敵の急所が変わり、狙う的が都度変わる」などなど、、、

現状のゲーム内ではサブ的な役割ですが、この特許部分をメインにしたゲームも考えられますよね。
(実際、この特許があるから、他社が表現できないことも多そうな気がします。)

また、現実世界の映像にリアルタイムで仮想世界映像を融合させる特許(特許番号:特許6362631)は、「リアル空間で動かした手の動きに仮想のオブジェクトを追従させ、その仮想オブジェクトで、相手に衝突判定を与える」点がポイントです。

文献では、主にドラゴンボールの様な格闘ゲームの利用イメージで書かれていましたが、
例えば、「ドッジボール」などのスポーツをVR上で行う場合の応用も考えられます。

先月、Electronic Arts社からリリースされた、ドッジボールゲーム型オンラインゲーム「Knockout City」が話題になっていますが、このゲームをVR上で再現しようとすると本特許の技術を応用できのではないでしょうか。

この特許に関しては特許範囲が広く、ゲームだけではなくVR上での職業訓練やイベント体験への応用にも期待が高まりますね。